『見えない音色(ちから)』
第一章メールのやり取り
主な登場人物
浅野 公 一 本編の主人公。バイオリスト志願でたぐいまれな音楽の才能を持っている。
和泉 穂多琉 本編の鍵となるヒロイン。ある日を境に・・・・・。
『・・・・・と言う風に高校生活を楽しみたいと思ってます』
桜が舞い上がる新学期。彼、浅野公一は今年で高校一年に進学した。
無事に第一志望のもえぎの高校に入学出来た事は、今でも奇跡だと思っている。
(さて、帰るか・・・)
この日の授業も終わり、公一はそそくさと帰る準備をした。こう見えても彼は訳ありで
一人暮らしをしているので、家に帰ってもやる事等が沢山ある。生活費はバイトをしながら稼いでいる。
その割にはパソコンでメールのやり取り等をしているが。
〜火曜日、PM 8:30〜
(何処か面白いサイト無いかな?)
公一はパソコンの前でWedサーフィンをしていた。彼が主に見たりしているサイトは音楽系である。
昔から音楽を作曲したり奏でたりするのが好きな彼は将来、一流のバイオリストになろうと考えている。
『カチ』
ふと属性の無いURL(サイトの名前では無くアドレスがそのまま検索に表示されてる事)が
検索上に出てきたので、何気無く公一はそのリンクを押してみた。
『カチ』
サイトは以外とすんなりとモニターに表示された。するとそこには『月の雫』と言うHPが現れた。
『このHPでは私、月夜見が作曲した曲を流してます。感想お待ちしてます』
「へぇ〜、このHPに流してる曲、たそがれって言うんだ・・・・」
公一はしばらくの間、心を奪われた人形の様になってたそがれを聞いていた。
が、曲が途切れた時にふと我に返った。
「そうだ。折角だから感想でも書いておこう」
折角こんな素晴らしい曲を聞いたのだから、ただで聞いてはまずいと思い、早速メールに感想を書いた。
『こんばんは、月夜見さん。突然のメールですみません。TOPに流れているたそがれ、
この曲はとても良い曲ですね。何処か儚い雰囲気が漂っていますけど
嫌な儚い感じではありませんでした。今後の作曲に期待してます。麻倉』
麻倉と言うのは彼がネットをやる際に使っているHNの事である。と言っても
このHNを考えたのは最近の事だが・・・・・。
「さてと、今日は何もする事無いし、寝るか・・・・」
月夜見さんにメールを送って満足した公一は、そのままパソコンの電源を切ってベットに入った。
〜水曜日、PM 7:00〜
『受信トレイに未読メールが一通届いてます』
公一が何時もの様にパソコンを立ち上げると、デスクトップにこんなメッセージが表示されていた。
公一は取り合えずそのメールを開く事にした。
『こんばんは、麻倉さん。月夜見ですメール、ありがとうございます!ところ
で麻倉さんも何か音楽を聴いたりしているのですか?もし宜しかったら教えて下さい。月夜見☆』
(音楽ねぇ・・・)
公一は、月夜見さんからのメールを読み終えると、早速レスを付けた。
『こんばんは、月夜見さん。僕は音楽を聴く時間よりバイオリンで演奏する時間が多いかな?
でも音楽を聴く時はクラシックかオペラのどっちかを聞いているね。
月夜見さんは好きな作曲家とかいるの?もし良かったら教えて下さい。麻倉』
メールを書き終えて返信した公一は、取り合えずパソコンの電源を入れたまま夕飯の支度を始めた。
彼はインスタント食品等が好きでは無いので、毎日手の込んだ物を作るのが日課となっている。
ちなみにこの日の夕食はグラタンだった。
(さて、しばらく冷ましておくか・・・)
そう思い、なにげにパソコンの方を向くとメールが届いている知らせが出ていた。
(レスポンス、早いな・・・)
この時、公一は本能的に返信相手が月夜見だと悟った。
『こんばんは、麻倉さん。月夜見です麻倉さんもクラシックを聴くんですね!
私もクラシックが好きなんです☆
それとバイオリン弾けるなんて素敵ですね!是非一度聞いて見たいものです。それでは。月夜見☆』
(ふーん、月夜見さんも音楽聞くんだ・・・)
そんな事を思いながら冷ましてたグラタンの事を思い出した。
・・・・結局冷め切っていたが。
〜木曜日、PM 3:45〜
この日の放課後、公一は音楽室でバイオリンの弦の手入れをしていた。
家には代わりの弦が無いので、彼はこうやって音楽室にある予備の弦で代用しているのである。
(うん、取り合えずこの弦だけ取り替えとけば、しばらくは大丈夫だろうな)
バイオリンの弦を張り終えると、公一はそのまま音楽室を出て鍵を閉めた。
(うーん、今学期中に良い曲作れるかなぁ?)
そんな不安を抱きつつ、公一は学校を後にした。
〜それからしばらく時が過ぎたある日〜
(そう言えば月夜見さんのHP更新されてるかな?)
7月に入り、夏の気配もしてきたこの時期、公一はいつもの様に月の雫を覗いてみた。
(あ、TOPの音楽が変わってる)
月の雫に来ると、トップの曲が変わっている事に公一は気付いた。
(・・・そうだ、折角だからこの曲バイオリンで弾いてみようかな?)
公一は世間で言う、『絶対音感』の持ち主である。それ位なら日本中探せば見つかる。
しかし彼が持ってるのはそれだけでは無い。一度聞いた曲は、全て頭の中でその曲の
楽譜が作れてしまうのである。簡単に言えばその曲を楽譜無しで奏でる事が出来るのである。
(と、その前に月夜見さんにメール出さないと)
早速、公一はトップに流れてる音楽の感想を書いてメールで送った。
『こんばんは、月夜見さん。今回のリニューアルはさっぱりとした曲ですね。
この曲自体を聞いていると、夏のベトベトとしたイメージまで吹き飛びそうな曲です。
月夜見さんならきっと素敵な作曲家になれますよ。それでは!麻倉』
(さてと、メールも送った事だし早速バイオリンで弾いてみるか・・・・)
パソコンの電源を切ってから公一は、部屋のベットの下にしまってあるバイオリンを取り出した。
ちなみに公一の部屋の両サイド隣の部屋は、現在誰も使っていないので特に問題は無い。(その上防音装置付き)
『〜
〜〜
〜〜〜』
(うん。柔らかくて、さっぱりとした曲だな)
公一はそんな事を感じながら、この曲をひたすら弾き続けた。
〜8月30日、PM 9:00〜
(あ、月夜見さんからメールが届いている)
メールが受信トレイに来てる事を確認した公一は、早速読んでみた。
「こんばんは、麻倉さん。月夜見です
実は今日、嬉しいお知らせがあったんです。それまで私はちょっとした事情で
病院生活を送ってリハビリをしていたんです。
でも二学期からは、普通に学校に通っても問題ないよって先生に言われて、
凄く嬉しかったんです☆
今から本当に学校生活が楽しみなんです。
お互い、新学期頑張りましょうそれでは。月夜見☆」
(そっか。そりゃ久しぶりの学校なら楽しみだろうな・・・)
メールの内容に納得したかのように、公一は頷きながら読んでいた。
そして9月に入って新学期を迎えた。新学期が来ても、公一は相変わらずバイオリンの作曲をしていた。
そして、夜は決まって月夜見さんのHPの曲を聴いていた。そして、そんなある日の事・・・・・。
『〜
〜〜
〜
〜〜』
(あれ?ピアノの音だ)
ふと音楽室の前を通りかかった時、普段は使われていないピアノの音が音楽室から聞こえてきたので、
思わず公一は音楽室のドアを開けてみた。するとピアノの前には、オレンジ色のロングヘアの
女子生徒がピアノを弾いていた。
(何だか、悲しい曲だな・・・・・)
「!!」
公一が入ってきた事に気付いたのか、その女子生徒は突然演奏を止めた。
「・・・・何か用?」
その女子生徒は冷たく公一に尋ねてきた。
「いや、ピアノの音が聞こえたから、ちょっと気になって・・・・・」
「そう・・・・・じゃあ、もう気がすんだでしょ?」
「あ、ちょっと待って!名前は?」
「和泉穂多琉。それじゃ」
最低限の事だけを伝えると、穂多琉は荷物をそそくさとまとめ始めた。
「・・・・儚げで、綺麗な終わり方。これかも知れない」
「え?」
公一のぼやきに、思わず穂多琉は反応した。
「何でも無い。それじゃ、邪魔して悪かったね」
そう言うと公一は、そそくさと音楽室を後にした。ちなみにさっきの呟きは公一自身の感想である事に
穂多琉は気付かなかった。
続 く
後書き
感激ですっ!まさか尊敬している作者の一人のHPにこんなヘボ作者にリクエストして貰えるなんて!感激です!
この穂多琉SSは出来ればじっくりと描いて行きたいと思っています。
それでは!