「My wish・・・」

                第2話「母の愛?」

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 朝6時。
 ピピピピピピピピピピッ、カチッ。

 枕元の目覚ましに手を伸ばしてスイッチを切る。
「う〜ん。」
 眠い目を擦りながら公は目を覚ます。

 ジャー、バシャバシャバシャ。

 洗面所で顔を洗い、ジャージに着替えてジョギングに出かける。
 毎朝5kmを走るのが日課だが、最初の頃は全然ダメで、すぐにへばっていた。
 しかし、始めて3ヶ月近く経ち、少しずつだがスタミナもついてきた。最近はだいぶ
 余裕がでてきたので、神社の階段登りも組み込んでいる。
「今日も快調、快調!!」
 7月に入り、日中はだいぶ暑くなってきた。
 早朝はちょうど良い感じでジョギングにはもってこいだ。朝の日差しが気持ち良い。

 順調にメニューをこなして帰宅すると、シャワーを浴びに風呂へと向かう。
 最近は筋肉も付いてきて、風呂上がりには鏡の前でポーズをとってみたりしている。
「う〜ん。俺っていけてる?」
 自分に見惚れていると、
「何やってんの、あんた。」
 母親の冷たい視線が公に突き刺さる。
「わっ!!なんでもないよ。びっくりした。」
 ササッ、何事もなかったように髪を整える振りをする。
「ま、いいけど。早く着替えて朝御飯食べちゃいなさい。母さんはゴミを捨ててくるから。」
「わかったよっ!!」

 茶碗にご飯をよそいながらTVに目をやると、最近お気に入りのアイドル、
 イブニング娘。の話題をやっていた。
「詩織もいいけど、あの一番ちっちゃい娘もかわいいよなぁ。」
 そんなことを呟きながら、大事なことを思い出す。
「そうだ!!今日は週番だったんだ!!」
 TVの時計を見ると、もう7時30分をまわっている。これでは走らないと間に合わない。
 しかし、朝食を抜くなんてことは絶対したくない公は、3分でかっこみ、バタバタと玄関に
 急ぐ。
 ガチャっと、勢いよくドアを開けて飛び出していく。
「いってきま〜〜〜す。かあさん。」
 ちょうど戻ってきた母親とすれ違う。
「はい。いってらっしゃい。」
 と言う間に、公は全速力で突っ走っていった。
「何をあんなに慌てているのかしらあの子ったら。」

 母親が台所に戻ると、テーブルの上に弁当箱を見つける。
「あらっ?あの子ったら、お弁当忘れていったわ。」
 呆れながら、どうするか考える。
「パンを買って食べるのは、あの子のおこずかいの額からいってかわいそうだし。そうだ。」
 何か思いついたのか、
「フフ、あわてる公の顔が目に浮かぶわ。オーホッホッホッホ。」
 と、高笑いしながらテーブルの上に置いてある弁当箱を持って、お隣に歩いていく。

 チリンチリン、チリンチリン。
 午前中の授業が終わり、お昼の時間になった。
 公も早速弁当を取りだそうとカバンに手を伸ばすと、いつも入っているはずの物がない。
「アレッ、ないぞ。」
 そう言えば、今朝は急いで家を出てきたのを思い出す。
「しまった〜。忘れてきたか。」
 パンを買おうにも、予定外の出費だったボールのおかげで切りつめようとしていた矢先
 なのだ。
「昼抜きか?ガクッ!!」
 と落ち込んでいたとき、後ろから声をかけられた。
「公くんっ!!」
 詩織の声だ。
「んっ?なんだ詩織。」
 と言って振り向くと、詩織が何やら見覚えのある物を持って微笑みながら立っている。
「これな〜んだ。」
「何って、あっ、俺の弁当箱か?」
「ピンポ〜ン、正解です。フフフ。」
 楽しそうに言う。
「今朝家を出るときに、おばさんから頼まれたの。家のバカ息子が忘れていったからって。」
『バカ?弁当忘れたくらいでそれはないぜ、かあさん。』と内心思いつつ。
「そっか。ありがとう詩織。」
 弁当を受け取ろうとして、
『んっ?何か重大なことを忘れているような気がする。何だったかな?え〜と・・・昨日の夜。』
『い〜え。明日のお弁当はお赤飯に決定よ。いいわね。』

「うわっ。」
 突然大声を出す公。
「キャ!!」
 びっくりして詩織もつい声を出してしまう。
「詩織っ!!」
「なに!?びっくりしたなぁ〜。」
「かあさん他に何も言ってなかったよな?」
ドキドキしながら平静を装って聞いてみる。
「何もって、今日のお弁当のご飯はお赤飯ってこと?」
 楽しそうに言う。
「なに〜〜〜。」
「キャア!!んっもう。びっくりするでしょう。あっ!!」
 詩織の手からちょっと乱暴に弁当を取り上げる。
「言うなよなぁ〜、かあさんも。恥ずかしい。」
「フフフ。いいじゃない別に。」
「何だよ。バカにして。」
 ふてくされながら、箱を開ける。
「ホントに赤飯が入ってるよ。たくっ。」
「もう、別にバカになんかしてないわよ。」
 詩織は頬を膨らませて、抗議する。
「うっ。ごめん、詩織。」
「エッ?」
 意外に素直に謝る公にちょっと驚きながら、おそるおそる聞いてみる。
「ねえ、公くん。」
「ング、ング。なんだよ。」
 公は早速食べながら詩織を見る。
「おばさんがね。昨日は公に大変な変化があったから、そのお祝いなのよ。って言ってたん
 だけど。何かあったの?」
「うっ!!」
 喉につまらせる。
「大丈夫、公くん?」
 ドンドン、ゴクッ。
「そんなことまで言ったのか、かあさんは。」
「うん。それって、バスケ部に入ったことと何か関係あるの?」
『うっ、鋭い!!』内心焦りながらも、
「なんだそれ、全然関係ないよ。」
「そうなの?じゃあ何?」
 顔を近づけながら答えを促す。
『かわいいなぁ。』と思いつつ。
「何でもないって。」
 あさっての方向を向きながら答える。
「教えてくれないの?」
「内緒だ。」
「え〜、教えてよ〜。」
「ハハハ、だめ。」
 公は、そんな詩織を見て可笑しくて笑った。
「ふんだっ、ケチッ!!フフフ。」
 と言いながらも、詩織は、
『なんか楽しいな。公くんとこうやって話すのって久しぶりだし。』と思っていた。

          つ づ く 



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