「My wish・・・」
第23話 「敗退・・・、そして」
第22話 目次へ戻る 第24話
インターハイへの切符を賭けての決戦も後半を迎えた。前半が終わって、
48対51の3点差。後半早々末賀は、とうとうマンツーマンディフェンスを仕掛けてきた。
練習試合を見た観客は、このマンツーマンによりまた抑えられるの
ではと懸念したが、そんな予想とは逆に、きらめきは練習試合から特訓してきた
成果を十二分に発揮して末賀の守りを突破する。
マンツーマンは、文字通りオフェンス一人にディフェンスが一人つく。これを崩すには、
早いパス回しとフットワークでフリーの状態を作る必要がある。
「いくぞ」
木本がボールを運び、公の位置を確認する。この時公は、松本を振り切ろうと
盛んに動いている。
「くる!!」
「止められるものなら止めてみろ」
松本は木本の方を気にしながら、公の動きに合わせてついていくが、パスが
出ると感じたにもかかわらず止めることが出来なかった。
公にパスが通る。
「なに?」
そして、突然公の姿が目の前から消えたように見えた。それほど速く脇を抜いていく。
「よしっ!」
一人抜いた公は、そのまま中に切り込みダンク!!
「いったーーー」
ガコォォン!!
「キャーーー、主人さ〜ん」
あれから成長した公と3年生が、マンツーをすり抜けて木本のパスを待つ。
特に公の成長は目を見張るものがあり、あんなに手こずっていた松本のマーク
をすり抜ける。そこに木本が絶妙なキラーパスを通す。
これで末賀の攻撃を抑えれば完勝出来るのだが、抑えることが出来ず点の
入れ合いが続く。
そして後半ラスト30秒で、85ー84とたったの1点差だった。
「中入るぞ」
末賀のオフェンスは、センターの橋本を起点したインサイド勝負である。
この橋本を抑えれば良いわけであるが、分かっていても抑えられないのが、
流石末賀である。
「甘い!!そんなんで俺を抑えられるかよ」
橋本はきらめきの2人のディフェンスを突き破ってシュートする。
「ナイシューーー」
「くそっ!ダメか」
これで85ー86と逆転された。
「まだまだ時間はある」
ボールが木本に渡り、ゴールの方向を見る。
「行かせるか!!」
そこにすかさず二人のディフェンスが付く。末賀はラスト3分からこのダブル
チームに出た。これはボールを持つ選手の足を止めて、焦らせる戦法だ。
時計をチラッと見ると、残り20秒
「くそっ、公は・・・・。よしっ!!」
前を見ると公が手を挙げているのが見えた。そこにロングパスを通す。
「ナイス木本」
今度は公にダブルチームを仕掛けようとダッシュしてくる。
「止まってたまるかよ」
「公ーーーー、がんばれーーーーー」
「公くーーーん、根性よーーーーー」
「せんぱーーーい、抜いちゃえーーーーー」
「頑張って、主人さん」
いままでの練習の成果をここに集約してディフェンスを抜く。
「なにっ」
ババッ、ドンッ!!
華麗なターンで1人目をバックロールで抜き、目の前にいる2人目をワンフェイントで
抜き去る。
「スゲーーーーー!!」
一気に会場から大歓声が沸き上がる。
中にカットインするのは橋本がいるので危険と判断して、ジャンプシュートの
体勢に入る。
「フリーで打たせるか」
それを察知したもう1人のディフェンスが公に向かって突っ込んでくる。
「シューーート」
チッ!!!
「しまった!」
ボールが手元から離れる前に指先がかする。
「入れーーーーーーーーーーーーー」
空中に弧を描くボールを見つめて、公ときらめきを応援する全ての者が声に出し、
または祈った。
ガンッ、ガンッ、ガンッ!!
グルンッ!!
リングに当たったボールは3回弾かれて、周りをくるりと1周する。
そして無情にもボールはリングに嫌われる。
「落ちたーーーーー」
そのボールをきらめきが奪い取って、いったん後ろにいた木本に戻す。
そして木本がすぐにジャンプシュート。
「させるかーーー」
今度は橋本がブロックショットに跳び、それを弾き飛ばす。
「うわっ!」
バンッ!!
思いっきり弾かれたボールは、ワンバウンドして反対のコートまでも届く。
そして試合終了のブザーが鳴る。
ビーーーーーー!
それと同時に末賀の選手は抱き合って喜び、きらめきの選手はうなだれて
しまう。公を除いては。
「85対86で末賀高校の勝ち」
「ありがとうございました」
両チーム礼をして、お互いに健闘を讃える握手をする。
「負けたよヒデ」
「今回はうちが勝たせてもらったよ」 木本と橋本が握手を交わす。
「インターハイ頑張れよ」
「はい!きらめきの分まで一生懸命プレーしてきます」
公は松本に声を掛ける。
「ウィンターカップは負けないからな」
「楽しみにしてる」
両チーム別れて、公達は審判団・相手側のベンチと応援席、最後にきらめきの
応援団に挨拶をする。
「ありがとうございました」
励ましの声と次への期待の声が響く中、優美は今にも泣き出しそうな顔で悔し
がっていた。
「あ〜ん、負けちゃったよーーー」
「「公くん大丈夫かな」」
詩織と沙希は同時に公のことを見る。結果論とはいえ、『自分のシュートが
入っていれば』というのを、公が気にしていたらと心配になったからだ。
そんな心配をよそに、公は他の選手ががっくりきている中、胸を張って堂々と
している。
「「大丈夫かな?」」
見た目は大丈夫そうだが・・・・・・。
その後控え室で反省会が行われたが、公は終始言葉少なだった。表情は会場を
出てくる時と変わっていないが、ほとんど口を開かなかった。
「というわけで、みんな良く頑張ったな。今日の所は一歩及ばなかったが、
次までには超えられるように、明日から鍛え直しだ」
「はい」
「それと公、負けたのはおまえのせいじゃないんだから、いつまでも気にしてるん
じゃないぞ」
「そうだ。俺だって橋本にブロックされたしな」
「そうだぞ、公。おまえのせいじゃない。みんなで頑張ってきた結果なんだから
敗因はみんなにあるんだ」
今日この試合が最後となった3年生からも励まされる。
「先輩。ありがとうございます。そう言ってくれると俺・・・・・・」
「ははは、泣くなよ〜、公」
全体が暗く沈むのを止めるように、木本がおどけてみせる。
「泣かね〜よ。バーカ」
ハハハハハハ。
控え室に部員の笑い声が響く。
「よしっ、今日はこれで解散だ。ちゃんと休めよ」
「はい」
公が帰ろうと外に出たとき、空はどんよりしていて、風上の方には黒い雨雲が
見えた。
「公くん」
公を待っていた沙希が呼び止める。
「沙希ちゃん」
このとき詩織達女子も違う部屋で反省会をしていた。詩織は20分後に控え室
に行くが、そこには公の姿はないこととなる。
「一緒に帰りましょう」
「うん」
「今日は惜しかったね」
「うん。ごめん、勝てなかったよ」
「謝る事なんてないよ。確かに勝つことも大事だけれど、それ以上に悔いのない
プレーが出来たかどうかの方が大事だよ。ねっ?」
「うん。そうだね」
この後別れるまで、公はそれ以上落ち込んだ顔を見せずに、普段通りの様子で
何でもない話をしながら帰った。
そして、二人の分かれ道に着いたとき沙希が言う。
「じゃあ、私こっちだから。そうそう、今日は自主トレしないでゆっくり休んだ
方が良いよ」
「分かった。じゃあ、また明日」
「うん。明日ね〜」
手を振り振り、何回か振り返りながら離れていった。
沙希が家に帰ってきて2時間が経った。
「今日は惜しかったなぁ」
カップに入った紅茶を飲みながら、公のプレーを思い出してみる。
見事なフットワークで末賀のディフェンスをかいくぐりシュートをし、そして
デフェンスで奮闘する姿。
「格好良かったなぁ〜」
ほうっ
顔を赤くして溜め息なんかつく。
しかし、ちょっと気になることがある。確かに公は自分のミスを気にしていない
ように見えたが、本当にそうなのか?ということだ。
「気になるなぁ〜」
なんだか落ち着かない沙希は、公の家に電話をかけることにした。
「そういえば、公くんの家に電話するのってまだ2度目よね」
トゥルルル、トゥルルル
「緊張しちゃう」
カチャ!
「はい、主人です」
『あっ!お母さんだわ』
思わずその場で背を伸ばして、姿勢を正してしまう。
「もしもし?どちら様ですか?」
「あ、あの、私、こ、公くんの同級生の虹野沙希と言います。あ、あの」
緊張のあまりしどろもどろになってしまう。
「あ〜、あなたが沙希ちゃんね。話は聞いているわよ。いつもうちの馬鹿息子が
お世話になってるようで」
「お、お世話だなんて、私が勝手にやっている事ですから」
公が自分のことをなんと言っているのか気になったが、そのまま続ける。
「そう?じゃあ、これからもよろしくね。で、何かご用?」
「あっ、そうでした。公くんいらっしゃいますか?」
「公?まだ帰ってきていないのよ。何をやっているのかしらねぇ、あの馬鹿息子は」
『馬鹿馬鹿って・・・・・』
「まだ帰っていないんですか?」
「ええ、一緒だったの?」
「はい。途中まで一緒に帰ってきたんですけど」
「そう。まあそのうち帰ってくるでしょう。帰ってきたら電話させるわね」
「い、いえ、いいです。そんな大した用事じゃないので、明日話します」
「分かったわ。そうだ、あなたに会ってみたいから、いつか家にいらっしゃい」
「そうですか?ありがとうございます。では、失礼します」
「はい」
ピッ!
「は〜」
緊張が解けて溜め息をつく。
「まだ帰ってきてないのか。別れてから2時間も経っているのに」
沙希の嫌な予感が当たった。表面上は何でもないように振る舞ってはいたが、
悔しくないわけがない。
「探しに行こう」
沙希は急いで着替える。
「ちょっと沙希、どこに行くの」
「お母さん。ちょっと出てくる」
「出てくるって、あなた病み上がりなんだから。あっ、傘を・・・・・」
バンッ!!
頭が公のことでいっぱいだった沙希は、傘を持つのも忘れて家を飛び出す。
空は黒い雨雲でいっぱいだった。
「どこにいるの公くん」
1時間近く当てもなく探し続けているうちに、激しい雨が降ってきた。
ザーーーーーーー
「公くんが行きそうな所。う〜〜〜ん。そうだ!!もしかして」
沙希は雨に濡れることなど気にならないように、無我夢中で思いついた場所に
走り出す。
10分後にたどり着いた所、そこはいつもの公園だった。
「お願い、ここにいて」
中に入り、いつもの所に近づいてきたとき、激しい雨音の中にボールをつく音と
誰かの叫び声が聞こえてきた。
ドンドンドン、ガーーーン!
そこには、雨の中叫びながらダンクシュートをしている公の姿があった。
「はあ、はあ、なんで入らなかったんだーーー!!」
ガシャァン!!
「はあ、はあ、俺は今まで何をやってきたんだーーー!!」ガコォン!!
それは自主トレといえるものではなく、只がむしゃらにリングにボールを入れ
ているようだった。
「はあー、はあー、あそこで入れないと意味がないんだよ!!」
ガコォォン!!
いったいいつからやっていたのだろうか。びしょぬれになるのも構わずに、
延々と続ける。
沙希は後悔した。
『悔しくないはずがない。レギュラーになれなかった3年生のため、学校の期待に
答えるため、そしてたぶん藤崎さんのため。私のためというのもあるのだろうか。
たとえ外目には大丈夫そうに見えても、コーチや他のバスケ部員、私、そして
藤崎さんに心配を掛けさせまいとしていたのだろう。
公の頑張りをずっと見てきた自分が、1年以上続けてきた自主トレを見てきた
自分がそれに気付かないなんて、なんて情けないのだろう』
本当ならすぐにでも止めるべきなんだろうが、沙希はその術を知らなかった。
ただ、我に返ったときに一人だと寂しいだろうから、終わるまでここで見守っ
ていようと思った。
ザーーーーーーーーーーーー
沙希が着いてから30分も経っただろうか、雨はいっこうに止まず、更に激しく
なってきた。
「はあーーー、はあーーーー」
バタンッ!!
膝に手をついたかと思ったら、そのまま後ろに倒れてしまう。
とうとう疲れ果てたようだ。そして倒れながら小さく呟く。
「なんで、はあ、入らなかったんだよ」
ザーーーーーーーーーーーーー
雨が公の顔に滝のように降り注ぐ。目からは涙が流れてきたが、雨で区別が
つかない。
「はあ、はあ、はあぁ」
ゴロン!
荒かった呼吸が収まって身体を横にした時、その目に沙希の姿が映る。
「沙希ちゃん?」
ガバッ!!
驚き跳ね起きた公に、沙希が駆け出してきて抱きつく。
「沙希ちゃん、どうしてここに」
「そんなに自分を責めないで」
「・・・・・・」
「自分の胸だけに背負い込まないで」
「・・・・・・」
「辛いときは私にも言って、あなたの力になりたいから」
ギュッ!
腕に力をこめる。
「お願い」
「・・・・・・」
「一人で苦しまないで」
「・・・・・・、ありがとう沙希ちゃん」
まるで沙希の心が、公の心に直接話しかけているように感じた。
「ありがとう」
沙希の優しい気持ちが公の身体に溶け込んでくる。
「私にはそれくらいしか出来ないから。それにこんなに濡れちゃって、風邪ひい
ちゃうよ。一緒に帰ろう」
その言葉の最後の方は、声が小さくて聞き取れなかった。
「それはお互い様って、沙希ちゃん?」
「はあ、はあ、はあ・・・・・」
身体を離して沙希の顔を見ると、息が荒く、顔が紅潮しているのが薄暗い街灯
の灯りでも分かった。
額に手を当ててみると、明らかに熱があるというのが分かる。
「大変だ」
ボールを片付けるのも忘れて、沙希をおんぶして走り出す。
「急いで沙希ちゃんの家に・・・、わっ!眩しい」
公園を出た途端、突然車のヘッドライトに照らされる。
そして、中から見たことのある金髪の少女が出てきた。
「君は確か、今日会場で見た」
「主人さん、どうぞ乗って下さい」
「えっ?どうして俺の名前を」
「そんなことはいいじゃありませんか。見たところ、そちらの方の具合はかなり
悪いようです。この車でお送りしますから」
「でも、見ず知らずの人の車でというのは」
「何を言っているんですか。事は一時を争うかもしれません。誘拐なんかしませ
んよ。それに貴方がいるじゃありませんか」
「う〜ん。そうだな〜」
沙希の表情を見ると、とても苦しそうだ。このまま自分がおんぶして沙希の家
まで走っていくのにはかなりの時間がかかる。車を使った方が良いのは、幼稚
園児でも分かることだ。
「わかった。じゃあ、お願いします」
「はい。どうぞ乗って下さい」
公は開いたドアに後ろ向きになって沙希を降ろし座らせると、自分も反対側
から中に入る。
「広いなこの車」
後部座席は悠々と三人が座れる広さがあり、しかも一人一人に手すりがあった。
そして車が動き出したが、雨の音がするだけでエンジン音はなく、驚くほど
中は静かだった。
「その方のお家はどちらでしょう?」
「えっと、ここを真っ直ぐ行ってから・・・・・」
「いいえ、ご住所を言っていただければ分かります。電話番号でもいいですよ」
「それで分かるの?」
「はい。この運転手の頭の中には、この辺一体の地図が記憶されていますし、
電話帳の中身も全て覚えているので、番号だけで住所が分かります」
「すごいな。おっと、感心してる場合じゃない。えっと、確か電話番号は、
△×○−△・・・、え〜と、なんだっけ。忘れちまった!!」
公は頭を抱える。
「それで結構です。その女性の名字は何ですか?」
運転手が前を向いたまま言う。
「はっ?虹野ですけど」
「・・・・・・・・・分かりました。では、そちらに向かいます」
「なんでそれで分かるんだ?」
運転手に変わって少女が答える。
「それは、さっきおっしゃった所までの番号を持つ家を全て抜き出して、
虹野という名字だけを探したのです。珍しい名字ですから、すぐに分かった
みたいですね」
「すげーーーな、それって」
その後は、沙希の家に着くまで二人とも無言だった。車の中には、雨音と沙希
の荒い息づかいだけがしていた。
数分後、無事沙希の家に着いた。
公はすぐに沙希の母親に事情を説明して、沙希を2階の部屋に運んだ。
車はこのとき、どこかに走り去っていた。
「すみません。俺のせいでこんなことになって」
「いーえ、この娘が自分の意志で出ていったんですから。公くんのせいじゃないわよ」
「いえ、そんな」
「そんな顔しないで。そんなに気にしているのなら、ちょっとの間看病してもら
えるかしら。それでいいでしょ」
「はい。喜んで」
公は家に電話して、ことの成り行きを説明した。
「分かったわ。虹野さんのお母さんにご迷惑を掛けるんじゃありませんよ」
「ああ、分かってるよ」
「それと、沙希ちゃんに変なことするんじゃありませんよ」
「しないよ!!じゃあ、少し遅くなるから」
ピッ!
変なことを言い出すので、突然電話を切る。
『病人に何をするっていうんだ。病人じゃなくてもしないけど、たぶん』
台所で水の入ったたらいと、タオルを受け取り2階に上がる。
沙希の額に絞ったタオルを当てて一息つく。そして改めて沙希の部屋を見る
と、シンプルな部屋だという感想を持った。
必要不可欠な家具とAV機器以外には、女の子の部屋にありそうなぬいぐるみ
は1つもなかった。沙希らしいものといえば、本棚に料理の本がたくさんある
ことぐらいか。それと漫画が数冊。
「んっ?はじめの半歩?こういうの好きなんだ」
今人気のボクシング漫画だ。
「意外だな」
「んんっ」
沙希が気が付いたようだ。
「沙希ちゃん、気が付いた?」
「あれっ?ここは・・・、私の部屋?」
「ああ〜、ダメだよ寝てないと」
沙希が身体を起こそうとしたので、それを制してベットに寝かせる。
「気分はどう?」
「公くん?私あれから・・・」
「沙希ちゃん、具合が悪くなって倒れたんだよ」
「そっか、じゃあ家まで運んでくれたのね。ありがとう」
「まあ、ちょっと違うんだけど。後で話すよ」
「???」
沙希はキョトンとするが、すぐに眠たそうな顔になる。瞼をパチクリさせて、
今にも眠ってしまいそうだ。
「沙希ちゃん」
「なぁに?」
「ごめん。俺なんかのためにこんな目に遭わせちゃって」
「ううん。私が勝手にしたことだから・・・・」
「でも、あんな雨の中をどうして、んっ?」
スースースー
「寝ちゃったか」
身体が睡眠を欲していたのだろう。すぐに寝入ってしまった。
「・・・・・、可愛い寝顔だな」
それから9時頃まで看病した公は、母親に挨拶をして帰ることにした。
「じゃあ、これで失礼します」
「お疲れさま。公くん、沙希のことこれからもよろしくね」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
なんだか自分と沙希が、彼氏と彼女みたいな感じの会話だった。
「沙希ちゃんは何であんなに・・・」
今回の事は、今までよりも沙希の存在を考えさせられる出来事だった。
女の子と言えば詩織しか頭になかった公だったが、沙希の居場所がだんだんと
大きくなっていた。
つづく
あとがき
第23話でした。
公と沙希の係わりをこんなに書いてもいいのか?
僕自身沙希ちゃんが一番好きなキャラなので、
自主トレを知っている沙希の話がどうしても多くなっている今日この頃、
やはり3年の途中から詩織編と沙希編に分けようかなと考えています。
では、次回をお楽しみに。