「My wish・・・」

                     第29話 「県予選優勝」

                                       第28話    目次へ戻る    第30話サイドA


 選抜予選県大会決勝きらめき高校対末賀高校の試合は、前半が終わって30対
 38と、この両校の試合にしてはロースコアの展開となった。
 前半は両チームとも守り合いが続き、観客の目にはマンツーマンディフェンス
 が機能している末賀高校の方が有利かとも見えた。

「出てきたぞ」
 入口から姿を現した両チームを見て、会場から拍手と声援が巻き起こる。
「主人さん、頑張ってーーー」
「橋本ーーー、きらめきなんか蹴散らせーーー」
「逆転だ、きらめきーーー」
 なんとなく、きらめきを応援している人の方が多く感じられる。
 これは、毎年優勝している末賀よりも、初優勝が掛かっているきらめきに
 勝って欲しいということだろうか。

「よしっ、あと20分だ。絶対勝つぞ!」
「おおーーー」
 きらめきは円陣を組み、キャプテンの掛け声とともに気合いを入れる。
 両校の選手がコートに散らばり、審判がボールを構える。
ピッ
 トスされたボールは松本に渡り、末賀ボールから後半が始まった。
「さあ、じっくり攻めるぞー」
 末賀のガードがボールを運びながら声を掛けると、まずはパスをまわしながら
 様子をうかがう。前半は橋本に頼っていた部分があったが、やはり疲れがある
 とみて、アウトサイドからの攻めを多くしようとしているのが分かる。
 きらめきはボールの動きに合わせてゾーンを動かしていく。
キュキュ
 公は正面の選手にボールが渡ると、激しくチェックにいく。
 腰を落とし左右の動きに備え、手を挙げてシュートコースの視界を遮る。
キュキュキュ
 相手が横を抜こうとするが、素早い身のこなしでコースを遮る。
「くそっ」
 抜けないと判断すると、パスを出そうと周りを確認する。その時、わずかに隙
 が出来たのを見逃さずにボールに手を出す。
バシッ
「あっ!」
「ナイスカット、公」
 弾かれたボールに木本が反応して奪い取るのを見ると、公は弾丸のように走り出す。
 そして後ろを振り返り、ボールを受け取りながらノーマークなのを確認する。
「ダーーーンク!」
 応援席でおなじみの「ダンクだ!主人公」と書かれた旗を振りながら優美が叫
 ぶ。
ガコン!
 ダンクはすでに、公の十八番となっていた。
「やったーーーーー」
ブンブンブン
 旗を振る腕にも一層力が入る。
「すごいすごい」
「やったね」
 詩織と沙希も拍手をしながら歓声をあげる。


 後半が始まって10分が過ぎると、誰の目にも橋本の疲労が分かるほどになっていた。
 それはきらめきの2−3ゾーンが機能している証拠だ。高確率の3ポイントシューターがいない
 末賀にとって、これは致命傷となった。
 裏を返せば、全国大会でも勝ち上がった末賀を、そして橋本をここまで苦しめている
 きらめき高校は、全国でも勝てるチームに仕上がったと言えた。
 こうなってくると、末賀はオフェンスにも影響が出てくる。
 シュートを外しても橋本が何とかしてくれるという安心感から、リラックスして
 打っていたシュートも、この状況では外すことは許されなくなる。
 それがプレッシャーとなり、確実にシュート決定率が下がり始めた。
「スクリーン」
 チェックに行った公と、シュート体勢に入った松本との間に末賀選手が割って
 入る。
「くっ」
「スリーいったーーー」
 しかし、プレッシャーのかかったスリーポイントシュートは入らなかった。
ガンッ!
「リバンド頼みます、橋本先輩」
「よし。うっ!」
 しかし、頭では分かっていても、疲労が足腰にきていて身体がいうことを効かない。
 橋本はジャンプさえ出来なかった。
ガクン!
 膝が折れてその場に倒れ込む。ボールを取ったきらめきが得点すると、すぐに
 末賀がタイムアウトを取る。
ビビーーー
「橋本ーーー」
 末賀の選手が駆け寄り、担いでベンチまで連れていく。

「交代かな」
「そうだな。いったん休ませて、また出て来るんじゃないか」
 公と木本がベンチに戻りながら話す。
 タオルとドリンクを受け取って腰を下ろすと、コーチが次の指示を与える。
「予想どおりの展開になったな。まず橋本は交代だろう。もし交代が橋本だけ
 だったら、そのまま2−3だ」
「はい」
「もう1人、たぶん3ポイントシューターだろうが、入ったら3−2に変えるぞ」
「はい」

ビビーーー
 末賀ボールから再開される。
 やはりベンチから橋本は出てこなかった。変わりに控えの1年のセンターと、
 3ポイントシューターである選手を入れてきた。
 これでアウトサイドも注意しなければいけなくなった。
「そうきたか」
 木本がコーチの方を見ると、コクッと頷く。
 木本は仲間に向かって、ディフェンスチェンジを伝える。
「3−2ゾーン」
「おう」
「よっしゃ」
「後ろは任せろ」
 公と3年生がそれに反応して、ゾーンを組み替える。前に3人後ろに2人が構え、
 主にアウトサイドシュートを防ぐゾーンディフェンスだ。
 当然中が薄くなるのだから、インサイドにボールが入ってくる。
「橋本じゃなければ、恐くなんかないぜ」
「くそっ」
 プレッシャーをかけて、変わったセンターを追いつめると、シュートコースが
 なくなったためボールをいったん外に出す。
「3ポイント、気を付けろーーー」
 3ポイントラインでボールを回すが、ボールを持った選手に公達が素早く
 チェックにいき、打たせる余裕を与えない。
ピーーー
 シュートをせずに30秒が経過したため、末賀のファールとなる。
「しまった」
「よしっ」
「さあ逆転するぞ」
 きらめきが勢いづこうとしていた。
「んっ?」
 木本がドリブルで攻め上がると、末賀のディフェンスが2−3のゾーンになっ
 ていた。どうやら変わった末賀の選手はマンツーマンに慣れていないらしい。
「それでうちに勝てるかよ」
 いくら中を固めたところで、橋本抜きで公を抑えられるわけがない。


 木本の言葉どおり、きらめきは3分後には逆転して、後半15分には64対53とした。
ガンッ!
「リバンドーーー」
「控えに負けるかよ!」
 いったん狂った末賀のリズムは、なかなか元には戻らない。更にシュートが
 入らなくなってきていた。
 公言どおり、控えの1年相手にボールを奪い続ける。
「よっしゃー。木本!」
「OK」
ビュン!
 すぐに公にパスを出すが、読んでいた末賀選手が先に戻る。
「行かせませんよ」
 橋本が戻ってくるのを信じて、諦めずに走る松本が立ちはだかる。
「来たか。でも」
「公、後ろだ」
「よしっ」
 公はドリブルしながら、後ろから来た木本に振り返らずにボールを戻す。
 そして突然トップスピードに切り替えて、松本の横を抜いていく。
「はやい!」
 横を抜かれて振り向いたときには、公は2歩先をダッシュしていた。
 再び木本からボールが戻ってくる。
 もう1人戻っていたディフェンスも、1フェイクでかわしジャンプシュート。
ザシュ
「ナイシューーー」

ビビーーー
「交代」
 休憩して体力が回復した橋本がコートに戻ってくる。
「やっと出てきたな」
「このままじゃ終わらせない。絶対追いついてやる」
 橋本が木本を指差し宣言する。
「引き離してやるさ」
 橋本が戻ったお陰で再びマンツーマンになるかと思われたが、そこまでは
 回復していないようで、引き続き2−3ゾーンで守る。

 ラスト2分となり、70対65と宣言どおり追い上げてきた。
「来い」
 橋本がゴール下でボールを受け取る。
「決めさせるかよ」
 センターが競り合って跳ぶが、それを物ともせずに入れられる。
ガコン!
「よしっ」
「くそっ!化け物かよ」
「取り返すぞ」
 木本がドリブルで攻め上がる。
 この時公は、走りながらこんなことを考えていた。
『やるなぁ橋本は。でも、その橋本に勝たないと末賀に勝った気がしないだろうな』
 橋本という男は、上に行くためには乗り越えないといけない相手である。
 
 公にボールが渡り、チェックに来た松本との間に木本が割り込む。
「スクリーン」
「シュートあるぞーーー」
『あれをやるか』
 橋本の前に切り込む。
「来い」
「いっけーーー」
 公は後ろに大きくジャンプする。特訓中のフェイドアウェイだ。
「なに?」
 橋本が伸ばした腕よりも上をいく大きな弧を描き、ボールがリングに向かって
 飛んでいく。
ザシュ!
「ナイシューーー」
「やったーーー、ここで決めるなんて。すごい、すごい」
 沙希が手を叩いて喜ぶ。
 さすがはプレッシャーを力に変える男、主人公である。
「すごい!完璧に橋本さんの上をいっていたわ」
 詩織も感嘆する。
「やったな、公。どんどん打て、勝つぞこの試合。先輩あと1分半です。橋本を抑えて下さい」
「おうっ!」
「わかった!」
 公とセンターの先輩が答える。

ピーーー!
 そして、とうとう試合終了のブザーが鳴った。スコアは82対73、きらめき
 高校の勝利だ。きらめき高校は、大会初の男女アベック優勝を成し遂げた。
「よっしゃーーー!」
「やったな、公」
 公と木本の二年生コンビが、ハイタッチをして喜びを共有する。
「勝ったーーー!!」
「やったーーーーー」
 整列して礼をし終わると、ベンチの控え、レギュラーになれなかった部員が
 コートの中に入り、選手と抱き合う。
 その輪の中で石崎は、公達のプレーを見てきらめきに入って良かった。そして
 早くそんな人達と試合で一緒にプレーしたいという気持ちが膨れ上がっていた。

 会場は歓声で満たされ、バスケ部員が拍手に包まれる。そして、末賀高校の
 応援席からもおめでとうの言葉が掛けられる。
「やられたよ明、公」
 橋本が公と木本に言葉をかける。
「大丈夫か、お前」
 公が体を心配する。試合が終われば良い友達だ。
「大丈夫だよ。それより、頑張れよ全国大会。きらめきならいいとこまで行くよ、絶対に」
「サンキュー。末賀の分まで頑張ってくるよ」
「その通り」
「ははは。じゃあな、新人戦じゃ負けないからな」
「楽しみにしてる」
 三人は握手を交わして別れた。

「やりましたね主人さん」
「ええ、ありがとうございます」
 父兄の席では、公と詩織の母親が手を取り合って喜んでいた。
「主人さん。今日は家と一緒に、お祝いしましょうよ」
「いいですね。喜んでお邪魔します。私も準備を手伝いますよ」
「よろしくお願いします」

 二階の隅の方では、金髪の少女が公を見つめていた。
「おめでとうございます」
 そう小さく呟いて、会場を後にする。
「クリスマスには、きっと」
 謎の言葉を残して。


 1時間後控え室では、表彰式で受け取った優勝旗を一人一人手に持ってみる
 バスケ部員達がいた。
「・・・・・・・」
 公は、創部から29年、やっと手に入れた優勝旗を持ち、その重さに言葉もなくなる。
「みんな、今日は良くやった。いよいよ全国大会に出場だ。明日は部活を休みに
 するから、明後日からはまた気を引き締めて行くぞ」
「はいっ」

 解散した後、公はいつもの体育館に向かっていた。昨日の夜、沙希に試合が
 終わったら会いましょうと言われたからだ。
 夜はめっきり冷え込む季節になったので、沙希が風邪をひいたら大変ということもあり、
 また体育館を使わせてもらっている。伊集院に頭を下げるのはしゃくだったが、
 背に腹は代えられない。以外だったのは、特に嫌味を言われずに済んだことか。

 公は会場から直接、沙希はいったん家に帰ってから体育館に来た。
 なにをするのかと思っていたら、沙希がお祝いをしてくれるという。
「優勝おめでとう、公くん」
 パン、パン、パン
 持参したクラッカーを鳴らし、作ってきたケーキを取り出す。
「ありがとう、沙希ちゃん」
 更衣室で、沙希が持ってきた手作りのケーキとジュースでささやかなパーティーをひらく。
 きらめきが勝つことを信じて、今日の朝早くに起きて作ったチーズケーキだ。
「大好きなんだこれ、早く食べよう」
「ふふふ。慌てないで」
 皿に分けると、公は早速口に運んだ。
「いただきま〜す」
パクッ
「どう?」
「むむむ」
 眉間にしわを寄せて唸る。
「どうしたの?まずかった?」
 不安げな顔で、公の次の言葉を待つ。
「うまい!!沙希ちゃんの作る物はホントおいしいよ。口の中でとろける感触が
 たまんないね」
「ホントに?良かった」
 嬉しくて顔をほころばせる。
「今日も大活躍だったね。ここのところ特訓していたシュートも決まったし」
「フェイドアウェイだね。うん、自分でもよく入ったと思うよ」
「さすが私が見込んだだけあるわ」
「ははは、ありがとう」
 結局公は、今日の試合で82得点中45点を叩き出した。
「いよいよ全国大会だね」
「ああ。これも沙希ちゃんのお陰だよ。感謝してる」
「ううん。そんな大したことしてないよ〜」
 両手と首を振って否定する。
「いやいや、大したことしてるよ。なにかお礼しないとな」
「お礼?」
「うん。何でも言って」
 ケーキを食べながら促す。
「う〜ん。う〜ん。じゃ、じゃあね。キ・・・」
 考えた末に、一気に関係を近づけるチャンスと、思い切って言おうとする。
「キ?」
 しかし、恥ずかしくて次の文字が口から出てこない。
『やっぱり言えないよ〜』
 みるみる顔が熱くなる。
「・・・リンが見たいなあ〜、なんて」
「キリン?動物園か。いいよ、一緒に行こう。ん?何だか顔が赤いよ」
 沙希の顔が赤くなってるのを見て心配そうに言う。
「ううん。何でもないよ」
『なに言ってるのよ、私ってば』
 本当は、ほっぺでもいいから「キスして」と言おうとしたのだが、言えなかった。
「今度の日曜日でいいかな」
「う、うん。いいわよ」
 それでも、デートの約束が出来たから良しとしよう。と思うことにした。

「今日は公くんの家でもお祝いすると思うから、もう帰りましょう」
 時計を見ると6時を回っていた。楽しい時間はアッという間に過ぎてしまう。
「そうだね」
 後片づけをした二人は、出入口に向かう。
「沙希ちゃん、まだ?」
 玄関で沙希が出てくるのを待っていると、下駄箱の間から駆けてきた。
「お待たせ。あっ!!」
 下に敷き詰めてあるタイルの隙間につまづいて、よろけてしまう。
「危ない!!」
 公が膝を曲げて沙希の前に飛び出す。
「わわっ」
ドサッ!
 ちょうど公の肩に沙希の顔がくる。
「大丈夫?」
 突然のことでボーーーっとなった沙希だが、我に返って離れようとしたその
 時、頬に何かが触れたので動きがピタッと止まる。
「きゃっ!」
 視界のすぐ横には公の顔があり、唇が頬に触れていた。
「あっ、ごめん」
「ううん、いいの。行きましょう」
「うん」
 あらためて離れた沙希は、なんだか嬉しそうにそう言った。そして何事もなかった
 ように歩き出す。
『ふふふ、願いが叶った・・・・・のかな』
 思いも寄らない形だったが、結局2つ良いことがあった。
「楽しみね、動物園」
「ん?そうだね」
 その後、家に着くまでずっと顔が緩みっぱなしの沙希だった。


「ただいま〜って、何で電気が付いてないんだ?」
 家に着いた公が玄関を開けると、中は暗く、シーンと静まり返っていた。
「なんだなんだ?優勝を決めた息子が帰ってきたっていうのに」
 ブツブツ言いながら、夕飯の用意ぐらいはしてあるだろうと台所に行くと、
 見事に何もなかった。
「いったいどうなってるんだよ。んっ?」
 怒りが込み上がげてくるのを感じながら電気を付けると、テーブルの上の置き手紙に
 気が付いた。

     「公へ
       お帰りなさい。
       今晩は藤崎さんの家で合同のお祝いをします。
       すぐに来るように!!
                        母より」
「詩織の家で?そうだったのか」
 不機嫌な気持ちなんか吹っ飛び、早速着替えて家を出る。
「ごめんください」
 藤崎家の玄関を開けると、詩織が居間から駆け出してきた。
「詩織」
「公くん、いらっしゃい。さあ、どうぞ」
 詩織に促されて居間に入る。
 テーブルにはたくさんの料理が並べられ、二人の両親が座っていた。
「こんばんは」
 詩織の両親に挨拶をしてから、手招きをする詩織の横に行く。
「やっと来たわね、馬鹿息子」
「な、なんだよいきなり」
「詩織ちゃんが待ちくたびれてたのよ、さっきまでしょんぼりしちゃって。謝りなさい」
「あっ」
 公の母親に見抜かれて、恥ずかしそうに下を向く。
 帰りが遅いので心配していた詩織は、公の声を聞いた途端に居間を飛び出したのだ。
「そんな、いいんです」
 慌てて右手を左右に振る。
「ごめんな、詩織」
「いいのよ」
 公を見上げて微笑む。
「よし、謝ったら早く座って、あなた達が主役なんだから」
「ああ」

 それから2時間あまり、二人の両親は酒も入って大いに盛り上がった。
 途中で付き合いきれなくなった二人は、お祝いのケーキとお茶を持って、詩織の部屋へと
 来ていた。
「まったく、付き合ってられるかって」
「ふふふ、そうね。でも、公くんのお父さんとお母さんも嬉しいのよ。自分の息子が
 全国大会に行くんですもの」
「ま、そうかもしれないけど」
「公くん。座ってお話ししましょう」
「うん」
 こうして公が自分の部屋に入るのは、いったい何年ぶりだろうか。小学校低学年の頃
 までは、よく行き来したものなのにと、詩織は思った。

 公はベットの前に座ってもたれ掛かり、詩織も昔のように自然とその横に座る。
「ケーキ食べましょう」
「そうだね」
 生クリームがたっぷりの苺のショートケーキだ。
 さっきお腹いっぱい食べたばかりなのに、そうとう疲れているのか、二人とも甘い物は
 まだ入るようだ。
「そうだ」
 ケーキを食べながら、詩織が何かを思い出したように手を止める。
「ん、どうかした?」
「そういえば、まだちゃんと言ってなかったよね」
 詩織が公の目を真っ直ぐに見る。
「優勝おめでとう、公くん」
「ありがとう。詩織も優勝おめでとう」
「ありがとう」
「ふふふ」
「ははは」
 二人で「おめでとう」を言い合っていたら、なんだかおかしくなった。
「俺たちって、けっこう凄いことしたよな」
「そうね。お家がお隣同士で、幼なじみの二人が、一緒に全国大会に出場ですもの」
「うん。詩織は中学の頃にも出たけど、俺は初めてだからな。よろしく頼むよ藤崎先輩!」
 そう言いながら、ペコリと頭を下げる。
「任せておきなさい。後輩の主人くん」
「ははは」
「ふふふ」
『こうやって話してると、いつも楽しいな。あれっ?』
 公のほっぺに、生クリームが付いているのを見つけた。
「公くん、ほっぺにクリームが」
「えっ?」
 公が手で拭おうとしたその時、詩織が顔を近づけてきた。
チュッ
「し、しおりさん?」
「優勝のご褒美よ。ふふふ」
 詩織はそう言って無邪気に笑いながらも、顔を真っ赤にしていた。
 公はそんな詩織を見ていたら、なんだか小さい頃に戻った気分になった。
『いつまでも幼なじみ、というのは嫌だ。でも、まだ俺には』
 好きだと告白する勇気はなかった。

         つづく 

   あとがき

 第29話でした。

 キスをして、キスをされて、なんて羨ましいんだ。
 しかし、公の鈍感さはどこまでが許されるのか?
 まあ書いていて楽しいんですが。

 沙希との動物園デートは、いつか気が向いたら書きます。
 次は、クリスマスです。
 お楽しみに。

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