「My wish・・・」
第32話裏 「家捜し詩織ちゃん」
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詩緒倫さんリクエストによる加筆です。
神社から公の家に帰ってくるところまでは同じなので、その後からのお話になります。
どうぞお楽しみ下さい。
「詩織、着替えないの?」
夕食中も詩織は振り袖を着たまんまだった。
「うん。寝るときまで、公くんに見ていて欲しいから」
「そ、そう」
それはそれで嬉しいのだが。
公は、二人きりでその色っぽさに耐えられるか不安だった。
「公くんのお部屋に行きましょうよ」
夕食後、詩織が提案する。
『きたな!!掃除しといて良かったぜ』
そう思いながらも、にっこり笑って承諾する。
「ああ、いいよ。お菓子とか持っていくから、先に行ってて」
「うん」
公は台所へ、詩織は二階へと向かう。
「詩織の奴、まさか家捜しなんてしないだろうな」
母親に忠告されてベットの下からは移動したが、さすがに天井裏に隠すことは
出来なかった。
「まさか見つからないだろうけど」
しかし、その考えは甘かったことを後で後悔することになる。
「懐かしいなぁ」
詩織は部屋の中を見回す。
いつも窓の外から眺めている公の部屋に、大きくなってから入ったのは初めてのことだ。
勉強机とベットは大きいのに変わっているが、それ以外は子供の頃と大して変わって
いなかった。
「相変わらずマンガが好きなんだ」
本棚にはいろんなマンガが並んでいる。
「そういえば」
いつのことだったろうか、奈津江と話しているとき、こんな話題があった。
「勝馬の奴、またHな本買ってたのよ〜」
「Hな本?」
ここはお昼休みの屋上、一緒にお昼を食べている時、箸を握りしめた奈津江が、
思い出したように怒りをあらわにした。
「そう!なんだっけ?女子高生なんとかって書いてたわ」
「じょし、こうせい?」
箸を止めて目を丸くする。
「うん。これがまたすっごい内容でさぁ」
「奈津江ちゃん、見たの?」
「えっ?ははは、なんとなく興味があってね。んっ?」
詩織がググッと顔を寄せて来る。優等生で通っている詩織だが、何だかんだ
言っても普通の女子高生、そういうものにも人並みの興味がある。
「へ〜、詩織でも興味津々なんだ」
「う、うん。男の子が見るそういう雑誌って、見る機会ないじゃない」
「そりゃそうね」
「で?」
「それはね〜」
グググッ!
「ひ・み・つ」
「えーーー、どうしてよーーー」
「詩織には過激すぎて、とてもとても」
首を左右に振る。
「そんなぁ」
ガックリと肩を落とす。
「あははは。公くんだって絶対持ってるから、いつか見せてもらったら?」
「公くんが?公くんは持ってないと思うなぁ〜」
願望を込めて言うと、奈津江が反論する。
「ぜーーーったい、持ってるわよ!!!!!」
力一杯断言する。
「ないよ!」
「ある!!」
「う〜、そんなことないもん」
プイッと横を向いて拗ねる。
「じゃあ、いつか部屋に入る機会があったら探してみたら?」
「いいわよ!でも、どこを探すの?」
「そういう本は、ベットの下って相場が決まってるのよ」
「そうなんだ〜」
「あははははは」
奈津江が、妙に感心する詩織を見て爆笑する。
「もうっ!なによ。奈津江ちゃんたら」
「あははははは。ごめんごめん」
と言いつつも笑いが止まらなかった。
「まさか持ってないと思うけれど〜」
公を信じながらも、身をかがめてのぞき込む。
しかし、きれいに掃除されたばかりのベットの下には何もなかった。
「やっぱりそうよね」
とその時、公が階段を上がってくる音が聞こえてきた。
トントントントン
「はっ!」
ボフッ!
試合中よりも速いんじゃないかというスピードで、クッションに姿勢正しく正座する。
カチャ
「ん?どうしたの詩織、正座なんかして」
「えっ?ふふふふふふ、何でもないよ、何でも」
「ふ〜ん」
それからは、二人でお喋りをしながらテレビを見たりしていた。
この時公の心の中では、天使と悪魔が戦っていた。
好きな女の子と二人きり。
二人以外には誰もいない自分の部屋。
これほどのシチュエーションがあるだろうか?いやない。
このまま押し倒してしまえという悪魔と、詩織は幼なじみとしての自分を信頼
しているんだという天使が、今まさにせめぎ合っていた。
1時間後、とうとう我慢も限界に近づいてきた。
「くくくく、しょうがない」
なんとかしてこの状態を抜け出したかった公は、台所に行ってワインを持って
きた。ちょっと飲めば寝てしまうだろうと考えたのだ。
逆目に出るかもしれないが、今の状態が続くよりはマシだと思った。
どうかなったら責任はとると覚悟も決めた。
「公くん、私もちょっと飲んでいいかなぁ」
「ん?いいけど」
もう1つグラスを持ってくる。
この時、詩織も迷っていた。
Hな本も気になるが、それよりも、公がなんだか苦しんでいることを察し、
いっそのこと自分の気持ちを告白してしまおうかとも考えた。
そうすれば、晴れて両思いになるのだから、公は苦しまなくてすむ。
しかし、やっぱりそれは出来そうにもなかった。
そんな時に、公がワインを持って来た。
「かんぱ〜い」
お互いに注ぎあって一口飲む。
「美味しい」
「うん。そんなにきつくないな」
公は、喉が熱くなってしまうのが嫌で、ワインはあまり飲まないのだが、これ
は甘めのやつなので大丈夫だった。
そんな軽めのワインだったが、高校生の二人が酒に強いわけもなく、しばらく
すると酔いが回ってきていた。
更に1時間後。
酔いのため理性がなくなりつつある詩織が、いきなりH本の話題を出す。
「ねぇ、公くんは・・・Hな本・・・とか見たりしないの?」
「はぁ?」
何を言い出すのかと目を見開く。
「男の子って、そういうの見たりするんでしょ?」
「えっ?あ〜、え〜、いや〜、う〜ん。そうだなぁ」
目をキョロキョロさせながら唸る。
「じゃあ、公くんは持ってないの?」
「え?も、持ってないよ」
ただでさえワインで暑くなっている体温が、心音と共にさらに上昇する。
「ホントに〜?」
「ないって!!」
勢い余って、ちょっと強く言い放つ。
「ふうん」
「どうしたんだ?いきなり」
「奈津江ちゃんがね、男の子は必ず持ってるって言うのよ。ベットの下に隠すの
が普通なんだって〜」
「えっ?」
公の身体がビクッと反応する。
『やばかった〜』
母親の忠告に感謝しつつ、不覚にも目線が本を隠した方を向いてしまう。
『ん?どこを見てるの?』
酔っているにもかかわらずそれを見逃さなかった詩織は、公の視線の先を見る。
「ちょっと、トイレに行って来るよ」
公は立ち上がり、部屋を出ていく。
「ま・さ・か・ねぇ〜」
さっき公が見た物に近づく。
酔っぱらいの詩織ちゃんは、容赦なくクローゼットの扉を開く。
カチャ
「ん〜と、ん〜と」
ガサガサガサ
山積みとなった雑誌の束を1つ1つ見ていく。
「んっ?」
情報誌の間から出てきた本は、まさにH本だった。
「じょし・だいせい?」
表紙には上半身裸の女性が載っている。
「公くん・・・」
シラフの詩織なら、ここでこの本を破り捨てるかもしれないが、いまは中身に
興味がある。
しかし、ページをめくろうとした瞬間に、またもや公が戻ってくる音がする。
こういう後ろめたいことをしているときは耳が利くもので、身体がすぐに反応する。
ササッ
詩織は扉を閉めて、カーペットの下にH本を滑り込ませる。
「お帰り、公くん」
「???」
詩織は何事もなかったように装う。
つけていたテレビには、隠し芸大会が映し出されていて、公の好きな
「イブニング娘。」が出演していた。
公はグラスを置いて、画面にググッと身を乗り出す。
「公くんはイブニング娘。の誰のファンなの〜?」
『やっぱり持っていたのね〜』
顔を赤くしている詩織は、更に酔いが回っていた。
表面ではそんな会話をしながら、別のことを考えていた。すでに思考回路は
ショートしている。
「ん?一番小さい娘だよ。谷口真理っていうんだ」
テレビから目を離さずに答える。
「ふう〜ん」
『公くん、テレビに釘付けね』
チラッ、チラッとカーペットに視線を移す。
『早く見たいなぁ〜。もう我慢できないや。えいっ!』
詩織は大胆にも本を取り出す。
思考能力が低下しているため、後のことより今の欲求が先のようだ。
見つかった後のことなど考えていない。
パラッ
『ふわっ、裸だわ。しかも全部』
ワインのせいだけではない赤が、詩織の顔を埋めていく。
「まりっぺ〜」
公も少し酔っているようで、ブラウン管に向かって声援を送っている。
そんな公は放って置いて、ワインを飲みながら次々とページをめくっていく。
コクッ、コクッ
空になったグラスに、次々と注いでは飲む。
トクトクトク
パラッ
詩織の目はH本に釘付けだ。
『公くんの好みって、一体どれなんだろ。あの娘とこの本の人も全然違うし』
テレビに映っている谷口真理と見比べる。
ペラッ、ペラッ
『わっ、この人なんかすっごい胸。何cmあるんだろ』
左下のプルフィールが目に止まる。
『93cm〜?重そうね〜。肩凝らないのかしら』
「公くんって、胸が大きい娘が好きなの?」
「いや、そんなことないよ」
酔っているため、詩織からもの凄い質問をされていることに気が付かない。
目はテレビに向いたまま答える。
「ふ〜ん」
パラッ
『わっ、すっごいポーズ』
写真はどんどん過激になっていく。
『男の子って、こういう本が好きなんだぁ〜』
コクッ、コクッ、コクッ
「ふう〜」
ある意味欲求が満たされたことで、ワインもすすむ。
「終わった〜」
『イブニング娘。』の出番が終わったので、公が詩織の方を見る。
すると、横にあったワインのボトルはいつの間にか空になっていた。
「うわ、何杯飲んだんだよ詩織」
詩織の顔は真っ赤に染まっている。
しかも、落とした目線の先にあった物は・・・・・。
「し、し、し、詩織さん。そ、そ、それは・・・、なぁに?」
気が動転していて、何か分かっているのにそんな間抜けな質問をしてしまう。
「え〜、これ〜?あそこの中にあったの〜」
クローゼットを指差す。
「い、いや。あったのって・・・・・」
「公くん持ってないって言ったのに、あるじゃないの〜」
「うっ!」
言葉もない。
「こういう本て初めて見たけど、こんな風になってるのね〜」
「いや〜、そうなんだよ〜って、そうじゃない!」
詩織の手から本を奪い取る。
「あんっ、なにするのよ〜」
腕をバタバタさせて取り返そうとする。
「これは女の子が見る物じゃないよ!」
「じゃあ、公くんならいいわけ?」
「うっ!!」
言葉に詰まって動きが止まったところを、詩織が奪い返す。
「えいっ」
「あっ、こらこら。返せって」
「イヤ!!もっと見るの〜」
駄々っ子のように本を抱える詩織に、公が襲いかかる。
「ほらっ、詩織」
「だめ〜」
ドタバタ、バタバタ
「きゃあ、きゃあ、犯される〜」
「おいおい。あっ!」
じゃれ合っている内に、振り袖の襟がめくれて肩があらわになる。
白い肌が、ワインでほんのり赤くなっている。
「い、色っぽい」
髪をアップにしているので、きれいなうなじも目に入る。
「ねぇ〜、公く〜ん」
「な、なんだ?」
今度は絡みつくような声で、公に詰め寄る。
「この本の女の人と〜、さっきの真理って娘と〜、私と〜、どれが好き〜?」
「なに言ってるんだよ。かなり酔ってるな詩織」
パラリ
『こ、今度は、む、胸元が』
見てはダメだと思いつつも、そっちに目線がいく。
『んん?振り袖を着る時って、ブラジャー付けないんだ』
着物を着るとき、上には肌襦袢と襦袢というもの着るが、ブラは付けない。
ちなみに、下はつけているのでご心配なく。
『なんだか、映画で見た姉御って感じだな』
などと見当違いのことを思い出していると、詩織が公の目線に気が付く。
「私の胸って、小さい?」
「い、いや、そんなことはないと思うけど」
「ホント〜?」
「うんうん」
腕に絡みついて、胸を押しつけてくる。
酔いが回っている詩織は、すでに我を忘れていた。
プヨプヨ、プニプニ
『くーーーーー、これでも我慢しなくちゃダメなのか〜』
自分を信頼している詩織を裏切る訳にはいかないと、頭を振っていやらしい
感情を振り払おうとする。
「じゃあ、私のこと好き〜?」
「ウッ!!い、いやそれは。まずい、頭を振ったら気持ち悪くなってきた」
「何で答えてくれないの〜?」
ユッサ、ユッサ
腕ごと身体を激しく揺さぶられ、更に酔いに拍車がかかる。
「やめろ、詩織〜」
「ねぇ、なんでなんで〜」
遂に詩織の顔が目の前にくる。可愛い唇からは甘い吐息が感じられた。
「勘弁してくれ〜」
腕を振りほどいて立ち上がり、ベットの方へと逃げる。
「こら〜、逃げるな〜」
バッ!!
「うわーーー」
今度は跳び上がり、優美を思わせるフライングボディアタックをかける。
ドサッ!!
二人もろともベットに倒れ、詩織の全体重がかかる。
「ぐえっ!お、重い。し、しおり」
「クー、クー」
「寝てるよ」
顔を上げると、そこには気持ちよさそうに寝息を立てる詩織の顔があった。
「まったく、このお姫様は。よいしょっと」
公は下敷き状態から這い出して、詩織をきちんと寝かせる。
「さて、どうするかな」
詩織の隣に横たわりながら、だいぶ着崩れしている振り袖を見る。
「これ着たまんまだとまずいだろうなぁ。でも脱がすわけにもいかないし」
ブラをしていないので、脱がすとなると・・・・・・。
「・・・・・、もういいや」
などと考えていると、なんだか眠たくなってきた。
色んなことがありすぎて、もう何もやりたくない状態だ。
「このまま寝る!!」
振り袖の襟だけはきちんと正して、そのまま布団を被る。
「おやすみ」
目を閉じると、何かを考える間もなく眠りについた。
並んで寝るのは、小学校以来の二人だった。
「まぶしい」
カーテンの隙間から、詩織の目に日の光が射し込む。
「頭痛い」
起きあがると頭がガンガンした。
「ここはどこ?」
寝ぼけたまま周りを見るが、どこにいるのか気付くのにも時間がかかった。
数分後、隣に誰かが寝ているのに気が付く。
「な、なんで公くんが寝てるの〜?た、確か昨日はワインを飲んで・・・・・、
それからどうしたの私。ま、まさか!!」
一気に目が覚めた詩織は、布団を跳ね上げて自分の格好を確認する。
「着たまんまだわ」
振り袖を着たままの所を見ると、二人の間には何もなかったようだ。
「良かった〜」
いくら公でも、初めてが酔った勢いというのは絶対イヤだ。
「いったい、何があったの?」
「んんっ」
昨夜のことを何とか思い出そうとしていると、公が目を覚ました。
「お、おはよう、公くん・・・・・」
事態も把握できないまま、とりあえず朝の挨拶をする。
「おはよう〜」
トロンとした目でしばらく詩織の顔を見ていると、突然ハッとする。
「し、し、詩織」
「公くん、何があったのか、覚えてる?」
真顔で問う。
「えっ?・・・・・・さ、さあ」
『詩織、覚えてないのか?ラッキーーーーー』
本当のことを話すと面倒なことになるので、黙っていることにした。
「覚えてないの?」
「ああ」
頭を振って誤魔化す。
「そう。私もなのよ」
「わあっ!」
「な、なに?」
公が、床に転がっているH本に気が付いて跳ね起きる。
「お、おれ、朝ご飯の用意してくるから」
詩織に見えないように、それをかっさらいながら部屋を出ていく。
「???」
「あ、あぶねーーー」
階段を降りながら安堵の溜息を吐く。
そして。
「それにしても・・・・・」
好きな女の子と過ごした一夜。
優等生で通っている幼なじみの意外な一面を見ることが出来た。
何回かしたデート、そして昨夜、中学生の頃の印象からは、
段々と遠ざかっているのを感じていた。
つづく
あとがき
詩緒倫さんの書き込みから、新たに書いてみました。
詩緒倫さんどうでした?
もう暴走しまくりでしたね。
こんな詩織ちゃんはいかがでしょうか。
本編はもうすぐ3年生へと突入します。
これからの怒濤の展開にご期待下さい。
それでは。