「My wish・・・」
第42話 「公の決断」
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外は昨日からの雨が降り続き、人の心さえも濡らして流れていく。
ただ人によっては、気分が滅入る雨なのか、落ち込んだ気持ちを押し流す雨なのか。
それは本人でないと分からない。
詩織にとっては後者であるように、晴れたとき元気な詩織に戻りますように。
「お前、それでいいのかよ!!」
ガンッ
公は好雄に胸ぐらを掴まれ、ドアへと叩きつけられる。
「ああ」
ここは学校の屋上へと続くドアの前。
昨日と同じ昼休み、公は好雄に問いつめられていた。
「くそっ!朝から藤崎さんの様子がおかしいと思ったら。そんなことが」
朝の挨拶をしたときの詩織の表情を思い出して、顔をしかめる。
表面はいつもの通りだったが、好雄はいつもと違うことを見抜いた。
「俺があの時、追いかけていれば・・・・・」
掴んだ手を離して呟く。
「好雄。例えお前があの場にいたとしても、結果は同じだったよ」
公は、首を左右に振って否定する。
「い、いや、しかし」
「ありがとう、好雄。心配してくれてんだな」
「藤崎さんだけな」
横を向いて、照れながら言い放つ。
「ははは、そういうことにしとくよ」
「ふんっ」
「まあ、これからどうなるのかは分からないけど。俺なりによく考えるから。
何かあったら、お前にも相談するよ」
「・・・・・・・ああ、分かった」
「すまん」
好雄自身は不本意であったが、これは当人同士の問題であるから、これ以上は
干渉することが出来なかった。
「公園で自主トレね〜。それにしても、昨日の今日でこれだもんな。お前も波瀾万丈な
青春を送ってるよな」
「ははは、そうだな」
「でも、虹野さんのことはちゃんとしとけよ」
「ああ、分かってる」
あの時は突然告白され、しかも詩織のことがあったので何も言えなかったが、
すでに公の心は決まっていた。
「そうだ公、お前に言っておくことがある」
「なんだ?」
固い決心をしているところに、好雄が口を挟む。
「お前と藤崎さんがこういう風になったことで、気がかりが一つあるんだ」
「気がかり?」
「ああ。二人がいつもと違う雰囲気を出すと、動き出す奴がいるんだ。だぶん」
「動き出す?誰が?」
「優美だよ」
溜息混じりに、妹の名前を出す。
「優美ちゃん?優美ちゃんがどうかしたのか?」
「鈍感なお前は気が付いてないだろうが、優美はお前のことが好きなんだ」
「は?」
間抜けな顔で好雄を見る。
「そ、そうだったのか?」
「これだもんなぁ〜。まあ、今のお前はそれどころじゃないし、第一、優美には
そういう感情を持ってないだろう、お前は」
「そ、そうだな。好雄には悪いけど、妹みたいな存在だからな」
優美の顔を思い浮かべてみるが、そうとしか言いようがない。
「いいって、いいって。分かってたことだし、女は失恋も経験しないと、
良い女にならないからな」
「そ、そんなもんか?」
「そんなもんだ。じゃあ、戻るか」
「あ、ああ」
教室に戻る頃には険悪な雰囲気はなくなり、いつもの二人に戻っていた。
「それは詩織が悪いわね」
「うん」
同じ頃、部室でも昨日と同じメンバーが集まっていた。
そこでお弁当をつつきながら、詩織が昨日の話を二人にすると、それを聞いた
奈津江は半ば呆れていた。
「その盗み聞きがなかったらね〜」
「そうそう」
恵もうなづく。
「うん・・・・・」
詩織は昨日の夜、枕を濡らして泣きながらも、自分が公にしたことをよく考えた。
公の気持ちを知りながら黙っていたことは、やはり自分が悪い。
公の言うとおり、なぜそんなに伝説にこだわってしまったのか。
なぜ、すぐにでも告白しなかったのか。
告白していれば、こんな事にはならなかったのに。
そんな後悔の念が襲ってきて、昨夜はなかなか寝付けなかった。
詩織は下を向き、どん底に堕ちていく。
「ああもう。いつまでも落ち込んでるんじゃないわよ。主人くんには、嫌いに
なったわけじゃないって、言われたんでしょう」
「そ、そうだけど」
「あとは、向こうが許してくれるのを待つしかないでしょ」
「うん・・・・・・」
親友2人に話すことでだいぶ落ち着いた詩織だったが、この時すでに、
二人には言えない思いが芽生え始めていた。
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この日の部活では、鬼気迫る公の姿があった。
インターハイ前の大事な練習とはいえ、必要以上に燃えていた。
「なんだなんだ、これくらい止めてみろ」
まるで公式戦のような勢いで、紅白戦相手のディフェンスをドリブルで抜いていくと、
一端木本に出しリターンパスをもらう。
ガンッ!
公のダンクが決まる。
「ナイシュー」
「木本!今のパスはもっと速くても良いぞ」
「お、おう。わかった」
みんなは見事な連係プレーだと思ったのに、公は木本にも注文を付ける。
ピピーーーーー!
「時間です。5分休憩でーーーす」
女子マネージャーの声がすると、みんなは思い思いの格好で休むが、公だけは
黙々と3ポイントの練習をしていた。
その変わり様は、男子部員だけでなく女子部員の間からも、何かと疑問を生んだ。
今までだって手を抜いていたわけではないのだが、更にバスケに打ち込む姿は、
どう映っているのだろうか。
「主人、少しは休め!!」
「コーチ、良いんです。疲れているときだからこそ、やらないと」
「それは分かるが、疲れを残すと故障の原因になるぞ」
「大丈夫です。自分の身体は自分が良く分かってますから」
「そ、そうか」
コーチの言葉を振り切って続ける。
「木本さん。なんか公先輩、恐いくらいですよ」
石崎が木本に寄ってくる。
「そうだな。なにかあったのか?あいつ」
ここまで熱中するその理由を推測出来る者は、この場に三人しかいない。
「凄いわね」
「うん」
奈津江と恵が公を見て呟く。
「公くん・・・・・」
詩織はなにも言うことが出来ず、ただ見守ることしかできなかった。
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部活が終わりいったん家へと帰ってきた公は、部屋に荷物を置くとすぐに下へと降りた。
沙希を待たせないために、急いで夕飯を済ませるためだ。
「母さん、飯は〜?」
テーブルの上に自分の分がないことに気が付き、椅子に座りながら
前に座っている母親へと抗議する。
「公、そこに座りなさい」
椅子を指差して、怒ったように言う。
「もう座ってるよ。飯は?」
「黙って聞きなさい」
「なんだよ〜」
「あのね、公。あんた、詩織ちゃんと何かあったの?」
公の目を真っ直ぐに見て、心を見透かすように問う。
「えっ?い、いや何も」
思わず目を逸らす癖が出てしまう。
「嘘おっしゃい。昼間に藤崎さんから聞いたんだけど、試合に負けて悩んでいた
詩織ちゃんが、お前と遊びに行って元気になったかと思ったら、
昨日の夜にどこかへ出掛けた後に、また落ち込んで泣いてたって言ってたわよ」
「それのどこが俺のせいなんだよ」
そこまで言われても、まだ抵抗を試みる。
「往生際が悪いわね。正直に話さないと、ずっとご飯抜きよ」
「なっ!それが母親の言葉かよ?」
「当然でしょ。詩織ちゃんを悲しませるようなことはするなって、
いつも言ってるでしょう?どうなの?」
「ううう」
観念した公は、昨日までのいきさつを簡潔に話した。
・
・
・
・
・
「そう、そんなことが。可愛い女の子二人から告白されるなんて、
生意気にあんたもやるわね」
「ははは」
「じゃあ、これからどうするのか決めたの?」
再び真面目な顔になって、公の顔を見る。
「ああ、決めた。それを沙希ちゃんに話してから、詩織にも伝えようと思う」
「そう。わかったわ」
成長した男の顔になった息子を見て満足した母親は、隠してあった夕飯を用意する。
「ところで、虹野さんにはいつ話すの?」
「いま、公園に行って話すよ」
サラッと言う息子に驚いた母親は、動かす手を早める。
「馬鹿!!それを早く言いなさい。ほらっ、さっさと食べる!!」
「ったく。だから急いでたんだよ」
それから10分で平らげた公は、急いで玄関へと向かう。
「行って来ます」
ドアを開ける公に、母の声が飛ぶ。
「後でちゃんと報告するんですよ〜」
「な、なにを」
コケそうになる息子を見送った母は、首を傾げながら台所へと戻っていく。
「それにしても、詩織ちゃんは何で公が自主トレしてるって、わかったのかしら?」
「先に着いて良かった」
ゴール近くのベンチに座った公は、雨上がりの何となく澄んだ夜風が吹く中
沙希を待っていた。
「沙希ちゃんに、ハッキリ言わないと」
昨日の夜、沙希と過ごした今までの事を思い出し、そして結論を出した。
いまの正直な気持ちを。
「公くん」
暗闇から沙希が姿を現した。
ゆっくりと、公が待つベンチへと歩いてくる。
昨日から緊張しっぱなしの沙希は、ドキドキしながらここまで来た。
そして公の隣に腰を下ろすと、重い沈黙が流れた。
「さ、沙希ちゃん」
「は、はい」
ゴクリ
沙希はピンッと背筋を伸ばし、固唾を飲んで公の言葉を待つ。
「おれは、詩織のことが好きなんだ」
「・・・・・・・、うん」
分かっていた事とはいえ、その言葉は沙希の胸にグサリと突き刺さった。
『やっぱり、そうだったんだ・・・・・・・・』
身体が微かに震えだす。
「じゃ、じゃあ。藤崎さんと、付き合うことに・・・・・なったの?」
涙が出そうになるのをこらえながら、しっかりと公を見て問う。
「い、いや。いろいろあって、そうはならなかった。詳しくは言えないけど」
「ええっ?そ、そうなの?」
意外な答えが返ってきたので、つい立ち上がって大声を出してしまう。
「ああ」
「じゃ、じゃあ。私の事はどう思って、・・・・・いるの?」
立ったまま胸に手を当て、心臓が爆発しそうな思いで切り出す。
「初めは、こんな俺を応援してくれて、自主トレまで付き合ってくれて、
なんでこの女の子はこんなに一生懸命なんだって思ってた」
「うん」
「それがいつの頃からか、俺が好きな娘は詩織のはずなのに、どんどん沙希ちゃんが
俺の心に入ってきていた。沙希ちゃんに惹かれていたんだと思う。きっと」
「ほ、本当に?」
「うん」
「嬉しい」
自分に好意を持っていてくれたことに、嬉しさがこみ上げてくる。
両手を組み目を閉じると、昨日からの緊張が解け、沙希の顔に笑顔が戻る。
「じゃあ、私たち・・・・・」
「でもね、沙希ちゃん」
「えっ?」
期待に胸を膨らませる沙希に、公が今の心境を語り出す。
その真剣な表情を見た沙希は、再び座り公の話に耳を傾けた。
「確かに俺は、君のことを好きになっているのかもしれない。でも、いろいろあったけど、
詩織の事も好きなのは変わりないんだ」
「藤崎さんと私、両方好き?」
「うん。だから、詩織とこういう風になったからって、すぐに沙希ちゃんと
付き合うっていうのは違うと思うんだ」
「わ、わたしは、それでも・・・・」
「いや、例え詩織のことが嫌いになっていたとしても違うと思う。沙希ちゃんが
逆の立場だったら、嫌だろ?」
「う〜ん。そう言われると、そうかも」
「だろう?それと、もうここには来ないで欲しい。こんな思いのまま、毎日沙希ちゃんと
顔を合わせるのは、俺も辛いから」
「そ、そんな・・・・・」
「インターハイが終わるまではバスケに集中するつもりだ。こんな精神状態のままだと、
仲間に迷惑がかかるから」
「・・・・・・・」
沙希は、黙ったまま下を向いてしまう。
「ごめん」
ガックリとうなだれる沙希に、公は頭を下げて謝る。
「でも、これが今の俺の正直な気持ちなんだ。もし怒ったのなら、殴ってくれてもいい」
顔を上げて、沙希の反応を待つ。
・
・
・
・
・
何分かの沈黙の後、下を向いたままやっと沙希が口を開いた。
「で、でも。公くんは、私のことが嫌いになった訳じゃないんだよね?」
「もちろんだよ」
それを聞いて安心した沙希の目に、再び涙がこみ上げてくる。
「じゃ、じゃあ。これから先、私たちが恋人同士になる可能性もあるんだよね?」
「そ、それは。詩織とのことも、どうなるか分からないから」
沙希は顔を上げて、自分が好きになった男性の顔を見る。
そして、自分の想いを確認する。
『私は、この人が好きなんだ』
スッ!!
決心を固めた沙希は、立ち上がって一歩前に出る。
そして公に背中を見せたまま、涙をこらえて思いを伝える。
「・・・・・わかったわ。私、待ってるから。どうなるのか不安でいっぱいだけど、
私、待ってるから」
可能性が0%でないのなら、まだ大丈夫。
我慢できる。
「えっ?ホントにそれでいいの?どうなるのか分からないのに?」
間違いなく、怒った沙希に愛想を尽かされて殴られると思っていた公は、
目を見開いて小さな後ろ姿を見る。
その両肩は、微かに震えていた。
「うん、いいの!!インターハイが終わるまで、でしょ?」
「う、うん。そうだけど」
「大丈夫!!」
振り返る動作に合わせてスカートの裾が舞い上がり、公の方へ向き直る。
「わたし、待ってるよ」
そして、手を後ろで組んで一歩ずつ離れていく。
ザッ
「沙希ちゃん」
ザッ
「待って・・・・・るから」
もう一度公の顔を見て、涙をこらえきれなくなった沙希は、それを見せまいと
顔を手で覆って後ろを向く。
「!」
その瞬間、公は見た。
沙希の目から零れる光るものを。
「さよなら」
「あっ!沙希ちゃん」
そう言い残して走り出した沙希を、立ち上がって一歩を踏み出すものの、
追いかけることは出来なかった。
ただ、その後ろ姿を見ながら呟くだけだ。
「ごめん」
いまの公には、それしか言葉に出来なかった。
その頃詩織は、家の前で公が帰ってくるのを待っていた。
「もうそろそろかな?」
腕時計を見ると、8時半を回っていた。
「ふふふ。それにしても、見事に当たってたわね」
先程部屋で、公と行った初詣で引いたおみくじをふと思い出した詩織は、
引き出しからくじを取り出し、もう一度開いてみたのだ。
【どんな山谷でも、恐れず一歩を進めなければ通り抜けられぬ。
勇猛努力、堅実な一日を励むことに依つてのみ、
どんな環境も打開することが出来る】
【交際:相手を頼りすぎて背かれる】
【願望:徐々に障害はなくなり必ず叶ふ】
「いまの状況にピッタリだわ。恐れず一歩を進むか・・・・・」
何となく納得した詩織は、これからの一日一日を大事に過ごそうと思った。
「それは良いとして、どうなったのかなぁ。虹野さんと付き合ったりしないよね」
そわそわしながら、公園でどんな話がされているのか思いを巡らす。
「あっ、帰ってきた」
暗がりの向こうから、トボトボと歩いて来る公が見えた。
「お帰りなさい、公くん」
「詩織?なんでここに」
公は、思いも寄らないことに驚く。
「早乙女くんに、待っていろって言われたの」
「好雄が?」
「ええ」
それは、今日の放課後のこと。
「そろそろ出てくるかな」
公と沙希がどうなったのかは、詩織にも知る権利があると思った好雄は、
これだけは干渉した方がいいと判断したのだ。
というわけで、部活が終わって詩織が出てくるのを待っていた。
「あっ、来た来た。藤崎さん」
「早乙女くん。どうしたの?」
「ちょっと来て」
一緒に出てきた奈津江と恵には聞かせたくないので、詩織を手招きする。
「私たちには内緒な訳ね。仕方ないなぁ〜、ほらっ」
奈津江が、詩織の背中を押す。
「う、うん。待っててね」
二人とちょっと離れたところで、二人きりになる。
「昨日のことは、公から聞いたよ」
「そ、そう」
好雄にも自分の愚かさを知られて、ションボリしてしまう。
「藤崎さんも、虹野さんの気持ちは薄々気が付いていると思うけど」
「え?ええ」
「昨日、藤崎さんが走り去った後に、公の奴、虹野さんに告白されたんだ」
「えっ?」
顔を上げて好雄の顔を見ると、一つ頷いて続ける。
「今日の夜、公は虹野さんとの決着をつけるんだ」
「決着?」
それが何を意味するのかは、詩織にも分かった。
「うん。藤崎さんとは一端距離を置くらしいけど、虹野さんとはどうなるのか。
俺は藤崎さんにも知る権利があると思うんだ」
「そ、そうかしら」
「ああ、絶対にある」
そう断言されると、そういう気もしてくる。
「だから今日の夜、公が帰ってくるのを待って聞いた方が良いよ」
「うん、わかった。ありがとう」
詩織の唇に、微かに笑みが浮かぶ。
「じゃあ」
朝と比べると、少しは元気になっていた詩織を見て満足した好雄は、
手を挙げて帰っていった。
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ということがあったのだ。
「好雄の奴、余計なことを・・・・・」
「ご、ごめんなさい。で、でも、やっぱり私も知りたいから」
頭を下げる詩織に、公は優しく言う。
「詩織が謝ることないよ。俺も、ちゃんと詩織には伝えるつもりだったし、
沙希ちゃんとのこと」
「ホント?」
「ああ」
公は門にもたれ掛かり、さっき公園で沙希に話したことをそのまま聞かせた。
詩織と沙希、今はどちらも選べないこと。
自主トレに、沙希はもう来ないこと。
大会が終わるまでバスケに集中すること。
それが終わったら答えを出すこと。
沙希には、待っていると言われたこと。
「ずるい奴と思うかもしれないけれど、これが正直な気持ちなんだ」
「・・・・・・・、そう」
哀しそうな目で話す公を見て、詩織は辛かった。
好きな人を、こんなにも苦しめてしまったことに。
『わたしの気持ちは・・・・・』
昨日から芽生え始めた気持ち。
それは、例え公が自分を選んでくれたとしても、恋人として付き合っていけるのか
分からないということ。
こんな自分では、公に相応しくないんじゃないのか?
そういう思いと、やっぱり公が好きな気持ちが同居している。
「私も、待ってる」
その数日間に、公のことを考えてみようと思う。
自分にとってどんな存在なのか。
「そうか、わかった」
「うん」
二人は、雲が流れ去って、いまは晴れている夜空を見上げる。
そこには、微かに輝く星が広がっていた。
「綺麗だね」
「ああ」
この時、詩織の顔に笑顔が戻った。
次の日の夜。
「今日からは、また一人だな。ん?」
ドン、ドン、ドン
公園へと入りゴールへと歩いていくと、ボールをつく音が聞こえてきた。
「まさか、沙希ちゃんじゃないよな?」
沙希には、もう来ないように言って置いたはずだ。
「誰なんだ?」
そう思いながら人影を確認したとき、その影がシュートを放った。
ザシュ
見事に決まった。
「上手い」
沙希があんなシュートを打てるはずがない。
緊張した面もちで、公はその影へと近付いていった。
つづく
あとがき
第42話お送りしました。
今回も公くんは格好良かったですね〜。
ヤケで、沙希ちゃんと付き合うというのもあったんですが、
それでは、あまりにも沙希ちゃんが可哀想だと思いやめました。
これにより、実に男らしい公になってしまいました。
大会を理由に、バスケに逃避するというズルイ面もでましたが、
そこは、すぐには決断できなかったということで。
そして詩織も、今までの浮かれた恋から、ちゃんと相手の事を考える
恋愛へと変化しつつあります。
最後に出てきた影は、お察しの通りあの人です。
えっ、分からないって?
次回43話は、その影の視点から書きたいと思います。
そこで、決勝の日にちょっと遡ります。
では、これからもお付き合い下さい。