「My wish・・・」

                    第5話 「期末テスト」

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 7月も中旬に入り一層暑くなり、陽も長くなった。
 もうすぐ夏休みだが、その前に期末テストがある。
 きらめき高校は文武両道を掲げているため、運動部に在籍している者には、
 赤点を3つ以上取ると退部という厳しい校則がある。だからこの時期になると、
 勉強が苦手なものは成績が良い友達に頭を下げて、ノートをコピーしたりで大変なのだ。
 そして、それは公も例外ではない筈なのだが・・・。

 公は、今日も公園で自主トレをしていた。
「ラスト!」
 バサッ。
 今日最後のシュートがフープをくぐる。 
「ふう、終わった終わった。」
 タオルで汗を拭う。
 いつものメニューをこなしゴミ箱を元の場所に戻して、帰る支度を始める。

 そこから少し離れたところに、今日も沙希が木の陰から見つめていた。
「今日もお疲れさま、公くん。」
 公がここで自主トレを始めて2週間経った。沙希も時々来ていたが、未だに
 声を掛けることが出来ないでいる。
「もうすぐ期末テストなのに、公くん大丈夫なのかな〜。」
 と、自分のことを忘れて、公の心配をしていた。

 帰宅した公は机に向かっていた。
 公の成績はとても良いとは言えない。きらめき高校に入学できたのも、
 詩織と同じ高校に入るためにやった中学3年9月からの猛勉強のお陰なのだ。
 入学してからは再び勉強嫌いに戻ったため、授業もあまり聞いていない。
 赤点も覚悟しなければならない学力である。だから、今日からはテスト勉強を
 始めようと、こうして机についている。
 しかし最近の公は、自主トレの疲れからか家に帰るとすぐに寝てしまうため、
 体にその習慣が染みついてきていた。

「う〜ん。眠い。」
 いつもはここで寝ているためか、睡魔が公を襲っている。
 あまりに眠たい公は、勉強しようか寝てしまおうか考えた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 数秒の葛藤末に、
「まっ、なんとかなるだろ。寝る!!」
 と言ってベットに入る。そして、ものの1分で眠りにつく。

 隣の詩織も机に向かっていた。詩織はもちろん成績優秀であり、赤点の心配
 などありはしない。毎日予習復習しているのだから、その積み重ねがものをいう。
カチャ。
 一息つき、レモンティーを口に運ぶ。
「公くん。」
 詩織は公のことを考えていた。カーテンを開けて公の部屋の窓を見てみる。
 中学時代の公の成績は詩織も知っている。3年の1学期までの成績では、
 きらめき高校に入ることなど絶対不可能だったはずである。そんな公がたった半年の
 猛勉強で合格ラインまで学力を上げたことは奇跡としか言いようがない。
「公くんはやれば出来るんだから。小学校の頃は何でも私より覚えるのが早かったし。」
 算数のかけ算や社会の年表、漢字など何でもクラスの誰よりも早く出来た。
「それが中学に入ってから勉強嫌いになってしまったのよね。」
 しかし、入試までのあの頑張りを見ている詩織は、公が再び勉強嫌いに戻っている
 ことはまだ知らない。
 とその時、公の部屋の灯りが消えるのが見えた。
「あっ。寝ちゃったのかな。」
 時計を見るとまだ10時である。
「大丈夫なのかな。」
 とはいえ、まさか起こして勉強しろなんて言えるわけでもないので、
 自分の勉強に集中することにした。

 テストが始まった。
 ほとんどテスト勉強をしていない公は、わからないとこだらけであった。一日も休まずに
 自主トレをして、すぐに寝ていたのでは当然である。
 かろうじて、授業中にやった覚えがあるところを半分程度埋めていく。
「赤点3つ取らなきゃいいのさ。」
 と、半分開き直っていた。

 5日後やっとテストが終わった。あと一週間でいよいよ夏休みに入る。
「よう、どうだった公。」
 机に突っ伏していた公は、憂鬱な目で好雄を見上げる。
「聞くまでもないか。」
 黙ってうなずく。
「そうだ、公。おまえ夏休み中暇だろ。」
「ん?まあ、部活以外の日は暇だけど。それがどうかしたか。」
 特に家族でどこにも行かないし、独り者の公は即答した。
「どこか遊びに行こうぜ。」
「何?おまえと二人でか。」
 露骨に嫌そうな顔をする。
「そんなわけないだろ。そこら辺は任せておけって。」
「ふ〜ん。わかったよ。いつでもいいぜ。」
「そっか、じゃあ予定が決まったら連絡するから。じゃあな。」
「ああ。」
 好雄は、手を振りつつ教室を出ていった。

 そして一週間後。
 テストが全部帰ってきた。
 公は、辛うじて赤点は2つだった。
「ふう、退部しなくてすんだ。」
 ホッと一安心する。
 きらめき高校では、全生徒の成績が張り出される。公には関係ないことだが、 
 一応掲示板を見に行ってみる。
「え〜と、詩織はと。おっ8番か。やっぱり詩織はすごいな。」
 案の定、詩織の名前はトップクラスにあった。次に自分の名前を探すために、
 視線を最後尾に移す。全生徒が10クラスの350人もいるのだから上から見ていくのは
 時間の無駄というものだ。
「おっ、あった。え〜と、308番か。」
 まあ、予想通りの位置だ。好雄も310番にいた。
 そのまま左に視線を動かすと虹野の名前もあった。
「虹野さんは208番か。」
 とその時、詩織の姿を見つけたので声をかけた。
「凄いじゃないか詩織。」
「公くん。たまたまヤマが当たっただけよ。」
 ちょっと照れながらそう言う。
「公くんはどうだったの?」
「俺か?俺はダメさ。308番だよ。赤点も2つあるしな。」
「えっ、そうなの?」
 勉強嫌いが直ったものだとばかり思っていたので、驚いてしまう。
「なんだ詩織。もっと上だと思ったのか?俺なんてこんなもんだよ。」
「そんなことない!!公くんはやれば出来るんだから。」
 詩織は、少し声を大きくして言う。びっくりした公は、
「何言ってんだよ。こんなもんだって。」
 反対に冷静に呟く。
「そんなことないよ。そんなことない。」
 そう言って振り返り、教室の方へ走っていった。
「詩織。」
 そんな詩織を、公はただ見ていることしかできなかった。

 1学期最終日、今日は半日で終わる上に部活が休みである。
 終業式が終わり公は家に帰ってきた。
「ただいま〜。」
 靴を脱いで、一気に2階に上がろうとすると、母親が居間から出てきた。
「おかえり公。はい。」
 と言って母親は右手を差し出し、ニコッと笑う。
「えっ、何?」
 一応とぼけてあさっての方を見るが、
「はいはい。早く出す。」
 と一蹴された。
「はぁ〜。はい。」
 カバンから通知表を出して、ため息混じりに差し出す。
「どれどれ?ふ〜ん。体育と音楽だけか、ずば抜けてるのは。」
「ああ。」
 お説教されるのかなと下を向いている。
「こんなことだろうと思ってたわよ。まっ、つぎ頑張りなさい。」
 と言って、居間に戻ろうとする。
「それだけ?」
「なに、お説教して欲しいの?」
 立ち止まって、振り返る。
「イヤ、そう言う訳じゃないけど。」
「まあ、一言言わせてもらうと。」
 ゴクッ。
「詩織ちゃんに相応しい男になるんなら、勉強もがんばりなさいってことよ。」 
「うっ。」
 その言葉が一番効いた。

 昼食を摂り、2階に上がった公は、先日掲示板の前で詩織に言われた言葉を思い出す。
『公くんは、やれば出来るんだから。』
 詩織はそう言っていた。
「詩織の奴。俺に期待してくれてるのかな?」
 そんな甘い考えが頭をよぎる。
「まっどっちにしても、勉強もやらないとな。」
 しかし、バスケットと勉強の両立とは、なかなかの難題だ。
「詩織に相応しい男になって告白するんだ。悩んでても仕方ない。自主トレに行こう。」
 頭を切り換えて、準備を始めた。
   
                 つづく


         あ と が き

         今回からあとがきを書いてみることにしました。
         第5話はいかがだったでしょうか。
         「My wish・・・」はニフティの方でも発表しているのですが、
         ここは、一話遅れてアップしています。
         直しがきくように。(^_^;)

         無事にテストをクリアした公ですが、
         勉強も大切だと考え始めました。
         まだまだバスケのことで手一杯ですけど。

         次は合宿前夜のお話です。お楽しみに。



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