「My wish・・・」
第6話 「合宿前夜」
第5話 目次へ戻る 第7話
夏休みに入って2週間が経った。明日から1週間バスケ部の合宿がある。
まあ合宿と言っても学校で行うのだから、そんなに大層な準備も要らない。
ただ残念なのは、女子がいないということだ。
「詩織は明日からインターハイか。」
予選で敗退した男子は合宿、優勝した女子はインターハイに出発する。
全国の高校運動部の目標であるインターハイに、詩織がスタメンではないにしろ出場
するのである。
「詩織はどんどん俺の先に行ってしまうなぁ。」
公は、詩織が遠くへ行ってしまう感じがした。
「まだ彼氏としては言えないけど、幼なじみとして《がんばれ》の一言だけでも伝えよう。」
先日の掲示板前の一件以来、詩織とは話をしていない。
『ついでに謝ろう。』
そう思い立ち上がった公は、カーテンを開けて詩織の部屋の窓を見る。
灯りが付いている。詩織も明日の準備をしているのだろう。
公は窓を開けて詩織に呼びかけてみる。
「お〜い、しおり〜。」
詩織は明日の準備をしていた。いよいよ明日からインターハイが始まる。
こんなに早く出場することが出来るなんて思わなかったからすごく緊張している。
「公くんが応援に来てくれればなぁ。」
しかし、公は応援に来ることが出来ない。男子は合宿があるからだ。
それに・・・・・。
「この間のこと謝らないと。」
あれから公とは話をしていない。
「あ〜あ、公くんと一緒にいたかったなぁ。男子の先輩がもう少し頑張ってくれれば
良かったのに。謝る機会もあっただろうし。」
などと考えてしまう。
「それに、そうすれば公くんと一緒にお泊まりもできたのに。」
家がとなり同士とはいえ、やはり1つ屋根の下というのは違う。
『そして、そこで公くんと二人きりになって・・・・・・・・・・・・。』
ぽっ、両手を頬に当て二人きりのシーンを想像して、
「公。」
などと顔を赤らめているとき。
「お〜い、しおり〜。」
と公の声がした。
「公くん?はっ!!何を想像しているのわたしったら。いやん。」
顔をブンブン左右に振りながら、想像を振り払う。
「しおり〜。」
また声が聞こえた。
「は〜い。」
詩織は窓を開ける。
「公くん。何?」
『こうして窓越しにお話をするのは久しぶりだな。なんかドキドキしちゃう。』
「あ、明日の準備してたの詩織?」
「う、うん。そうだよ。公くんも合宿の準備?」
公は、すっかり準備を終えたバッグを指さした。
「ああ。今終わったところ。」
ギクシャクしてしまう二人。
少し沈黙が流れ、公が切り出す。
「なあ詩織。この前はごめんな。なんか詩織をガッカリさせたみたいで。」
鼻の頭をかきながら謝る。
「ううん。私も言い過ぎたし。」
公から謝ってくれて詩織は嬉しかった。
「そっか、ありがとう。」
公は心底安心した。
「それと、いよいよだなインターハイ。がんばってこいよ。それと、無理して怪我するなよ。」
暖かい微笑みで言う。
「えっ。うんっ!!ありがとう」
公の優しい言葉。普段はあまり話さなくなったが、詩織に特別なことがある時は必ず
言ってくれる。そして、その時の公の顔は詩織を安心させてくる。
「公くんも合宿がんばってね。」
「ああ。がんばるよ。それだけ言いたかったんだ。じゃあ、お休み詩織」
「ええ。お休みなさい公くん。」
カーテンを閉める前に、お互いに手を振る。
「公くん。ありがとう。」
公の言葉は何にも増して、詩織の心に響く。
公の優しさは変わっていない。これは私だけのものであって欲しいと思う。
詩織は、後少しの準備を終えて、公の優しさを感じながらベットにつく。
一方公は、
「ふう。許してくれて良かった。それに『合宿がんばってね。』か。」
詩織の応援は何よりも効き目がある。子供の頃はよく詩織の言葉に励まされていた。
「よしっ!!がんばるぞ〜。」
と気合いを入れてから眠りについた。
こうして、公の合宿前夜・詩織のインターハイ前夜が更けていった。
つづく
あとがき
第6話いかがだったでしょうか。
今回はちょっと短めです。
公の詩織への優しさが少しは出てたでしょうか。
次からは合宿がスタートします。
とは言っても、バスケの描写は少な目にします。
あれを考えるのは疲れるんですよ、ホント。
すでに言い訳したりして。(^_^;)
沙希ちゃんとの間に進展はあるのか?
では、次回をお楽しみに。