「My wish」

 沙希編第8話「旅立ち、そして……」

                                                             第7話    目次へ戻る

 三月に入ると、あっという間に卒業式の日が来た。長いようで短かった高校生活も、明日で終わる。
 公は三年間お世話になった学校の体育館、レイに紹介してもらった体育館、そして公園と順番に足を運んだ。学校の体育館は、
 明日の準備が始まっていて出来なかったが、あとの二つは感謝の気持ちを込めて掃除をした。
 体育館を終えて公園を竹ぼうきで掃いていると、沙希がやってきた。
「沙希、どうしたんだ」
「お家に行ったら、掃除に行って来るって言って出掛けたって聞いたから、ここかなと思って。手伝うよ」
「うん。お願いするよ」
 沙希は雑巾でベンチを拭き、ゴールに取りかかろうとした。
「だいぶ古くなったよね」
「そうだな。長いこと、ここにあるからな」
「うんしょ。う〜ん。高いよ〜」
 手を伸ばして、出来るだけ上の方まで拭こうとジャンプしている。
 沙希の背丈では、というか普通は上まで届かない。ポールを登るという手もあるが、かなり危ない。
「ははは。無理だよ。おっ、来た来た」
 地面から足に、重低音が伝わってくる。
「なあに?」
「レイに頼んだんだ」
 高所作業用の重機がゆっくり走ってきた。横には『伊集院建設』と書かれてある。
 助手席からレイが降りてきた。男装ではない本来の姿でやってきた。最近は、学校以外で公と沙希に会うときは男装をやめていた。
「こんにちは。公さん、沙希ちゃん」
「無理な、お願いを聞いてもらって悪いな」
「いえ。公さんのためなら、これくらいどうってことないですよ」
「これで綺麗にするのね」
 沙希は、何だか楽しそうに腕まくりをする。
「うん。三年間お世話になったんだから、隅々まで綺麗にしたいからな」
「そうよね。早速やりましょうか」
「ああ。レイは、ちょっと待っていてくれ」
「ええ」
 公と沙希がゴンドラに乗ると、ゆっくりと上に持ち上がった。そして、バックボードからリングまで、しっかりと拭いた。
「こんなところかな」
 ほこり等の汚れは落ちたが、長いこと使われているので、少々古くなっているのはどうにもならなかった。こればかりは交換しないと、
 どうにもならないのだが、なにぶん公共物だから、簡単に代えることも出来ないのだろう。
 ゴンドラから降りると、公はボールを持ちフリースローラインに立った。
 目をつぶると、自主トレを始めた一年の頃からの様々な事柄が思い出された。そんな公を見て、沙希とレイが目を合わせる。
 二人も、いろんなことを思い出していた。
 しばらくすると公は、ゆっくりとしたフォームでボールを放った。
 ボールは鮮やかな放物線を描いて、ネットを揺らすことなくゴールを通過した。
「三年間、ありがとうございました」
 深々と頭を下げて、お世話になったゴールへ別れを告げると、沙希とレイも同じように頭を下げて、思い出の場所として記憶に刻み込んだ。



 翌日の卒業式は、見事な快晴に恵まれた。三年間通い慣れた通学路を登校するのも、今日が最後となった。
 清々しい空気を吸いながら、最後だという気分をかみ締めながらゆっくり歩いていると、後ろから声を掛けられた。
「公くん、おはよう」
 公の後ろ姿を見つけた詩織が、駆け足で近付いてきた。
「おはよう。詩織」
「いよいよ卒業だね」
「うん。詩織は卒業生代表の答辞、がんばれよ」
「もう。そのことは言わないで。昨日からドキドキしてるんだから」
「ははは。詩織も緊張するんだな。別に間違ったって良いんだから、気楽にいけよ」
「うん」
 詩織とは同じ大学に進学が決まっているが、こうやって学生服を着て、肩を並べて歩くことは最後だろう。詩織との三年間を思い出すと、
 感慨深いものがある。いまでは笑って話すことが出来る、良い思い出だ。
「大学でもバスケやるんでしょ」
「もちろんだ。詩織もだろ」
「うん。まずは大学で頑張って、ゆくゆくはオリンピックに出たいと思っているの」
「オリンピック?そこまで考えているのか。凄いな」
 レイには実業団の話をされたが、まだ大学リーグのことで精一杯だった。
「公くんだって、可能性あるじゃない。頑張りましょう」
「そうだな」
 オリンピック。日本の世界に置けるバスケットの位置は、あまり高くはない。女子はアジアで上位にいるが、男子はアジア予選を
 勝ち抜くのも困難な状況にあった。それに自分が貢献する。今まで考えたこともなかった。しかし、この詩織の言葉から公も、
 全日本代表というものを意識するようになった。
 もうすぐ校門ということもあって、通学路は生徒でいっぱいになってきた。
「ようっ。お二人さん。おはよう」
 走ってきた好雄が、スピードを緩めて並ぶ。
「好雄か。おはよう」
「おはよう。早乙女くん」
「じゃあ教室で」
 それだけ言うと、すぐにスピードを上げて行ってしまった。
「何だ、あいつ」
 と思ったのもつかの間、すぐに理由が分かった。
「よっし〜、待ちなさ〜い」
 朝日奈が、好雄を追い掛けて来た。また何か悪いことでもしたのだろう。
「おはよう、朝日奈さん」
「おはよう」
「あっ、おはよう。お二人さん。じゃあね〜。待ちなさ〜い」
 同じように並んだかと思ったら、すぐに追いかけていった。それは、いつもの光景だった。あの二人には、
 卒業式なんて関係ないかのようだった。
「ふふふ。似たもの同士よね。あの二人って」
「そうだな」
 好雄はいつも、『腐れ縁』だというが、それはそれで良いと思う。二人は、いずれは付き合うことになるのだろうか。
 もしかしたら今日、伝説の樹の下で告白されるかも知れない。
 校舎に入ると、知った顔に会う度に、挨拶と別れの言葉を交わした。そうこうしているうちに、段々と卒業するんだなという
 実感が湧いてくる。
「みんなとは、もう何回会うのかな。寂しいね」
 同窓会だって、毎年やる訳じゃない。よっぽど縁がなければ会うことはないだろう。
「そうだな。木本みたいに会う奴もいれば、二度と会わない奴もいるよな」
「うん」
 詩織は一層、寂しそうな表情をする。
「仕方ないことさ。でも、俺と詩織は違うな。家が隣同士の幼馴染みだからな」
「そうだね。これも腐れ縁っていうのかな?」
「え?ははは。そうかもな」
 詩織の言う通りかも知れない。幼馴染みとは、一番の腐れ縁かも。
「私、いったん職員室に行かないといけないの。じゃあね」
「ああ」
 詩織と別れた公は、教室に向かった。すると、すぐに女の子の人だかりが見えた。
「レイだな」
 案の定、真ん中には女の子に囲まれているレイがいた。いつものように軽く受け答えをしてあしらっていたが、
 公を見つけると謝りながら脱出してきた。
「おはよう」
「おっす、レイ。最後まで大変だな」
 すぐ近くにまで寄ってきて、小声で話す。
「これが最後だと思えば、無下にも出来なくって」
「そうだな。最後だもんな」
「ええ。ところで公さん。今日は沙希ちゃんに、何かしてあげるんですか?」
「え?何で」
「お風呂で初日の出を一緒に見たときに、披露宴の話をしたのを覚えていますか。そのとき、苦笑いしていたでしょう?
 それで、これは何かあるなって」
 そんなこともあったかと、記憶を手繰った。
「話は覚えてるけど、苦笑いなんてしたか?かなわないなレイには。実はな・・・」
 耳元に口を寄せて、卒業式の後にしようとしていることを教えた。
「ホントですか?」
 レイは思わず大きな声を出してしまった。しかも、本来の女の声でだ。
「お、おい」
「あっ」
 レイは慌てて口を塞いだが遅かった。こっちを見ているクラスメイトがいる。
「んんっ。風邪かな」
 わざとらしく堰をして誤魔化した。どうやら誰も気にしていないようで、すぐに元に戻った。
「ダメだろ」
「公さんが、驚かすようなことを言うからですよ」
「すまん」
 レイが男装しているのを忘れるほどの衝撃とは。後で明らかになる。
「それは、沙希ちゃんもビックリしますよ。頑張ってください」
「うん。ありがとう」
「そろそろ始まるから、廊下に並んで」
 担任が教室に入ってきて促す。
「行きましょうか」
「そうだな」

 卒業式は何事もなく、無事に終了した。少し緊張していたようだったが、詩織の答辞は素晴らしい物だった。
 少し涙ぐんでいたように見えたが、詰まることなく見事に読み上げた。これで感情が高ぶった卒業生だけでなく在校生までも、
 仰げば尊しを斉唱する頃には涙する生徒が続出した。
「卒業生、退場」
 学年主任の先生の言葉に続き、ピアノの伴奏と大きな拍手に送られて体育館から出ていく。
「主人先輩、おめでとうございます」
「バスケット頑張ってください。応援してます」
 バスケット部の後輩、ファンであろう見たことがある後輩の前を通り過ぎるたびに、声を掛けられた公は、
 全国大会優勝という名誉と共に、記憶をも残すことが出来たことを実感していた。
『最初の動機は不純だったけれど、充実した高校生活だったな』
「先輩」
 通路側にいた石崎が、大きな掌を広げた。
 公は何も言わずにパチンと手を合わせて笑った。石崎にはもう、全てを伝えてある。しっかりと意志を受け継いでくれるはずだ。
 公は体育館を出ると、教室に行く前に沙希が出てくるのを待った。
「沙希」
 呼び掛けるよりも早く公を見つけた沙希は、タッタッタッと駆けてきた。
「やっと会えた」
「沙希、ホームルームが終わったら時間あるかな」
「うん。サッカー部の部室に少し顔出すけど、その後なら大丈夫だよ」
「じゃあ、それが終わったら、伝説の樹のまで来てくれないか」
「伝説の樹?え、ええ。分かったわ」
 二人はもう付き合っているのだから、自分には関係ないと思っていた伝説の樹。そこに来て欲しいという公の言葉に疑問を持ちつつ、
 沙希は自分の教室へと向かった。

 担任から激励の言葉をもらい、最後のホームルームが終わった。
 終わった後もみんな、なかなか教室を出ようとはしなかった。先生と最後の言葉を交わしている者、友人と話し込んでいる者、
 みな別れを惜しんでいる。
「公。これからもよろしくな」
「ああ」
 好雄はつい先日、二次募集で受けたところに引っかかり浪人することなく、無事に進学が決まった。
「合コンの相手探し、期待してるぞ」
「ちょっと待て、そんな約束は出来ないぞ。出る気もないし。それに、お前には朝日奈さんがいるだろう」
「いいんだって。ちょくちょく連絡するからな。じゃあ、またな」
 好雄は教室を飛び出していった。その手には、女の子からと思われる便箋が握られていた。
「朝日奈さんからだろうな。それでも合コンするつもりか、あいつは。まったく懲りない奴だ」
「合コンとは、何かな?」
「わっ」
 レイに声を掛けられて驚いた。
「え?え〜と、それはだな」
「ふふ。知ってますよ。それくらいは」
 どう説明しようかと困った顔をしている公を見て、小声で言って微笑んだ。
「そ、そうか。好雄が勝手に言ってるだけさ。それよりイギリスへは、いつ出発するんだ」
「はい。明日にでも」
「そっか。お前の憎まれ口が聞けなくなるのは寂しいけれど、また会おうな」
「はい。その時まで、お元気で」
「おう」
 二人は再会を約束して、固い握手を交わした。
 レイと別れて伝説の樹へ向かおうと教室を出ると、後輩のファンクラブメンバーが30人以上も待ち受けていた。
「先輩。おめでとうございます」
「これ、どうぞ」
 花束を持った娘が、一歩前に出て差し出した。
「ありがとう」
「大学リーグでも頑張ってください。ずっと応援してます」
「これ。みんなで書いたんです」
 それは寄せ書きだった。色紙に小さい字で、ギッシリと書かれてある。
「ありがとう。嬉しいよ」
「それでですね。これにサインをお願いします」
 全員が手帳を出して、コメント付きのサインをねだる。ここまでしてもらっては、断ることなど出来ない。
「字は下手だけど、それで良ければ、いいよ」
「ぜひ、お願いします」
 一列に並んで、即席のサイン会が始まってしまった。
 もうすぐ終わるのかと思ったら、いつの間にか増えていたりして、結局一時間もかかってしまった。
「ありがとうございました」
 最後の一人を書き終えて握手をすると、一礼して待っていた友達とはしゃぎながら帰っていった。
「まさか、こんなにかかるなんて」
 公は、全速力で伝説の樹まで走った。 

 少し前、ホームルームが終わった沙希は部室にいた。一緒に卒業する三年生と一緒に、後輩から祝福の言葉を受けていた。
「卒業おめでとうございます。今年は必ず全国に行きます」
「合宿での飯、旨かったっス」
「いろいろと、お世話になりました」
 沙希のことを密かに想っていたのだろうか、泣いている者までいた。
 みのりの姿が目に入った。顔がくしゃくしゃになるほど、号泣していた。
「ぐすっ。虹野先輩。おめでとうございます」
「ありがとう。頑張ってね」
「はい」
 手を握って、力強く頷いた。
 サッカー部マネージャーの精神は、沙希からみのりに受け継がれ、延々と続いていくことだろう。
「休みの時は寄って下さい。電話も、いつでも掛けてきてください
「うん、うん」
 なかなか離してもらえず、沙希の方も解放された時には一時間以上経っていた。
「あ〜ん。待ってるだろうなぁ。まさか帰ってないよね」
 沙希は、全速力で走った。



 公は、やっと辿り着いた。
「見えた」
 校庭の端にある、一際目立つ一本の木立。今年は何組のカップルが生まれたのだろうか。
「沙希。どこだ」
 周りには誰もいなかった。
「まさか、帰ったのか」
 一時間も待たせたのだから、それも仕方がないか。そう思って、ガックリと肩を落としていると、公を呼ぶ声がした。
「公〜」
「沙希」
 ハッとして顔を上げた公は腕を大きく広げて、走ってくる沙希を受け止めた。
「公。遅れてごめんなさい。もう帰っちゃったかと思った」
 顔を上げて、紅潮した頬を緩ませる。
「いま来たところだよ。俺も、帰ったと思った」
「先に帰るなんて、そんなことしないよ。公が来てくれって言ったんだから」
「そうか。そうだよな」
 ギュッと抱きしめて存在を確かめると、そっと離れた。
「沙希。俺の話を聞いてくれ」
「うん」
 公が真剣な表情になったので、沙希も気を引き締めた。
「沙希と付き合うようになって五ヶ月くらい経つけど、俺は前にも増して沙希のことが好きになっていってる。この伝説の樹は、
 女の子からの告白をする場所だけど、今日は男である俺の方からの告白を聞いて欲しい」
 沙希は黙って頷いた。
「沙希。俺は誰よりも沙希のことが好きだ。愛してるって気持ちは、俺にはまだ分からないけれど、ずっと一緒にいたい。
 守っていきたいというこの気持ちは、それに近いんだと思ってる。だから、これを受け取って欲しい」
 公はポケットから、小さな箱を取りだした。
「それって・・・」
 それは、どう見ても指輪ケースだった。
「俺はまだ学生で指輪なんて買えないから、どうしようか悩んでいたら、母さんがくれたんだ。これを使いなさいって」
 事態を察した沙希の頬は、瞬く間に真っ赤になっていた。
 公は一度、大きく深呼吸をして心臓の鼓動を抑えると、思い切って切り出した。
「この先、どうなるか分からないけれど、楽しいときも、苦しいときも、沙希と一緒に歩んでいきたいんだ。
 ・・・・・・愛している。受け取って欲しい」
 公は、沙希の目をジッと見つめて、力強くプロポーズをした。
「・・・・・・公。嬉しい」
 沙希は、胸に手を当てて感動していた。溢れ出てくる嬉し涙を、何度も指で拭った。
「受け取って、くれるかな」
「私で、いいの?本当に?」
「ああ。沙希しかいないんだ」
 優しい目で沙希を見つめる。
「嬉しい。喜んで、いただきます」
「良かった。ありがとう」
 公は、無事に受け取ってくれたことに安堵して微笑み、ケースを差し出した。沙希がそれを受け取り蓋を開けると、
 大きくはないが、綺麗に輝くダイヤの指輪が出てきた。
「ほら、手を出して」
 公が指輪を取り出して、沙希の左手に手を添えた。ゆっくりと薬指に通していく。
「良かった。ぴったりだ」
 サイズが合うのか心配だったが、杞憂に終わって安心した。
 沙希は指輪がはめられた左手をかざして、婚約したんだということを実感した。
「俺達はまだ学生だから少し待たせるけれど、それでもいいかい」
「はい。待っています」
 公の大きな胸板に飛び込んで包まれるように抱かれていると、大事な物をいたわるような優しさとぬくもりを感じて、
 とても幸せな気持ちになった。
「公・・・。今日、家には誰もいないの」
「え?そ、それって」
 黙って頷く沙希をギュッと抱きしめて、耳元に囁いた。
「わかった」
 お互いの顔を見ると、二人とも真っ赤になっていた。クスリと笑い口づけを交わす。
 沙希の家でお祝いをした二人は、そこで初めて結ばれた。



 卒業から二年半以上が経過した。
 公は、トントンとリズムを刻む包丁の音で目が覚めた。
「ん〜」
 上半身を起こして天井に向かって伸びると、大きな欠伸を一つしてから起き上がった。
 寝室から出ると、味噌汁のいい香りがしてきた。
「おはよう、沙希」
「おはよう、公」
 リビングに続いているキッチンでは、沙希が朝御飯の用意をしていた。
 まあ用意といっても簡単な物である。ご飯に味噌汁、納豆とホウレン草のおひたし、それに目玉焼きがあれば立派な朝食だ。
「いただきます」
「めしあがれ」
 一人暮らしを始めて最初の頃は、お互いのアパートを行ったり来たりしていたのだが、沙希が調理師専門学校を卒業してからは、
 家賃を折半できるからということで、少し広いアパートで同棲を始めた。
 勿論、ずっと一緒にいられるということの方が重要ではあった。
「仕事は順調?」
「う〜ん。どうなのかな。よくわからないわ」
 沙希は専門学校を卒業した後、フードコーディネーターを目指して修行している。今は伊集院家の紹介で、
 テレビでも結構有名な先生についている。
「まだまだ雑用が多くて」
「最初の1年は、そんなものだろうな」
「うん」
 公は大学3年生になり、バスケット部で不動のエースをはっている。相棒はもちろん田辺だ。高校時代は好敵手として
 名勝負を繰り広げた2人だったが、いまは大学バスケット界の最強コンビとしての名声を得ている。詩織は同じ大学の女子で、
 ガードとしてスタメンを任されている。ちなみに木本は、橋本と同じ大学で頑張っている。
 テレビではスポーツニュースが流れていて、全日本女子バスケットがオリンピックへ向けての練習試合をしたという話題だった。
「おっ、三木だ。頑張ってるな」
「三木?ああ。詩織のライバルだった人ね」
「そうそう。実業団三年目だけど、オリンピック代表でも第二ガードだからな。凄いよ」
「そうなんだ」
 オリンピック。公は、卒業式の詩織の言葉を思い出した。詩織はこのニュースを、どんな思いで見ているのだろうか。
「知っている人がオリンピック代表なんて、凄いわよね」
「そうだな」
「男子はどうなの」
「男子はアジアで勝つのが難しいんだ。今回はダメだった」
「ふうん。じゃあ、公が救世主になればいいんじゃない?」
「・・・・・・ははは。そうだな」
 公は、一拍置いて答えた。
「2年後に俺と田辺、木本のうち、一人くらいは選ばれるかな」
「そうだね」
 味噌汁の最後の一口を流し込むと、公は大学、沙希は仕事へ行くために身支度を始めた。
「さて、行くか」
 靴を履き、ドアを開けようとしたら、
「あっ、待ってよ」
 沙希が目をつぶった。お出掛けのキスをねだっている。

 最寄りの駅まで一緒に歩いた後、反対方向のホームへと別れる。沙希が乗る電車は、すぐそこまで来ている。
「今日の夜、何か食べたい物があったら、メールしてね。行って来ます」
「わかった。行ってらっしゃい。気を付けてな」
「うん。公も気を付けてね〜」
 手を振りながら、反対側のホームへと続く階段を上がっていった。
 公がホームに着く頃には、すでに乗り込んだ沙希が、走り出した電車の中で手を振っていた。


 大学生活は、とても充実していた。高校とは違い、学部ごとの専門分野を深く勉強することとができ、
 興味がある教科はとても面白い。成績はまあまあで4年生の来年は、ほとんど大学に行かなくても卒業出来るまで
 単位は取れている。
 一方、公が所属しているバスケット部は、入学前から大学1部リーグで毎年上位の成績を修めていた。ここ最近は優勝に、
 あと一歩というところだったが、昨年は2年生だった田辺と公の活躍で、独走状態の優勝を飾った。
 今年は追われる身として徹底マークをされたが、それを跳ね返すだけの練習を重ねて、先週の最終試合で見事二連覇を成し遂げた。
 特に公は、主将としてチームを引っ張り得点王を獲得し、田辺とともに将来の全日本入りを期待されていた。
「公、次の主将は誰にするんだ?」
 授業が終わってからの部活中に、田辺が公の肩に手を置いた。
「う〜ん。どうするかな」
 例年、3年生が主将を務めることになっていて、公は次の主将を任命する権限を持っていた。
 腕を組む公の視線の先には、身体が二回りも大きくなった石崎の姿があった。石崎は公達が卒業した後の、
 きらめき高校を引っ張りインターハイで準優勝、ウィンターカップでは三位に導いた。そして両大会でベスト5に選ばれるなど、
 鳴り物入りで昨年の春に入学してきて、2年生でスタメンをものにした。そして、2年連続の優勝に多大な貢献をしてくれた。
 公は、石崎以上の適任者はいないだろうと思っていた。
「まあ、ほぼ決まってるんだけどな。それより、来週の祝勝会は男女合同なんだろ?ちゃんと予約入れたのか」
「ああ。大丈夫だって。いつもの所を貸し切りにしたから」
「そうか」
 アルコールは20歳からとなっているが、それを守っている学生は少ないだろう。かく言う公も、新入生の時に飲まされて、
 気持ち悪くなった経験がある。それから今まで、たまに部員や友人と飲んだりするが、どうやら公はあまり強くないらしい。
 練習も終わり帰宅する途中、本屋に寄った公は、オリンピック代表の特集が組まれているバスケ雑誌に目を通した。
「オリンピックか」
 卒業式の日に詩織からオリンピックを目指していると聞き、高い目標に驚いたのを覚えている。それが今では詩織はもちろん公も、
 ゆくゆくは代表に選ばれる可能性が出てきた。バスケットをプレーする上で、それはとても名誉なことだし出てみたいとは思っている。
「公」
「わっ」
 突然、肩を叩かれてビクッとする。
「沙希か」
「ゴメンね。そんなに驚くなんて」
 予想以上の効果に、逆に驚いて縮こまる。
「いや、いいんだ」
「ねえ。これから買い物に行くんだけど、一緒に行かない?お詫びに、公の好きな物作るね」
「いいよ。行くか」
「うん」
 本屋を出た二人は、手を繋いでスーパーへと向かった。
 その日の晩ご飯は、公の好きなハンバーグになった。豚肉と牛肉を合い挽きにして作る、沙希特製のハンバーグは絶品だ。
 和風の大根下ろしソースが効いて、抜群に美味しい。
 高校時代は自主トレの弁当などで、ご馳走になっていた沙希の手料理だが、今では毎日食べている。
 料理が上手いから沙希を選んだわけではないが、これは、とても幸せなことなのではないか。
 美味しそうに食べる公の顔を見ていると、沙希の表情も嬉しそうだった。好きな人とする食事は、それだけでも良いものだ。
「来週は祝勝会だね。夜は一人か。寂しいなぁ」
「ごめんな。これが終われば、忘年会が1回あるだけだから」
「うん」
 テレビには、NBAの試合が流れている。
「いまの凄いね」
 ドリブルでゴール下に切り込み、シュートと見せかけてノーマークの選手にパス。それをダンクで決めた。
「うん。凄いな」
 未だNBAに日本人プレーヤーはいない。アジアでは唯一、身長二メートル強を誇る中国人選手が一人、活躍している。
 日本でもNBAのシーズン中は、毎日のように試合が放送される。それを見ていると、凄いと思うと同時に、
 そこで自分もプレーしてみたいという願望が大きくなっていく。特に最近は、その傾向が大きかったが、
 この時点ではまだ憧れの対象でしかなかった。
「お風呂には、すぐに入る?」
 沙希の声で思考が止まった。
「ん?そうだな。ちょっと見たいテレビがあるから、それが終わったら入ろうかな」
「そう。分かった」
 沙希の頬が、少し赤くなる。
 テレビが終わり食器の後片づけを済ませると、早速、着替えを用意して入った。
 アパートの風呂場は当然、狭い。ここはユニットバスではないので、トイレとは別になっているが、やっぱり狭い。
 何故なら、二人で入るからだ。
 初めの頃は、かなり恥ずかしがっていた沙希も、最近では慣れてきた。
 それでもまだ、狭い浴槽の中でくっついて入ると恥ずかしいようで、からかうと面白かったりする。公の楽しみの一つだった。
「沙希。洗いっこしようか」
「え?う〜ん。・・・・・・い、いいよ」
「よしっ」
 やる気満々の公はタオルブラシに、たっぷりボディーシャンプーを出して泡をたくさん作った。
 それを使い、沙希の腕から順にこすっていく。
「きゃっ。もう、公ったら。恥ずかしいよ」
 腕から胸、お腹へと移動する。これはもう、男の方が圧倒的に楽しいと言える。
「お返しよ」
 なすがままだった沙希も、反撃に転じる。
「おっ、やるか。それなら、こうだ」
 椅子に座らせて、足の指の間を丁寧に洗う。
「あはは。気持ちいいけど、くすぐったいよ〜」
 こうして、じゃれあう時間は何にも代えがたい。
「ふう」
 一段落つき、少な目に張ったお湯に浸かる。二人で入ると、水位がちょうど良いところまで上がる。
 お互い斜めに入っても、身体が大きい公は少し窮屈な格好になる。
「気持ちいいね」
「ああ」
 頭にタオルを巻いた沙希が、ほんのりと赤くなっている。
「沙希。ほら」
 公は指を時計回りに回した。
 沙希は腰を浮かして、対面だった向きを180度回転して逆になる。そして、公の足の間に挟まるように腰を下ろした。
 すると公は、肩から腕を回して抱き付いた。
「ん」
 これをされると、沙希は胸がキュンと鳴って力が抜けてしまう。お湯で頭がポワンとしているところに更に刺激が加わって、
 幸せな気持ちでいっぱいになる。
「公。好き」
「俺も好きだよ」
 沙希が首を回して求める。
 その色っぽい表情に公は、毎回ときめいていた。

 二人は、恋人という関係を満喫していた。しかし、それも一時の間を置くことになろうとは、この時の二人には知る由もなかった。



 今日も大学の体育館には、練習をするバスケ部員の声が響いていた。今日はコーチが遅れるため、主将である公が練習を見ていた。
「そこ。カバーが遅れているぞ」
 公の叱責が飛ぶ。スタメンで活躍していた四年生が抜けたので、かなり戦力ダウンをしてしまった。
 いくら公と田辺がいるとはいっても、他の大学も実力アップしてくるに違いない。
 三連覇は容易なことではないのだ。
「よしっ。交代だ。一年入れ」
 バスケットはスタメンの5人だけで勝てるわけではない。強力な6人目以降のサポートがあってこそ優勝が見えてくる。
 公と田辺の効果で、有望な1年が沢山いる。約10ヶ月で、どのくらい成長したのか見極めるために、
 どんどん1年生を試して新たな戦力を見つけないといけない。
「新井、今のは良いぞ。小山内、今みたいな時はな」
 点を入れた者は誉め、入れられた者にはマンツーマンで、どこが悪かったのか指導する。
「公」
「ん?」
 女子側のコートで練習していた詩織が呼び掛けた。
「なんだい?」
「お客さんだよ」
「客?」
「うん。いつもの雑誌社の人よ。私と公に取材だって」
「わかった」
 女子の主将は詩織だ。今年のリーグ戦は残念ながら2位に終わったが、昨年は男子とともにアベック優勝を成し遂げた。
 運動部棟にあるミーティング室に入ると、お馴染みの女性記者が待っていた。
「田村さん。お待たせしました」
 公と詩織は頭を下げた。
「どうも。お久しぶりね。練習は順調ですか」
「そうですね。まあまあです。他の大学は、かなり良いんじゃないですか?」
 田村さんは高校時代にも何回か取材を受けた記者で、その頃も高校まで来たことがある。
「そうね。特に木本君のところが良いかな。1年生に良い選手が多いから」
「そうですか」
「そうそう。藤崎さんには、三木選手からよろしくって言われてたんだ」
「聖美から?」
「ええ。ちょくちょく連絡は取ってると思うけれど、早くこっちに来なさい。待ってるからって」
「そうですか」
 オリンピック代表として頑張っている三木からの伝言に、詩織の表情がグッと引き締まった。
 昔のライバルはオリンピック代表で、自分はいま学生にすぎない。実業団という高いレベルで戦っている三木に、
 卒業した後に追いつくことが出来るのか不安だが、いまは出来ることを精一杯やるしかない。
 とりあえずは、学生最後となる来シーズンの優勝という目標を達成しなければならない。

「今日は、ありがとう」
 30分ほど取材を受け、見送るため一緒に外に出た。
「じゃあ、また」
「ありがとうとうございました」
 田村が立ち去ろうとした時、何かを思い出したように振り返り公の前に戻ってきた。
「な、何ですか?」
「主人くんは、NBAに興味あるかしら」
「え?」
 突然の言葉に、何を言っているのか一瞬わからなかった。
「個人的な考えなんだけど、ここ1、2年あなたのプレーを見ていると、向こうでもやれるんじゃないかって思うのよ。
 日本人初のNBA選手は、主人君しかいないと思うの。高校時代から一目置く選手が、そうなるなんて凄いじゃない。
 挑戦するなら早いに越したことはないし。もし興味があったら、連絡をちょうだい。じゃあね」
「は、はあ」
 呆気にとられて生返事をすると、思いを打ち明けてすっきりした田村は笑顔で帰っていった。
「公」
 詩織は複雑な気持ちで公を見ていた。



「どうも〜」
 田辺を先頭に、のれんをくぐって店内に入る。今日はリーグ戦男子優勝の祝勝会と、女子2位の残念会を兼ねた飲み会の日だ。
 馴染みの店は、空の状態から満席になった。4年生も入れたバスケ部は、全員で50人以上いるのだから、席が足りないくらいだった。
「おっす。公」
「好雄。世話になるよ」
 ここは、好雄が大学生になってからずっとアルバイトをしている店だ。持ち前の要領の良さで、店長お気に入りの店員になっていた。
「こんばんは。早乙女君」
 詩織がコートを脱いで、衣紋かけに掛けながら言う。
「藤崎さん。今日も綺麗だね。今日は飲み放題だから、どんどん飲んでね。俺からワインを1本サービスしちゃうよ」
「え?いいの?」
「いいって、いいって。同級生のよしみだよ」
「ありがとう。いただきます」
 詩織は、ワインが好きだった。さすが好雄。今でも女の子の情報を仕入れているのだろう。
「みんな、行き渡ったか」
 公は立ち上がり、みんながグラスを持ったのを確認すると、乾杯の挨拶を始めた。
「え〜。リーグ戦で男子は優勝、女子は惜しかったけれども2位という好成績を上げることが出来ました。
 これも全部員の努力の賜だと思う。来シーズンは三連覇と王者奪回を目標に頑張ろう。乾杯」
「かんぱ〜い」
チン
 あちこちでグラスを合わせる音がして、クッと一口飲む。
「よぉし、飲むぞ〜」
 誰かの声がして静かだった会場が一転、騒がしくなった。

 様々な話題で盛り上がっている中、
「公。飲んでるか」
 お猪口を持った田辺が、公の横に座った。
「ああ。マイペースでな」
 田辺は結構飲んべえで、特に日本酒が好きだった。秋田県という酒所出身だからだろうか、かなり強い。
 沢山飲むが、酒に飲まれることはないと豪語している。
「来年は3連覇だな。俺とお前がいれば、どんな奴が来たって負けやしねえよ」
「・・・・・・そうだな」
「おっ。何だ何だ、いまの間は」
「何でもないよ」
 そんな二人のやりとりを、近くで詩織が見ていた。
「何を話しているのかしら」
 騒がしくて声は聞こえてこない。気になった詩織はワイングラスを持ち、話の輪から抜けて立ち上がった。すると、
「田辺先輩。こっち来て〜」
 後輩のお呼びに反応した田辺が、そっちに行ってしまった。
「ここ、いい?」
「詩織。いいよ」
 詩織は、一人になっていた公の隣りに座った。
「どうかしたの?表情がすぐれないけど」
「そうか?・・・・・・詩織には、隠し事が出来ないな」
「当たり前でしょ。幼馴染みなんだから。何年一緒にいると思ってるのよ」
「ははは。そうだな」
 何事も、ないようにしていたつもりだったが、詩織には通じない。
「田村さんの話でしょ。気になっているのは」
 あの時に一緒にいた詩織には、すぐに原因が分かった。
「うん」
「やっぱり。公は、どう思っているの?」
「俺か?そうだな」
 NBA。バスケット選手なら誰もが憧れる、世界最高のバスケットリーグだ。バスケットをやっている者なら、NBAでプレーすることは夢だ。
「田村さんから聞いた時は呆気に取られたけれど、頭のどこかでは挑戦したい気持ちがあったんだ。
 それはバスケをやっている者なら、一度は考えることだと思う。でも、俺なんか通用するのかって考えると、その思いはしまいこむんだ」
 公は半分残っていたビールを一気に飲んだ。
 詩織も一口飲む。
「そうね」
 言いながら、公のグラスにビールを注いだ。
「でも俺なら、もしかしたら通用するんじゃないかっていう田村さんの言葉を聞いてから、少しずつ思いが大きくなってきてるんだよ。
 人生は一度きりだし、挑戦しないで後悔するよりも、ダメだったとしても挑戦した方が悔いはないと思うんだ」
「うん。私もそう思う」
「でも。・・・・・・・ここにいる、みんなを裏切ることにはならないかということ。そして、沙希のことが気になってもいるんだ。
 だから、正直迷ってる」
 公は、誰にも話したことのない思いを初めて口にして、胸のつかえが取れた気がした。
「私はね。すぐには無理だろうけど、公なら通用すると思うよ。保障するわ」
「ありがとう。詩織、このことは誰にも言わないでくれ。自分で答えを出したいから。頼むよ」
 詩織は困った顔をしたが、公の頼みを聞かないわけにはいかない。
「う、うん。分かった。NBAか。オリンピック代表よりも、凄い目標だね」
 詩織はもう一口飲むと、グラスが空になった。
「そうだな。でも詩織だって、オリンピック代表が最終目標なのかい?」
 公は手の届かないところにあったボトルを、後輩から回してもらって詩織に注いだ。
「ありがとう。だって、他になにかある?実業団リーグの優勝?」
「なに言ってるんだ。WNBAがあるじゃないか」
 WNBA。アメリカで行われている女性版のNBAだ。
「え?そんなの。それこそ考えたことないわ」
「そうか?詩織なら出来るかも知れないぞ」
「もうっ。私のことはいいの」
「ははは。この話は終わりだ。詩織、彼氏とはうまくいってるのか?」
「あっ。そう来るの?ラブラブよ。公と沙希には負けるけどね。一緒にお風呂に入ってるんでしょ」
「うっ。どこから」
「沙希から聞いてるのよ。ふふふ。もうっ、あつあつなんだから」
 公の腕を叩いて笑う。
 思わぬ反撃にあって、照れ笑いをする公だった。



 最近はだいぶ暖かくなってきた。川べり等で見かけるつくしの頭が、春の訪れを感じさせる。3月に入り、
 もうすぐ公の21回目の誕生日が来る。1月にあった沙希の誕生日はちょっと贅沢をして、ホテルのディナーへ2人で初めて行った。
 だから今回はアパートでやろうと言うことになっていた。
「プレゼントは、何がいいかなぁ」
 公はいまアルバイトに出掛けているので沙希は一人、紅茶を飲みながら誕生日のことを考えていた。
 こういうイベントは、当日はもちろん楽しいが、それまで色々と考えるのも楽しいものだ。
「ありきたりのものじゃ、つまらないし」
 悩んだ末に思いつかなかった沙希は、気分転換にと詩織に電話を掛けた。
「もしもし、藤崎ですけど」
「沙希ですけど、元気?」
「沙希?うん。元気よ。なあに?また惚気話を聞かせようっていうのかしら」
 聞いてるこちらが照れるような話を、耳にタコが出来るほど聞いている詩織は、からかうように言って溜息を吐いた。
「もうっ。そんなんじゃないよぅ。公の誕生日のプレゼントを考えていたんだけど、何も思いつかなくて気分転換しようかなって」
「あのねぇ。それが惚気てるって言うのよ」
「・・・あっ、そうか」
「ふふふ。相変わらずね」
「あっ、でもね。気になることもあるのよ。最近ね、ボーーーッと何か考えていることが多いのよ。何か悩み事って聞いても、
 何でもないって言うし。何か心当たりない?」
「え?ううん。分からないわ」
 詩織は否定したが、少し声色が変わったので沙希の女の勘が働いた。
「そう?まさか、他に好きな人でも出来たのかなぁ。ふう〜」
 わざと溜息を吐いて、カマを掛けてみる。
「そんなことないわよ。公は沙希一筋なんだから。むしろ心配掛けまいとして黙ってるんだから」
 沙希の術中にはまり、慌てて強く否定する。
「・・・そうなんだ。何か知ってるでしょ、詩織」
!!
 沙希に乗せられた事に気が付いた詩織は、言葉を詰まらせてしまった。
「何か知っているなら教えて。お願い。そうでなと、公を見る目が変わってしまうわ」
「それは半分脅しだよ〜」
「ごめん。言い過ぎたわ。でも、分かるでしょ。この気持ち・・・」
 そう言われてしまっては、詩織も返す言葉がなかった。
「仕方ないわね。実はね。この間の祝勝会の席でなんだけど」
「うん」
 詩織から聞いた話は、沙希に大きな衝撃を与えた。話の中身を理解して、納得するまで口をつぐんでしまう。
「と言う訳なのよ。だから、沙希のことが本当に心配で・・・・・・。沙希?聞いてる?」
「え、ええ。聞いてるわ」
「かなりショックだと思うけれど、まだどうなるか分からないから、気を確かに持ってね」
「うん。ありがとう」
「あっ、もうこんな時間。私、これからバイトなの」
「そうなんだ。じゃあ、またね」
「うん。しっかりするのよ沙希。またね」
 沙希は子機を置いてからしばらく、頭の中が真っ白になった。そして思考が再開すると、すぐに思いは固まった。
「足手まといだけは、嫌だよ」
 再び子機を握りしめて押した番号は、ロンドンにいるレイの番号だった。



 誕生日当日となった。
「おっ、今日はご馳走だな」
「そうよ。公の誕生日だからね」
 テーブルの上には、いつもよりも多い皿が並べられていた。真ん中には、沙希特製の誕生日ケーキが置かれてある。
「火、つけるよ」
「ああ」
 ケーキに立っているロウソクに火を灯して電気を消した。
「ーーーhappy birthday dear こ〜う〜.happy birthday to you.」
 公は大きく息を吸い込んで、一息で消しきった。
「おめでとう〜」
「ありがとう」
 沙希はテーブルに手を付いて、ケーキの真上に顔を寄せた。公も同じようにして唇を重ねた。
「ふふ。さあ、召し上がれ」
「ああ。旨そうだ」
 ホテルのシェフとまではいかないが、沙希の料理の腕もかなり上達していた。ちょっとした洋食屋なら、すぐに開けそうだ。
「どう?」
「うん。うまいよ」
「そう?良かった〜」
 恋人同士の誕生日会。楽しいまま終わることを望んでも、今日はそうはいかなかった。
「部活の方はどう?」
「ん?そうだな。石崎の主将ぶりも板に付いてきたし、1年にもベンチ入り出来そうな奴が出てきたから、今年も優勝が狙えると思うよ」
「そうなんだ。・・・・・・それは、公がいないとダメなの?」
「え?どういうことだい」
 公は、沙希が何を言っているのか分からなかった。
「これ、私からのプレゼントなんだけど。開けてみて」
「うん。ありがとう。何かな」
 包装紙を剥がして中身を取り出すと、2冊の本が出てきた。
「これは・・・・・・。まさか」
 公が手にしたプレゼントとは、英会話の本だった。
「公は英語が得意だから大丈夫だとは思うけど、そういうのも良いかなって。役に立つ日常会話が、いろいろ載ってるのよ」
「詩織から、聞いたのかい?」
「うん。私が無理に聞いたんだから、詩織を責めないでね」
「・・・そうか。でも、まだ行くと決めた訳じゃないから」
 公が本を下に置いて、その話は終えようとすると沙希がすぐに戻した
「挑戦して、公。バスケをやってるからには、NBAは夢だよね」
「・・・・・・ああ」
「じゃあ、夢に向かって進まなきゃ。他のプレーヤーよりも可能性があるんだから」
「いや。でも、何年かかるか分からないんだぞ。沙希を連れて行くことは、出来ないんだぞ」
 未だ迷っていた公は、沙希の言葉に戸惑った。
「わたし、そんなに弱くないよ。それに公の足かせには、なりたくないの」
 真剣な目で公を見つめる。その目は、今にも泣きそうなのを我慢していた。
 まだ公が悩んでいた理由。それは沙希が寂しがるから。もちろんそれもあるが、公だって沙希と離れるのが嫌だった。
 寂しくなると思った。しかし、沙希にこんな姿を見せられたら、いったい自分は何をやっているんだと胸を打たれた。
「寂しくないかい?我慢できるかい?」
 それは、自分にも言い聞かせている言葉だ。
「そりゃあ、一緒にいられないのは寂しいけれど、公は前に進まないとダメだよ。わたしは待ってるから。
 ダメだったとしても、それはそれでいいじゃない。私は・・・・・・待っているから」
 堪えていたが、とうとう我慢できなくなった沙希は、ボロボロと大粒の涙を零した。
 そして立ち上がり、公の横に行って抱き付いた。
「待ってるから。頑張って。私は頑張る公が、大好きなんだよ」
「沙希!!」
 公は沙希の身体を、ギュッと力一杯に抱きしめた。沙希の存在を確かめたかった。自分が戻ってくる場所は、ここだということを。
「わかった。挑戦するからには、必ずなってみせる。やるからにはNBAは、もう夢じゃなくて目標だ。待っていてくれ」
「うん」
 そう沙希に誓った公の顔は、決意に満ちていた。夢は憧れでしかないが、目標は違う。それに向かって努力あるのみだ。
 その時、感動の場面に水を差すように電話が鳴った。
「はい。主人ですが」
「こんにちは。日本ではこんばんは。かしら」
「レイか。久しぶりだな」
「ええ。お久しぶりです。それで、渡米を決意されましたか?」
「え?何でそれを」
 沙希を見ると、涙を拭いながら謝るように手を合わせた。あの後すぐにレイに相談したのだが、公に断りもなく相談したことを詫びた。
「先週、沙希さんから頼まれたんですよ。NBAに挑戦するためには何をすればいいのか、調べてくれませんかって」
「そうだったのか。いつも世話になって悪いな」
「なに言ってるんですか。親友なんですから、当然ですよ」
「ありがとう」
 レイの話はこうだった。
 NBAに入るためには、何通りかの道がある。まずはプロ野球と同じでドラフト会議で指名してもらう道。
 これは当然、公には無理な話だ。他には、どこかのチームのトライアウトというテストに合格し、NBAの若手選手も出場する
 サマーリーグに参加することだ。そこで活躍して目を付けられれば、一つのチームと契約することが出来る。
 そして、そこでシーズン前に行われる20名限定のトレーニングキャンプに参加することが出来る。
 だが、ここまで残ることが出来ても、更なる試練が待っている。トレーニングキャンプには勿論、現役のNBA選手も参加する。
 そこで最終的に絞られる登録メンバー15名の中に入らなければ、公式戦のコートに立つことは許されない。
 他にも道はあるのだが、まずはトライアウトを受けることが一番早い道だという。
「伊集院と関係があるチームもありますが、プロは実力主義ですので、合否には力が及びません。公さんも分かっているとは思いますが」
「ああ。当然そうだろうな」
 コネが通用するような世界ではないのは承知しているし、もし通用したとしても使うはずがなかった。
「ただ、伊集院系列の会社とマネジメント契約を結んでいただければ、いろいろとバックアップしますので、いかがですか?
 バスケに集中できて良いかと思いますが」
「そうだな。頼むよ」
 住むところや、練習場所、いつどこでテストがあるかなど、バックアップをしてくれると非常に助かるので、公は喜んで了承した。
 バスケ雑誌の田村さんも、そこら辺の世話をしてくれるつもりだったのだろうが、伊集院の方が良いと思った。
「とりあえず、練習場所としてロサンゼルスにある施設を用意しましたから、そちらに行ってください。
 後は、公さんの頑張り次第です。頑張ってください」
「ああ。いろいろありがとう。礼はいずれ、必ずするから」
「そうですか?じゃあ今度、アメリカで夕食でもご馳走してもらいますね。実は私、4月からアメリカで勉強することになったんです。
 何かあったら電話を下さい。力になりますから」
「そうなのか。わかった。どうしても行き詰まったら連絡する」
「はい。むこうで住所が決まったら、こちらから連絡します。待っていて下さい。それじゃあ、また」
「うん。またな」
 電話を切った公は、沙希の方を向いて握り拳を作った。
「俺はやるぞ」
「うん」
 沙希にはその表情が、とても頼もしく見えた。そして、自分も待っているだけでなく、いろいろ頑張ろうと決意した。



 一ヶ月も経たないうちに、公は大学に中退届けを提出した。
 オリンピック代表も期待されている公なので、いろいろな所から引き留める声があったが、逆に応援の声もたくさんもらった。
 公は、きっかけをくれた田村さんに、お礼と伊集院の会社を選んだことのお詫びの電話をいれた。
 その時に独占取材を申し込まれ、今後は何でも一番最初に田村さんに伝えることになった。
 これがきっかけで翌日から高校卒業後、久しぶりに一躍時の人になり連日テレビ画面に顔を出した。
「こんなに騒がなくても、いいのになぁ」
 空港へ向かう車の中で、公はぼやいた。
「これじゃあ、無理でしたなんて言って、帰ってこられないじゃないか」
「ふふふ。いいじゃない、それでも。ねえ、沙希」
 詩織は笑いながら言った。
「うん」
「その時は、実業団があるさ」
「そうそう」
 田辺が付け加えて、運転中の木本が同意した。
 今日は、いよいよ出発の日。木本の車に乗せてもらい、成田まで送ってもらっていた。
 公の渡米となれば、本来なら空港にマスコミが押し寄せるはずだが、感動の見送りに邪魔が入らないように
 マスコミには嘘の日程を話し、田村さんにも来るのは控えてもらった。更に、レイの力で空港にも口止めをしてもらったので、
 空港内は普段どおりの様子だった。
 公は搭乗手続を済ませた後、誰に邪魔されることなく出発の時間まで別れを惜しんだ。
 数十分後、ロサンゼルス行きのアナウンスが流れた。
「いよいよだな。おもいっきり暴れてこい」
「日本人初、期待してるぜ。頑張れよ」
「ああ。精一杯頑張るよ」
 木本、田辺と固い握手を交わす。
「・・・詩織」
 寂しそうな表情で見つめていた詩織が、気を取り直して笑顔を作った。
「頑張ってね。私の幼馴染みは、NBA選手の主人公なんだよって、自慢させてね」
 詩織は公に抱き付いて、頬に軽くキスをした。
「ありがとう」
「さあ、俺達はここでお別れだ。後は、虹野に任せるよ」
「ああ」
「そうね。じゃあね、公」
 木本に促されて、田辺と詩織も手を振りながら公と沙希から離れた。
「はは。気を遣わせちゃったな」
「うん」
 沙希も寂しそうな顔をして公を見つめている。ウルウルと涙を溜めているが、流してはいない。
「身体に気を付けてね」
「うん」
「疲れているときは休むことも大事だから、無理をしないで怪我をしないようにね」
「うん」
「いつ戻ってきてもいいんだから、変なプレッシャーは感じなくても良いからね」
「うん」
「食事はキチンと3食摂ってね」
「うん」
「え〜と。それから、それから・・・・・・」
 言いたいことは山ほどあるのに、これ以上は出てこなかった。
「大丈夫だよ。どこへ行っても、俺は一人じゃないから」
 いつでも二人は繋がっているという言葉に、我慢していた涙が一筋、頬を伝って流れ落ちた。
「沙希、必ず迎えに来るからな」
「公・・・・・・うん。待ってるから」
 沙希は公に抱き付いて、胸に顔を埋めた。
「お別れじゃないから、さよならは言わないよ。いってらっしゃい、公」
「いってきます、沙希」
 最後に口づけを交わして、二人は離れた。
 エスカレーターを降りていく公の後ろ姿を、沙希は見えなくなるまで大きく手を振って見送った。
 窓の外には、滑走路を移動する飛行機が見える。
 直線に入り徐々にスピードを上げると、遂には離陸してあっという間に上昇していった。
「行っちゃったね」
「うん」
 沙希は、詩織と繋いでいる手にギュッと力を込めた。
「寂しくなったら、いつでも電話して」
「うん。ありがとう。どうしても我慢できなくなったときは泣くかも知れないけれど、公が頑張ってるんだから、私も頑張るんだ。
 迎えに来てくれたとき、隣にいることが似合う女性になってないと、いけないから」
「うん」
 沙希は将来的に、公のためになることを考えていた。明日からはそれのために精一杯、努力しようと誓った。



 公が渡米してから、2年半の歳月が流れた。
 1年目の挑戦はサマーキャンプまで残ることが出来たが、15人の登録メンバーには残ることが出来なかった。
 だが、それで諦めることなく次の道を探り、NBAとは独立したバスケットリーグであるABAリーグのチームと契約した。
 サマーキャンプでのアグレッシブな公のプレーに、目を付けてくれた人がいたのだ。
 ABAとは、NBAとは直接に繋がってはいないが、毎試合スカウトが視察に来て、優れた選手がいないか目を光らせている。
 ここからNBAに進んだ選手も、何人もいる。シーズン途中であっても怪我人が出れば、すぐにリストアップしている選手に声が掛かるのだ。
 公の場合は2シーズンABAでプレーをし、そこで腕を磨いたことで3回目のサマーキャンプで、見事15人のメンバーに残ることが出来た。
 このニュースは、全世界を駆け抜けた。公はもう、日本だけでなく世界でも有名なスポーツ選手になっていた。
 そして今日、極秘に日本へ戻ってくるという連絡が、沙希の元に昨夜届いた。かなり慌ただしい帰国らしく、
 公からではなくマネジメント会社からの連絡であった。
「もう着いたのかな」
 沙希は空港の中を走っていた。
 時計を見ると、到着時間は5分ほど過ぎていた。
「はあ、はあ、はあ」
 息切れした呼吸を整えて、昇って来るであろうエスカレーターの近くに立ち、ジッと上がり口を見つめた。
 しばらくすると、同じ飛行機に乗っていた人達と思われる一団が上がってきた。
「公。どこ?」
 何十人も上がってきて、人が途切れた。
「どこ?もう上がってきた後なのかな」
 周りをキョロキョロと見渡すが、公らしき人はいない。
 だんだん不安になってきた沙希は、今にも泣きそうになってきた。
「公」
 下を向いて落ち込んでいると、大きな影が床から伸びてきた。
「沙希。ただいま。迎えに来たよ」
「公」
 沙希は、ハッとして顔を上げた。
 二周りも大きくなった身体に、一段と逞しくなった顔を見て、涙が溢れてきた。
「say.you’re late.since you can always make me cry.」 (もう。遅いぞ。いっつも泣かせるんだから)
「沙希」
 沙希の流暢な英語に面食らった公は、目を丸くした。
「Do you think that my English is perfect?Are you surprised?」 (完璧でしょ?びっくりした?)
 涙声なので少し鼻に掛かっているが、しっかりした発音だった。
「Oh!perfect」 (凄いな。完璧だ) 
 沙希はアメリカで生活することになってもいいように、詩織のつてでアメリカ人と友達になり一生懸命、英会話を勉強した。
 今では、簡単な日常会話なら不自由しない程度に上達した。
「公が頑張ってるんだもの。ただ待ってるだけじゃ、公に相応しい女性になれないから」
「そうか。よく頑張ったな。髪型代えたんだね」
 頭に手をやり、優しく撫でた。
「うん。どう?」
「いいよ。似合う。大人っぽくなった」
「ホント?良かった」
 少し、くせっ毛だった髪はストレートに整えたことで、サラッと流れている。女の子というより女性という雰囲気が感じられた。
「公も、格好良くなったね」
「そうかい?」
 一端、話が止まり、お互いジッと見つめ合う。
「沙希」
「ん?」
「近いうちに、結婚しよう」
「え?」
「来月には、また渡米しなくちゃいけない。結婚して、一緒に行こう」
 一番望んでいた言葉を聞き、沙希は口を手で覆って何度もリフレインした。
 再び涙が溢れてきた。
「もう1回、言ってくれる?」
「結婚しよう、沙希」
「嬉しい。謹んで・・・お受けします。これからも、よろしくお願いします」
「ありがとう。これからは、ずっと一緒だ」
「うん」
 沙希が公の大きな大きな胸に抱き付くと、もう離しはしないと言わんばかりに、腕を回して力一杯に抱きしめられた。
「公。私ね。栄養学の勉強もしたのよ」
「栄養学?」
「そう。公の健康管理は私の仕事なの。公に永久就職よ」
「ははは。よろしく頼むよ。俺の可愛いマネージャーさん」
「うん」
 二人は同時に笑って、熱い誓いのキスを交わした。
 これからも二人一緒に、笑って悲しんで楽しんでと、様々なことを分かち合っていくことだろう。
 伝説の樹の下で将来を誓い合った二人の人生はいま、一つになった。

    おしまい



   あとがき

 皆さん、お久しぶりです。大変お待たせしました。
 8ヶ月年ぶりの更新です。
 無事に沙希編も完結することが出来て、まずはめでたいです。
 「旅立ち」というタイトルには、驚いた方もいたかな。(^0^)


 私が望むエンディングに、無事に辿り着きました。読者の皆様にも気に入っていただけると嬉しいです。
 渡米することは決まっていたのですが、NBA事情は何も分からなかったので、
 能代工業出身の田臥選手の動向が大変参考になりました。
 公のポジションで契約するにはかなり難しいでしょうが、そこはそれ、二次小説ということで気にしないでくださいね。
 空港でのシーンは、多分にクイズソフト「ときめきの放課後」の影響を受けています。
 あのゲームをプレーしたことがある方は、ニヤリとしたと同時に懐かしいと思われたことでしょう。
 沙希の新しい髪型を、上手く文章で表現することが出来なかったのが悔やまれますが、
 ご存じの方はエンディング2の沙希を想像してください。

 詩織編では書いたベッドシーンですが、今回はあえて書かずに入浴シーンでそういう雰囲気を表現してみました。
 妄想を膨らましすぎて、鼻血は出ませんでしたか?私は大丈夫でした。(^_^)

 さて予定していた第60話ですが、メインキャラによる座談会のようなものを考えていましたが、それってどうなんでしょう。
 沙希編を書き終えてみて、何だか蛇足になってしまいそうな気がしてきました。
 ですから、書こうという意欲が湧いてきたら書くかもしれません。いまは未定としておきます。

 というわけで、これでひとまず「My wish」は完結となります。
 約5年という長きにわたり読んでくださった読者様には、謹んでお礼を申し上げます。
 そして度々、感想と応援のメールを下さった方々。長期間の執筆で大変励みになったことを、重ねてお礼申し上げます。

 次回作は未定となっておりますが、何らかの形で小説は書き続けると思います。実際、今も書いてます。
 その発表の場が、このHPになるのか投稿作品になるのかは、今は分かりません。

 それでは皆様、ありがとうございました。
 また、お会いしましょう


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