家捜し競作


「わたしの気持ちは・・・」




 それにしても、公先輩が風邪引くとはねえ。
 優美から聞いたときは信じられなかったけど、クラブにも出てこなかったってことは本当
 なんだろうなあ。
 だってほら、よく言うじゃない。ナントカは風邪を引かないって。ナントカに付ける薬はない、とも言うわね。
 死ななきゃ治らない、ってのもあったっけ。
 まあ、それはともかく、公先輩は風邪を引いちゃって、学校休んじゃったのよ。
 で、クラブ終わってから、ちょっとお見舞いに行こうかなって思ったわけ。
 虹野先輩も誘ったんだけど、なんか用事があるとかでダメだった。
 でも、おかしいのよね。だって、公先輩が病気なのよ?一番心配なのは、虹野先輩のはず。
 なのに、どうしてお見舞い行かないんだろ?
 先輩のことだから、ちょっとした用事なんかパスしてお見舞い行きそうな気がするんだけどなあ。
 よっぽど大事な用なのかな?

 そんなことを考えていると、いつの間にか公先輩の家の前に来ていた。
 でも、こんな時間なのに、明かりがついていない。
 もしかしたら、留守なのかな?一応ベルを鳴らしてみたけど、反応なし。
 で、ドアノブに手をかけると・・・なんだ、開いてるじゃない。
「お邪魔しまーす」
 ・・・あれ?やっぱり留守なのかな?
 でも、玄関は開いてたし・・・。
 ま、いいか。ちょっと公先輩の様子見てこよっと。いなかったら、それはそれで仕方ないし。
 公先輩の部屋に上がるのは今日で2回目かな。確か、2階に上がって、そう、この部屋だったはず。
 そ〜っと扉を開けると、思った通り、公先輩はベッドで寝ていた。
「こんばんは〜・・・」
 声をかけてみたけど、反応はなし。ぐっすり眠ってるみたい。
 どうしよう、起きるまで待とうかな?
 そう思ったとき、本棚に「週刊ゴールネット」が並べてあるのが見えた。さっすが公先輩、毎週買ってるのね。
 わたしの思った通り、サッカーバカ。
 まあいいや。ちょっとだけ、読ませてもらいましょ。ちょっとくらいなら、明かりつけても大丈夫よね?
 適当に一冊引き抜くと、表紙に「今年注目の高校生イレブン」って書いてある。
 中を見てみると、高校サッカーチームの紹介があった。載ってるのは、市立板橋とか、
 家具島実業とか、帯京とか、有名校ばっかり。

「あれ?」
 わたしの目に止まったのは、「今後の掲載予定」のところ。そこに、「私立きらめき高校」の名前があった。
 ふうん、うちも捨てたもんじゃないってわけ?そうだ、せっかくだから読んでみよっと。
 問題は、どの号に載ってるかわからないってことね。仕方ない、一冊ずつ探してみますか。
 そうやって一冊ずつ取ってみたけど、全然見つからなかった。本当にただの「予定」だったのかしら?
 そして、いつの間にか残り一冊になっていた。
「これで最後か・・・」
 その一冊を引き抜こうとしたとき、その隣にあった分厚いものに目が止まった。
「アルバム・・・?」
 背表紙にはそう書いてあった。
「う〜ん・・・」
 迷った。だってほら、他人のアルバムってすごく興味あるじゃない?
 昔の写真とか見ると、今とほとんど変わってなかったりすると笑えるし、全然違っててもそれはそれで笑える。
 このアルバムには、わたしの知らない公先輩の姿がある・・・そう思うと、見ずにはいられない。
 でも、やっぱり後ろめたい気もするし・・・いやいや、それがまた好奇心を刺激して・・・。
・・・・・・・・
 え〜い、見ちゃえ!
 そうと決まればわたしの行動は早い。
 まずは1ページ目から。これは小学生のときかな?小さいな・・・。ふふっ、かわいい。
 この隣の女の子が藤崎詩織さんかしら?幼馴染みって話よね、確か。う〜ん、ちょっとジェラシー。
 なんだか、今とあんまり変わらないかも。今でも、子供っぽいと思うとこあるし。
 まあ、わたしはそんなところが好き・・・って、ダメよ、みのり!公先輩は虹野先輩が・・・ね、だから。
 ・・・うん、落ち着いた。大丈夫。
 これは中学のときね。なんだか小学生のときのを大きくしただけって言うか・・・。
 やっぱり変わってないなあ。公先輩、前からこんなだったんだ。
どさっ!
 わっ、本棚の本が倒れた!?そっか、本を抜いたせいで不安定になってたから・・・。
「・・・う〜ん・・・」
 やぱい、起きた?
「・・・うぐぅ・・・たいやき・・・」
 寝言、かな?
「・・・zzz・・・」
 ほっ。よかった。
 でも、なんであんな寝言を・・・?もしかして、たい焼き食べたかったのかな?
 でも、今はあんまりお金持ってないし。食い逃げするわけにもいかないもんね。
 ごめんね、先輩。
 えっと、じゃあアルバムに戻りましょ。
 この写真は・・・ああ、うちの高校。ってことは、高校生になったときの写真かな?
 後ろの看板に「入学式」って書いてあるし。一緒に写ってるのは優美のお兄さんだわ。
 仲がいいとは聞いてたけど、この頃からの付き合いなのね。
 あら、虹野先輩だ。あ、ここにも。ここにも。まだある。
 ・・・このアルバム、後半はほとんどが虹野先輩の写真だった。公先輩とツーショットの写真もある。
 ・・・そっか、こんな頃から・・・これじゃ、わたし、勝ち目ないじゃない・・・。
 分かってるんだけどね。わたしが出る幕じゃないってこと。
 それに、今さら二人の邪魔をしようとも思わない。
 だってわたし、公先輩も虹野先輩も大好きだから。分かってるの。・・・分かってるんだけど・・・。
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 なんで涙が出てくるのよ。
 あんたバカじゃないの?全然分かってないじゃない。
 わたしはアルバムを閉じた。そして、公先輩の顔に目をやる。
 ・・・先輩のせいなんですからね。先輩が、あまりに素敵だから。
 そろそろ、帰らなきゃ。わたしは本棚を片付けて、立ち上がった。
 先輩、おやすみなさい。また明日、学校で。
 わたしが部屋を出ようとすると、
「みのりちゃん?」
 公先輩の声が。
「先輩・・・風邪なんだから、寝てなくちゃダメですよ」わたしは、振り返らずに言った。
 だって、こんな顔見られたくないもん。
「帰るの?」
「はい、もうこんな時間だし。先輩、早く風邪治してくださいよ。に・・・虹野先輩だって、心配してるんだから」
「う、うん。ありがとう」
「じゃあ、わたしはこれで帰りますね」今度こそ、出よう。もう口聞いてらんない。
「待ってよ。もうちょっと話しようよ。今日、うちの親帰り遅くってさ」
「・・・ごめんなさい」
 わたしは扉を閉めて、部屋を出た。これ以上一緒にいると、わたし多分先輩の前で泣いちゃう。
 みのり、もうちょっとだけ我慢して。泣くのは帰ってから。
「みのりちゃん!」
 公先輩が、部屋から飛び出してきた。先輩、病気は?いや、そんなことよりも、どうして?
 先輩は、階段を下りようとしていた私の手をつかんだ。
「どうしたんだよ?なんか変だよ?」
「先輩、離して」
「みのりちゃん!」
「離してってば!」
 私は強引にその手をふりほどいた。
「ご、ごめん。でも、みのりちゃん元気ないよ?」

「・・・先輩こそ、自分の心配してください。わたしにかまわないで」
「かまうさ。だって、元気のないみのりちゃんなんて、見たくないよ」
「やめてよ!」
 もう、ダメ。わたしは涙が出るのもかまわず、口を動かしつづけた。
「どうしてそんなにわたしに優しくするの?先輩に優しくされると、わたしすごく傷つくのよ。
 わかる?わからないでしょうね、この鈍感!」
 そこまで一息に言うと、わたしは振り返って先輩をにらみつけた。
 多分、今のわたしはひどい顔なんだと思う。
「わかんねーよ、なんで傷つくかなんて。だいたい、みのりちゃんが元気ないの見て、
 平気でいられると思ってんのか?・・・鈍感は、みのりちゃんのほうだろ!」
 むっかぁ。なによ、それ!
「鈍感って、どういうことよ?わたしがどんな気持ちでいたかわかってんの?
 ・・・ああ、こんなんだったら、お見舞いなんて来なきゃよかった!」
「みのりちゃんの・・・気持ち?」
 ・・・あ、しまった。
「どういうことだよ、それ」
 ああっ、みのりのバカ!つい、口が滑っちゃった。ど、どうしよう・・・引っ込みつかなくなっちゃったよ・・・。
・・・・・・・・・
 言っちゃう?
・・・・・・・・・
「わ・・・わたし、好きなんです。先輩のこと」
「・・・・・・」
「で、でも、先輩が虹野先輩のこと好きなのは知ってます。だから、・・・わたしには、かまわないでください・・・」
 あーあ、言っちゃった。言ってしまったら、意外とすっきりした。
 公先輩は、ふう、とため息をついた。
「どうやら俺たちは、お互いに勘違いしてたみたいだな」
「・・・どういうことですか?」

「・・・俺、好きだよ。みのりちゃんのことが」
「え?」
「だから、好きだから、一緒にいて欲しかった。ほら、病気になると、心細くなるから、さ」
 そう言って、照れくさそうに鼻を掻いた。
「先輩・・・」
 嬉しかった。ただ、嬉しかった。でも、引っかかるものがないわけではなかった。
「えっと、このこと、虹野先輩は・・・」
「知ってるさ。俺、以前虹野さんに告白されたんだ。それはもちろん断ったんだけど、
 そのとき彼女に『やっぱり』って言われた。『みのりちゃんのこと、好きなんでしょ?』って」
 じゃあ、今日お見舞いに来なかったのはわたしに気を使ったから?そうなんですか、虹野先輩?
「みのりちゃん?」
「あ、はい。じゃあ、しょうがないですね」
 わたしは照れ隠しのせいか、早口になっていた。
「今日は先輩の気の済むまで、一緒にいてあげます」
 そして、先輩を追い越して先に部屋に入った。
「ほら、早く来ないと治るものも治りませんよ」
「あ・・・ああ」先輩は部屋に入ると、扉を閉めた。
「先輩、今度からはわたしの写真、いっぱい撮ってくださいね」
「写真?まあ、いいけど、どうして?」
「どうしても!」


                〜FIN

    後書きのような言い訳

 どうも、コウでっす。
 今回はあきらさん主催の「家捜しSS競作」に参加させていただきました。

 すでに決まっていたキャラを見たら、ほとんどの方が「2」のキャラなんで、
 ちょっとヘソ曲げて「1」の、しかもサブキャラであるみのりちゃんを選んでみました。
 いかがでしたでしょうか?あんまり「家捜し」っぽくない?ごもっとも。
 他の皆さんに比べればまだまだ未熟ですが、もしよろしかったら感想などいただけると嬉しいです。
 これが掲載される頃、僕はきっと卒論で燃え尽きているでしょう。
 そのときは、骨だけでも拾ってください・・・。
 でわでわみなさん、ごきげんよ〜♪

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