家捜し競作SS
featuring Kasumi Asou & Hikari Hinomoto
Pesented by 詩緒 倫
「こ、これは・・・・・・華澄さんの○○○。」
「おおっ、こっちは、・・・・・・華澄さんの○○○○。」
「公ニ君、バカなこと言ってないで真剣に探してよね。」
光の機嫌はあまり良くなかった。
「すまない。真剣に探すよ。」
「もう、だいたい、誰のせいでこんな事やっていると思っているのよ。だいたい悪いのは君なんだよ。」
光は、腰に手を当てたポーズで、さらに公ニを責めたてた。
公ニは、光から貰ったあるモノを、華澄にあげてしまったのであった。
光にとって、公ニのその行為は許し難かったのである。
二人がいるのは、華澄の部屋であった。
フローリングの床に、シンプルな観葉植物
落ちついた感じのレイアウトで、空間が広いので、実際より広く感じられる。
ガラス製のテーブルと淡いグリーンのクッション・・・・・
本棚、化粧台、洋服タンスとオーディオラック・・・・・・・
そして、エレクトーン・・・・・・、きっとピアノの代わりなんだろう・・・・
華澄が演奏する優雅な姿が浮かんできそうなイメージである。
白いレースのカーテン越しに射し込む陽射し・・・・・・
窓から見える風景は、緑があった。
しかし、主である華澄の姿は無く、その代わりに、華澄の少し歳の離れた幼なじみが二人いた。
一人は、陽ノ下光。
もう一人は、主人公ニ。
ちなみに、華澄は、ひびきの高校の新任教師で、二人の担任でもあった。
華澄は、親元を離れて一人暮しをしている。
教師の一人暮しの部屋に、生徒である男女が一組・・・・・・
どう考えても、奇妙なシチュエーションであった。
「光・・・・・・、やっぱり、華澄さんに事情を話した方が、良いと思うけどなあ。」
「そんなのは、ダメよ。」
「ふぅ〜。」
公ニは、あからさまに大きなため息をついた。
その姿をジト目で見る光・・・・・・・
「早く探し出してよね。もうすぐ、華澄さんが戻って来てしまうわ。」
光と公ニは、昼食前に、華澄の部屋に突然押しかけてきて、
華澄さんの手料理が食べたいとか言って、なんとか、華澄一人で外出させたのであった。
もちろん、華澄の行き先は、近所のスーパーである20〜30分もしないうちに戻って来るはずであった。
しだいに、二人に焦りの表情が浮かんできた。
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しばらく、無言で真剣に探しまわる二人・・・・・
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きれいに片付いた部屋なので、探す場所は限られていた。
二人は、本棚と机を中心に探した。
「あった!光、見つけたぞ!」
公ニは、机の引出しから、目的のモノを見つけたようであった。
「えっ!本当?見せてみて。」
光は、急いで、公ニに駈け寄る。
「ほら。これだよ。」
公ニは、光の目の前に見つけ出したモノを差し出した。
それは、アルバムであった。
公ニは、丁寧に、机の上に、そのアルバムを置いた。
そして、二人は、アルバムをめくり、目的の写真を探し続ける。
幼稚園の華澄さん
小学生の華澄さん
中学生の華澄さん
ピアノを弾く華澄さん
セーラー服姿の華澄さん
どれも、二人にとって初めて見る華澄さんであった。
幼い頃から美人であった事を改めて実感する公ニと光であった。
公ニは、じっくりと見てみたい衝動があったが、そんな余裕などあるはずも無かった。
次第に、アルバムをめくるスピードが早くなっていた。
「あった!」
公ニは思わず声をあげてしまった。
光は、その写真をアルバムから抜き出してから、注意深くその写真の裏側を見た。
「・・・・・うん、間違い無いわ。・・・・・コレよ。」
光は、代わりの写真を自分のポーチから取り出してアルバムに収めた。
公ニにとって、二つの写真は、どう見ても同じ写真に見えた。
「どこが違うんだ?」
「それは・・・・・・とにかく、違うのよ。」
「・・・・・・まあ、いいか。」
公ニは、あまり納得しない様子であったけれど、今はそんな事を言っている場合ではなかった。
光は、アルバムを元にあった場所に、そっと戻した。
「さて、これで良しと。」
光は、華澄の元にあった写真を、大切そうに自分のポーチにしまった。
その時、華澄の部屋のドアが開いた。
「お待たせ!」
元気な声で、華澄が自分の部屋に戻ってきた。
その両手には、スーパーで買ってきた食材があった。
必要も無いのに慌てて、何も無かったように取り繕う光と公ニ・・・・
しかし、どう見ても挙動不審な動きと表情であった。
華澄は、二人に落ちつきが無いのに気付いた。
さらに、光の顔が少し赤くなっている事にも気付いた。
「あら?どうかしたの?」
「「いえ、なんでもないです。」」
光と公ニの声が、見事にハモッてしまった。
「あら、息もぴったりね。・・・・・まさか、キスでもしてたのかな?」
「「そんな事、してません。」」
また、ハモッてしまった。
「うふふっ・・・・。」
これには、華澄は、思わず笑ってしまった。
「見事なコンビだね。君たち二人は・・・・。」
夕刻、華澄の部屋を後にした二人は、駅前の喫茶店にいた。
温かい紅茶を飲み終えてから、光はポーチからさっきの写真を取り出した。
「はい、コレ。」
光は、改めて写真を公ニに手渡した。
「これは、君にあげたモノだから・・・・・・。」
「光・・・・・・。いいのか?」
公ニは、その写真が光の手元に残っていない事に気付いていた。
写真は2枚しかなく、もう1枚が華澄さんの元にあるわけなんだから、当然であった。
「華澄さんから、君に渡す分として受け取っていたの。いつかきっと会えると思っていたから・・・・・。
そして、7年たってようやく渡せた。なのに、君は・・・・・・・。」
「すまない、無神経だったよ。反省している。」
「その写真、ずーっと、君に持っていて欲しかったんだよ。」
公ニは、黙ってうなずいた。
後日、学校の廊下・・・・・・
華澄は、あたりを見渡して公ニしかいない事を確認してから、公ニに声をかけた。
「公ニ君、コレ返しておくわ。」
華澄は、公ニに古びた1枚の写真を手渡した。
「えっ!」
それは、光と二人ですりかえた写真であった。
「私、光ちゃんの気持ちを考えたら、コレだけは持っていられないわ。
欲しがったのは私だけど、安易に私に渡してしまうのも良くないわよ。」
「華澄さん・・・・・・。」
華澄はどうやら、すりかえた事には気付いていないみたいであった。
もっとも、公ニも2枚の写真の違いには全く気付いていないので、その事自体にはあまり意味が
無いのかもしれない。
「その写真、実家にもあるから・・・・・。」
そう言う華澄は、どこか寂しそうに見えたし、実家に写真があるのは嘘であった。
「分かりました。」
公ニは、華澄から素直にその写真を受け取り、教室に戻って行った。
その日の放課後、公ニは、光を誘って一緒に下校した。
「光、コレ渡すよ。」
歩きながら、公ニは先ほど華澄から預かった1枚の写真を光に手渡した。
「えっ・・・・これは?」
写真を見た光は、立ち止まった。
光に合わせるように立ち止まった公ニは、光に言った。
「華澄さんが、光に返してくれって・・・・・・。」
公ニは、光の真正面に立って、じっと光の瞳をみつめた。
「・・・そうなんだ・・・・・・・・・・華澄さん・・・・・。」
「それ、光の分なんだろ・・・・・・。」
「・・・・・うん。」
光は小さくうなずいた後、その写真を大切そうに両手で、自分の胸に当てた。
「行こうか・・・・・。」
公ニの言葉は、とてもやさしかった。
「うん・・・・。」
先に歩き始めた公ニの後を追いかけるように歩き出す光・・・・・・
公ニにとって、その照れた仕草が愛しく感じられたのであった。
歩きながら交わす言葉は少なかったけれど・・・・
そこには、温もりがあった。
光が。そっと右手を公ニの左手に絡めると、公ニは、光の右手を握り返してきた。
肩を寄り添って歩く公ニと光・・・・・
そして、赤い夕陽が若い二人を照らしていた。
その日の夜、華澄は、中学時代のアルバムを取り出して、懐かしそうに眺めていた。
そして、あるページで、華澄の手が止まった。
そのページは、1枚だけ写真がなかった。
しかし、写真のタイトルだけは書いてあった。
かつては、そこに写真があった事を物語っていた。
− 遊園地にて 1992年3月31日 −
「どうして、あの写真、2枚しかないだろうね・・・・・・。」
華澄は、小さなため息をついた。
かつて、幼かった光が、どうしても公ニにあの写真を渡したいと言い張っていた。
その時、既にネガは無く、焼き増しは出来なかった。
困った華澄が、自分の分の写真を光に渡してしまったのである。
今、公ニの手元にある写真は、元々ここにあったモノであった。
だからこそ、その写真を取り戻したかった。
たまたま、公ニからその写真を見せてもらった時、思わず欲しいと言ってしまったのは本心であった。
「恋なのかな・・・・・・。」
華澄は、公ニと二人で出かける事が多かった。
でも、それは恋人のそれではなかった・・・・・。
正直なところ、自分の気持ちが分からなかった。
しかし、ただの幼なじみではない事は確実であった。
「彼氏代理補佐見習・・・・・・・なんて言ってしまったけれど・・・・・・本当は・・・・違うの・・・・・・。」
もう手元にない写真に向かって呟く華澄・・・・・
同じ頃、光は、自分の元に戻って来た思い出の写真を、自分の机の上のフォトスタンドに戻していた。
中学生の華澄と小学生の光と公ニが写っている大切な思い出の写真・・・・
公ニが、ひびきの市から引越しする前日に3人で行った遊園地で撮ったたった1枚の写真・・・・・
そこには、まだ髪が長く、泣虫だった幼い自分がいる。
いつも一緒に遊んでいた幼なじみの公ニがいる。
いつも面倒を見てくれた憧れだった華澄がいる。
光は、いつまでも飽きもせずに、ずっとその写真を見ていた。
そして、写真に映っている小学生の公ニに向かって小さな声で呟いた。
「あのね、私の手元にある写真と君の手元にある写真の違いはね。写真の裏側よ。
さっと見ただけでは分からないけれど、君のには、私の想いが書いてあるの・・・・・・。
いつか、きっと教えてあげるわね。公ニ君。」
「鉛筆で一度書いた後、消しゴムで消した君へのメッセージ・・・・・
筆圧で、ほんの少しだけ窪んでいるので、よ〜く見ると判るの・・・・・・」
〜fin〜
後書き
今回の話は、3年時の文化祭の光ちゃんイベントをヒントに、ストーリーを構成しました。
時期的にも同じ頃を想定しています。
あのイベントの光ちゃんの心情に近い展開にしたつもりですが、いかがでしょうか?
最初は、家捜しという事で、ギャグ路線で書き始めましたが、上手く書けませんでした。
華澄さんの部屋でH本というのは、なかなか難しいですね。←言い訳 ^^;
そこで、路線変更し、光ちゃんを登場させて得意の泥沼路線にしようとしたんですが、これもボツ!
華澄さんの目の前で、光と公ニがキスという収拾が着かない展開なので、短編では無理でした。
ほんの少しだけ名残が残っています(笑)
結局、爽やか路線(本当か?)にしました。
さて、私は、ゲームの「ときメモ2」で、華澄さん狙いでプレイしても、
なぜか毎回光ちゃんに転んでしまいます。
まさか、SSを書いても、そうなるとは思いませんでした(苦笑)
最初は、華澄さんがヒロインだったんだよ〜。
信じて下さい。
でも、なぜか光ちゃんがヒロインになってしまったような・・・・・。
まあ、いいか←結構いいかげん
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