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2月のとある日曜の朝。 「う〜ん。いいお天気。晴れてよかったですね。 ね?妖精さん?。」 彼女〜白雪美帆〜は、主人家を訪ねるべく、日溜まりの中を歩いていた。 昨日降っていた雪も今朝はやんでおり、今は日陰に少し残っている程度。 誰が作ったのか、小さな雪だるまの姿もある。 そんな中を、美帆は歩く。 見ている者が幸せになるような、やさしい微笑みを口元に浮かべて。 Akira Presents 家捜しシリーズ 『幸せのカタチ』 〜白雪美帆〜 主人宅前。 冬の晴れ間、風の精が踊る様を見ながら、ゆっくりと歩いていた美帆だが、家を少し早めに出ていたこともあり、 10時の約束の時間に遅れることなく主人家にたどり着いていた。 「ここが公二さんの家・・・。」 しばらく玄関の前でたたずみ、主人家を見上げる美帆。 (ここに公二さんが住んでいる・・・) (私もいつかは、公二さんと一緒に住んで・・・) (そして、朝も、お昼も、夜も、ずっと公二さんと一緒にいて・・・) (・・・・・・) それは、自分自身の望み。 空想好き、現実逃避といわれても、美帆はこの時間が大好きだった。 赤く染まった頬に手を添え、小首を傾げる美帆。 その姿は、通りかかる男性の9割を振り返らせるものだった。 そこかしこで起こる痴話喧嘩の声にようやく我に返ると、別の意味で顔を赤くしながら、主人家のチャイムを押した。 ☆ 「ここが、公二さんのお部屋なんですねぇ・・・ 私、男の人のお部屋に入るのは、初めてなんですよ。」 美帆は今、公二とともに公二の部屋にいる。 どことなく、ぼぉっとした感じなのは、つい先ほどの玄関での会話のせいだ。 玄関前での想像の影響か、公二の母を思わず「お母様」と呼んでしまい、公二が公二の母から さんざんからかわれたのである。 その隣で、赤くなって言い訳を考える美帆に、 「あなたになら、”お母さん”ってよばれるのも、悪くないわね。」 と、”お許し”が出、晴れて母親公認の仲となれたのだ。 今、美帆は、”うれしいけど、気恥ずかしい”状態で、一言でいえばのぼせているのである。 公二も同じようにぼぉっとしていたが、美帆の声にようやく我に返ると、 「あ、ごめんごめん。さ、こっちに座って。」 そう言って、美帆が大好きな、見る者すべてを惹き付けるような優しい笑顔を美帆に送りながら、 ガラステーブルの前に置かれたクッションに導いた。 公二の部屋は、床がフローリングになっており、部屋の中央には薄灰色のカーペットが敷かれている。 そのカーペットの上に、ガラステーブルと、ピンクとブルーのクッションが準備されており、 美帆はピンクのクッションに座った。 「それじゃあ、はじめようか?」 「そうですね。じゃあ、簡単なものから始めますね。」 そういって、ボーチからタロットカードを取り出す美帆。 美帆が公二宅を訪れたのは、公二に占いを教えるため・・・ 公二から、簡単な占いの方法を教えて欲しいと、お願いされたからだ。 もちろん、公二以外の男性からお願いされたら、即座に断っていたに違いない。 美帆にとって、公二以外の男性とつきあう事は、すでに考えられないことだった。 (男の人のお部屋に、二人っきりでいるなんて・・・ ちょっと前の私からは、考えられませんね。) そんなことを考えながら、カードを円を描くように混ぜ合わせる。 いつもの占いの時とは違う、穏やかで優しい時間が流れる・・・ (今なら、どんな占いでも、最高の結果がでそうです。) カードを一つの山にまとめる。 占う相手に、特別な感情をもっていれば、占いにならない・・・ これは本当。 でも、今は、公二に占いの方法を教えるだけ・・・ 目にすることが少ない、最高の結果ばかりが得られても、別に問題にはならない。 それに、教える形であっても、公二のためだけに占いができることが、美帆にはうれしかった。 カードの山を3つに分け、元に戻す。 これで準備完了。 「えぇと、これから始めるのは、タロット占いの一つ、ジュピタースプレットです。 これは、1日の運勢を占う方法なんですよ。」 「ふむふむ」 「タロット占いの代表的なものは、ホロスコープ法とか、古代ケルト十字法などですが、 まずはこのジュピタースプレットでカードの”意味”に慣れた方がいいと思います。」 「わかった。美帆ちゃんの言うことだから、信じるよ」 「あ、ありがとうございます。」 「え? あ・・・」 ちょっと気障なセリフに、再び頬を染める二人・・・ うつむく美帆に、あさっての方向を向いて鼻の頭を掻く公二。 先ほどよりもさらに優しい雰囲気が、あたりを包んでいた。 しばらくして落ち着いた美帆は、 「・・・あ、あの、続けますね?」 と、公二に尋ねた。 公二も、そのころには落ち着いたのか、それでも赤い顔をしながらうなずく。 それを見た美帆は、自分の頬が再び熱くなるのを感じながらも、説明の続きをはじめた。 ・・・・・・ 「これで説明は終わりですけれど、わかりましたか?」 「うん、何とかね。 ちょっと自分で占ってみたいから、カードを貸してもらえないかな?」 「あ、はい。どうぞ。」 「ありがとう。・・・よろしく。」 そう言って、カードにも声をかける公二。 そんな何気ない仕草でも、美帆はうれしかった。 今まで周りにいた男の子は、占いに興味を持ってくれなかった。 自分を、いつも変な目で見ていた。 でも、公二は違う。 公二だけは、自分をちゃんと見ていてくれる。 そしてなにより、誰よりも優しい心を持っている・・・ 美帆は、今、ささやかな幸せを感じていた。 「・・・まずはカードを切って・・・」 ・・・ ・・・ 「できた・・・ このカードだと・・・」 ・・・ 「はい、そうですね。すごいです、公二さん。これが初めてなのに、 一つ一つのカードの意味を、ちゃんと捉えています。私と同じように・・・」 「あ、美帆ちゃんも同じなんだ。結構、気が合うのかもね。」 驚いたことに、公二にしては珍しく、つぶやくような美帆の声を聞き取っていた。 美帆も、決して短いとはいえない付き合いから返事があるとは思っていなかったため、驚いた顔をしている。 しかし、それも一瞬のこと。 いつもよりも120%増しの楽しげな笑顔で、 「くすくす。そうですね。」 と答えていた。 「次は、ダウジングをしましょうか。」 普段はあまり聞くことはない、弾むような声で公二を誘う美帆。 公二が、自分と同じ感性を持っていることがよほどうれしかったのだろう。 公二は(相変わらず、なぜ美帆が浮かれているのか、さっぱりわかっていなかったが)、そんな美帆に戸惑いつつも、 美帆のうれしそうな顔に頬を弛め、美帆の誘いを受けた。 「ところで、ダウジングって?」 「えぇ。錘とか木の枝とかで探し物をしたり、簡単な運勢を占ったりするんです。 運勢を占うのは、タロットカードのほうが詳しく占えますけど、捜し物ならこちらの方がよく当たるんですよ。 それに、家の外では、カードを広げる事ってなかなかできませんから。」 そういって、ポーチからペンデュラムを取り出す美帆。 銀の鎖に透き通るような純度の高い水晶という、こちらも本格的な一品である。 「まずこうやって片手で持ちます。」 ・・・・・・ 「簡単ですけど、これで説明は終わりです。 公二さん、やってみませんか?」 「もちろん! また、貸してもらえるかな?」 「えぇ、もちろんです。」 そう言って、ペンデュラムを公二に渡す美帆。 カードのときと同じように、美帆とペンデュラムにお礼と挨拶をすると、早速ダウジングをはじめた。 ・・・ しばらくすると、ペンデュラムが時計周りに回転をはじめた。 「動いた・・・ 美帆ちゃん、動いたよ!」 うれしさのあまり、ペンデュラムを持ったまま美帆の手を取ってぶんぶんと上下に振る公二。 「はい、よかったですね、公二さん。」 美帆も、うれしそうに目を細める。 そして、ふと、公二が自分の手を握っていることに気がつくと、今度は盛大に頬を染める。 公二もまた、そんな美帆の様子を見て、自分が手を握っていたことに気がつき、慌てて手を離す。 「あ、その、ごめん!」 「い、いいえ、その、大丈夫です。うれしいです・・・」 思わず本音がこぼれる美帆。 だが、今度は公二も気づかなかったらしく、 「あぅあぅあぅ・・・」 真っ赤な顔で奇妙な踊り(?)を踊っていた。 もちろん、動転して手が勝手に動いているだけだが・・・ 「あ、あの、公二さん? 私は本当に気にしてませんから・・・ それよりも、続きをしませんか?」 その声に、ようやく落ち着きを取り戻す公二。 「う、うん、ほんとーに、ごめん。 じゃ、じゃあ、続きをやるね。」 そう言うと、再びペンデュラムを持ち、ダウジングを続ける。 ☆ しばらく練習をしていた公二だが、ようやくコツがつかめたのか、ペンデュラムをとめて顔を上げた。 「なんとか、うまく動くようになったかな?」 「そうですね。もう、ちゃんと占いをはじめても、大丈夫だと思いますよ。」 うれしそうに答える美帆。 当然だろう。 ペンデュラムの振れ方が、美帆と公二はまったく同じだったのだ。 タロットカードに引き続き、ダウジングでも同じ結果を出した・・・ 美帆にしてみれば、運命を感じずにはいられないのである。 「それじゃあ、公二さん。 この部屋で、無くなった物はないですか?」 「無くなった物?」 「はいっ。せっかくですから、ダウジングで探して見ませんか?」 本当にうれしそうにたずねる美帆。 公二がこの笑顔に逆らえるわけはなく、 「うん、わかった。やってみるよ。」 そう答えていた。 無くした物は、確かにある。 ただ、それが美帆にかかわることであるため、公二としてはなるべく美帆の前で探したくはない。 しかし、自分で探し出すことができず、そしてこれ以上無くしたままにしたくはない以上、 この機を逃すことはできなかった。 なにより、せっかく美帆が誘ってくれているのに、断るなどできるはずがない。 (美帆ちゃんに見つかるのは恥ずかしいが、仕方なし!) 公二は覚悟を決め、無くし物を探すべく、ダウジングをはじめた。 ☆ しばらく、ダウジングを続けていた公二だが・・・ ペンデュラムは、公二の手の中で、ほとんど動きを変えることはなかった。 「あれ?変だな。ぜんぜん動かない。」 「どんな探し物なのか、ちゃんとイメージしましたか?」 「もちろん。 大きさとか、何が写って・・・じゃなくて、どんな写・・・でもなくて、いや、ちゃんとイメージしたよ?」 必死にごまかす公二。 マンガであれば、後頭部に大汗が浮かんでいるところである。 見つかる覚悟はしても、できればごまかしたい、そんなところだろう。 懸命の努力ではあるが、美帆にはばればれだった。 (公二さん、あんなに必死に否定するなんて・・・ いったい、誰の写真なんですか?) 一瞬悲しそうな顔をする美帆。 自分が写っているとは、夢にも思っていない。 そして公二は、ごまかすのが精一杯で、美帆の表情の変化には気がつかなかった。 「せっかくだから、もうちょっとがんばってみるよ。」 しばらくして、美帆にそう告げる公二。 そして美帆は・・・ 「では、私もお手伝いします。」 そう言うと、ペンデュラムを持つ公二の手に、自分の手を重ねた。 あせる公二。 だが、目を閉じて集中している美帆を見ると、ふっと表情を弛め、何も言わずにダウジングをはじめた。 公二が読心術を身につけていなくてよかったかもしれない。 このとき美帆は、 (誰が写っているのか、公二さんとどういう関係なのか、確かめなくちゃ) と、思っていたのだから。 美帆の力か、公二の集中力が増したのかはわからないが、しばらくするとペンデュラムは本棚のほうを指し始める。 場所を変え、再びダウジングをはじめても、やはり同じように本棚を指した。 「・・・本棚のほうを指しているようですよ?」 「そうだね。でも、本棚の後ろなら、もう探したんだけどなぁ。」 ため息をつく公二。 美帆は、ふと、ペンデュラムの振れる方向に、アルバムらしきものがあるのを見つけていた。 「公二さん、どんなものを無くしたのですか?」 本棚のほうに近づきつつ、公二に無くし物が何か尋ねる美帆。 「あぁ、写真なんだよ。」 公二は、本棚の方向に、写真を無くすような場所がないか考えていたため、自分の言ったことが何をもたらすのか、 深く考えていなかった。 一方の美帆は、ある程度答えがわかっていたこともあり、迷うことなくアルバムを手にする。 「写真ですか。このアルバムにもうしまったということはないのですか?」 もちろん、美帆には勝手に中を見る気はなかった。 公二に、見せてもらおうと思って手に取ったのだ。 しかし・・・ 「わぁ〜〜〜」 公二があげた大声に、思わずアルバムを落とす美帆。 中から、ちゃんとポケットに収められていなかった写真が零れ落ちる。 「「あ・・・」」 それらの写真を見て、思わず動きを止める二人。 (ああ、しまった・・・) (これ、私の写真・・・) そう、このアルバムには、公二が美帆との思い出にと、美帆と撮った写真ばかりが収められていた。 (あぅあぅあぅ・・・) (公二さん・・・) 盛大に赤くなる二人・・・ そのうちに美帆は、1枚だけ、他と違う写真があることに気がついた。 「あれ?この写真は・・・」 そう言って、写真に手を伸ばす美帆。 まず、他の写真と比べると、明らかに小さい。 そして、他の写真は、自分(あるいは、真帆)が”写されている”とわかっている写真、 つまり、目線が撮影者を向いているが、その写真だけは、目線が別の方向を向いている。 演出的に目線をはずした感じではない。 本人に黙って撮った、そういう感じである。 初夏、だろうか? ひびきの高校の夏服を着て、校庭らしき場所の木陰で涼んでいる美帆が写っていた。 「あ、あった・・・」 その写真を見て、思わずつぶやく公二。 「え?この写真を探してたんですか?」 「う、うん。ごめん・・・」 この写真は、入学して間もないころ、美帆と知り合ったばかりのときに、匠からもらったものだ。 普段は生徒手帳に挟んでいるのだが、定例の持ち物検査にあわせて抜き取り、そのまま無くしたのだ。 公二の謝罪は、美帆に断りなく撮った写真を、持ち歩いていたことへのものだ。 「公二さん・・・」 公二から訳を聞いた美帆は、そうつぶやくのが精一杯だった。 嫌悪しているわけではない。 それどころか、感動していた。 公二が、知り合ったころから自分を見ていてくれたこと。 ずっと自分の写真を持ち歩いてくれていたこと。 「あ・・・」 思わず、涙があふれる。 そして、感動すると同時に、自己嫌悪もしていた。 美帆と公二、二人だけのアルバムを、公二が作ってくれていた。 そんな公二を、自分は、一瞬とはいえ疑ってしまった・・・ 「ど、どうしたの?美帆ちゃん。」 「ごめん、なさい・・・」 涙が止まらない。 私って、嫌な娘だ・・・ ギュッ そんな美帆を見て、公二は黙って抱きしめた。 普段なら、絶対にやらないことだ。 だが、今は、美帆に何かを感じたのか、ただ黙って抱きしめる。 突然の事に思わず目を見開き、体を硬くする美帆。 しかし、徐々に全身から力が抜け、最後には公二の胸にすがりつくように顔をうずめていた。 その顔にあるのは、涙でも嫌悪でもなく、安らぎ。 美帆は、夢にまで見ていた安らぎの場所を手に入れていた。 どのくらい、そのままでいただろうか。 二人にとって、数秒にも、数時間にも思える時間が過ぎ、ようやく美帆は、公二の胸から顔を上げた。 「・・・ありがとう、公二さん。 もう大丈夫です。」 その声に美帆を抱く腕を緩め、それでも離さずに美帆を見つめる公二。 「美帆ちゃん、俺、美帆ちゃんのことが・・・」「まって、公二さん!」 公二の言葉をさえぎり、公二の名を呼ぶ美帆。 それは、一番聞きたかった事。 本当なら、最後まで聞きたかった。 でも・・・ 「お願い。あと1ヶ月だけ、待っていてください。」 そう言うと、公二の目を見つめる。 その意味がわかったのか、公二は美帆を離すと、笑顔で 「うん、わかった。待ってるよ。」 と告げた。 美帆は、その答えに今日一番の笑顔を公二に送り、そして・・・ 一瞬だけ公二の頬に唇を触れた・・・ ☆ 帰り道。 あの後、お互いに真っ赤になった公二と美帆。 公二はあまりの事に固まり、美帆はそんな公二に早々に暇を告げて、公二宅から出てきていた。 公二の母から呼び止められた気がしたが、自分がしたことに動転していて、家を出てもしばらく気がつかなかった。 (今ごろは、公二さんは問い詰められているかもしれませんね。) (公二さんは、お母様にどう説明するのでしょう。) 美帆はそんな風に思い、思わず頬を弛める。 朝と同じ、青空が澄み渡る日曜日の昼。 美帆は、自分の中に幸せが形作るのを、確かに感じていた。 その幸せが永遠のものになるのは、それから1ヶ月後のことである。 END? = 後書き = こんにちは。星影すばるです。 このたびは、私の拙いSSに最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。 今回、あきら様の家捜しシリーズに参加させていただくにあたりまして、ときメモ2の美帆さんをヒロインに 選ばせていただきました。 なぜ美帆さんか!? それは、私も占いとかが大好きだからです(笑) 表には出していませんが、占いの方法も書いてますから、興味のある方はソースを覗いてみてください。 で、すみません! 美帆さんに嫉妬心を抱かせてしまいました。 しかも、泣かせるし・・・ 美帆さんファンからの抗議のメールも覚悟の上ですが、それだけ公二君のことを好きなのだと、 理解していただければ幸いです。 いや、最初は泣かせる予定は無かったんですが・・・ その前に、最初は壊れ系SSだったはずなのに、いつのまにかシリアスになってるし(苦笑) (あまりにも美帆さんが壊れちゃってたので、取り止めたんです) ここにちょっと手を加えて残してみましたが、こんな感じでした。 我ながら、とんでもないなと(汗) さて、最後になりましたが、こんな私のSSを取り上げていただいたあきら様。 本当にありがとうございます。 こんな私でよければ、また何かあったら、誘ってくださいね。 それでは、また。 家捜し目次へ トップへ すばるさんへ感想を送る CAUTION これより下は、壊れ系SSになります。 えぴろーぐ 足取りも軽く、白雪家前までたどり着いた美帆。 そのままドアを空け、家に入ろうとした瞬間、そこから飛びのいていた。 未来予知。 自らの身に迫る危険に反応し、体が咄嗟に動いたのだ。 一瞬遅れて、今まで自分が立っていたその場所に、上から何か降ってくる。 地面に落ち、盛大な音を立てて割れた”それ”は、美帆が育てていた鉢植えのサボテンである。 そして、直後に背後から響く、残念そうな声・・・ 「ちっ。うまくよけたわね。美帆ちゃん・・・」 美帆が恐る恐る振り向くと、そこには般若の面のごとき形相をした、双子の真帆の姿があった。 「ま、真帆ちゃん? 今のは、ちょっと危ないと思うんだけど・・・」 抗議する美帆。 声が震えているのは、命の危険を感じたからか・・・ 「ふっふっふっふ・・・」 美帆の抗議に対して帰ってきたのは、地獄の底から響くかという笑い声・・・ ふっとその姿が掻き消えたかと思うと、一瞬にして背後に現れる気配。 同時に、首に回される両の手・・・ その名のとおり、白雪のような白い指が、美帆には死神の鎌のごとく見えた。 「み・ほ・ちゃ〜ん。抜け駆けしたわねぇ」 すでに美帆には、震えることしかできない。 真帆の指に力が加わる。 ちょっと、息苦しい・・・ 「公二にKissするなんて、それは無いんじゃないのかなぁ〜」 「あの、真帆ちゃん・・・。見てたの?」 「もちろんよぉ〜 美帆ちゃんが公二の部屋に行くっていうのに、何もしないわけ無いじゃない。」 「精神感応(シンクロ)するときは、前もって言っておくって言う約束は・・・」 「抜け駆けはしないって言う、約束もあったよねぇ」 「あの、あの・・・」 少し説明せねばなるまい。 白雪美帆・白雪真帆。 この姉妹には、常人と異なる力があった。 真帆は、”見る”能力。予知や透視、千里眼、幽霊や精霊を見る力をもっていた。 美帆は、”動かす”能力。サイキック能力やテレポート能力をもっていた。 そして、双子の姉妹の特権か、姉妹の間でのみ使うことができる、テレパシー能力や精神感応能力をも備えていたのだ。 双子であることを利用して、入れ替わりを行うのは日常茶飯事。 しかし、これらの能力のおかげか、未だに第3者から怪しまれることはないのだった。 普段、仲のよい姉妹であると、近所のおばさん達にも評判の美人姉妹であるが、 最近では、”日曜日の朝だけは”喧嘩をすると噂になっていた。 その理由は、押して知るべし。 しかし、まわりへの影響は計り知れない。 いざ実力行使を伴えば、例え姉妹であろうとも壁に磔にする事を厭わず、また身内のどのような秘密を 暴露することも厭わないのだ。 その壮絶なる戦いに勝った者こそ、幸せな日曜日を過ごす権利を獲得するのである。 さて、今回に関して、約束を破ったのは真帆の方が先である。 しかし、真帆の雰囲気に美帆の反撃も効果がうすい。 姉妹の、異様な雰囲気の中での主人公二争奪戦は、次回は真帆が優先権を持つことで一応の収束を見せた。 「真帆ちゃん、怖かったよ・・・」 「美帆ちゃんが抜け駆けするからよ。」 「でも、公二さんは一人しかいないし、私たちが双子だっていうのをいつまでも隠すわけにはいかないし・・・ そうなったら、どちらか一人しか公二さんは選べないのよ?」 「・・・どうせだから、二人とも選んでもらおうか? 公二も、こんなかわいい姉妹と同時に付き合えて、喜ぶんじゃない?」 「・・・それはいい考えかも(はぁと)」 結局、似たもの同士の姉妹である。 END |