家捜しSS 詩織ちゃん怒る!!

バレンタインデーが近づくある日のきらめき高校の放課後。公は好雄に呼び出されて屋上にやってきて来た。

「ったく、好雄の奴。こんな風が冷たい日に屋上なんかに呼び出しやがって…。」

公はポケットに手を入れて身を縮めて好雄がやって来るのを待った。しばらくしてやっと好雄が姿を現した。

「こら、遅いぞ好雄!俺を凍死させるつもりか?!」

「わるい、わるい。来る途中に朝日奈に捕まっちまってな…。」

好雄は公に手を合わせた。

「で、なんだよ。屋上なんかに呼び出しやがって。」

寒い中待たされて公は不機嫌だった。

「用があるなら早く言え。俺、今日は詩織と一緒に帰る約束してるんだから。」

「そう怒るなよ。せっかくお前にいいもん見せてやろうと思ってんだからさ。」

「いいもん?」

「ほら、これさ。」

好雄は上着の下から一冊の本を取り出して公に見せた。

「こ、これは?!」

それは今、巷で話題になっている人気女優のヘアヌード写真集であった。

「家じゃ優美の奴がうろちょろしやがって落ち着いて見ておれんからな。…お前も見たがってたろ?」

「好雄〜!」

公は好雄の手をとって頷きながら言った。

「お前はいい奴だな!」

「なに言ってんだよ。俺達、親友じゃないか。楽しみを共に分かち合うのは当然だろ?」

「好雄…。」

好雄の言葉に公は目頭が熱くなった。好雄はうんうんと頷いて公の肩を叩いた。

「さて。…早速見るか。」

「おぅ!」

興奮で震える手をおさえつつ、公は最初のページを開けた。
が、そこには期待していた写真が載ってなかったのですぐに次のページをめくる。

「おぅ…。」

「むぅ…。」

二人は言葉にならない声を出して食い入る様に写真集を見ていた。

「ん?」

しばらくして公は隣に好雄がいない事に気付いた。写真集に熱中していて気が付かなかった様だ。

「あれ?好雄?」

公は振り返った。……そしてそのまま凍りついた様に硬直した。

そこには公の後ろから覗きこむ様に写真集を見ている詩織の姿があったのだ。

「ふーん。私との約束すっぽかしてこんなの見てたんだ…。」

冷たい目線で詩織はぽつりと言った。

「し、詩織。ど、どうしてここに?」

公はひきつった声で聞いた。どうやら好雄はいち早く詩織が来たのに気付いて逃げたようである。

(俺をおいて逃げやがったな。好雄…、やっぱりお前って奴はっ!!!)

「私ね、公と約束したとーりにぃっ!…校門のところで待ってたの。」

詩織の眉がぴくぴくしている。

「風が冷たかったわ…。でもね私じーっと待ってたの、あなたが来るのを。……約束の時間から30分以上もっ!」

「いっ…?!」

公は慌てて時計を見た。詩織との約束した時間は三時半。屋上に来たのは三時過ぎ。
そして時計は今、もうすぐ四時半を指していた。

「あなた最近クラブでいそがしかったからなかなか一緒に帰れなかったでしょ?
 だから今日はとーっても楽しみにしてたの私。だから寒かったけどずっと待ってたのよね…。」

淡々と、そして時々トゲを含みながら詩織の話は続く。

「でもあんまり遅いからなんか心配になってきて何度も見にいこうと思ったんだけど、
 行き違いになったらと思ったらそれも出来なくて…。で、丁度そこに朝日奈さんが通ったから聞いてみたの。
 『公、見かけませんでしたか?』って。そしたら『さっき好雄君が、公君が屋上で待ってるからって行ったよ。』って
 教えてくれたからここに来たの。でね、ここに急いでやって来たら……。」

詩織の肩が怒りでプルプルと震え出した。公は滝の様に冷や汗が流れ出した。

「これは、どーーーーゆう事なのよっ!!!!」

ついに詩織の怒りが爆発した。

「ひーっ。ごめんなさいー!!!」

公は詩織にひれ伏した。

「まったく。こんな写真集を学校に持ち込んだりして!…エッチなんだから!!」

「ち、違うよ。これは好雄が…。」

「いい訳なんて聞いてあげないっ!この本は私が没収します!!!」

詩織は公から写真集を取り上げた。

「そ、それは好雄の…。」

公は慌ててその本は好雄のだと言おうとしたが、詩織は聞く耳を持たなかった。

「……何か不服でも?」

「いえ、何もっ。」

詩織の冷ややかさの中にも凄みを利かせた睨みを前にして、公はこれ以上は何も言えなかった。

詩織は本を鞄に入れると、くるりと背を向けた。

「それじゃ、さよなら。」

「そ、それじゃって…。一緒に帰らないの?」

すたすたと屋上の出口に歩いていく詩織を公は慌てて追いかけた。
詩織はそんな公に見向きもしないで屋上から出て階段を降りていく。公は詩織の後をついていく。

「ね、ねぇ。詩織。」

「……。」

「詩織ってばっ。」

「……。」

「本当―っにわるかったてばっ!」

「……。」

「しーおりちゃんっ。」

「……。」

「しーおりさんっ。」

「……。」

「詩織さまっ。」

詩織は校門を出た所で立ち止まり振り向いた。

「……私すっごく怒ってるんだからっ。」

「わかっておりますです。ハイ。」

詩織はジト目で公を見ていたが「はぁ…。」とため息をついた。

「本当にわかってるのかしら…。」

「もう絶対にしませんっ。」

「私との約束よりもエッチな本見る方がいいんでしょ?」

「そんな事ないないっ!あの本だって好雄が持ってきたんだぜ?」

「好雄君?」

「俺、詩織との約束があるからって言ったのに無理やり見るの付き合わされて…。」

「その割にはすごくニヤけながら見ていたけど?」

「うっ…。」

詩織の鋭いつっこみに公は言葉を失った。再び詩織は歩き出す。

「しおり〜。待ってよ、機嫌直してくれよーっ。」

「直らない。」

「どうしたら許してくれるんだよ〜!」

「ねぇ、公…。」

「ハ、ハイ?」

「さっき、あの本は好雄君のだって言ったわね?」

「う、うん。」

「じゃあ公はあんなの持ってないの?」

詩織は立ち止まって公に聞いた。その質問に公は一瞬顔色が変わった。動揺を押さえて笑いながら答えた。

「も、持ってないよ。」

しかし、詩織は公の顔色が変わったことを見逃していなかった。

(ウソついてるわね…。)

詩織はさっきのお返しに意地悪することを思いついた。

「本当に持ってない?」

「あ、ああ。し、信用してよ。」

「じゃあさ、これから公のお部屋見せてくれる?」

「いっ?これから?」

「そうよ。本当に持ってなかったらさっきの事許してあげる。」

詩織はにっこりと微笑んだ。

(くぅ〜。そうきたか…。)

公はこれが詩織の仕返しと気付いた。

「い、今部屋ちらかってるしさ。今度じゃダメ?」

「ダメ。今すぐ。…それとも見られたらまずい物でもあるのかしら?」

「ハハハ……。わかりました。」

公はがっくりと肩を落とした。

(まぁ、見つからないか…。)

公は隠してあるエッチ本が見つからない事を祈った…。

「こんにちは、おばさま。」

「あら、いらっしゃい。…って、どうしたの?制服のままで…。」

「え、ええ。ちょっと…。」

詩織は制服のまま公の家にやって来た。
詩織の家は隣とはいえ、着替えている間に公が本を隠す時間ぐらいはあるはずだ。
詩織の部屋から公の部屋が見えるがまさか着替えている間、窓のカーテンをあけっぱなしと言うわけにはいかない。

「ち、ちょっとだけ待って。」

公は部屋の前まで来ると後ろからついて来ている詩織に手を合わせた。

「だーめ!」

30秒だけ…。ねねっ?」

「うーん、30秒だけよ。」

30秒ぐらいならもし本を隠していたとしてもそう大した隠し方は出来ないと思ったので詩織は部屋の外で待つことにした。

ガタタッ!

何か机の引出しにしまった音が聞こえた。

(クスッ。バカね、引出しに何か隠したのまるわかりじゃない。)

詩織は声を殺して笑った。

「公、いい?!入るわよ!」

腕時計を見て30秒過ぎたのを確認して詩織は部屋のドアを開けた。公はベッドに腰かけていた。

「どうぞ。捜してくれていいよ。」

「それじゃ、遠慮なく。」

詩織はエッチ本を探し始めた。
公の部屋はついこの間も訪れたので、だいたいどこになにがあるか覚えている。

(まずは…。)

引き出しに何かあるのをわかっているが、あえて別のところを捜してみる。
とりあえず定番のベッドの下を見てみた。

「公、ちょっとそこよけて。」

「えっ?」

公は足を上げてよけた。

「ないわねぇ…。」

なんてわざとらしく言ってみる。横目でチラッと公を見てみると余裕のある顔をしている。

(フフフッ。そんな顔いつまでしてられるかしらね〜。)

詩織はしばらく適当に部屋の中を捜すフリをしていた。

(さぁーてとっ。)

詩織は机の引出しに手をかけてみた。

「ねぇ、ここ開けてみていい?」

「あっ、そこは!」

公の表情が変わった。明らかに動揺しているようだ。が、詩織は気付いていない。
これは公の作戦だということを…。

「さっき、ここになにか隠した音きこえたんだからね〜!」

詩織は引き出しを開けた。が、その中には予想外の物が出てきた。

「こ、これ…。」

それは詩織の写真が入った写真立てだった。

「……私の写真。」

詩織は思わず顔が赤くなった。

「さっき隠したのは…。」

公は照れくさそうに頬をかきながら頷いた。

「やっぱさ、照れくさくてさ。詩織に見られるのって。」

「いつも見てくれているの?」

「…うん。」

詩織はますます顔が赤くなった。
写真立てに自分の写真を入れあっていつも見ているという事は、それだけ公が詩織の事を好きだと言う事である。

「俺、エッチな本なんてもってないよ。詩織以外の女の子に興味なんてないもん。」

「公…。」

「さっきだって、好雄に無理やり読むの付き合わされていただけだよ。」

「そ、その割には熱心に読んでいたけど?」

「そんな風に見えただけだよ。一応話題の本だったからどんなのかなーって。」

「ほんとに?」

「あぁ。俺は詩織だけだよ。」

「公…。」

公の甘い言葉に詩織は頭がポーとしてきた。目はウルウル状態である。
もうさっき怒っていたことなんてどうでもよくなってきた。そんな詩織を見て公は内心ガッツポーズを決めていた。

(やったーっ。うまくごまかせたー!)

実は引き出しに写真を入れたのは公の作戦だったのだ。家に帰るまでにあれこれ考えて思いついたのだった。
照れくさかったので、今まで詩織の写真を飾ってあるのは秘密だった。
確かに見つかるのは照れくささかったがやむをえない。
詩織の気をそらせられるのはこれしか思いつかなかった。
これを隠すのも、わざと詩織に聞こえるように派手な音をさせたのだ。
おまけに詩織は、さっきとうって変わってラブラブモードに突入しているし、一石二鳥である。

「詩織、好きだよ。」

「公…。」

公が詩織に顔を近づける。詩織は目を閉じた。公は詩織にそっと唇をあわせた。

キスを交わした後、詩織は公の胸に顔をうずめて言った。

「公。」

「ん。」

「だぁ〜いすき。」

「俺も。」

しばらく二人は抱きしめあっていた。そこへ突然ノックの音がした。

「お二人さん、入るわよ。」

そう声をかけると同時に公の母親がお茶菓子を持って入ってきた。

「わっ!!!」

「きゃっ!!!」

二人は飛び跳ねるようにはなれた。

「あら、お邪魔だったかしら?」

二人の様子を見てニヤリと笑った。

「お邪魔だなんて…。」

詩織は耳まで赤くなった。

「なんだよ、母さん!」

公も赤くなりながら母親を睨んだ。

「詩織ちゃん、どうぞ召し上がってね。」

母親は持ってきたお茶菓子を机の上に置いた。

「あ、ありがとうございます。おばさま。」

「いえいえ。……公、ちょっと。」

母親は公を手招きした。

「なんだよ!」

「…母さんたちを悲しませるような事はしないでちょうだいね。詩織ちゃんはお隣の大事な一人娘なんですから。
 …まぁ、キスぐらいならいいけど。」

母親は公の耳元でそういってウィンクした。

「もう、バカいってないで下に行ってな!」

公は赤くなりながら母親を追い出した。

「じゃあね、詩織ちゃん。どうぞごゆっくり。」

「は、はい。ありがとうございます。」

詩織はまだ赤くなっている。そんな詩織を見て母親は微笑ましそうに笑いながら部屋を出ていった。

「あーっ、びっくりした。」

「心臓が飛び出そうになったよ。」

二人は顔を見合して笑った。

「ところで公、この本さっきから気になってたんだけど…。」

「ん?」

詩織は本棚に立っている本のケースを指差した。ケースにはシェークスピア大全集と書かれている。

「公にしては難しいの持ってるのね。他は漫画や雑誌ばかりなのに…。」

詩織がそれに手をかけると、公は表情がこわばった。

「あっ、いや。そ、それは…。」

「ん、なぁに?」

詩織がケースを取り出そうとすると、公はそれをさせないように慌てて詩織を後ろから抱きしめた。

「な、なぁに、公。」

「えっ、あ、ああ。…さっきの続き。」

「んっ、ばかっ。…もうおしまい。また誰かきたらどうするの?」

詩織は少し赤くなりながら公から離れようとした。
公は詩織がケースを取り出すのをごまかすように強引にキスした。

「んんっ。」

詩織は少し抵抗したが、あきらめて公に体を預けた。しばらくして公は詩織から唇を離した。

「もうっ。おしまいって言ってるのにっ。」

詩織は頬をふくらませて抗議した。

「ゴメン。でも詩織の唇の感触が名残惜しくて…。」

「バカっ。」

詩織の顔が赤くなる。それから詩織はケースのことは頭から離れてしまった。

(ごまかせたみたいかな?)

公は内心ほっとした。それから一時間ほど話をして詩織は上機嫌で自分の家に帰っていった。

「やれやれ…。」

詩織が帰ったあとで、公は詩織が気にしていたケースを開けてみた。中から数冊のエッチ本が出てきた。

「ふーっ、あせったぜ。見つからないと思ってたけどさすがは詩織。鋭いぜ…。」

その時、公は窓の外から視線を感じた。

「んっ?」

窓の方を見ると向かい側の窓のカーテンが閉まったような気がした。

「ま、まさか…。」

ほどなく公の部屋の電話が鳴った。公は息を呑んだ。

「も、もしもし?」

「………う・そ・つ・きっ!」

詩織の声だった。詩織はそれだけいうと電話を切った。

「詩織…さん?」

本をだしているのを向かい側の詩織の部屋から見られたようだ。

「し、しまったーっ。みられたのかーっ」

公は頭を抱えた。数分後、詩織が公の部屋にやって来た。

「詩織…?」

詩織は何も言わずに部屋に入ると一直線に例のケースが置いてある所へいくと、中身を取り出した。

「全部没収します。」

「しおり・・さん?」

詩織は冷たい目線を公に向けた。詩織の顔に表情がない。こういう時の詩織は本当に恐いのだ。
公は背筋が凍る思いをした。詩織は本を抱えるとすたすたと部屋を出ていこうとした。

「詩織?」

公が呼びとめると詩織は振り返った。

「…うそつき。」

一言、そう言うと詩織は部屋を出ていった。
詩織は玄関で公の母親と普通に笑いながら挨拶をして家を出ていった。公はがっくりと肩を落とした。

「はぁ〜〜。」

しばらくの間、公は詩織に口をきいてもらえませんでしたが、なんとかバレンタインデーまでには
ご機嫌を取り戻せた様です。

これでまた一つ、詩織ちゃんに頭が上がらなくなってしまった公君でした。

 

おしまい

 


あとがき

締切にまにあわなかったー!!

仕事が忙しい上に、内容を変更なんかしちゃったばっかりに…。いい訳です…。

すみません。ペナルティーもんですな。

で、内容は甘〜くしたつもりです。いかがでしょうか?

あいかわらず文章はへたくそですけどね…。

BY たくやん


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