『フレグランス〜移りゆく僕達〜』
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僕をふった彼女のことはしばらく心に残ったけど、高2の春に同じクラスになったみずえに何かと親切にされ
すっかり親しくなってしまった。
みずえといると男子生徒も自然とよってくるが、みずえはあまり嬉しそうではなかった。
ただ僕と早乙女は別だった。
それで徐々に男子生徒はみずえから離れていき、遠巻きに見るようになった。
それでみずえの周りには僕と早乙女の他はみずえの気のあう女友達数名でかためられるような形になった。
僕は女友達ができてラッキーというよりは、自分も女の子の仲間入りをしたような錯覚をして喜んだ。
それから間もなくみずえから告白される形でつきあいがはじまった。
ただ、僕はどうしても恋愛の対象として彼女を見れなかった。
ただ親友ができるような気持ちでオーケーしたにすぎなかった。
「理紀くんが珍しいな。バレー部の堀江くんと話してるなんて。」堀江たちはもうすでに校舎のかげで見えなくなっていた。
「あ、見てたんだ?校門のところで偶然声をかけられて。」
僕がなんとなく後ろめたいような気持ちになって言い訳っぽく言うとみずえは安心したような顔をして、
「よかった。私、理紀くんがああいう男臭い人と仲良くなるのって嫌だから。
理紀くんはこれからもずっと他の男子達みたいにならないで欲しいな。」
みずえはそう言って僕の前髪をかきわけ、手の平でペチっとたたいた。
「理紀くんかーわいい。おでこたたいたらすぐ赤くなっちゃうの。」
「痛いよぉ。」僕は赤くなったおでこを前髪で隠した。
「みぃーんな理紀くんみたいだったらいいのにな。男子って中学生になったくらいから急にかわいくなくなっちゃうじゃない。
なんであんなに汚くなっちゃうんだろう。」
みずえの言葉は最後は独り言のようになっていた。
「今日もお弁当持ってきたの。屋上で食べようね。」みずえは気を取り直したように明るく言った。
みずえが学生かばんとは別に持ってきた小さめの紙袋を僕の目の高さまで持ち上げた。
それは買い物をした時のどこかの店名のロゴなんかはいっていない、
きっと底を見たら値段を表す数字が印刷されているようなものだった。
無地ではあるが少し光沢のある赤い紙の素材がそう思わせた。
2年の校舎に向かいながらみずえのお喋りは続く。
「理紀くんには早乙女くんが一番似合ってる。みずえがつきあうにはちょっとたよりないけど、
理紀くんの友達としてなら早乙女くんが一番いいよ。」
「うん、分かってる。今までだってこれからだっていい友達でいたいと思ってるよ。」
少しおせっかいな口調が目立つけど、みずえと僕は感性が似ている。
お互い文化系の中性的な男に好感を抱く。
文化系でもオタクは嫌いだ。薄暗く、じめじめした匂いがする。