『フレグランス〜移りゆく僕達〜』

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「おはよ」教室に入ると、手の平サイズの小型扇風機で首元に風を送りながら早乙女が声をかけてきた。
今日はコロンをしている。
「今朝美馬先輩にテニスを教わってたんだ。それで部室のシャワーは使ってきたんだけど、
先輩につけとけって。」
「うん、いいじゃん。」


早乙女とは高1でクラスメイトになってからずっと親しくしてるけど、
彼の容姿と雰囲気のせいかいっとき「おかまじゃねーの。」という悪口をいう奴があった。
その噂が広まって、それが1つ先輩の美馬の耳に入った時、早乙女が美馬のおささなじみだということ知って騒ぎは急におさまった。
美馬陵(みまりょう)はテニスで女子をキャーキャー言わせ、成績の方も優れていて教師陣からもかなり気に入られている人だった。
それがみんなをだまらせる要因となった。
なんのかんのといっても進学校の生徒である。
内申を気にしているのだ。
美馬ににらまれ、教師陣から悪く思われるのは得策ではない。


「早乙女くんいい匂いなんだ。」みずえが鼻を近づける。
「みずえもつけようかな。」
「つけてもいいけど、あんまりむせるようなのはやめてね。」僕はたしなめた。
早乙女のつけているコロンはユニセックスな香りがした。
いい匂いだった。