花 染 め ご っ こ
水をやりましょう 駄目にならないよう
陽にさらしましょう すべて見えるよう
神尾の誕生日のために買った花の鉢は、何故か俺の部屋の窓際に。
まだあった。
おめでとうと言えなくて。
少し後悔しているので、また次の年を思い律儀に育てている。
けっこう面倒くさい。サボテンにしておけばよかった。
なんて。
ぶつぶつ言いながらも手放す気にはならない。
そのうち神尾にもあげたくなくなってしまうかもしれない。
替えたばかりのカーテンは少しくすんだ緑みたいな色で、
この花によく似合う。名前は知らない。
花の名も色の名も。
声をかけましょう 本にあるように
日記つけましょう すべて次のため
夏休み前に埋めたひまわりの種1粒は、深司が拾ってきたものだ。
すくすくと育ち、放っておいてもでっかい花を咲かせて揺れた。
ありがとうと言っただろうか。
もう忘れてしまったけれど、得体の知れない小さな後悔は、
素直になれなかった事実だろう。
今はもう枯れて黄色は茶色に。
秋の初めの夕方、1つ1つ種を拾った。
大輪の花を沢山咲かせて、来年こそ自慢してやろうかどうしようか。
庭のすみっこで首を垂れた夏の残骸から、
俺はぼんやり目をそらせずにいる。
坂を行きましょう いつもするように
薬 買いましょう よく染まるよう
会いたいときに会える人に、会いたいと言うのはむずかしい。
わざわざ言葉にすることに慣れていないから。
・・・・・教訓めいた言葉は、俺は嫌いなんだけどな、と
ため息をつき、鉢を日当たりのよい場所に移動させた。
風を待つ。
種を、
1つ、
かんでみた。
風が吹いて季節が逝けば。
ああ 何にも至ってない僕ら。
染まる日はまだ遠い。