ちょっとだけ 穴 を仕掛けてみた。
「キスしたいんならしたいっていえよ。」
真顔でそんなことを迫ってくる阿呆には暴力が一番だ。
「っ・・・・・いってーぇ・・・。何すんのさ跡部景吾。」
ついでに近くにあったティッシュ箱を投げつける。これはおまけだ受け取れ。
「たっ・・・・・。
俺キスしたいって言ったわけで、けんかしようとは言ってないし!」
お前がしたいんなら最初からそう言え。
「ていうかこんなもの投げちゃって・・・。ははあん、な る ほ ろ。」
・・・・・・・最悪だ。
穴 に堕ちた君に差し伸べる手など無い。
「ぐだぐだ言ってねえでさっさと脱げ。日が暮れちまう。」
もう日なら暮れています、みたいなしょぼいつっこみをしてみた。
「・・・服ごと燃やすぞ。」
おお怖い。浪漫の欠片も無い。直接的な跡部の発言に俺は萎えていく。
「何だその顔。何か言いたいことでもあんのか。」
むしろお前が脱げ、と言いたい。
「へえ・・・俺に剥いで欲しいってんだ。」
・・・・・・・最悪だ。
共に堕ちたこの 穴 は どちらが仕掛けたものだった?
「・・・・・どうするのさ。」
下から跡部の顔色をうかがい千石が横を向く。
「してやるよ。」
語尾に吐く息が混ざった。
肩越しの天井を見つめながら、千石はかかとがかゆい。
「させてあげてんだけど。」
「してやってんだろーが。」
むむ、としばらく睨み合った。
とはいえ我慢はきかぬもの。身体が進む。
「させて・・・あげます。」
「まだ言うか。」
赤い舌。さすがにこの体勢からは殴り合えない。
ああ それだけが 残念です。
夜明けまで穴の中。
阿呆がまだ掘る 穴 の中の 穴 。
しゅどうけん にぎりたいけど にぎれない (あとせんべ心の俳句)