「やまないなあ・・・。」

「・・・・・・・。」

「麦茶飲む?」

「・・・・・・・ あ っ た め て 。」





     
庭先の雨





え 、 と思わず聞き返した。
なななな、なにを言い出したんだと俺は激しく動揺する。
深司はしっとりとした髪を垂らして体育座り。目を上げろよ。どきどきするだろう。
あっためるって・・・あっためるって・・・・・。

「あっためてよ・・・麦茶。」

雨音が増す。
「へ。」
深司は顔を伏せたまま、めんどくさそうにつぶやいた。ぼやいたというか。
「へ、じゃなくてさぁ・・・。」
「お、おう。今持ってくる。」
あわてて台所へ向かいながら、
俺は自分のふらち(漢字がわからねえ)な思考を悔やんだ。



くもり のち 雨。
天気予報なんて大して聞かない俺はいいとしても、
深司まで傘を忘れてくるとは。意外だった。
寝不足らしい。

やかんを用意しながら居間を覗きこむと、ぐったりと座り込んでいる。
顔を伏せているので表情は見えない。
「・・・・・えーと、深司?」
「・・・・・・・。」
なんだこの沈黙は。

雨音がさらに増す。

恵みの雨というやつですか。
確かに心がやさしくなる気がする。
・・・・・そういう意味ではないのですか。



「深司〜、学ラン脱いだほうがいいかも。」
「・・・・・・・。」
「や、や、や、別に深い意味はないぜ?俺そんな趣味ないぜ?(たぶん)」
「・・・・・・・。」
「ほら、雨に濡れるとさー。」
「・・・・・・・。」
「犬みたいなにおいするじゃん。」
「・・・・・・・。」
だからなんなんだこの沈黙は。


やかんを火にかけたら、反応の無い深司のたたずむ居間の方に戻った。
傍に寄って様子をうかがうと、規則正しい呼吸が聞こえる。
・・・寝てる?
息を吸う音と吐く音が、
俺の心臓の律動と合っていくような錯覚。

・・・・さっきから俺ってやつは・・・・。

ふう、とすぐ隣に座りなおし、窓の外を見る。
庭に降る、雨、に降られる、母親の植えたハーブ、の下の茶色い土、
に、降る、
雨。
見つめていた。
弱弱しい深司も雨のせいだろうか。なんてさ・・・。(寝不足のせいか?)




ああなんだろな、俺まで眠くなってきた。




ぎゅ。




・・・ん。

ふと、投げだしていた手を見る。
重なるのは、深司の手。わお。
俺の律動は突然混乱し、深司の寝息はすっと止まる。

「・・・・・にぎっててよ。」

目が合った。雨音が遠い。




あ・・・・・体温だ。




いつもならば、あわてて振り払ってしまうかもしれないこの手で、
そっと握り返してみた。重なったのは律動。犬くさくて結構。

雨がやさしさをくすぐるので、
意地悪になるのはもう二度と、やめようと思う。
明日晴れれば忘れてしまうような、弱い誓いを。





やかんが鳴くまでもう少しもう少し。
「・・・・砂糖も入れてよね。」
「はいはい。」
深司のお願いを何度も聞いた。



そんな日だった。







雨だった。



















ホット麦茶はなつかしきおばあちゃんちの味です。キュン。