なんやねん。
跡部景吾という人間に対して、
俺から一言言わしてもらうとすれば、
なんやねん。
「なんやねん跡部は。」
「なんやねんてなんやねん。」
「・・・それイントネーションちゃうわジロー。」
「“ジロー”とちがいますー、“慈郎”ですー。」
「わけわからん。」
「跡部がどうかしたの?」
部室でうだうだゲームボーイアドバンスに興じていると、
ジローが突然現れたのだ。
まあまあまあ、俺の話を聞いてや聞いて。
rosso.
「あいつ、自分が何しても許されると思ってんちゃうか。」
「うん。八割方許されると思ってるだろうねえ。」
「せやろ。人づかい荒いし。」
「うん、まあね。」
「こないだ掃除当番で、跡部がゴミ箱係やったらしいんよ。」
「ほほお。」
「あいつ樺地にゴミ捨て行かしてん。」
「ぶ。何それ。」
「かわいそやんかー。あいつ2年やで。
なんで3年のゴミ捨てなあかんねん。」
「何か用事あったんじゃないの〜?」
「ちゃうちゃう。ぜっっったいちゃうって。」
ちゃうねん、と首を振って真面目に否定すると、何がおかしいのか、
ジローが並べた椅子に寝転がりながらにこにこする。
「ほんでこないだはさ、コレ別の話やねんけど。」
「うむうむ。」
「女子にお菓子もろてん。あいつ。跡部景吾。」
「わかってるよー。跡部の話してんじゃん。」
「調理実習でつくったやつな。」
「あー。アップルパイ?」
「アップルパイや。
ほんでここで開けて食いだしよったんやけど。」
「あ〜。それでくやしかったわけね。」
「ちゃうちゃう。
あいつ、あんまうまくないとかほざきよって、捨てようとしよんねん。」
「あらー。それひどいね。」
「ひどいやろー。最低やろ男としてー。
ま、樺地が見かねて、もらって食ってたけどなそれ。」
「じゃ、いいじゃない。」
「なんでやねん。しかもなー、そのアップルパイあげたの、
うちの調理班の女子やねん。」
「え。てことは。」
「俺も作った菓子やねん。」
ぶはははは、とジローが寝転んだまま笑うので、
椅子がガタガタとうるさい。
笑い事とちゃいますよお客さん。いやそれにしても。
「それにしても。」
「んん?」
「お前はわりと跡部の肩持つよなあ。
なんやねんとか思わんの?」
「えー、思うけど、別に。跡部かわいいとこあるしさ。」
「はあ?」
「こないだもさーーー。ぷふ。」
「なんやその思い出し笑い。」
「俺がさー、『ピューと吹く○ャガー』の、ハマーの歌あるじゃん?」
「ああー、♪キスミーキスミーとか言うとるやつ。」
「そそ。それ適当に歌って「今これオリコン1位だよ!」って言ったら。」
「・・・・・信じたん?」
「信じた あはは。」
たしかにそれはおもろいな・・・。
と思いつつも、そんなんかわいいかぁ?という疑問。
やっぱり俺は認めんぞ。
「てか俺、跡部全然好きだし。」
「や、俺も別に嫌いってわけやないんやけどー。」
「なんやねんて思うのね。」
「なんやねんて思うねん。」
「ま、仕方ないよ跡部だから。」
むう。
そのままジローは眠ろうとするので、
待て待て、と身を乗り出すと、バタンといきなりドアが開いた。
そこにましますは。
「おい忍足。お前ヒマなら・・・・・。」
・・・くっそういつかどつきまわしたる、
と憤慨しながらも、お駄賃欲しさに福沢諭吉とともに校庭を突っ切る。
いつか・・・・いつか言ったる・・・・・いつかっていつやねん。
あんの・・・・・・・・あんの跡部様め。
1万円でホームランバーを1本。
「敬えよ。」
そう言ってあいつは100円玉を投げつける。
なんやねん。
ジローは寝たふり。