私、『水島 未樹(ミキ)』にはとても、嫌いな人がいます。


ソイツの名前は、『秋本 純』。
高校2年生。

本当に、本当に、大っ!!嫌いなんです。

どこが、大っ嫌いかと言うと…

『顔』
『いつも、笑ってるところ』
『軽いところ』
『もてるところ』
『ファンが多いところ』
『…私に、いちいちちょっかい出してくるところ』
『その他色々』

まぁ、平たく言えば、全部です。


それなのに、それなのに…

不幸にも、同じクラス。
同じ部活。
(バスケ部。奴はキャプテン。私はマネージャー)
席も隣。


あぁ…神様。
私が一体何をしたと言うのですか!?



『嫌い!好き!大嫌い!!』

第1話『大嫌いなアイツ』



1.
いつもの朝。
坂戸高校。2年C組。

「ミキちゃ〜ん!今日もカワイイね」
隣の席に着いた秋本が、笑顔で言う。

秋本の朝の挨拶はこれ。

誰にでも、言ってる言葉。
くそう、この女たらし!!
皆、このセリフでキャ〜キャ〜喜んでいるけど、私はこんなセリフで…
しかも、相手は秋本で喜んだりしない。

私は、秋本を睨むと、
「はいはい」
と流した。
「そこ、さらっと、流さないでくれる?」
「そんな事、嫌いな奴に言われても嬉しくないね。
あと、名前で呼ばないでって、言ってるじゃん!」
「またまた〜〜。俺のこと好きなくせにー」

秋本はヘラヘラしながらそう言う。
余計にカチンとくるのよね。

これが…。

「バカ言ってんじゃないわよ!私はね、秋本みたいなのが、一番嫌いなの!」
「へー?どこが?」
「全部!」
「随分、即答だね」

「ほら、秋本、オンナノコ呼んでるよ。入り口で」
私は教室の入り口を指差すとそう言った。

「モテル男は辛いねー」
秋本は、席を立ちながらそう言う。
「皆、目が腐ってるんじゃない?」
「そんな事いうのは、この口かぁ〜!?」
と言って、私の頬を思いっきり掴んだ。
「うにゅっ!?ぐ〜〜〜ひゃめ〜て〜よ〜〜〜!!」
私はそう言うと、秋本の腹にパンチを入れる。
「いでっ!」
「ほら。早く行きな!」
「はいは〜い」
秋本はそう言うと、入り口まで急いで歩いて行った。



2.
「仲良いね〜」
前の席の、友人の多香子がそう言う。
多香子は、秋本が好きらしい。
というか…皆か…。
でも、彼氏もちね。

「良く無い!!私は、アイツが、大ッ嫌いなの!!」
私は机の中から、教科書を取り出して、机の上にバンっと置いた。
「どうして?」
「どうしても、こうしても…合わないのよ!あの性格。顔。とにかく、全部」
「じゃぁ、ミキのスキなタイプってどんなのなの?」
「秋本以外」
私は秒間を置かず答えた。

「っそ。にしても、変わってるよね。秋本嫌いな奴なんて、いないよ…?」
「どうして…皆あんなのが好きなのか…聞きたいよ。ったく。
部活は平気でサボる。毎日やる気もへったくれも無い。女たらし。サイテー!!」



3.

放課後。

部活が始まる。
でも、秋本の姿は無い。
別にいつものことなんだけどね…。

「また、秋本はおらんのかっ!?」
顧問の山下が、青筋を立ててそう言う。
「サボリです」
私は、さらっとそう言った。
「おい!水島!!同じクラスのお前が、見張っておかなきゃならんだろ!?」
「お言葉ですが、先生!アイツ、すぐ、どっか消えるし…。見ていろって方が無理ですよ」
「…まぁ、そうだが…。と、とにかく、水島!ちょっと、探して来い!」
「え〜〜〜!?」
「マネージャーだろ!絶対見つけて来いよ」
「仕事はたくさんあるんですぅ!」
「いいから!早く!!」

あぁ…凄い剣幕。
練習試合前だしな。

先生もあれてる。
そうだろうな…。
キャプテンがサボリじゃね。

さわらね神にたたり無し!!

「はい」
私は、そう言うと、体育館を後にした。



4.
「…たく、なんで私が…」
私はブツブツ文句を並べながら、廊下を歩いていた。

秋本…。
諸悪の根源。
っくそう!
アイツがいなければ、私の高校生活は、120倍以上は楽しいんだろうに…。



5.
私は屋上の扉を開けると、
「秋本!!いるんだろ!?わかってんだよ!!」
と、叫んだ。

ソコには、秋本がいて、眠たそうにしながら、ヒラヒラと、手を振った。
「あー…ミキちゃん」

「何してんだよ!」
ゲシっと蹴りをいれる。
全くこたえて無い…。

「眠いし…サボってんの。どう。一緒に…」
「何言ってるのよ!!行くわよ」
私はそう言うと、秋本の腕を掴んだ。
「いやん、ミキちゃんたら、強引♪」
「殺すわよ?」
「ミキちゃんになら、殺されてもいかなぁ」

「をい!」

私は頭を掻くと、
「…ったく。いい加減にしてよね!私は、先生に、秋本見つけてくるように言われたんだから」
と、言う。
「え?」
秋本の表情が少し曇った。
…と、思ったのは気のせいか…。

私は、動こうとしない秋本を睨むと、
「早く」
と、言った。
「やだ」
秋本はニッコリ笑うとそう言う。
「は!?何言ってるのよ?」
「ミキちゃんが、キスしてくれるなら、行っても良いよ」

キス…?
魚の…鱚?
って…ちがーーーう!!

「…は?」

秋本は、両腕を広げると、目を瞑った。
「さぁ!」
「な、何、言ってくれてるのよ!!このバカ!」

「俺に、戻って欲しいんでしょ?」
「『先生』はね!私は、別にいーよ!秋本なんて、いなくても!」
私はそう言うと、屋上の出口に向う。
「ひど〜〜〜い。キャプテンに対して言う言葉?」
「じゃぁ、キャプテンらしくしたら!?」
「らしく…ねぇ…。無理だよ」
「はぁ!?もう、知らない!退部届ならね〜、いつでも、貰ってきてあげるよ!
秋本、ちょっと、バスケ上手いからって…中学の時に県体優勝したからって、
いい気になってんじゃないわよ!?
そんなんじゃ、すぐ、皆に、追い越されちゃうんだから!!実際、もう、そうよ!」

「あ、いた〜いトコロ」
そう言って、ヘラヘラ笑う。
何…コイツ。

こんな事言われても、怒らないんだよね…。
だから、嫌い。
人間味が無い。
感情を表に出さない。


「じゃね!」
バンっと、扉を閉めて、ズンズンと、もと来た道を戻る。


一人残された秋本は、
「あ〜あ。また怒らせちゃったか…」
と、呟いていた。



6.
「おう、水島!秋本は?」
山下が私を見るなり言った。
「知りませんっ!!」
「知りませんって…お前なぁ〜…」
先生は、困ったように頭を掻いた。

「先生!!秋本は、やめさせたらどうですか!?もう、やる気も何も無いんだから!!」
「でもなぁ…アイツは、才能はあるんだよ。手放したくない」

先生は秋本をかいかぶっている。
そりゃ?県体で優勝したし?
でも、それは、中学の時でしょ?
チ〜ムが良かっただけじゃんないの?

「じゃぁ、これからは、先生が迎えに行って下さい!!私は、もう、あんなバカの面倒見切れません!!」
私は、ビシッと、先生にそう告げた。


7.
「ひど〜い、言われよう」
背後からの声。
私がさっき戻ってきた体育館の入り口から、秋本が現れた。
「秋本!?」

「酷いなぁ…。ミキちゃん。俺はこんなに、君のこと、愛しているのに…」
そう言って、背中に、180cm以上の巨体が乗る。
「乗るなぁ!ばか!」

そこで、先生が一喝。
「こらっ!!秋本!!早く練習しろ!!」
「はいはい〜」
秋本は、しぶしぶ更衣室に向った。



8.
気に入らない!!
気に入らない!!
もーーー絶対!!嫌い!あいつ!!
何か言ってやらなきゃ、気が済まん!!!

「結局、来るんだったら、あんな出来もしない事言うの止めたら?」
私は、更衣室の扉に持たれかかると、そう言った。
「はい?」
秋本が振りかえる。
「やめる…とか。結局、好きでやめれないくせに」
バスケ…ね。
秋本は、バスケが好きなんだろう。
見ていて分かる。
「良く分かってるじゃん。ミキちゃん♪」

「…で、あのさ…着替えたいんだけど…。別に俺は良いんだよ?ミキちゃんが、着替えさせてくれるなら」
と言って秋本は近づいてきた。
私は、更衣室の扉を思いっきり閉めると、
「ば、ばかっ!1回死んで来い〜〜!!」
と、叫んだ。



9.
練習後。
時間は、8時を過ぎていた。
「ふ〜〜」
私は独り、モップ掛けをしていた。
「あ〜〜…眠い…」
目をこする。

叫びつかれたわよ…。
まったく…。


「まだ、残ってたの?ミキちゃん」
秋本がシャワ〜室から出てくると、そう言った。
「あ〜〜…モップ掛けが、終わらなくて」
「そんなの、1年の部員にやらしゃ、い〜だろ?」
「皆、練習で、ヘトヘトなのよ。私のできることくらい、するわよ」
私は、思いっきり不機嫌な声でそう答えた。

1秒足りトモ、秋本と話していたくないのよね…。

「優しいね。ミキちゃんは」
秋本が笑ってそう言う。
「あーどうもー」
「やたら、棒読みだね」
「あんたに、そんな事言われると、嬉しいなんて感情より、ムカツクんだもん」
「はぁ?」
秋本は、情けない声を出した。
「秋本の言葉は、嘘で固めた言葉だもん」
「そんなことないよ」
そう言って、秋本が笑う。

「ほら…目が笑って無い」
気付いて無いとでも思ってるの?
このバカ。
「…」

本気で笑ってないんだよ。

「秋本、楽しい?毎日毎日。仮面被って」
「楽しいね〜。本当」
「あ〜!もう、いいよ!」
私はそう言うと、モップにッ目を落とした。

コイツと喋っていると疲れる&ムカツク。

「ミキちゃん。付き合ってる奴いるの?」
秋本はいきなりそんな事を聞いてきた。

「そんな事、秋本に言う必要ない」
「いるのか?」
「い…いないわよ!あ〜〜!!もう、笑えば?秋本は、4,5人くらいいるんでしょう?」

あ〜!
もう、何なの!!
いないわよ!!
悪い?
ついでに、言うと(秋本には言わないけど)、今まで付き合った経験なんて0よ!
なんか、秋本に負けた様で悔しいから言わないけどね。

「いないよ」
秋本は、ニッコリ笑うとそう言った。
そして、続ける。
「好きな奴は…いる」

秋本の好きな人…ねぇ?
どうせ、大して好きでも無いんじゃ無い?
コイツは、そういう奴。
秋本が今まで、何人付き合ってきたか…。
しかも、3日…いや、1日で別れたりする。

「へぇ。喜ぶんじゃない?その子。秋本は、皆に好かれてるもんね、その仮面で」
「じゃぁ、OKする?ミキちゃんなら」
「絶対嫌よ」
「どうして」

「嫌いなのよ!秋本全て」
私は、感情を100%以上込めてそう言った。

しかし、秋本は、わかっていないのか、からかっているのか…
「俺は好きだけどね」
と、言う。

「は?」
私は、目が点。
「ここまで、言っても気付かない?俺って、ミキちゃんが好きなの」
秋本はニッコリ笑うと近づいてきた。
「…」

放心…
のち、パニック。


な、な、なんですとー!?


あぁ。
本当に私…何かしましたか?
神様。


気付くと、秋本は、目の前に来て居た。
「ねぇ、キスしていい?」
そう言って、顎を持ち上げられる。
「いいわけないでしょ!私の話し聞いてたの?あんた…!!このバカ!」
そう言って、モップで、秋本を離す。


「する」
グギギ…と、音がするくらい、両方譲らない。
「絶対させない!」
私はそう言うと、足で、弁慶の泣き所?ってやつ?を蹴った。



「絶対奪うからなぁー!」
秋本は足を押さえながら、そう叫んでいた。
私は素早く体育館の入り口まで避難すると、
「いってろ!ばか!」
と叫んで、帰路に着いた。



10.
朝。
2年C組。

次の日から、余計に秋本がひっついてきた。
最低…。

からかってるだけのくせに。
こういうタイプが嫌いなのよぅ!!

「ミキちゃ〜ん」
そう言って、極度のスキンシップを計ろうとする秋本。
「ひっつくな!」
「ね〜ね〜ね〜」
「嫌」
「まだ、何も言ってないでしょ〜〜」

「今度、試合ってどこと?」
珍しく秋本がそんな事を聞いてきた。
キャプテンの自覚でも芽生えてきたか?

「大高よ」
私は、バスケで有名な高校名を挙げた。
「ふ〜ん…よく、そんな強いところと、練習試合とれたね」
「あそこは、秋本みたいな不真面目生徒がいないから、真剣にイロイロなチ〜ムと、やりたいって言ってるのよ!」
「ふ〜〜ん」
秋本は少し考えるそぶりをしてから、
「ねぇ…たとえば…さ」
と、言った。
「はい?」
「もし、大高に勝ったら、俺とキスしてくれる?」
おいおいおいおい…。
教室で…大声で言う事じゃないよ。

皆の視線が一気にこっちを向く。

や〜だ〜よ〜〜〜!!
ただでさえも、秋本ファンのオンナノコに睨まれてるのに…。
これ以上、私を捲き込まないでほしいものだわ…。

「は!?まだ、言ってるの?」
「そ〜だよ」
「からかうなら、もっと、違う子にして!!」
私は一喝した。
「からかってなんて無いよ」
「なにそれ…」
「本当にスキなんだって。だから〜〜…大高に勝ったら…」
秋本が『キス』と、言う前に、私は秋本の口を手で塞いだ。
そして、
「いいわよ?別に」
と、言った。

OKしなければ、ついて回って来そうな勢いだ…。
コイツは…。

「え!?うそ…?本当!?」
開きも咎めを輝かせる。
「私が嘘ついたことある?」
「あるような、ないような…」
「まぁ、い〜じゃない」
私は笑った。


大高に勝つ?
それは、ないわ。
別にチ〜ムメイトを信用していないわけじゃない。

でも、レベルが違いすぎる。
かたや、練習試合にキャプテン不在多しで、県体でも、ベスト8にすら入れないチ〜ム。
かたや、キャプテンは、高倉さんっていって、凄い上手い人。本当。IH出場多しのチ〜ムよ?
どうやったら、勝てるっての?


私の頭の中には、そんな計算があった。


だから、簡単に、『あんな約束』にOKしたのだ。
どうせ、秋本も、私をからかって面白がっているのだ。
丁度良い。



11.
1ヶ月後。
大高にて…。


「まさか…」

私は、喜びと、複雑な気分でスコア表を見つめた。

78−79。

そして、私は、危機を感じると、その場を逃げ出していた。


どちらが勝ったかというと…



12.
「ミキちゃん♪」
秋本は、チ〜ムメイトの佐々木に近寄ると、
「あれ?ミキちゃん知らない?」
と、聞いた。
「マネ〜ジャ〜?あれ?さっきまで、ここにいたと思うんだけど…」
佐々木は、そう言うと、キョロキョロあたりを見まわす。
そして、ニコッと笑うと、
「ミキちゃん…。逃げたな…」
と、言った。




13.
私は、知らない学校の校舎をパタパタ走る…。
もちろん、あのバカに会いたく無いから。

だって…
どうしてー!?
どうして勝っちゃうの!?

わが、坂戸高校は、秋本の意外な活躍で、強豪大高に、1点差で勝ったのだった。

「げっ…迷った…」


知らない校舎を逃げるもんじゃない。
迷うのは、目に見えてるから。


でも、校舎は校舎。
校門の方に向って行けば…きっと。


そう思った瞬間、
「ミキちゃ〜ん」
と、声が響いた。
「げっ…!!」

秋本の声が聞こえた瞬間、私は、小さな教室に身を潜める。


う〜〜ん。
生物準備室…か。
ちょっと、まずった。

だって。カエルのお腹の開いたのとか…
色々…。

あと、ネズミまでいるし…。
ちゃんとケ〜スに入ってるけど。



「ミキちゃん、どこにいったんだ?あっちさがしてみるか」
秋本の独り言。


なにあいつ…。
独り言なんて、言うっけ…?


秋本の足音はドンドン小さくなって行く。
私はにやっと笑うと、小さく戸を開けた。

「ふ〜〜…・。やっと、消えたか」

「ほ〜…誰が?」
「秋本が…って…あきもと!?」
目の前には、秋本。

「ど、ど、どうして!?」
私は、後ずさりした。
「ミキちゃん、隠れる時は、もっと、分かりにくいところのほうが良いんじゃない?」
そう言って、笑うと、秋本は、どこかを指差す。
「え?」
私は、秋本が指差した準備室の扉の窓を見た。

「あちゃ〜…」
私は頭を抱える。

普通は、こういう窓ってすりガラスなのね…。
普通は。

でも、ここの窓は、普通のガラスで、中から、緑のカ〜テンがついてたってわけで…。
そして、そのカ〜テンは、全開で…。


こりゃ、見つかるわ…。

そして…仕組みやがったな!!秋本ぉおお!!!



秋本はニヤっと笑うと、
「なぁに〜?そんなに、見つけて欲しかったの?」
と、言った。
「げっ…ちが!そんなわけないでしょ!」
「約束はね〜…守るためにあるの」
「ちが〜う!!約束は、破るためにあるの」
「いつから、そんな悪い子になったの?お母さん悲しい」
「いつから、あんたがお母さんになったのよ!!」

「さぁ、約束でも守ってもらおうか…」
ジリジリと、秋本が近寄ってくる。
「無理無理無理無理」
ジリジリ私は後ずさりする。


ドンっと、生物準備室のかべにぶつかって、ゲ〜ムオ〜バ〜…じゃない…。
絶体絶命!
大ピンチ!!
しかも、狭くて、横にも逃げられないよぉお!!

「狭いほうが良いの?しょ〜がないなぁ」
「ば、ばか!」
「まぁ、ここまで、じらされたんだから、+αくらいしても、い〜んじゃない?」
「え?」
「最後まで…や・ら・せ・て♪」


ゴス。


鈍い音がする。

私が秋本の腹を殴ったのだ。


「秋本!あんた本当にここで、殺されたい?」
「へ〜…今は、どっちの立場が強いか分かる?」
「もちろん、私」
「そんなわけ無いでしょ。俺はこの日の為に、1ヶ月マジメに練習したんだから〜」
「そりゃ、普通でしょ!!」

ぱしっと殴ろうとした手を掴まれ、本当、絶体絶命…。

「じゃぁ、ミキちゃん。楽しませてもらおうか〜?」

ふふっと、笑う秋本。
その割には、しっかり、私の手を掴んでる秋本の手には力が篭ってて…。
目は笑って無いし…!!


秋本…。
どうして、私!?
遊ぶ対象なら、他にしてよ〜〜〜〜〜〜!!


「やだっ…」
私は下に顔をそむけた。
「ミキちゃん。顔上げてよ」
秋本がそう言う。
私は顔を上げると、
「秋本…やめて…」
と、言った。
しかも、ちゃんと、+α付きで。


ギクっ。
と、秋本の表情が強張る。

私は、今まで誰にも見せたことの無い『涙』を流したのだから…。

「えっ…ミ…」
キ…
と、言いかけたその時。


ゴス!ゲン!…グニョ!


と、次は腹なんかじゃない。
もちろん、男の大事な部分に、思いっきり…
蹴りをいれたのであった。


「ぐっ…」
秋本は、相当痛がっている。

目に涙まで溜めて。

「ミキちゃ〜〜〜ん!」
「そこでそうしてな!こんの、変態!!こんな演技にひっかかるなんて、マダマダね」
私はそう言って、涙を指で拭うと、生物準備室を後にした。



14.
もうっ…。

なんなの!アイツ!!


「私の大事なファーストキスをなんで秋本なんかにやらなきゃならんのだ!!」
と、叫んだ。


もちろん、秋本にではなく、空に向って。


つづく