『嫌い!好き!大嫌い!!』 第2話『不覚にも…』 0. 朝。 2年C組には、異様なオ〜ラを発する二人がいた。 「ミキちゃ〜ん」 「あら、秋本くん。なぁにかしら?」 二人の間に、フフフと、不気味な笑い声が出る。 「約束は、人として守るべきだよね〜?」 「そうですよね」 「じゃぁ、守ってもらおうか?」 先に少し表情を崩したのは、秋本。 「誰が何の約束をしましたっけ?」 「ミキちゃんが、大高に勝ったら、キスしてくれるって、言ったじゃん」 「あら?私、そんな事言ってたかしら?」 こうなりゃ、シラ切っちゃえ作戦に出た私。 秋本だって、どうして、そう、こだわるのよ…。 私を捲き込まないでほしいものだわ…。 「それに、ミキちゃん…。前、俺の大事なところ蹴ってくれちゃうんだもんなぁ…。 これで、子供が作れない身体になったら、ミキちゃん、責任取ってよね」 「絶対嫌よ」 ふふふっと、笑いながら言った。 ピキっと、怒りマ〜クが、秋本の額に出る。 「じゃぁ、今ここでして!ここで!」 秋本は、突飛押しもないことを言った。 「はぁ?ここ、教室なんだけど?」 そういう、問題じゃないんだけど。 まず、つっこむべきところに、つっこんでおかなきゃ…ね。 「いーでしょ?散々待たされたし」 そう言って、秋本の目はマジだ。 私は、しばしの思案のち、 「う〜ん…しょうがないなぁ。じゃぁ、目、瞑って」 と、笑顔で対応した。 少し驚いた表情を見せたと思ったが、嬉しそうな笑顔を浮かべて、秋本は、目を瞑った。 「はい!」 「ん〜〜」 …ったく、何考えてるんだ。 このバカは! バカみたいに、目を瞑っている秋本の唇に、私は、友達が持っていたマシュマロを押しつけた。 しかし、その手をガシっと掴まれる。 そして、秋本の目が開いた。 「ミキちゃ〜ん。これは、何かなぁ?」 秋本は笑いながら聞いてくる。 「え?マシュマロじゃない。知らないの?」 「俺は、キスしてって言ったんだけど?」 「一緒のようなものじゃない。それに、これは食べれるのよ?はい、あ〜ん♪」 私は微笑んで、秋本の口にマシュマロを押し込んだ。 「あ〜ん♪…ん、おいしい!って…ちが〜〜〜〜う!!!食べるなら、ミキちゃんを食べたいよ」 は〜〜〜〜…。 そういうセリフを、 公共の場で…ニッコリ笑って…恥ずかしげもなく… しかも、私に向って言うんじゃない! 「おいおいおいおいおい。どこのおっさんだ。秋本」 私はつい、つっこんでしまう。 秋本は、私の腕をもう1度強く掴むと、 「そんなことするなら、強行手段に出ちゃうよ?」 と、ニッコリ微笑んだ。 この笑みが曲者なのよ…。 「勝手にすれば?」 私は、いつもより冷たい声で言う。 「スル」 秋本は、そう言うと、急に私の腕を掴んで教室を出た。 1. 教室から廊下へ強制的に連れられる。 「いたい、いたい!!ちょっと、秋本!!離せっ!こんの、バカ!!授業、始まるでしょ!!」 「さぼろうよ」 ニッコリ。 笑うんじゃない!! 「嫌。さぼるとしても、秋本と一緒になんてゴメンよ」 私はパシっと、秋本の手を払った。 「どうしてそう…俺のこと嫌うわけ?」 「はぁ?まぁ、平たく言えば、顔が嫌、女たらしはサイテ〜、いつもヘラヘラしてるとこが気にくわない、性格が大ッ嫌い…あとね…」 「まだ、あるのかよ?」 秋本は困ったように頭を掻いた。 私は、秋本の胸に、『脅し』をかける程度のこぶしを叩きつけて、 「こうやって、押せば、誰でも落ちると思ってるの?あんたは、 ただ、私をからかいたいだけなんでしょ?」 と、問い詰めた。 私だってね…。 真剣に怒る時は、怒るのよ…。 ムカツクんだ。 こういう奴。 私が真剣にキレル寸前にもかかわらず、秋本は、ニッコリ笑うと、 「違うよ」 と、言った。 そして、数秒後、またまたとんでもないことを言うのであった。 「俺は…本当にミキちゃんのことが好きなんだけど?」 と、真剣な顔。 「…は?だから、秋本、勘違いしてんだよ。自分に振り向かない女が珍しいだけでしょ?」 私は、それでも、騙されない。 しかし、 「違うって!」 と、急に秋本が叫んだ。 私は、一瞬、ビクっとなって、秋本を見る。 「…ごめん。でも、本当に好きなんだ。今までの誰よりも。 いつも、目線が追っちゃうんだよね」 と、秋本がいつも以上に真剣な顔で言った。 …。 顔が真剣なんですけど? オ〜ノォォオオオ!! やめてくれ。 そういう真剣な顔を急に見せるのは。 …一瞬ドキっとしちゃったじゃんかよ。 と、それは、顔には絶対出さない。 からかわないでよね。 殴るし蹴るけど、一応、純情な乙女ってことに、(年齢上は、)なっているんだから…。 「でも…そんなに、いやがられるんなら…」 そう言って次は、ショボンとなる秋本。 「…秋本?」 私は、秋本の顔を覗きこんだ。 秋本は、急にニコっと、微笑むと、 「もっと、頑張っちゃおう!」 と、言う。 おいおいおいおいおいおいおい!!!!! 違うっつ〜に! 普通ソコで 『あきらめよう』 だろう!? 2. 「げっ…先生」 担任が、廊下をテクテク歩いてくる。 担任の山下。 バスケ部の顧問。 こんなところ見られたら…殺される…。 「ミキちゃん。こっち」 秋本が私を引っ張った。 「ひょえっ!?」 私達は、近くにあった、狭い男子トイレに隠れるはめになったのであった。 3. 「はー…。行ったね」 秋本が、廊下をチラッと見てそう言う。 「どうして、秋本と、隠れなきゃならんわけ?」 私は、呆れ顔。 まぁ、男子トイレであることは、別に照れるべき点ではない。 『使用者』がいれば、別だが。 秋本はニコッと笑うと、 「一緒にサボる約束でしょ?」 と、言った。 さっきの、真剣な顔は、幻か!? 夢か!? 私は疲れているのか!? そうなのか!? 「約束なんてして無い!」 私は、プイと、違う方向を向いた。 4. 「早く出ようよ」 私は、秋本をせかす。 「もうちょっと。先生、これから、何人か通るんだよ」 「何故にそんな事を知ってるんだ?君は…」 「まぁ、下調べは完璧にってね…」 秋本がぼそっと呟いたが、私の耳までは届いていなかった。 「へ?」 5. 時間がたつ。 二人の時間が…。 私は、何故か… いや、秋本の策略にはまったのか? 心臓が…少しずつ、早く音を立てて動いていることに気付くのであった。 嘘だ…。 誰か… 嘘だと言ってくれ!!!! 「そ〜いえば…ミキちゃんって、狭いところのほうが燃えるんだよね?」 秋本が、ニヤっと、笑って、そんなことを口走った。 「はぁ!?」 「このシチュエ〜ション」 秋本がジリジリと近づいてくる。 「ちょっ…」 「たまらないよね〜〜〜」 ニッコリ。 おいおいおいおいおいおい!! 『ニッコリ』じゃね〜〜〜〜!!!! 「さぁ、今日は逃げられないよ?強行手段だけど。良いって、言ったよね」 フフフ、と、笑いながら、やっぱり、目は真剣なわけで…。 「言ってない!!」 「また、しらばっくれるの?約束は守るものだって言ってたじゃん」 「秋本ぉ。勘弁してよー」 「泣き真似したって、今日はダメ」 「ちっ…」 あぁ…こんなことなら… 先生に見つかって怒られたほうがマシだわ…。 私はそう思うと、扉に手をかけた。 その手を秋本が掴む。 「ミキちゃん。どこまで、諦めが悪いの?」 「だって、ヤなんだもん」 「別にい〜でしょ〜?減るわけじゃなし」 「減る!!!」 ファ〜ストキスはね、1度なのよ? しっかり、『減る』じゃない!! いや〜〜!! 手を離して…。 「顔赤いよ〜〜?ミキちゃん」 「熱いのよ!!!!!ここが!!」 そうは、言ってみたものの、もう、少し肌寒い季節。 バカな言い訳をしたのではないでしょうか…? 秋本は、声を殺して笑っている。 「こらぁ!何か、文句あるのか!!このやろぉ!」 「ないない。全然。カワイイんだもん、ミキちゃん」 …。 「はぁ?」 私は、拍子抜けな間抜けな顔をせざるを得なかった。 すると、秋本は、そのスキに、私の、私の…! ファ〜ストキスを奪いやがったのだった。 「ん…!?」 柔らかいものが当たるんですけど!? 唇に。 やけに、秋本の顔が近くにあるんですけど!? あ、コイツ、意外と睫毛長いなぁ〜。 …じゃなくって!!!!!! 6. 秋本を、思いっきり引き離すと、 「あ、あ、秋本のバカ〜〜〜〜!!!死ね!!!このバカ!変態!!!! いっそ消えてしまえ〜〜〜〜!!!!」 と、叫んで私は男子トイレから駆け出す。 く〜〜!! ファ〜ストキスが!! 私の。 不覚にも…最低な奴に…。 返せ!!返してくれ!! 私のファ〜ストキス!! それが、できないなら、ドラエモン呼んで、時間を戻せぇ!! 7. 「あ〜ぁ。泣いちゃったよ。やっぱ、ハジメテだったか」 そう言うと、秋本は、ニヤっと笑った。 つづく![]()
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