『嫌い!好き!大嫌い!!』

最終話『嫌い!好き!大嫌い!!』


1.
私は過去に例を見ないほど、初めて部活に出たくないと思った。
その理由の120%は、秋本にあるのだったりするのは、言うまでもない。


「う〜〜〜〜」
放課後の教室。
私は独りで頭をかきむしった。



そして、
『よし、今日は、さぼろう!』
と、決意すると、すばやく、鞄に教科書を詰めて教室を飛び出す。



2.
ドンっと、なにかにぶつかり、そのまま地面へ倒れこみそうになる。
私はギュット目を瞑ると、次に来るであろう衝撃を予測した。

しかし、何秒たっても、その衝撃はやってこない。
ゆっくりと、目を開けると、そこには、秋本が立っていた。

しかも、私を抱きしめた態勢で…。

「大丈夫?」
「…あ、あ…!?は、離してよ!!」
私は真赤になりながら叫んだ。
心臓は、最高速度で波打っている。

ど、ど、どうして、こいつがここにいるのよ!?

私が、そう思うと、秋本は、
「どうせ、部活サボるだろうと思って、来てみたらこれだ」
そう言って、ため息をついている。


うっわ〜…。
とてつもなく、ムカツクんですけどぉ?
いつも、いつも、さぼってる奴なんぞに言われたくないわ!!

「サボる気なんてないわよ!!秋本とはちがうんだから!!」
「へ〜?そう??」
「そう!!!」
私は、力いっぱい頷いた。
秋本は、また、笑っている。

…何がおかしいのよ!!

「じゃぁ、一緒に行こうか」
「…え?」
「どうせ、部活だろ?」
「行くわよ!!行きますとも!!それより、早く離せ!このバカッ!!」
「はいはい」

私は、うつむいたまま早足で、歩き始める。

「秋本」
「ん?」
「…いや、なんでも、ありませぬ」
「告白のこと?」
秋本は、私の聞きたいことをいとも簡単に当てた。

「…ぐっ…!そうですさ!どうして、あ〜ゆ〜事…言うの…?やめてよ」
「好きなやつに、好きって言って悪い?」
「…わ、私は、秋本なんて、大ッ嫌いなんだから!!」
私は叫ぶ。
でも、秋本は、『子供のたわごと』とでもイワン限りに、簡単にあしらった。



「…なんか、ムカツク」
「俺は、好きだよ」
秋本は、サラッと、そんな事を言う。
「『好き、好き』言うなぁ!」
「あ、照れてる?」
「んなわけないでしょ!!!」

「カワイイなぁ」
「なっ…!?」


カワイイ…。
って、そりゃ、女らしい、カワイイ子に使う言葉だよ…。
少なくとも、私に、その、形容は、当てはまらない。


「ちゃんと、考えてね。俺は、真剣だから」
秋本は、にこっと笑った。
「…う…」

「ね?」
そして、念押し。

「…………分かった…」
私は静かに頷いた。





3.
「好き…ねぇ…」
私は、小さく呟いて、秋本を自然と目で追っていた。

「秋本くん!!これ!!」
体育館に来た女子が、秋本に、次々と、今日の調理実習の、クッキ〜を渡しに来る。
「あ、どうも」
「きゃ〜!!」


…。


どうして、あんな奴がもてるんだ…。


アイツはね〜!!
部活だってサボるし、キスはするし、変態で…!!!

も〜〜!!
何なのよ!!

イライラするじゃないかっ!!!


4.
「ミ〜キ〜ちゃん♪今日調理実習だったんだ?」
秋本が、嬉しそうに近づいてくる。
「そうよ」
「ミキちゃん、ちょうだい!!」
「ないわよ?」
「えぇぇぇ!?」

そう言って、悲しそうにしょんぼりしている秋本は少しかわいい…。



5.
秋本は、他の女子からのもらい物は、断ったりしていない。
何故かそれが、妙にムカツク。

私のこと…
好きとか言っておいて!
何アイツ!?


他の女子からもらったもので、十分、アイツの腹は満たされるのだ。
…そう思うと、妙にいらだつ。

嫉妬してるみたいで、嫌。





6.
それから、数日。
秋本は、部活にサボることなく出てくるようになった。

でも、秋本は、何か、いつもと違う様子。




私はというと、秋本への返事で、迷っている。
…というか、困っている。

付き合う。
付き合わない。

二つに一つ。

分からない…。
選べないよ…。



相手は…秋本は、真剣に、『好き』って言ってくれた。
私もちゃんと…
考えて、返事しなきゃ…だめだよね…。



7.
部活も終わり、皆、解散。
私は、ぼ〜っとしていたのか、体育館に、忘れ物をしてしまっていた、

帰る途中で、そのことに気付き、急いで体育館に引き返した。

「も〜…。忘れ物するなんて」



体育館に、近づくに連れて、ボ〜ルの音が聞こえた。
聞き覚えがある音。
バスケットボ〜ルの音だ。

「誰か…いるの?」
こんな、夜中に…。

時間は、とっくに8時を回っている。
生徒は皆下校してしまっている時間だ。

「まさか…やめてよ…。幽霊とか…」

そ〜っと、覗く。
すると、信じられないことに、秋本が、居た。

「え!?」

「あ、ミキちゃん」
「秋本?何してんの?」
「あ〜…ちょっとね」
「練習?秋本が!?」
「失礼だねー。ミキちゃんは…」
「そうでしょ!?万年、やる気ナシの秋本が、自主的に練習だ何て…。明日は雨だわ」
「何気にけなしてるよ。それ」
「そうよ」
と言うと、私は笑った。

なつかしい。
こういうやり取り。


「考え事があるとき、こ〜やって、シュートすんの。なかなか、いいよ」
秋本は、そう言うと、ははっと、笑った。
「悩み?よね。最近、様子変だよ」
「…」
「…だよね。最近、本当、変だよ。どうした、秋本」
「俺は、適当人間だよ?悩みなんてあると思う?」
「悩みのない人間なんて、いないの」
私がそう言うと、秋本は、少し笑ってこっちを見た。

「なによ?」
「いや。嬉しいなって」
「はぁ?」
「ミキちゃんって、いっつもそう」
「何がよ」
「本当の俺を見てるよね」
「何それ」

「いっつもさ。俺、ヘラヘラしてるじゃん。皆、俺の上っ面ばっか見てる」
「…」
「でも、ミキちゃんにだけは、どうしてか、分かっちゃうんだよね」
「だって…そんなの。…秋本…いっつも、目だけは笑ってなかったもん」

「ほらね。皆、気付かない。でも、ミキちゃんは、分かってる。嬉しくてさ」
「…」



8.
「今、俺が悩んでるのはね」
「…」
「ミキちゃんのせいなんだよ。返事…くれないから」
真剣な顔でこっちを向く秋本。

ドキっ!

私は妙にドキドキしてしまう。
「だって…」
「何?」

「付き合う…。付き合わないって…。…どう言って良いのか分からないけど…」
「ん?」
「分からないの…。好きなのか。好きじゃないのか。ごめん」
「う〜ん…。謝るべきことじゃないよ」

「秋本は、嫌いなの。でも、嫌いじゃない」
「どういう事?」
「上っ面は、嫌い」
「だろうね」

「秋本」
「ん?」
「ごめん。返事は…待って何て言わない。こんな中途半端で付き合う、なんて言えない。
だから、ごめん」
「それって、ダメってこと?」
秋本は、悲しそうな顔でこっちを見る。

「ごめん。もっと、違う子…探しな。私は…付き合えない」
「…」

秋本は…。
何も言わなかった。

それが、余計に、私を苦しめた。

…でも、中途半端で付き合うなんて…
私は出来ないよ…。


「ごめん!!」
私はそう言うと、走り出していた。





9.
それから、ちょっとしてすぐに、冬休みに入った。
それでも、部活があって、毎日会うはめになった。

秋本とは、前の関係に戻った。

前って言っても、前ほど、ベタベタしてくるわけじゃない。
少し距離を置いた関係。

秋本が、女子と、話しているたび、何だかいらだつ。
でも、今更…だよ。

凄い、自分勝手な私がいる。
いっそ、秋本のこと、本当に嫌いになれたら嬉しいのに。




10.
年末に、前の学校の忘年会があった。
私は、1年の3学期に、この学校に転校してきたのだ。


私は、前の友達に会いたくて、行った。

「ミキ〜〜!!」
「知野!!久しぶり!!元気だった!?」
「うんうん!凄い、元気だった!!」

この子。
村岡知野。
私の親友。
1年も付き合いなかったけど、一番、息が合う友達。

知野には、彼氏が居る。
三枝さんという名前の。
まぁ、カワイイから、彼氏いるのも、当たり前か。

しかも、年上。
警察官だったりする。
私も、会ったことがある。

三枝さんは、私と、息の合う人、
っていうか、二人で、知野をおちょくるのが楽しかったなぁ。

三枝さん…は、知野と居る時、スゴク優しい目をしていた。
二人とも、すごく、愛し合ってるなぁって、傍目から見ても分かった。

スゴク、良い。
私も、あんなつきあいがしてみたいもんだ。



12.
「最近、どうよ?」
知野が、店に入るなり聞いてきた。

私達は、二人で、ずっと、喋っていた。
忘年会のメンバーには、知野ねらいの男子が居たけど、知野は、男子なんてそっちのけだった。
ちょっと、優越感かな。

「うん。色々、あって、大変!」
私はそう言うと、笑った。
「ふ〜ん…。そっか!どう?バスケ部マネ〜ジャ〜は」
「大変よ。もう、マネ〜ジャ〜なのに、走りっぱなし!!それに、変な男子が居て」

もちろん、秋本の事。

「ふんふん」
「自信家だし、部活はサボるし…変な奴!!」
「ふ〜ん」
そう言うと、知野は、嬉しそうに笑った。
「なによ?」
「ミキ、楽しそう」
「えっ!?」

たのしそう…?

「好きなの?その子のこと〜〜」
知野はからかう様に言う。
「やだっ!違うって!」

でも、ドキドキするのは、事実。
知野に言われて、余計に…
意識してしまった。

この子は、前から、私よりも、私の気持ちに敏感だったりした。
…凄い。
と、常々思わされてしまう。


「あははは」
知野は、『好きなんでしょ?分かってるよ』という風に笑った。

「それより、そっちは?」
「ん?」
「彼氏。元気?」
「あ〜…。まぁ、元気」
知野が言葉を濁す。
「大丈夫なの?忘年会なんて来て」
「う…」
「隠して来たんだ?」

あ〜…
かわいそうに、三枝さん。
あの、やきもちやき星人(命名)が知野の参加に快諾するとは思えなかった。

「…そうなの。でも、ミキが来るから、来ただけよ!?本当。
それなのに、ど〜して、あ〜変に考えるんだろ」

「愛されてるのよ」

そう。
いいな…。
そういう、付き合い。

…秋本は…
どうだろう…・?
って…
何考えてるんだ!!?私…!!

「うっわ〜。ミキから言われると、変な感じ」
「失礼―。まぁ、私なんて、まともに、付き合った経験もないですけどね〜」
「い〜じゃん。それでも。ミキはミキだし」

知野は、嬉しい言葉を、普通に言ってくれる。

「そだね」
私は笑った。
「飲もう!!っつっても、ジュ〜スだけど」
「あはは!うんうん。飲もう!!」
「かんぱ〜い!!」




13.
「知野〜!次、二人でどっかいこう!!」
私は上機嫌だった。
「それ、い〜ね〜」
「え〜!?ミキも、知野も、帰るのかよ!?」
男子が言う。
知野が好きなんだろう。

かわいそうに。
むくわれませんね…・。

「うん!私は、ミキが好きなの〜」
知野は、楽しそうに言った。
「私も、知野好き〜〜」
「ラブラブでしょう?」
「ははっ」




14.
団体で歩いていると、目の前に警察官が現れた。
やばい…かな?
と、思ったら、三枝さんだった。


「…さ、えぐ、ささん?」
知野は明らかに動揺している。
「知野…」
三枝さんは、複雑な表情をしていた。

私は、雰囲気を壊す様に、
「あ〜!三枝さんだぁ」
と、叫んだ。
「ミキちゃん。戻ってたの?」
三枝さんが笑いかけてくる。
「今日だけね」
「ふ〜ん。そっか」
「元気そうですねぇ」
「そうだろ?」
そう言って、三枝さんは、笑った。


「知野。帰る?」
と、三枝さんが知野に言う。

三枝さんは、怒ってるフリしてるなぁ。
私には、分かる。
知野は、三枝さんのこととなると、よくわかっていない様だ。

だから、知野をおちょくると、おもしろいのだ。

「え?あ…うん」
知野は急に大人しくなって頷いた。
「もうちょっと、ゆっくりして行っても良いよ?」
「いや……!帰る」

「いいの?ミキちゃん」
三枝さんは、私に振ってくる。
「しょうがない!返してあげますよ」
私は笑って言った。

「ははっ。どうも」
三枝さんは、そう笑った。

私と三枝さんは、目だけで会話していた。
知野にばれない様に。

『今日は三枝さんに知野をおちょくらせてあげるよ』
『そりゃどうも』

そして、二人とも顔を合わすと、微笑んだ。



15.
「い〜な〜…あんな彼氏」
わたしはぼそっと、呟いた。
「へ〜?ミキ。お前まだ彼氏で来てないのかよ」
その場に居た、男子が言う。

「ふんっだ!うるさいよ!君」
「俺がなってやろうか?」
「結構です〜」
「うっわ。お前、昔から、変わらないなぁ」
「ははっ」





16.

皆でブラブラしていると、目の前に、見たことある顔が映った。
秋本…だ。

女…連れ!?


ズキン…。
胸が…痛い。


振ったのは、私。
でも……
嫌だ!!!


何…。
私。
凄い自分勝手だ。


「あ…」
「え?…ミキちゃん」

「なに…やってんのー??」
秋本は、笑って近づいてくる。
「忘年会」
「ふ〜ん」
「秋本は、デ〜ト?いいね」
「はぁ?」
「じゃぁ、また、部活でね!!!」

「え!!?ミキちゃん!」




17.
私は走っていた。
何か分からないけど。

勝手に。

そして、足が出向いていた場所。

学校の体育館…。


秋本がいつか言っていた。
『考え事があるときは…こうする』
って。

私は、バスケットボ〜ルを出すと、シュ〜トをしていた。



18.
ガコン。
「ナイッシュ〜!」

「は〜。さむっ」
手が冷たい。
周りには、バスケットボ〜ルが、いっぱい、散らばっていた。

「帰ろう。バカみたい」
私は、バスケットボ〜ルを拾い始める。




19.
「ミキちゃん!!」
と、声がする。
振り向くと、息を切らした、秋本が立っていた。
「秋本!?」
「ここだと、思った」
「どうして…」
「なんとなく。ここに居るんじゃないかなぁって」
「いいの?彼女、置いてきちゃって」
「…」

何よ…!
どうして、何も言わないのよ!!



20.
「もう、放っておいてよ!!」

こんなこと、言いたいんじゃない。
―――ハナレナイデ。
それだけ。


「どっか行って!」

違う…。
秋本の隣に居たい。


「私……!嫉妬して…。心狭いよぉ…。すんごい自分勝手!自分が自分で嫌になる!!」

「え…ミキちゃん?」
秋本は、目を見開いた。



21.
秋本が近づいてくる。
私は、ギュっと、目を閉じた。

あぁ、私って、凄い心狭い。
自分勝手。

秋本もきっと、あきれているのだろう。

そう思って、目を開くと、秋本の顔が正面にあって、いきなり、キスされた。
「…んっ!!な、な、な、なにすんだ〜〜〜〜!!!!」

私は真っ赤になって叫ぶ。

「アレは、彼女じゃないって。姉」
秋本は、嬉しそうに笑っていた。
「…はぁ!?」
「だから、安心して。って、俺は、ミキちゃんだけだって。本当、信用ないなぁ」
「……………だました!?」
「勝手に勘違いしただけでしょ?」

う…。

その通りです。

「どうしてもっと、早く言ってくれないのよー!!私…変なこと言っちゃったよ」
「変じゃないでしょ。嫉妬したって?ちゃんと、聞こえたよ」
「いや〜〜!!訂正です!もうしてないです!だから、なしということで」
「いや。だね。俺は、ミキちゃんが好き。ミキちゃんも、俺が好き。これって、両思いでしょ」

「や〜〜〜〜〜〜!!!!」
私はそう叫ぶと、スタ〜トダッシュをきっていた。

「え!?ちょっと、ミキちゃん!!」
しかし、バスケ部員を前にして、勝てるわけがなく、すぐ、腕を掴まれ、掴まってしまった。
「いたっ…」
「どうして、ここで、逃げるかなぁ。ったく」
「だって…なんで…私…。趣味悪い〜〜〜!!秋本なんて、大嫌いなんだから〜〜!!!」
「はいはい。分かりましたよ」
そう言って、抱きしめてくる秋本。
「抱きしめないでヨ〜〜〜!!」
「いやです」
「変態!女たらし〜!」
「酷いなぁ」
秋本の笑い声が聞こえる。

妙に居心地悪い。



22.
何分か経って、
「…もう、素直になろうよ」
秋本が、小さくそう言う。

さっきの気持ちを思い出す。

さっきは、凄い…。
悲しかった。

思い出すだけで…
悲しい。

だって…・秋本が他の子と付き合うって考えたら…。
本当に、悲しくて…。

「…」
「ミキちゃん」
「…」
秋本は、私と目線を合わせると、
「俺は幸せだよ。こうやって、ミキちゃんと、居られて…。ミキちゃんは?」
と、聞いてきた。



「う〜〜〜〜〜〜〜〜」
「うならないの」

凄い…嫌。
秋本なんて、嫌い。


…だけど…

「…………………幸せです(ボソッ)」
「声が小さ〜い」


「幸せ!!!!!」


秋本は、嬉しそうに微笑むと、ギュっとまた、私を抱きしめた。