「今日は、天気がよろしいわね」 「そうですわね」 なーにが『そうですわね』だ!あー…キモイ!!鳥肌が…。 『危ない恋愛!?』 第1弾『危ない始まり!?』 三嶋 奈美16歳。 高校1年生。 ここは、都内の超名門女子校。その高等部。 なんで、私がこんな学校に入学しているのかと言うと…。 「奈美さん。あなた、K女学院に入学しなさい」 母親の尚美が、急に中学3年の冬に言った。 「K女〜!?絶対嫌っ!!あんなお嬢様学校!!」 「そこに入ったら、おこずかい…すっご〜く上げるわよ?」 「どのくらい…?」 「そうですね…これくらいかしら?」 と、母は手を出して見せる。 「…じゃあ、考える」 そう言ったのがそもそもの間違いだった。 母はその一言で、早速K女へ願書を提出。 その上、寄付金を多額出し、いうなる裏口入学に成功したのだ。 ま、K女ってのは、金さえあれば、誰でも入れるお嬢様高校なのよね。 「いってらっしゃいませ」 メイドさんに見送られ、運転手とボディーガードと学校へ出発の毎日。 放課後は即、帰宅。 茶やらピアノやらのお稽古事の毎日。 そんな家で、ず〜っと育ってきた私だったが、私はこんな生活大っ嫌い! なんで学校行くのに、ボディ〜ガ〜ドが必要なわけ? どうして、電車とか徒歩じゃなくて、運転手付きのリムジンなわけ!? おかしいわよ。 中学は、結構いろんな子が居て面白かった。 しかし、高校はお嬢様一色。 朝から、 「おはようございます」 と、清楚に挨拶されると、何故かムカツイテ、ムカツイテしょうがない。 しかし、問題は一切起こさない様に(というか面倒くさいから) 「おはようございます」 と、ニッコリ微笑み返す。 あ〜〜!!耐えられない!! 私は、いつも、そんな気持ちで過ごしていた。 猫をかぶって、かぶって、かぶって……!!! 「はい。皆様、おはようございます。 今日から3ヶ月、教育実習生としてこの教室を担当してもらう先生を紹介します」 と、ある日突然、担任の眼鏡ババアがそう言った。 「安藤先生」 そう呼ばれて入ってきたのは、教育実習生独特の若さをかもし出している男の先生だった。 「きゃあ」 周りで皆、喜んでいる。 確かに眼鏡ババアを毎日見るより、こっちのが断然良いけど、こんなに喜ぶことか? 「安藤 拓也です。ヨロシクおねがいします」 そう言うと、安藤先生はニコっと笑った。 次の休み時間から、安藤先生の周りには多くの女子が集まった。 「先生…彼女とかいらっしゃるんですか?」 皆、若い奴が来ると夢中なんだから。 「いや。いないよ」 「きゃ〜!!」 うるさい!! 「ここはカワイイ子ばっかりだなあ〜」 何言ってんだか…。 「いやだ。先生ったら」 おいおいおいおいおいおいおいおいおい!! 一体何の騒ぎだよ!? お前等は、一体… 男に飢えてるんかいな…。 と、いちいち心の中でつっこんでしまう自分が悲しい…。 「今日は、新しい実習生がいらっしゃいましたよね」 お稽古へ向かう車の中で、ボディ〜ガ〜ド兼世話役の塩澤 優が聞いてきた。 優はなかなか格好良いが…変わり者だ。 それに、頭は異様に硬い!! 50や60のおっさんみたいな考えかただ。 まあ、そこが母の気に入ったところなんだろうけど。 「そーよ。毎日、毎時間、教室の横に立ってると、良く見えるんでしょうね」 私は、いつも私にひっついてくる優にイヤミを言ったつもりだったが、 「はい。そうですね」 と、ニッコリ笑顔で返されてしまった。 「くれぐれも、教師なんかと、面倒を起こさないでくださいよ」 「面倒って?」 「ケンカとか…あと、恋愛もダメですよ!」 「なんで、私があんなヘンな教師に惚れなきゃなんないのよ?」 「例えですよ」 「いやな、例えね」 「それにしても、あんなに若い男の教師を入れるなんて、あの学園も落ちましたね」 そりゃ、アイツ意外は、ジジイかババアばっかだけどね。 「若い方が、皆授業にやる気が出るんじゃない?」 「お嬢様もですか?」 「ちょっと…お嬢様って言うのやめてって言ってるでしょ!奈美でいいわよ!」 「奈美…さんもですか?」 年上の男にさん付けで呼ばれるのも、なんだかなあ〜…。 と、思いつつ、 「そうかもね」 一言答えた。 「明日は校外学習です。皆さん。遅れずに集合して下さいね」 と、眼鏡ババアがプリントを実習生の安藤先生に配らせながら言う。 校外学習か……これは、サボれるな。 と、目星を付けて、頭の中で、明日の計画を立てる。 とりあえず、皆と離れるのは簡単だけど…問題は優よね。 私がいくら逃げ様とも、犬みたいに引っ付きまわしてくるアイツ。 優はなんとかしなければ! そして…一人で、少しだけで良いから、ゆっくり過ごしたいわよ!!! 「ねえ〜、優ちゃん」 私は、その日の学校の帰りの車の中で優にこびをうった。 「何ですか?ちゃん付けとは、気持ち悪いですね」 優は明らかに、警戒している。 気持ち悪いとは、失礼ね!! 「ね〜、明日、校外学習なんだけど」 「それは知ってます」 「一人でいかせてくれない?」 「ダメです」 そ…即答するとは。 「何で〜!ケチ!」 「ケチじゃないですよ。奈美さんは一人で放っておくと、 ど〜なるか、わから無いですからね」 「しっつれいね!」 「2年前、家出をしたのは良いがその後、迷子になったのはドコの誰ですか?その上、 知らない人に連れて行かれて…私が助けなかったらどうなってたか分かりますか?」 「それくらい分かるわよ」 「いいや。分かってませんね。…そんな人を少しでも一人にするなんて、 考えただけでも、寒気がしますよ」 優は、そう言うと、ふ〜っとため息をついた。 「何よ!?もう良いわ」 そうよ。優を降り切れば良いのよね? しかし、優は、 「くれぐれも、変な気は起こさない様に」 と、考えを読み取ったように付け加えた。 翌日、集合は校門前だった。 そこからは、貸し切りバスで移動だ。 さすがに、優は後から車で付いてくるだけだった。 1時間もしないうちに、目的地に到着。 そこから、クラス別行動となる。 「皆さん。集まりましたね?」 眼鏡ババアがそう言った。 「では、行きます。ここからは、ちょっと、歩きますのではぐれないように…」 眼鏡ババアはそう言ったが、私の計画は途中ではぐれること。 幸い、優は車を降りていた。 降りなければ、ついて来れない細い山道というおかげもあった。 にしても、なぜ、私のクラスだけ、山登りなんかをしなくちゃいけないの!? 他のクラスは、色々食べ歩きとか、やってるのに。 「皆さん。足元に気をつけて」 眼鏡ババアが先頭を切り、一番後には安藤先生が付いている。 その後には優がいる。 ここをどうはぐれるか…だよね。 私はじっと、優に視線を向けた。 ほんの一瞬でも、優が私から目を離したすきに、なんとか…。 「きゃあ!」 前のほうで何やら叫び声が聞こえた。 目をやると、前の子が、道の横の小さな崖を滑ったようだった。 「安藤先生!」 取り乱した眼鏡ババアが安藤先生を呼ぶ。 安藤先生は駆けつけるが、あまり力になってない。 見るに見かねた優が前に走って行った。 人の不幸を喜べないけど、これって、超好都合!!! 私は、にっこり笑って、皆の目線が前に行っているうちに、横の道にそれた。 「やった〜!!大成功!!」 わき道から、山を下り、普通の歩道に出た。 近くには、色々店があって、凄く賑やかな雰囲気がする。 なんで、こんなに良いところがあるのに、山登りにしたんだ!? それは、疑問だったが、そんな事はど〜でも良い。 だって…やっと一人になれたんだもん! 「一体、何年ぶりだろうなあ?あの家出事件以来だわ」 私の頭の片隅には、もし見つかったときの対処法が用意されていた。 「『迷って、山を下れば、なんとかなると思って下って待っていました』これだ!完璧!!ふふふ。優ったら焦ってるだろうな!ざま〜みろだわ!」 私は独りで盛り上がっていた。 「さてさて、散歩でもしますか」 「どこに行くの?」 「散歩するだけって言ってるでしょ?」 「お供しても良い?」 私…誰と話してるの!? 後を振り向くと、安藤先生が立っていた。 「何で…!?」 「後ろ姿が見えたから、追いかけてきたの」 「ちょっと、そんな余計なこと!!…いや……ほほほ、ごめんなさい。 少し迷っちゃって、降りればなんとかなると思って、降りてきたの」 「それ、さっき言ってなかった?」 「そうかしら??」 一体いつから居たのよ!? 「君…もしかして…」 「何ですか?」 「普段、猫被って無い?」 『猫をかぶる』 …本性を包み隠すこと。 っと、そんな事考えてる場合じゃないわ。 しかし、コイツなんだって、私の性格までアッサリ読んでくれちゃってるわけ? 「猫をかぶってるだなんて、そんな…」 私は、ヨヨヨと泣きまねをした。 「へ〜、演技は上手いね。でも、今時、目薬はね」 と言って、私の手の中に有る目薬を奪い取った。 やばい…。 私がそう思って黙っていると、安藤先生の後ろ、500m先くらいに、優の姿が見えた。 「優っ!?やばっ!!」 私は、優と目が合って、つい叫んでしまった。 「優?」 安藤先生は、後ろを振り返って、優の姿を確認すると、 「アイツから逃げたいんだろ?」 と、言って私を引っ張って走った。 後からは、優が追ってくる。 安藤先生は、私を引っ張って走りながら、 「大丈夫。ここは、下調べしてあるから、俺のほうがここの地理に詳しいよ」 と、笑った。 安藤先生の言った通り、優は降り切れた。 「な?」 2人でゼ〜ゼ〜言いながら走ったことを思い出すと、私はなぜか笑えてきた。 「あははは」 「どうしたんだ?」 「だって、先生…必死なんだもん。あははは…!」 「そうか?ははは…」 「…で、どこに行きたい?三嶋さん」 「えっ?」 「どっか行きたかったんじゃないの?」 「いや、別に…ただブラ〜っと、しようかなって…」 「じゃあ、そこの喫茶店でも入りますか」 そう言った安藤先生の手に引っ張られながら、近くにあった喫茶店に入る。 「いらっしゃいませ」 コロンコロンと、小さく鈴がなったと思うと、ウェイトレスさんに案内される。 いざ、席に座って見ると… 『何か、端から見ると、私と安藤先生って恋人同士に見えてたりして…』 なんて考えた。 別に悪い気はしないけどね。 「で…?」 「はい?」 「どうして、逃げてるんだ?」 「いっつも、優が付いてまわって鬱陶しいからよ」 「そうか」 と、言って安藤先生は、ハハッと笑った。 何が面白いんだか…。 「なんで、安藤先生は、私について来たりするのよ?」 「そりゃ、少しの間とは言え、俺の生徒がフラフラしてるのを放ってはおけないだろ」 まあ、正論だけどね…。 「どうして、あそこで一緒に逃げてくれたの?」 「捕まりたくなさそうな雰囲気だったからね」 「先生、ちょっと、変わってるね?」 「君もね」 と、先生が言うと、顔を見合わせて、二人で笑った。 ちょっと、良いかも。 この感じ…。 「これから、どうしようか?」 「この辺、良く知らないしなぁ」 「俺は、知ってるからガイドしてあげるよ」 「ちょっと、先生。大丈夫なの?あっち…」 「え?あ〜…、あっちは、響子先生がなんとかしてくれるよ」 「響子先生?…」 あ。眼鏡ババアの事ね…。 「じゃあ、行きますか」 安藤先生は、伝票を持って、席を立った。 「へ?あっ!ちょっと、待ってよ。自分の分くらい、自分で払うよ」 「い〜よ。教師は安月給だけど、カワイイ生徒におごる分位は、貰ってるしね」 と言って、笑った。 その笑顔に、胸がドキドキしだす。 ナニ…コレ。 外に出た瞬間、目の前に優が現れた。 「優!?」 「奈美さん!!」 優は、やっぱり凄く怒っていたりした。 「何やってるんですか!?」 「あ〜ぁ、見つかっちゃったね。タイムアウト?」 安藤先生は、それでも笑顔で笑っていた。 そんな、安藤先生を優は睨んだ。 「あなたは、教育実習の安藤先生ですよね?奈美さんに手なんて、出さないで下さいね」 「手を出すってど〜ゆ〜風に?」 「そんな事わかるだろ?」 「わっかんないなあ〜」 優は、完全に安藤先生に遊ばれているといった状況だった。 「とにかく!今日は、もう帰りますよ!それでは!」 というと、優は私を引っ張って、近くに止めてあった車に乗りこんだ。 「優」 「…」 「怒ってる?」 「そりゃもう」 「ゴメン」 優は、1つため息をついた。 「…どうして、逃げたりなさったんですか?」 「たまには一人になりたい時だって、あるんだもん」 「それは、分からなくはないですが… しかし、何であんな教育実習の先生と一緒に居たんですか?」 「それは…あの、先生が勝手に付いてきて」 「でも、一緒に逃げたように見えましたけど?」 「だって〜」 「と・に・か・く!これからは、今日のような行動は慎んでくださいよ」 「はあ〜〜い」 「返事は短く」 「はいっ!」 あ〜あ〜、作戦大失敗だわ。 「おはよっ、優」 私の朝は、私の部屋を出たところにある優の部屋に入り(というか、優の部屋を抜けないと、外に出れないのよねえ。全く、良く考えたものだわ)優に挨拶するところから始まる。 「おはようございます。奈美さん、今日はピアノですよ」 「はいはい」 「『はい』は…」 「一回ね。はい。これで、満足かしら?」 「そうですね」 優は、不機嫌な私の顔を見ると、ニッコリ笑った。 何故、笑う!? 「ねぇ、優」 「何ですか?」 「今日は、ピアノ休んじゃダメ?」 「駄目です!」 「何で〜〜〜〜〜!!」 「『継続は力なり』。奈美さん。この言葉、知ってますか?」 「知ってるわよ」 「と、いうことで、駄目ですよ」 「いたっ!」 私は、急にお腹を押さえた。 「どうしたんですかっ?」 「お腹いたい!昨日から生理なんだもん。ね、体調不良。休んで良いでしょ〜?」 優の顔をじっと見て頼んでみる。 優は、また、ため息をついて、 「ウソですね?生理は、毎月、月末に来るでしょう? しかも、生理痛なんて、無縁の世界の人のくせに、何言ってるんですか?」 と、言ったのだ。 「ちょっと、待って!なんで、優が私の生理の周期まで知ってるのよ!?」 「奈美さんのことならなんでも知ってます」 目が、マジだ。 「スト〜カ〜以上だよ…優…」 それにしても、あの安藤先生…って人。 あれから、気になってしょうがない。 この気持ちが恋なのか…確かめたくて、今日、安藤先生のところに行こうと思ったのに。 レッスン及び、優に阻まれるとは…。 って、なんとなく分かってたんだけどね。 これじゃあ、一生、恋愛すらできない!! 「優のバカっ」 私は、ボソっと言った。 しかし、優はそ〜ゆ〜事を聞き逃したりはしない。 「バカって…ま、どうとでも言ってください」 と言って、またため息をついた。 「安藤先生!」 私は、休み時間に突入した瞬間、職員室まで全速力で走って叫んだ。 優はもちろん付いて来ていたが、職員室までは入ってこない。 安藤先生は、私に気付いて、ビックリした様子を見せた。 「どうしたんだ?」 安藤先生が、こっちを向いて喋った瞬間、また胸がドキドキしてくる。 やっぱり…私…!? 「あの…」 「……ああ、そ〜いえば、昨日、大丈夫だったか?家帰ってから」 「あ…はい。あの、村沢先生に…その…『はぐれたみたいだ』って言ってくれたんですね。 どうも…ありがとうございました」 安藤先生は、村沢先生(眼鏡ババア)に、ちゃんと言い訳をしてくれていたのだ。 「いやいや。気にしないで」 安藤先生は、にっこり笑った。 その笑顔が、またドキドキさせる。 「あの…!」 「ん?」 「…いや……何でも無いです…」 「そう?」 「あ……、じゃあ、失礼しましたっ!」 私は、そう言うと、職員室を飛び出した。 顔が熱いのが自分でも分かって、もし赤くなってたら困るから、すぐに飛び出したのだ。 出たところで、優にぶつかった。 「優…。そこ邪魔だよ」 「…あの教育実習生…ですか…」 「それが…何よ?」 「別に…。奈美さん、顔…赤いですよ」 「暑いからよっ!」 私は、そう言うとトイレに走った。 トイレの中は、私だけの場所。 誰にも、邪魔されない。 トイレの中が安らぎの場所なんて、どうにかしてるわ…。 それにしても… 私…安藤先生のこと…好きになっちゃった!! 私は、その日『好きな人のことで頭がいっぱいで、何も手につかない』という状態だった。 家に帰り、夕飯も食べる気持ちになれなくて、部屋にすぐ篭った。 ぼ〜っとしていると、優が部屋に入ってきた。 「奈美さん…奈美さん!」 「…ん?」 「今日は一体どうしたんですか?ピアノのレッスンも全然ダメだったじゃないですか」 「別に…何も無いわよ」 「あの教育実習生ですね…」 「な、何!?関係無いわよ」 「分かりますよ。一体、何年、奈美さんの側に居ると思ってるんですか」 「う…」 優が言うと、妙に説得力があるわ。 優は、ため息をつき、私の近くの椅子に座った。 「別に、恋愛にどうこう口を挟むつもりは有りません。しかし…先生はダメです」 「何でよ!?」 「不幸になるのが、目に見えてるじゃないですか!」 優は、いつも怒るけど、こんな怒り方したことない。 「何で!?好きになってもいけないの!?」 「ダメです。先生なんて、皆、生徒には優しいんです。 別に、あっちには、恋愛感情なんてありません。 それに、もし、万が一、付き合うなんてことになって、バレたら…どっちも停学ですよ? 両方、不幸になるんです」 「何よ…別に付き合おうなんて…ただ…私が勝手に好きなだけだもん!」 「やっぱり、好きなんですね…」 「ちょっと、良いなあ。って思ってるだけよ!」 「じゃあ、早く諦めてください」 「何で、優に決められなきゃならないわけ!?私は私なの!私は優じゃない!!」 「…しかし、私は、絶対反対です!分かりますか? それに、奈美さんは、三嶋家の一人娘ですよ?ちゃんと、相手を選んで下さい」 「なんで、家にしばられなきゃならないわけ!?私は十分、言う事聞いてきたじゃない! レッスンだって、嫌なのに、ちゃんとやってるじゃない! どうして、恋愛事1つで、そこまで言われなきゃならないわけ!?」 「それでも…」 「部屋から出て行って!これは、命令よ!早く!!」 「今日は、少し興奮なされてるようなので、これまでにしておきます。 でも、良く覚えておいて下さい。恋愛なんて、学生の時、しかも先生にしなくても、 高校を卒業してから、いくらでもできるんです。それ相応の人とね」 そう言い残すと、優は部屋を出て行った。 「優のバカ!なんで…そこまで…いわれなきゃならないのよ!!」 そう言うと、ドアに向かって、クッションを投げた。 クッションはドアに当たって、寂しく落ちた。 朝。 何があっても、優の部屋を通らなければならない。 ハッキリ言って、今、優の顔なんて見たくない。 こ〜ゆ〜時は、サボるしかないわね。 私は、そう思うと、また、ベッドに潜り込んだ。 「あ〜、久しぶりにユックリ寝るわ…」 「なに言ってるんですか」 優がそう言いながら、ノックもなく部屋に入ってきた。 この家には、プライバシ〜というものが、まるで無い。 「勝手に入って来ないでよ」 「まだ、怒ってるんですか?しょうがありませんね…全く」 優は、そう言いながらベッドの脇に近寄って来た。 「優のバカ!どっか行って!私は、しんどいの。今日は、ぜ〜んぶ休むの!!」 「ダメです。早く着替えて…!遅刻しますよ?」 「遅刻じゃなくて、欠席」 「ダメです」 というと、優は私をベッドから抱き上げて出した。 「ちょっと、どこ触ってるのよ!?変態っ!」 「早く、着替えて下さい。」 そう言うと、優は、私のパジャマの上着のボタンをはずしにかかった。 「ちょ、ちょ、ちょ…ちょっと!!何やってるのよ!?」 「何って…奈美さんが着替えないからでしょ?」 「自分で着替えるわよ!…着替えるんだから、出て行ってよ」 「早くして下さいよ」 そう言うと、優は笑って部屋から出て行った。 もう、何考えてるの!? 普通、女子高生の服を平然と脱がそうとする!? おやじが金払ってでも、したいと言うことを平然と!! 学校へ向かう車の中。 「優」 「何ですか?」 優は、何やら書類に目を通しながら答えた。 「あのね、私も立派な女の子なんだから、平然と服を脱がそうとするの、やめてくれる?」 私がそう言った瞬間、運転手の松さんが吹き出したのも無理は無い。 これだけ聞いたら、怪しい関係だ。 「あれは、奈美さんが早く起きないからでしょう?」 「だからって!おかしいじゃない!しかも、平然とよ!平然と!! 優…あんた、ちゃんと男なの?」 「当たり前でしょ?それに、自分が襲ってたらボディ〜ガ〜ドの意味無いじゃないですか」 「そりゃ、そうだけど…さ!あ〜あ、そんなに、魅力無いかな〜?私…」 「襲って欲しかったんですか?」 優のその一言に、松さん共々吹き出した。 「な、な、な…何て事言うのよ!?優!!?キャラ変わってるわよ!!」 「だって、奈美さんがそう取れることを言ったからでしょ?」 「言って無いわよ!!ただ、この歳で、魅力無いなんて…ね〜…」 「そんなもの、あってど〜するんですか?恋愛は…」 「はいはい。『学生のクセに』でしょ?ダメ……ね」 「分かってるじゃないですか」 そう言うと、優はまた書類に目を移した。 「ね〜。それ、何?」 「秘密ですよ」 優は、そう言うと笑った。 「あ〜、ああは言われたけど…でも、好きになったら仕方ないと思うのよね〜。私は…」 私は、休み時間、またトイレでくつろいでいた。 「安藤先生…か…」 顔や声を思い浮かべるだけで、顔が無意識に熱くなる。 「何っ!?私、『恋する少女』みたいじゃん!一回これ、やってみたかったのよねえ」 と、一人で盛り上がりを見せていた。 次の時間は、安藤先生がする授業だった。 先生の顔を見ながら、またボ〜っとしてしまう。 「三嶋っ!どこ見てんだ?教科書見ろ。教科書!」 急に、安藤先生に名前を呼ばれ、心臓が飛び出そうになる。 「あっ…あのっ…すみませんっ」 「謝らなくてもいいよ」 そう言うと、安藤先生はニッコリ笑った。 胸がキュ〜っとなる。 私は、休み時間に、また、職員室まで走った。 何故か、無性に会いたくなった。 しかし、職員室に入ると、安藤先生はいなかった。 そこに居た先生に、 「安藤先生…はどこですか?」 と聞く。 「ああ、安藤先生ね。今いないみたいねえ。ちょっと、分からないわ。ごめんなさいね」 「あ…すいませんでした」 私は、ため息と共に、職員室を出た。 職員室を出ると、優が立って居る。 「安藤先生…ですか?」 「ち…違うわよ!」 「顔に書いてあります」 「も〜!うるさいなあ!」 と、窓を向いて言った。 「あっ!」 窓の下は中庭で、そこに、安藤先生が居たのを見つけた。 「?」 「優!!先、帰ってて!私、今日、大事な用事があるの!お願い!!」 「そんなの、無理に決まってるでしょう…ったく…何なんですか?…て?えっ!?」 優が、慌てるのも無理は無い。 私は、優がグチグチ怒っている間に、優の隙を見つけて、さっさと、中庭に向かったのだ。 「奈美さん!?」 私は、優が叫んでいる頃、中庭に到着した。 そこには、まだ安藤先生が居た。 「安藤先生!」 私が、叫ぶと、少しビックリしたように見えたが、笑って、手を振ってくれた。 それだけで、また胸がキュ〜っとなる。 「どうしたの?」 「別に…何もない…ですけど…」 「どうしたの?敬語なんて使っちゃって。二人のときは、猫なんて被んなくて良いよ。 どうせ、正体バレてるんだし」 と、言うと、また笑った。 「先生…」 「ん?」 「私………先生のこと…好きになっちゃった…かも」 「えっ!?」 「あの…」 「奈美さん!!何やってるんですか!!」 私が、また何か口走る前に、良いタイミングで優に見つかった。 「ほらっ!帰りますよ!!」 そう言うと、優は私を抱き上げて、車に向かったのだった。 「優!ちょっと…降ろしてよ!!」 「ダメです。また逃げかねませんからね」 「降ろしてよ!!恥ずかしいでしょ!」 「あんなところで、告白するほうが、よっぽど、恥ずかしいですよ!!」 優のその言葉に、時が止まったように思えた。 「優…あんた聞いてたの?」 「そりゃもう。バッチリと」 「バッチリと…って…」 「先生、困ってたでしょ?」 痛いところを、グサっと突く。 そりゃあ、ちょっと、困ってた…けど…さ。 何も、そんな言い方しなくても…。 「それに、あの先生だけは絶対ダメです!!」 ん? 安藤先生…限定?? 「どうせ、ダメですよ。今のうちに、早くあきらめなさい!」 「う……うるさ〜〜〜い!!降ろせ〜〜!!!」 私は、優の背中をバンバン殴った。 「全然、痛く無いですよ。さ、今日は華道ですよ」 優は、私を抱き上げたまま車に乗りこんだ。 「バカっ。あほっ。たこっ。人でなし」 私は、車に乗ってから、文句を言いつづけた。 「あ〜、もう。勝手に言っていてください。もう着きますよ」 「やだっ。休みたい」 「ダメです」 「やだあ〜」 「まったく、ワガママですね」 と、優はため息をついた。 「…優は、母の言う事なら、何でも聞くのね」 私はケンカ腰で言った。 「別に…そういう分けじゃ有りませんけど」 「じゃあ、何で、ここまで、優に管下され続けなきゃならないのよ!?」 「これが、私の『仕事』だからですよ」 と言って、優は、また、ため息をついた。 「奈美さん」 「な、何よ?」 「心配ばかりかけないで下さい」 「私が、いつ、優に心配なんてかけたのよ?」 「いつもです」 「いつもって…何よ!!そんなに、嫌なら、配属変えてもらえば!? 私が母に頼めば、優は、母のボディ〜ガ〜ドにだってなれるんじゃない?」 「誰も、嫌だなんて言ってませんよ」 「言ってるわよ!顔が!」 「もともと、こうゆう顔なんです」 「も〜、いい!!着いたし!さっさとやって、さっさと帰ろう!」 「それは良い考え方です」 と言うと、ニッコリ笑った。 も〜調子狂う! 結局、いつも優のせいで、ちゃんとやるハメになるんだから! 部屋に着くと、中庭での一件が頭を支配し始めた。 「あ〜!私…言っちゃった…。告白ってヤツ…しちゃったんだ!」 と、小声で叫んだ。 (だって大声で叫ぶと、優の部屋に丸聞こえなんだもん) 「あ〜〜!気になる…気になる…!」 私は、先生の返事が気になってしょうがなかった。 OKの確率なんて…1%くらいだろうな…。 でも、これで、スッキリできるし…。 どうしても、返事が聞きたい!! その感情だけが、私を動かした。 カ〜テンを思いっきり破き、つなげる。 そして、窓の近くのベッドの端に、カ〜テンの端を結んで…。 私は、カ〜テンを窓から下に投げる。 恐々ながらも、カ〜テンを伝い、なんとか下までたどり着けた。 「なあんだ!結構、簡単…!!もっと、早くから発見してれば、良かった!」 私は、番犬の3匹の犬達に吠えられないのを活用して、敢えて、犬達の側の、見張りの人が少ない道を辿った。 家を出て、走る。 走る。 先生の家まで、あと少し。 先生の家に辿りついた私は、チャイムを鳴らす。 「は〜い」 しかし、出てきたのは、予想を遥かに反して、女の人だった。 「誰…かな?」 「あの…安藤先生…」 「ああ、拓也ね、ちょっと待ってて…」 そう言うと、その女の人は、中に入っていった。 それと入れ替わりに、安藤先生が出てきた。 「三嶋っ!?」 「あ…」 「お〜い。薫!ちょっと、出てくる!」 先生は、家の中に向かって叫んだ。 それから、私と安藤先生は近くの公園に行った。 薫…? 彼女? 「あの…あれ…」 「ああ。婚約者だよ」 「えっ!?」 「ゴメンな。ちゃんと言っておけば良かったのかもな。 でもなあ、響子先生が…言うなって。ほら、ちゃんと結婚して無いし。 彼女もいないって言ったほうが…ひやかされないで済むだろう?」 「ああ…」 「三嶋の気持ちは嬉しいけど、やっぱり…」 「…うん!やっぱり、フィアンセが居るんじゃあね。 私もさ〜、別に、本当に好きとかじゃないんだよ。本当。 ちょっと、良いな…って思っただけ。それを、言っちゃうなんて、バカだね。 あはは。ゴメン。先生。本当に…ゴメン」 「謝らなくて良いよ」 「うん…。でも…」 何か言おうと思うけど、何も言えない。 ダメだって…頭では分かってた。 でも、現実、こうなると、結構厳しいや…。 「先生。本当迷惑…かけて……ごめん。もうすぐ、実習も…終わりでしょ?頑張ってね」 「あ…ありがと」 「じゃあ!!」 私は、そう言うと、その場を走って離れた。 本格的に泣き出してしまいそうで。 私は、先生の家から見えない位置まで走ると、座って泣き出した。 「う〜〜〜〜〜」 「どうしたの?お嬢ちゃん」 『お嬢ちゃん』? その古い言いまわしは何? と思いながら、振り向くと、知らない男が立っていた。 帽子にマスク…。 目は、すわっている。 これは……ヤバイ! と思った瞬間、走りにかかるが、腕を捕まれて動くに動けなくなった。 「やだっ。ちょっとっ!!」 「暴れないでね。暴れたら、痛い目みるよ」 と言って、頬にナイフを押し当てられた。 やだっ。コワイ! 「何!?も〜〜!…ぅんっ!?」 その男に無理矢理キスされる。 やだっ。気持ち悪いっ!まだ、誰ともしてないのに! そう思って、相手の唇を思いっきり噛んだ。 「いたっ!何するんだ!」 男の手は離れなかったが、唇は離れた。 その瞬間、ナイフが顔に少し当たり、頬が切れた。 「それは、こっちの台詞よ!ばかっ!」 優! 「言葉を知らない子だね。今、どんな状況か分かってるの?」 そう言いながら、その男は、私の服をすこしずつ切っていった。 「やだっ!ちょっと、離してよ!!何するのよ!?」 優!! 「何って決まってるだろ!」 妙に迫力がある声で叫ばれる。 やだっ。何で…こんなヤツに…。 優!!!どうして来ないのよ! そいつは、 「ふふふ…」 とか、無気味に笑いながら楽しんでいる。 やだ、やだ!早く…優、助けてよ!! 「何やってるんだ!!?」 諦めかけた瞬間、遠くから優の声が聞こえる。 幻聴かと思ったけど、優がソコには立っていた。 「優!!!」 優は、その男の後ろに素早く回り、腕をひねって、いとも簡単に取り押さえた。 「全く!!心配ばかりかけないで下さい!!」 私は、部屋で優に怒られていた。 あの変な男の人は、縛り上げて、電柱に張り付けてきたのだ。 警察沙汰になると、私に細かい事情聴取されるからと、いう配慮のもとだ。 優に頼んで、母にも内緒にしてもらった。 「ご…、ごめ…んなさ…い」 「素直に謝るのは良いことです。大丈夫でしたか?何もされませんでしたか?」 「遅いよ…優ってば!」 そう言うと、私は唇を拭った。 「それは……すいません。ほら、そんなに擦ると切れますよ」 「やだっ…汚い…んだもん」 「大丈夫ですよ。全然、汚くなんてありません」 「う〜〜…」 「ほら、泣かないで。……消毒…してあげますから」 「…消毒?…ふっ!う?」 私が上を向くと、優が私を抱きしめて、キスをしてきた。 あまりの突然の事に驚いたが、なんだか懐かしいような感じに身を任せていた。 「ご…ごめんなさい」 「謝らないでよ…。もっと…して欲しいくらいなんだから」 「えっ!?」 「私…良くわから無いけど、優のキスは大好きだな…」 「それは…良い方に受け取りますよ?」 優は、真顔で私を見つめて言った。 「どっちでも、良いわよ。…でも、学生のクセに恋愛はダメ…なんじゃなかったの?」 「あれは…ヤキモチですよ。奈美さんが、あの教育実習生しか目に入ってなかったから…」 「優でも、人間的感情はあるのね」 「それはもう。だって、ずっと、奈美さんのこと…好きだったんですから」 「ずっと!?」 「…こんなこと言ってたら、ボディーガード兼世話役、失格ですね。 もう、感情を押さえられませんよ…」 優は顔を赤くして言った。 つられて、私まで赤くなる。 「と、ところで、先生の家には辿りつけたんですか?」 「へっ?」 「安藤先生の家ですよ」 「何で…」 「知ってましたよ。自分で確認なさらないと、納得できないだろうと、 少し、様子を見ようと思いましたが…」 「全部、知ってたの?優は」 「はい。安藤先生に婚約者がいることもね。 でも、ちゃんと、自分でぶつかってきたほうが、奈美さん後悔しないでしょ?」 「そりゃそうだけど…」 「まあ、それはそれとして…明日も、学校とレッスンですよ。ちゃんと、寝てくださいね」 優はそう言うと、席を立った。 「ねえ…帰るの?部屋に」 「そうですよ」 「もっと、消毒…してよ」 「1日、ちゃんと良い子にしてたら、してあげますよ」 「…結局、いつも優のせいで、ちゃんとやるハメになるんだから…。 ったく。しょ〜がない!ちゃんと、してやるか!」 私は、優に向かって言った。 「そうして下さい」 優は笑って、隣の部屋に戻った。 それから、優は、私のボディ〜ガ〜ド兼世話役兼恋人になった。![]()
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