10.
 会社が終ると即、帰宅。
しかしやることもなく、バカでかいTVを呆然と見ていた。
野島さんは、あたしの近くで書類のチェックをしている。
「あのー…」
あたしは声をかけた。
「はい?」
野島さんがふりむく。

「飯島明久って、どんな人なんですか?」
「凄い人ですよ」
「…なにが?」
「信じられないって顔ですね」
「はい、信じられません」

即答。
野島さんは苦笑した。

「すぐに分かりますよ」

分かりたくもないんですけど。
と、その言葉を飲んだ。

「でも、野島さんも、大変ですよね。ずっと飯島明久の世話して」
「私は、明久さんのこと、尊敬してますから全然苦じゃありませんよ」
「本当に好きなんだね」

あたしは溜息ともつかぬ声を出した。
野島さんは本当に飯島明久のこと、好きで尊敬しているようだ。

「野島さんが女だったら、飯島明久とぴったりなのに…」

あたしは呟いた。
顔も美人だし。

「女だったら…。そうだ!」

急ないい思い付きに、あたしは立ち上がって自分の荷物を探り始めたのだった。