14.


―――次の日。

「ただいま」
玄関から飯島明久の声がした。

飯島明久は、あたしのほうを見ると、
「あれ?野島は?」
と、聞く。

「一回帰って来て、また行っちゃいました。でも、また戻ってくるって」
「ふーん」


今、気付いた。


この生活がはじまって…飯島明久と二人きりなんて。

初めてだ。

飯島明久と目が合う。
あたしは、無理矢理逸らしていた。
そして、立ち上がって。

「…あ、あたし、部屋に…」

と慌てて走り出した。

「蜜柑」

手が引かれる。
驚くまもなく引き寄せられて、飯島明久の胸の中に納められた。

「きゃッ…!」

やだ。
やなのに。




本気でやじゃないのはどうして?




そっと離されてまた目が合う。

魔法にでもかかったみたい。
勝手に顔の距離が10cm、5cmと縮まって。

「ふぅ…んっ」

唇が重なった。


驚いた。
嫌だって思っていない自分に。
ゆっくり目を瞑った自分に。


頭がボンヤリする。


飯島明久の手がそっと胸を触った。
驚きと恐怖で、意識がハッキリすると、

「やっ!!離して!」

あたしは、叫んで飯島明久から離れた。
部屋の窓にしがみつく。

「こ、ないで。近寄らないで!!」

驚いてあたしを見ている飯島明久。

「来たらここから飛び降りてやるから!!」
「どうして」


「やだ…」


気付いたら、ボロボロ泣いていた。

「ごめん…。だから。泣かないでくれ」

飯島明久の言葉はつたないながらも。
…切ない。



「…俺の側から離れないでくれ」


そう言った飯島明久は。
辛そうで。
悲しそうで…。

あたしはいつの間にか泣き止んで。


「飯島…明久…?」


ただ、飯島明久を見つめていた。





胸がキュウとなる。

…なにこれ。