16.

玄関のドアが開く音がして、あたしはドキリとした。
…飯島明久だ。


「ただいま」

あたしは無言。

「…おかえり、もなしか」
飯島明久は、ふーとわざとらしく溜息ついて。


なんか、ムカツク!!


「お帰りなさい!!」


私は大声で叫んだ。
すると、飯島明久は笑い出す。


だから、なんで笑うの?






あれから少し気まずい。



あたしは飯島明久を見る度に。
ドキドキした。

あの時のキスが忘れられなくて…。



強引で。でも優しくて。
気持ちよくて。


あぁーーーー!!
あたしは、変態かぁっっっ!!


あたしの変態――!!


一人でグルグルと考えていると、飯島明久は目の前に来ていて。


至近距離で笑った。




あたしは一瞬で時が止まる。



やめてよっ。
卑怯だよ。

そういうの。
急にそんな顔で笑うの卑怯!




いつも眉間にしわ寄せて。
難しそうな顔してるクセに。



ゆっくり顔が近づいてくる。


あ、キスだ。


そう思って自然と目を閉じた。



「んっ…」



唇が重なった。


暖かい。
こんなに心地いいんだ。

キスがこんなに気持ちのいいものだなんて知らなかった。
フワフワして。

言葉にしなくても。
気持ちが伝わってしまいそうで。

こわい。

でも。
ずっとこうしてたい気持ちの方が勝ってしまって。
どうにもならなかった。


「キスするの。嫌なら拒めばいいのに…」


唇を離してから。
飯島明久は意地悪く言った。


「…」

違うもん。
拒めないんだよ。

卑怯。
この人は、あたしの気持ちを手の上で転がすんだわ。





あたしが睨むと、飯島明久は楽しそうに笑った。