19.



 恥ずかしかった。
勝手に舞い上がってた自分が。

悲しかった。
やっぱり飯島明久にとってあたしは…。






「蜜柑さん」
声がしてあたしは上を向いた。

野島さんだ。

あたしが居たのは家から少し離れた公園。


「…」
「帰りましょう」
「あたしは、あそこが帰る場所じゃない」
あたしは首を横に振る。「飯島明久の、…ただの飼い猫なんて嫌なの」



「誰が、いつ、お前をただの飼い猫だなんて言った?」



声がして。
驚いた。

「いっ、飯島明久っ」
「いちいちフルネームで呼ぶな。バカ蜜柑」

そこに居たのは飯島明久。
どうしてそんなに威圧的なの?

「あ、あたし、やっぱりあなたの婚約者なんて無理です」
「どうして」
「どうしてって…、普通に考えておかしいでしょ!?自慢じゃないけど、あたしの家は貧乏だし。
育った環境や見てきたものも、経済観念も地位だって…まるで違う」
「それがなんだよ」
「何…って」



「人を好きになるのに理由なんているか?」



「…はい?」
なんて。
いいました?

…この人。

「…は、はぁっ!?」

飯島明久はあたしの目を見ていう。
「俺はお前を猫みたいに拾ったわけじゃない。まして靴を当てられた慰謝料請求でもなんでもない」


それから、少し視線を逸らして。


「そんなのは、ただの…」


と呟いたと思うと、あたしの腕を掴んでその場を立たせた。


「蜜柑、帰るぞ」


「えっ…」
「聞こえなかったのか?『帰る』んだ」

「蜜柑さん」
野島さんがゆっくりと微笑んだ。


「聞くから。お前の言いたいことも全部聞くから。帰ろう」



帰ろう。って。



あたしの家はあそこなの?




飯島明久の…ところなの?