8.
 家は、高級すぎるマンションの21階。
「ここが、これから俺達の家だ」


夢なら今すぐに覚めて。
あたしは目を瞑った。
目をあけるときっといつもの風景。
きっと…。


「ぎゃっ!!」


広い広い室内にあたしの叫び声が響き渡る。
目をあけると、飯島明久が不審そうにあたしを見ていた。

やっぱ、夢じゃなかったのね…。

「あたし、帰ります。帰らせてください」

できれば今すぐに。
あたしの必死の頼みだって言うのに、飯島明久は、
「じゃぁ、クビだな」
とサッパリと言ってのけた。

「どうしてそうなる!職権乱用だ!!労働基準法違反だ!!労働団体に訴えてやる!!」
「それくらい、すぐにもみ消せるんですケド?」
「…」

確かに。

飯島明久が近づいてくる。
あたしは身構えた。

なに!?なんなのよぅ!?

手が頬に添えられた。
ビックリして相手を見上げる。

飯島明久は。
さっきとは全然違う目で…。

「少しだけだ。蜜柑にも悪い条件じゃないはずだ。」

凄く悲しそうな目でそう言った。






王子さまは淋しかったのでしょうか。
一人でこんなに広い家に住んで。
会社でも、みんなと一定の距離を置かなければならない。
そんな状況に…。