『幸せの扉』
第3話『秋』
0.
「ゴメン…。言いすぎた。泣くなよ」
先生が謝っている。
私は、先生をキっと睨むと、
「これは、ヒクッ…泣いてるんじゃないです!んくっ…目にゴミが…入ったの!」
と、分けの分からない言い訳をした。
先生は私の言いわけを聞いて、ポリポリと頭を掻いている。
「なぁ…、どうしたら、許してくれるんだ?」
「許すも…何も…別に…ひくっ…」
「何でも、言ってくれよ。俺の気が晴れない」
「………」
私は、先生の顔をじっと見た。
本当に、困ったような顔をしている。
「…じゃあ…」
「なんだい?」
「ケーキ」
私がそう言うと、先生は少しビックリしたような顔をした。
「へっ!?」
「おいしいケーキ、いっぱい、おごって!」
私は輪を書いた。
「ケーキ…ね。はいはい」
先生はそう言うと、笑った。
1.
「じゃぁ、着替えてから、行こうか」
そう言って、先生は、車のキーを出してきた。
「え?」
「この辺には、あんまり無いんだよ。だから、ちょっと遠いけど街に出よう。車だったら、30分くらいで着くよ」
「が、学校は?」
「今日くらい、いいよ。ね?」
「うん」
私は、そう言うと笑った。
「やっと、笑ったな」
先生はそう言ったが、私は上手く聞き取れない。
「ん?何か言った?」
「別に…」
先生は、そう言うと、
「着替えてくるよ」
と、言って、奥の部屋に入って行った。
2.
先生は、Tシャツにジ〜パンという、ラフな格好に着替えてきた。
私には新鮮だった。
先生って…普段、白衣か裸なんだもん。
あぁ、これだけ言うと、ただの変態さんみたいだわ。
そうなんだけど。
「さぁ、行こう」
先生と一緒に、病院をでる。
先生は、扉にかかっている札を
『休診』
にした。
「大丈夫なの?」
「あぁ、大丈夫だよ。急患があれば、携帯に直接、電話がかかってくるし」
「へ〜」
私は感心する。
「乗りなよ」
先生は、車のドアを開けて私に言った。
3.
「ねぇ?」
先生が、運転をしながら聞いてきた。
「なに?」
「ど〜して、ケーキなんだ?」
「好きだから!それにね、ここ1年くらい食べて無いし…」
「ふ〜ん。好きなのに?1年も食べて無いの?」
「うん。健ちゃん…探し出してからは、全然…。健ちゃんとは、良く食べに行った…」
「1年も探してるのか!?」
先生は驚いた様に言った。
「う…うん」
「そうか…。で、健ちゃんって…本名、何て言うんだ?」
「『新井 健一』。で、『健ちゃん』なんだ」
「新井 健一…?」
「知ってるの!?」
私は身を乗り出した。
「いや、でも…どこかで聞いた事ある……ような気がするだけだ」
「良くある名前だからかなぁ?」
「そうかもな…」
先生はそう言うと、何も言わなくなった。
4.
「えっと〜…とりあえず、ここからここまで!」
私は、定員さんに、ケ〜キメニュ〜の上から5つまでを指差して言った。
「先生は?」
「俺は、コーヒーでいいよ」
先生はメニューに目を通さず、苦笑して言う。
「かしこまりました」
定員さんは、一つお辞儀をすると、去って行った。
「えへへ〜」
「何だよ?」
「嬉しいなぁ!ケ〜キ♪」
「お前、そんなに食うと、太るぞ?」
「うるさいなぁ〜!」
「まぁ、お前の場合、もっと、太らないとダメだけどな」
「ど〜せ、胸が無いとか言うんでしょ!」
「まぁ、それもな…」
「やっぱり!ムカツク!」
「ほら、来たぞ」
先生が指差したほうには、店員が早くもケ〜キを運んでくるところだった。
私の前には、5つのケーキが並べられる。
「うわ〜い!いっただっきま〜す♪」
「どうぞ」
先生は、ニッコリ微笑むとそう言った。
私は、一番手前にあった、ガト〜ショコラを一口口に含むと、
「おいし〜!」
と、言って、パクパク食べ始める。
「おいしそうに食べるなぁ…」
先生は、そんな私を見て、また笑った。
5.
「ふ〜!お腹いっぱい!」
私は、5つを完食すると、そう言った。
「もう、いいのか?」
「うんっ。おなかいっぱい!」
「そうか」
「先生、ご馳走様。おいしかった」
「いやいや」
先生は、そう言って笑う。
私は、窓の外に目を向けた。
季節は秋。
コ〜トを着ている人も多い。
ショ〜ウィンドウには、冬物の服が出揃っている。
そうか…あれから、1年経つのか…
私は、そう考えていた。
「苺ちゃん?」
「へっ!?あ、あぁ、ゴメン。ボ〜っとしてたね」
「俺と居る時くらい、他の男のこと忘れたら?」
「む…無理だよ」
「『健ちゃん』…か。うらやましいね」
「何が?」
「それだけ、愛してもらって」
「ふふ。先生も、ちゃんと愛してもらえる相手でも見つけたら?」
「そうだねぇ。さすがに…もう、30だし」
「30!?」
私は失礼にも、先生の歳を叫んでいた。
「何?」
「先生…30歳だったの?」
「そうだよ」
「み…見えない」
「それは、良い意味だよね」
「そ…そうだけど…」
30歳…?
25歳くらいに見える…。
いや、20歳と言っても、おかしくないくらい…。
6.
「じゃあ、どっか寄って行くかい?せっかく、大きな街まで出てきたわけだし」
「えっ、本当!?じゃぁ、服、見て良い!?」
「良いよ」
先生は、ニッコリ笑った。
少し歩き、近くの服屋に入る。
中を一周して、服を見て周った。
「お客様。何かお探しですか?」
店員が、横まで来て言う。
「あ、あの、冬物の上下で…なにかありますか?」
と、私は聞いてみた。
店員は、私を上から下まで見ると、
「それでは、こちらに来てください」
と、言って、私を奥まで連れて行く。
「お客様は、少し小柄ですので、こちらなどいかがでしょう?この冬の新作なんですよ」
そうして、見せられたのは、白のセ〜タ〜と少し短めの赤のスカ〜ト。
「試着してみます?」
「あ、はいっ!」
私は、店員から服を受け取ると、試着室に入った。
「あはは…。こ、このスカ〜ト…短くない?下がスカスカするよぉ」
私は、試着を終えると店員に聞いた。
「そんな事、ありませんよ。良くお似合いですよ」
店員は、営業スマイルでそう言う。
店員に誉められても、本当に似合ってるかどうか…。
「ねぇ〜、先生〜?」
「ん?」
先生が試着室の前までくる。
先生は私を見ると、
「良く、似合ってるじゃないか。すいません、これで、いいです」
とニッコリ笑って、店員にそう言った。
「かしこまりました」
店員は、お辞儀をするとレジに向う。
「お支払いは?」
店員がそう言うと、
「カ〜ドで」
と、先生が言った。
「ダメ!現金で!私が払う。先生に払ってもらう義理も無いし」
私はそれを止めに入る。
「いいんだよ。それに、義理はあるし」
「でもっ!」
「いいから。こ〜ゆ〜時は、払ってもらうのが礼儀だよ」
「うっ…」
「それに、本当に良く似合ってるからね」
先生は、そう言って笑った。
私は、顔がボンと赤くなる。
それを隠すために、私は違う方向を向いた。
何で私が、先生なんかのセリフで赤くならなきゃなんないのよ!?
7.
「先生。ありがとう…。そ〜ゆ〜つもりじゃ、無かったのに…」
私と先生は、それから街を少し歩いていた。
「いいよ。それに、バイトの子は大事にしなきゃね。折角慣れてきたのに、やめられちゃ、困るから」
「あ…、あの!」
言う言わないか迷った。
でも、言わなきゃ…。
「何…?」
「ゴメン…先生…。私…、あと、1ヶ月くらいで…辞めると思う」
「えっ?」
先生は目を開いた。
「まさか、また違う街に行くのか?」
「そう…。折角…、学校も紹介してもらって…バイトも…。だけど…ごめんなさい!」
私は、ブンと頭を下げて謝る。
「苺ちゃん」
先生が私の肩を持った。
「は…はい…?」
「本当に君は、それで良いのか?」
先生は私の目を見た。
「何が…」
「健ちゃんのことだよ」
「当たり前でしょ?」
私は、目線をそらさず言う。
「そうか…」
先生は、それだけ言って、肩から手を離した。
『本当にそれでいいのか』…?
良いに決まってるじゃない。
そう思うのに、どうして、こんなに胸が苦しいんだろう…。
8.
「健ちゃんが、いなくなったのはいつ頃なんだ?」
「え?」
「教えてくれても良いだろ?どうせ、あと1ヶ月の付き合いだ」
「う…あのね…。それが、良く覚えて無いの」
「ど〜ゆ〜…ことだ?1年前のことなんだろ?」
先生の表情が少し変わった。
「そうなんだけど…。健ちゃんが居なくなった1ヶ月前後のこと、全然、思い出せなくて…」
「それって…逆行性健忘か…?」
「なにそれ?」
「つまりな…記憶における重大な欠陥には、記憶異常があって、
これには、健忘、記憶錯誤、記憶の異常増進の三つ場合があるんだ」
「健忘って?」
「簡単に言うと、記憶喪失かな。
健忘は、前向性健忘と、過去の事象を思い出すことのできない逆行性健忘とに分かれているんだ」
「過去のことを思い出せない私は、逆行性健忘?ってこと?」
「そういうことだろ。しかも、一時的な期間だけ…。つまり、選択健忘かもしれない」
「選択健忘?」
「ある特定の事象だけの追想が阻害せられることを、選択健忘というんだ。
つまり、苺ちゃんは、自分で、ある記憶を消そうとしているんじゃないかってこと」
「え…?」
私は、急に胸が鳴り出した。
心臓の音が聞こえそうなくらい…。
どうして…?
それ以上聞くのが、恐くて…しょうがなくなってきた…。
9.
「い、苺ちゃん?」
「やめて!もう、いい!!それ以上…言わないで…!」
私は、その場に座りこんでしまう。
「ごめん。こういうこと…言うべきじゃないよな。俺は、医者失格だ」
私は、先生の声を聞いて、息を整えると、
「ううん…。こっちこそ…ゴメン。本当…ごめん」
と、言った。
その言葉を聞いて、先生は少し驚いた表情をした。
「ねぇ…先生」
私は、手をギュッと握り締めて、声を出した。
「なんだい?」
「その記憶…そこの記憶…戻せないかな…?」
「え?」
「健ちゃんの手がかり…つかめるかもしれない!」
10.
「戻る…というか、上手くいけば、催眠療法なら……」
「じゃぁ!」
「でも…」
「何?」
「そんな、心の奥に締まってしまうような記憶を呼び戻して良いの?」
「…え?」
先生の意外な言葉に、私は先生の目を見た。
「辛いことだよ?…その記憶に、耐えられなくなってしまう人を、俺は何人も見てきた」
先生は、何を思い出したのか…辛そうな顔をする。
「…もう、ちょっと…考えてみる…」
私は、自然とそう言っていた。
「そうした方が良いよ」
先生はそう言うと、私の体を支える様に歩いて、車に向った。
11.
健ちゃんの手がかりがつかめるかもしれないのに…
私は、何を、戸惑っているのだろう。
記憶を呼び戻したら、健ちゃんの居場所がわかって、健ちゃんと会えるかもしれないのに…。
…何で…。
私は、帰りの車の中で、そのことばかり考えていた。
12.
車は、私の家の前に着く。
広くて…暗い家。
戻るべき場所じゃない。
私が戻りたいのは、健ちゃんの腕の中だけ…。
「苺ちゃん」
「はい?」
「大丈夫?」
「何が?」
「一人で」
先生は、心配そうにそう言った。
「う…うん。先生。今日は、ありがとうね」
私は、そう言うと、車を降りた。
13.
その後、病院に神田は居た。
「不誠実…ねぇ……」
そして、普段吸わない煙草に火をつける。
急に見なれた女が一人、病院に入ってきた。
「あれ?どうしたの?」
神田は、煙草を灰皿に落とす。
「先生…!」
その女は、神田に抱きついた。
「ん?」
何の挨拶も無しにキスを交わす。
女はギュっと、神田の服を掴んだ。
「どうしたの?また、忘れたいことでも?」
神田がそう言うと、その女は1つうなずく。
「…ほら、おいでよ」
神田はそう言うと、小さくため息をついて、診察室のベッドに位置を移し、両手を広げた。
14.
私はまた、夢を見ていた。
今度は…昔の夢。
丁度1年前。
健ちゃんが居なくなる直前。
健ちゃんと二人。
ケーキを食べに行って
映画を見て
それから…
健ちゃんの家に行った。
その日、始めて結ばれた。
最初で最後の、健ちゃんとのH。
次の日の朝。
なんだか、くすぐったいような朝だった。
健ちゃんは、後ろから私を抱きしめて、
「受け入れてくれて…嬉しかった」
と、言った。
付き合って、2年以上にもなるのに、なかなかその1歩が踏めなかった私。
恋愛に対して、Hに関して、恐怖すら感じていた私に、健ちゃんはいつも、自由を与えてくれた。
そんな人。
健ちゃん…。
15.
「おはようございま〜す」
次の日の朝、休日だったので、私は朝から神田医院に出かけた。
診察室の前に服やら、何やらが散らばっていたので、
『あぁ、またか…』
と思って、そ〜っと診察室の扉を開ける。
きっと診察室のベッドの上に、女の人と先生が寝ているのだろう…。
そう思っていたのに…
寝ていたのは、意外にも先生だけだった。
「…?」
おかしい…。
こんな事、今までありえなかった。
休日だぞ?
朝だぞ?
おかしい。
いつも先生がおかしいから、普通だと、その方がおかしく感じてしまう。
「先生〜、起きてください」
「ん〜〜??」
先生は、まだ寝たいのだ、というふうに手を振った。
「…よし」
私はニヤっと笑うと、昨日のお返しとばかりに、先生の鼻をつまんでやろうと手を伸ばした。
しかし…
「ひょえっ!?」
ふいに、伸ばした腕を掴まれ、凄い力で引っ張られる。
途端に、ベッドの上に腕を掴まれたまま寝かされ、先生の顔と天井が交互に見えた。
先生の顔は、何の変化も見せない。
何やら怒っているようだ…。
きっと、鼻をつまもうとしたことを怒っているのだろう。
私は、そう思って、
「ご、ゴメン…って…。先生!別に、ほら、仕返ししようなんて……
まぁ、少しはしようと思ってたけど」
と、言って笑った。
「んぐっ!?」
突然のキス。
「ふ〜〜?!んぐっ!ん〜〜〜〜〜!!」
私は分からなくて暴れる。
やっとその唇が離れた。
「バカッ!変態!」
「…」
いくら罵声を浴びせても、全く動揺した様子も、顔の変化も見せない先生に、私は戸惑ってしまう。
「ん…?ど、どうしたの…?もしかして…寝ぼけてるだけか…!?」
私は、先生の顔を覗きこんだ。
先生は、目が合った瞬間、ニヤっと笑うと、
「寝ぼけてる…?そんなわけないだろ?」
と、言って、またキスをした。
16.
「せ、先生!!いいかげんにして下さい!朝から、なにやってるんですかっ!」
「朝からじゃなきゃ、良いわけ?」
「ち、違います!今のは…失言で…」
「『失言』?自分で、失言って認めたね」
「うっ…。そんなことより、早く、降りてください!!仕事が…」
「じゃぁ、今日の仕事は、俺とセックスすること」
「は!?先生!?ちょ、ちょっと…待って!!」
「待・て・な・い」
「離してっ…」
「ほら、昨日、もっと太らなきゃって言っただろ?そんなに、痩せてちゃ、俺をはね返せもしない」
先生は、喉の奥でクッと笑う。
「先生っ!ふざけないでください!」
「誰がふざけてるって?俺は、いつも本気だよ?」
「どうして…」
「さあね。苺ちゃん見たら、したくなった。前みたいに、俺を『健ちゃん』だと、思って良いからさ」
「良くないですっ!」
「もう少し大人しくしてなよ。すぐ、終わるからさ」
先生がそう言った瞬間、背筋が凍った。
恐い…。
始めて、先生を男の人として…恐いと思った。
「やだっ…やだよぅ…」
「『健ちゃん』は、こんな時でも助けてくれないね。どうしてだろう」
先生の言葉に、涙が出てくる。
「ぅぐっ…」
「泣けば、やめると思った?」
先生はそう言うと、少し目を曇らせた。
「こっちが泣きたいよ。全く」
「へ?」
「ほら、早くしよう」
そう言って、肩の上のほうを噛まれる。
「いたっ…!」
私は、顔をしかめた。
「んっ……」
右手は、スカ〜トの下に潜り込み、下着の上をすべる。
「あっ…やだっ…」
「もっと、声だしなよ」
先生は、舌で私の唇をこじ開けた。
「んっ…んぐっ…………」
「やだっ…!ばかっ!離してよ!!」
ジタバタ暴れる。
手は掴まれてしまって身動きが取れない。
両足も、先生の足に挟まれて思うように動かない…。
それでも、私は、少しでも逃れ様と動いた。
「大人しくしてなって言ってるだろ?」
途端に、先生が、私を睨む。
いつもの、先生じゃない…。
本当に…恐くて…体がすくむって…こんな時のことを言うのだろう。
「んんっ…!ぅぁんっ…」
下着の中に指が侵入してきた。
すぐに、指を2本、突き立てられる。
「いたぁっ…!!」
「全然…濡れてこないな」
先生は呟くように言った。
「やだっ…いやっ!いたっ!も、やだっ…」
私は、唯一動かすことの出切る首を思いっきり振る。
「んんっ…」
先生の指は、次は優しく、その部分の周りを撫でる。
そして、もう、1度ユックリと私のなかに入ってきた。
「ぁんっ…」
なにこれ。
違う感じてるわけじゃない!
違う。
なにこの声。
次第に息が荒くなる。
限界が近づいてくる気がした。
「ふっ…ふぁっ……!やっん…」
先生は、指を引き抜いて、目の前に持っていき、
「感じてきただろ?濡れてきたよ?」
と、言うと満足そうに微笑んだ。
「ちがっ…違うよぉ!ばかぁ…!うぅっ…」
また、涙が流れる。
今日は一体…どれだけ泣いてるのだろう…。
「んっくっ…!」
唇をかんで、もう、涙を出さないように我慢する。
しかし止まらなくて、ついには、しゃくりあげるまでになっていた。
「もう、泣くなよ…」
先生は、指で涙を拭った。
「んぐっ…ヒクっ……やだぁ…」
「んだよ?そんなに、嫌なのかよ?」
「嫌だって…言って…んくっ…じゃない!先生なんて…大っ嫌い!!」
私は、大声で叫んだ。
「……分かった…」
静かな先生の声。
「…?」
突然、ギュっと、体が締め付けられる。
「いたっ」
どうやら、先生が私を抱きしめた様だった。
「このままで、おとなしくしてろよ」
先生は寝たまま向かい合うと、私の体に顔をうずめた。
「…先生?」
先生の表情は全く見えない。
でも…私には何故か、先生が辛そうに見えた。
つづく
