『幸せの扉』
第7話『嘘』
0.
ぼ〜っとする。
頭が痛い。
何を言われても…分からない。
「どうだ?」
「…うん」
「大丈夫か…?」
「うん」
「苺ちゃん…?」
「……えっ…?」
「聞いてる?」
「え…うん」
「苺ちゃ…」
「帰る…」
私は、立つと出口に向かった。
「待って!」
先生が私の腕を掴む。
そして、ぎゅっと、抱きしめられた。
痛いくらい…。
「苺ちゃん…」
「いたいよ…先生」
私は、先生の顔を見た。
これまでに無いほどに、心配していて…少し、情けないような顔になっていた。
「何て顔…してんのよ…」
私は、無理矢理笑顔を作ってみた。
どうも、上手くいかない。
顔が引きつる。
「大丈夫だよ…」
先生はそう言った。
「だいじょうぶ…」
先生は、そう、繰り返す。
1.
苺を、隣の部屋で寝かせた後、神田は、診察室の壁を叩いた。
「くそっ…っまたかよ!またっ…俺は…」
そう、言って、下を向き、唇をかみ締める。
唇からは、血が出てきた。
「恭子……。俺は、また……救えないのか?」
2.
それから、3日目。
苺は毎日、ぼ〜っと、していた。
まるで、何かがぬけたように。
「苺ちゃん…ご飯食べな」
「…いらない…」
苺は、目がうつろになっていた。
何も映っていない目…。
「苺ちゃん…」
3.
「苺ちゃん!ちょっと、おいで!」
神田先生がそう言って、私を引っ張った。
「いたっ…何よ…?」
やだっ…。
もう、動きたくない。
考えたくないのに…。
先生は、私をカウンセリングル〜ムの椅子に座らせた。
「何…?」
「いいから」
4.
「目をつぶって」
「…?」
「いいから!早く」
「深呼吸して」
「そう」
それを、何度か、繰り返した後、苺を、軽い催眠状態まで持っていく。
神田は、苺が催眠状態に入るのを待って、息を呑むと、
「目を開けると、目の前に居るのは『健ちゃん』…『新井健一』だ」
と、言った。
5.
「つぎの音で気持ちよく目が覚めるよ」
パチっ。
神田は指を鳴らした。
苺がユックリと目を開ける。
「健ちゃん…?」
「そうだよ」
神田は微笑んで見せた。
その瞬間、苺が神田を抱きしめる。
「健ちゃん…!…健ちゃん!健ちゃんが居なくなるなんて…
考えられないよ!考えたくないっ!嘘でしょ?」
苺は続けた。
「嘘だよね…。だって…」
「健ちゃん!違うって言ってよ!!健ちゃん…!」
しかし、神田は、遮る様に、
「俺は…新井健一は、死んだんだ…」
苺は目を見張るように神田を見る。
「健ちゃん…?」
6.
神田は1つため息をつくと、
「次の音で眠るよ」
と、言って、指を鳴らした。
7.
嫌な夢…。
健ちゃんが…自分で…。
私が、目を開けると、先生が目の前に居た。
「先生…?」
私は、先生に、
「…嘘でしょ?嘘だよね…。健ちゃんが死んだって…」
と、聞いていた。
誰か…
誰でもいい…。
『嘘』だって、言って…。
「…嘘じゃない…」
先生は首を横に振る。
「嘘だ!」
『嘘』だって…。
言ってよ…。
「嘘じゃない!もう…逃げるな!」
先生はそう叫ぶ。
私は体が震えた。
「…っ」
「逃げるなよ!もう…だめだ。逃げても…何の解決にもならない。
健ちゃんは、死んだよ」
先生が私の肩を掴む。
「やだっ…」
私は耳を塞いだ。
聞きたくない…。
それ以上…言わないで…。
「苺ちゃん…!」
先生はそう言うと、耳を塞いでいた両腕を掴んだ。
「やだっ…やだよぅ」
私は自然に泣いていた。
健ちゃんが死んだって…
そう聞いて、初めて流した涙だった。
次から次へと流れ出てくる。
私は、先生の顔を見つめると、
「………先生…助けて…!!」
と、言っていた。
8.
「…んっ…」
先生は、私に、キスをした。
そして、目を合わすと、先生は、
「苺ちゃん…俺と…セックスできるか…?」
と、言う。
「えっ…」
あまりにも、突然の問いかけに、私の涙は一瞬にして止まってしまった。
先生の顔は真剣だ。
「からかってるの…?冗談キツ…。趣味悪いよ…」
私は、少し苦笑いするとそう言った。
しかし、先生は、無言で顔を横に振る。
先生は、窓際に向うと、診察室のカ〜テンを1枚ずつ閉め始めた。
私は、カ〜テンの閉まる音を聞いているうちに、どんどん意識がハッキリしてくる。
カ〜テンを全て閉め終えた先生が近づいてきた。
1歩1歩。
ユックリと。
先生がどうして急にそんな事を言ったのか分からない…。
私の頭の中は、ゴチャゴチャしていて、どうしていいか…。
全然…。
私は、その時、逃げようと…先生から離れようと思えばいくらでもできたのに
―――そうしなかった。
私はただ、先生が近づいてくるのを、呆然と見ていた。
先生が、目の前に来た時、私の目には、また涙が溢れてくる。
どうして、泣けてくるのか…
分からない…。
9.
薬品のにおい…。
先生の、少しタバコくさい白衣…。
全部が混ざって、私の中を通って行く。
「んっ…」
先生は、とびっきり長いキスをした。
そして、涙を舐め取っていく。
私は、何か不思議なことが起こっているような気がして、動けないで居た。
先生はすぐに、スカ〜トの中に手を入れて、内股を優しく撫でる。
「先生…ちょ、ちょっと…待って…」
私の静止の声も、気にせず先生は続けた。
「んっ……あっ……」
中心に指が触れる。
ソコは…
健ちゃんにだけ許した場所。
健ちゃんの…。
私は、そう思うと、急に寒気がした。
吐きそう…。
「やだぁ……」
そう言って青ざめた私に、先生は、
「どうした?」
と、聞く。
「…気持ち…悪い……」
私はそう、ささやいた。
先生は、私を強く抱きしめて、振り絞るような声で、
「俺が助けてやる…。今度こそ…絶対だ…。いいから、俺に任せておけ」
と、言う。
先生のその言葉を聞いて…私は、安心感を感じていた。
10.
下着の中に指が滑り込む、
「あっ…」
ユックリと、入ってくるのが、分かった。
「先生っ……」
私は先生の首に腕を回す。
「ふぁっ…!んっ……」
先生は、指をひきぬくと、私の太股の間に顔をうずめた。
「あっ…やだっ…見ないで……」
私は自然に頼りない声を出してしまう。
見られている。
しっかりと…。
「見せろよ…。全部」
先生はそう言うと、中心をすっと舐めた。
「んっ…!っ……あんっ……」
「先生っ…」
また、指が入ってくる。
今度は二本。
そこは、もう、充分濡れていたようで、クチュと、いう音が響く。
「んっ、くっ……!」
「キツイな…」
「はぁっ…んぁっ…」
先生は、いつもの発言とは裏腹に優しく優しく私に触れていた。
大事に。
大事に触ってくれた。
グルグルと、確実に頂点に追いやられていく。
「んくっ、やっ…もっ!…ふぅっんっ!!あ、あぁぁぁあっ!!」
目の前がチカチカして。
喉が痛いほど声が出る。
そして、少しすると、先生は指を抜いた。
「あっ…………」
何か物足りないような、声が出る。
「…?」
先生が横の引出しを、何かゴソゴソ、探している。
私はその後ろ姿を見て考えていた。
このまま、逃げて…
やめてっ…て、言って…。
先生にはもう会わないで…。
また旅に出ることもできる…。
できるのに…
足が動かない。
身体が言う事を聞かない。
―――先生がこっちを向く。
身体が自然と、少し震えた。
11.
私の上に、先生が乗っかる。
私は体が強張った。
顔も…表情も動かせない。
と、先生は視界から消えた。
先生は、私の両足を強引に開く。
「なっ……」
言いかけた時、何か、アソコに冷たい感触。
舌でもない…。
「ひゃぁっ…」
私は、小さく悲鳴を上げてしまっていた。
「な…に…?」
「『クスリ』だよ」
先生は、私の髪を撫でると、そう言って微笑んだ。
「クスリ…?」
「そう」
それだけ言って、先生はまた、長いキスをした。
「んっ…」
指がまた、私の中に入ってくる。
「やぁっ…」
「どう?」
「わ…かんない…」
私のナカで動き回る指。
アソコが疼く。
トロトロと、溢れ出ているのが分かる。
どうして…。
「んっ…!あっ………」
声も自然と出ていた。
「気持ちいい?」
「はっ…・あんっ……せんせ…何…したの?」
私の問いかけに、先生はニッコリ笑うと、
「秘密」
と、言った。
11.
身体が熱い。
全部…溶け出して行きそうだ。
「いくよ…」
先生は、ユックリ私の中に侵入してくる。
私が今まで守ってきた『壁』を壊すみたいに…。
「んっくっ……!いたぁっ…ん!」
優しいキス。
「苺ちゃん」
先生が少し動く。
その瞬間、激痛が走った。
「やだっ…。動かないで!」
「だめ」
先生はそう言って、またキスをした。
送り込まれる唾液。
「んっ…!」
「俺のことだけ考えな」
先生は私の髪を優しく撫でる。
「んっ…はぁっ……・」
「ちゃんと、受けとめるんだ。全部…。俺も君も…」
「せんせっ…」
「もっと…呼んでくれ」
先生が深く突き上げる。
「あっ…ん!………先生っ…せんせっ…」
私は先生をぎゅっと、抱きしめると、
「離れ…ないで……」
と、言っていた。
自然に…出ていた言葉だった。
「…うん。ずっと、傍に居るよ。あきれるくらいにね…」
先生がそう言って、また深く突き上げると、
私は簡単に絶頂に達してしまっていた。
「あっ…・あんっ…せんせっ…もう………!!」
12.
私達はその後、病院の狭いベッドで、寝ていた。
「苺ちゃん」
先生がそう言って、私を抱きしめる。
「…」
「怒ってる…?」
「ううん…」
私は首を横に振った。
「じゃぁ……どうして、何も言わないの…?」
「色々…考えてて…」
ゴチャゴチャしてて…。
どうして…
どうして…先生と…?
でも、1つ、す〜っと…ハッキリしたことがある。
「先生……。健ちゃんは…死んだの…?」
私はそう口にしていた。
13.
「健ちゃん、新井健一が死んだのは…去年の11月1日だった」
先生が少し考えて口を開く。
「どうして…そんなに、詳しく…」
「事故だった。車とバスの…」
先生はそう言うと、唇を噛んで下を向いた。
「…先生?」
「車に乗っていた女のほうも、バスに乗っていた健ちゃんや
他の乗客20名余りも全員……死んだよ。
完全に、車に乗っていた女のほうの過失だった」
「どうして…知ってるの…?」
「車に乗っていた女というのは、…山川恭子。俺の患者で……恋人だった人だ」
つづく
