『幸せの扉』 番外編『幸せな二人』





「先生のばかぁっ!!!!」




診察時間が始まったと同時に、苺が叫ぶ。


そして、苺は診察室から飛び出した。


「なんだとっ!こらっ!苺!待てっ」


俺も、苺の『ばか』という発言にムカッときて追いかける。


一瞬にして、『田舎の静かな病院』は、『田舎の賑やかな病院』へと変わった。


この病院に来るのは、老人ばかりだ。
老人達は、楽しそうに、その情景を眺める。


「まただよ」
「これがあるから、賑やかだねぇ。ここは」

などと、話している声が聞こえた。


苺は、簡単に掴まった。
そりゃ、男女じゃ、普通、男のほうが走るのが早いと決まっている。
それに、苺は走るのはそんなに速いほうではない。



「おいっ!文句があるなら、こっち向いて言えっ!」



俺は、そう言うと、苺の顔を強制的に、自分の顔と向き合わせる。

「ふんっ」
それでも、なお、横を向こうとする、苺。


「お前なぁ…」


なんだってんだよ?
さっきまで、いい雰囲気だっただろ?
つい、何時間か前まで、病院のベッドでHしていたじゃないか…。


俺は、苺の頬を、親指と人差し指で挟んだ。

「うぎっ!」
「この口は、飾りモンか?え?」
「いひゃいっ!ふぁなしてー!」
「ヤだね」

「ふにゅ〜!!」
そう言うと、苺は、ガブっと、俺の手を噛む。


「いてっ!」


「ふんっ!もう、絶対、口きいてあげないんだからっ!」

そう言って、手を押さえている俺を尻目に、神田医院を飛び出す苺。

「おいっ!どこ行くんだよっ!」

俺がそう聞いたときには、もう、いなかったりする。




「相変わらず、仲良いねぇ」
「今日は、何が原因だ?」

「さぁ?思い当たる節がなくて…」
俺はそう言うと、頭を掻いた。





さて…苺はどこに行っただろう…。
考えなくても分かるか…。
アイツのところだ。




―・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−




俺は、野原 智夫。



アダナは悲しいかな、『トモミ』。

高校時代。
『女顔だからトモミだな』と、神田が言い出したので、皆、真似するようになった。


酷い事言うよ…。
男に向って、女顔はないだろ?
そして、その諸悪の根源…いやいや…、神田朔矢は、友人だ。


そして、その神田の彼女、月川苺とも仲が良い。
仲が良いというより…



愚痴の相手である。



「もう、絶対!許さないんだからっ!!!」
彼女が、俺が勤めている大学病院に、ズカズカ入ってきて、扉を開け、
俺を見た瞬間放った一言がこれである。



「…苺ちゃん。何かあるごとに、俺んとこ来るなよ」
「ほんと!もぅ、絶交よ!絶交っ!」
「聞いてないし…」

俺は、は〜っと、ため息をついた。


そんな俺を、ギっと睨むと、俺の前に立ち、俺の白衣を掴むと、
「ねぇ、トモミさん!!大体、アイツ!なんなわけ!?ねぇっ!?」
と、凄い剣幕で怒る。


「…」


おいおい、俺に怒らないでくれよ。

苺ちゃんは、普段は小さくてカワイイくせに、怒ると凄い迫力がある。
毎度毎度これだが、怒っている彼女には何も言えない。


「ふんっ!まぁ、いいわ」
そう言って、白衣を離される。


「なんなんだ…?」


俺を無視して、次は、神田に対しての悪口が始まった。

『先生のバカ!変態!ハゲ!もやしっ子!!』

などと、どうでもいい罵声が飛び交う。



俺は、ヤレヤレと、苺ちゃんの入ってきた扉に目をやった。
そこが、小さく開き、少しだけ風が入ってくる。


「へぇ。もやしっ子だって?面白い事、言ってるねぇ」
そう言って、真打が登場したわけで…。


その時、神田は微笑んでいた。
その微笑みは、まぁ、意味上の『微笑む』ではない。
そう…言うなれば。相手を威嚇するような微笑みなわけで…。


笑ってはいるが、黒いような…怒っているオ〜ラが出ている。


神田は、相当怒ってる。


苺ちゃんも俺も、そんな神田を見て、一瞬、言葉に詰まった。



「すまんな。トモミ」
神田が俺に言う。

「いえいえ。もう慣れたよ。もう、毎日だもんな」

俺がそう言うと、苺ちゃんが、


「今度とゆ〜今度は、も〜本気で怒ったんだからねっ!!」


と、叫ぶ。




おいおい…。
今の神田に、はむかえるのは、苺ちゃんくらいのもんだ。


「もう、口きかねぇんじゃなかったのか?」
そう言って、笑う神田。

「あっ…!」
そう言って、苺ちゃんは、慌てて口を塞ぐ。


あぁ、また『口きかない』とか、言ったんだろうな…。
顔と言う事だけは、全然子供だ。


「苺」
「ふんっ」
「何、怒ってるんだよ」
「ふんっ」
「俺、何もした覚えがないんだけど?」



「嘘つけ〜!!また、診察室で無理矢理、Hしてっ!しかも、3回も!!!
『服、汚れる』つったのに、『大丈夫、大丈夫、後で俺が洗濯してあげるから』
って言ったのは、どこのどなたでした?
『あとの掃除も俺がするから』って言ったのは、どこのどなたでした!?」



「…俺だね」



「ぶはっ!」
俺は、思わず吹き出した。

おいおい…。
そりゃ、神田が悪い…。
じゃなくて。



なんて、会話してんだ。
少女のような苺ちゃんの口から、そんな言葉を出さすんじゃないよ…。


「それなのに、掃除とか…してくれなかった!!患者さんに見られたよ!その跡とか…。色々!!う〜!もぅ、顔出せない!!」
「大丈夫だって。皆、もう、そんなこと、分かってくれてるって」
「そういう問題じゃないっ!!」

苺ちゃんはそう言うと、俺の目の前にあった俺の本を神田に投げた。
神田はヒョイとよけ、俺の本はバサっという音を立てて床に落ちる。


「うわ!危ないだろ!!当たったらど〜すんだ!」
「当たる様に投げてるの!!」




「おいおいおい!!よそでやってくれ〜〜〜!!!!!」





―・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−



私は、その後、強制送還された。



「苺」
「なによ」
「ごめんって」
「ふんっ」
「またかい…」


先生も、怒ってるし。
でも、私はもっと怒ってる。


いくら回りの人達が、私達がそういう関係だって知ってても、そんな…
『乱れたベッド』とか…
『小さなビニ〜ル製の正方形のゴミ』とか…見られたら…
っていうか、見たほうもさ…


嫌じゃない!!


私がブツブツと言っている間に、神田先生の顔が近づいてくる。
と、いきなりのキス。


「んっ!!?」


私は、ぐぐっと、神田先生の大きい体を押しのける。

「ちょっと!キスなんかで、誤魔化そうとしたってそうはいかないんだから!!
今日は、いつもの私と違うのよ!!!」

私は、ビシッと指差して言った。




「苺。もう、いいだろ?」
そう言って、上目遣いで見てくる先生。

「そんなカオしたって、かわいくないんだから!!!」
「ごめんって」



「知らないっ!先生のバカ!変態医者!!」



「ふ〜ん。また、そういう事言う…」


下手に出ていたと思いきや、急に態度が一変。
私が1歩引いたと同時に、先生は私の上に覆い被さってくる。

「きゃっ!のけ〜〜〜〜!!重い〜〜〜!!!!」
「潰れそうだな」
「だから!潰れるって!まじで!!」
「退いて欲しい?」
「当たり前」
私は、そう言ったのに、
「したくなったから無理」
なんて答えが返って来る。


「はぁ!?」


「んっ…」
また、キスを交わす。


「やぁ…!もう!さっきも、やったでしょ!!」
「足りないね」
そう言って、両手を片手で掴まれる。


あいているほうの手で、服のボタンは確実にはずされていっている。
「変態っ!ばか!万年発情期〜〜〜〜!!!」
「そうかもな」

ニヤっと笑う、先生。



肯定しないでよっ!!



「もうっ!!!じゃぁ、他の人とやってよ!!」
私は、そう叫んでいた。

「いいのか?苺は、それでも?」
先生の表情が変わる。

「い〜もん!!」
「ふ〜ん。あ、そう。わかった」
先生はあっさりそう言うと、私の身体から離れた。



「え…?」




もしかして…



怒ってます?




先生は何も言わずに、私に背を向けて、部屋の扉まで向う。
そして、扉に手をかけた。



その瞬間、私は、
「やだっ!!待って!!」
と、叫んでいた。


「嘘だもん!!!先生が、他の人とするの…嫌だよ!嫌なんだよぉ……」


自然に、泣けてくる。
おかしい。

だって、考えたら…
ううん、考えるだけでも。


嫌だ。


先生は、昔、いっぱい女の人いたし。
だから、いつも、どこか…不安だった。




いつも私が怒って。
先生が追いかけてきて。


それで、安心している自分を知っていた。



心の奥でいつも不安だったから。





いつか、他の人のところに行っちゃうんじゃないかって…。







「苺」
フワっとした感覚。

先生のにおい…。
私は、先生にきゅっと、抱きしめられていた。

「ごめん。嘘だよ」


「うぅぅぅぅ〜〜〜!!!せ…うくっ……んせ…なんて…嫌い〜〜〜」


「ごめんって」
「う〜〜…………んっ」
また、キス。




次は、先生の舌が私の口内を這いまわる。
「ふぁ……・っ…はぁ」


長い長いキスをして、唇を離すと、
「お前以外のところなんて…行かない。行きたくない」
と、先生は言った。



「センセ…」
「ほら、鼻水まで出てんぞ」
「ばかっ」




「その格好で、しがみついてると、襲うぞ?」
先生は笑ってそう言う。



私は、自分の身体に視線を落とした。



脱がされかけた服。
もう、ほぼ下着だけになっている、


「いいよ。先生なんて、恐くないも〜ん」
「言ったな」


「言いましたよ?」
私達は、目線を合わすと、笑い出した。




「じゃ、お言葉に甘えて」
そう言って覆い被さってくる。



「んっ…別に、本当に、お言葉に甘えなくても…いいですよ?」



「いやいや。せっかく、誘ってくれたわけだし」
先生はニッコリ微笑んだ。

「センセ…」
先生は、簡単に下着まで脱がしてしまった。



「やぁ…っ」
「もう、濡れてる。なんだかんだ言って、苺もやりたかったんだよな?」
先生が微笑む。



「ちがっ…!んふぁっ………」
クチュっという音とともに、指が侵入してくる。



「んっ…はぁ…んっ!?」



…そういえば…



私は、急に、大事なことを思い出した。


「ま、まって…」



「無理」
「扉…閉めてないよ!…1分だけ…ね?」
「無理だって。開けてたって、こんな田舎だし、大丈夫。泥棒なんて入りやしないよ」


「泥棒とかいう心配じゃなぁぁあい…んむっ!」


また、強引に唇を塞がれる。


しかも…長い…。


「ん〜〜〜!?くはぁ〜〜〜、はぁ、はぁ…。もぅ!苦しいっての!死ぬじゃんか!」
私が文句を言うと、先生は満足そうに笑う。


そして…


「ちょっとぉっ!」


「まだ、なにか?」
「どうして、両手を掴むのかな!?」
「だって、苺、逃げるし、暴れるだろ?」
「むき〜!!なによ!それ!私は、お山の猿か!?え?」
「ぷっ…」
「笑うしっ!なによ!ムカツク」
私は、足だけを動かして、先生に蹴りをいれる。

先生は、全然痛くないように笑う。

「いや〜…。だって、苺、小さいから…」
「また、小さい、言った!?」


「小さくて十分だろ?俺が、小さい奴専門になってやるから」


…おい。
そりゃ、反則だよ。


「…」
「お?珍しく照れてるし」



「…………このロリコンめ」



反撃。



「なんだと〜!?」
「ふにゅ!…やぁっん!」


先生は内部に入れた指をまた、動かし始めた。


「んくぅっ…」
胸がざわつく。


「んぁ…………!はぁっ」
室内に響き渡る音のせいで、神経がどうにかなってしまいそうな感覚が、波のように襲ってくる。



「もう、イキそうだろ?」
そう言って、意地悪く笑う。


「やぁっ!…ばかぁ…」
「こうゆうときまで、素直になれないかね?昔は、素直だったのになぁ」

「誰が…んっ……こんな性格に………・したと思ってるのよぉ?」
「俺しかいないね」
そう言うと、さらに指の動きを早めた。


「あんっ…!やぁんっ…んぁ………」


「っと、まだ、だよ」
と言うと、先生は急に動きを止めてしまう。



「…やんっ…………なんでぇ…?」
もうちょっとだった…
から、私は声がうわずったままで、聞いていた。

「して欲しいなら、ちゃんと、頼まなきゃ」
そう言って、また、ニヤっと笑う。



「…え?」
嫌な予感…。



「自分でするの?ん?それも、楽しそうだけど」
「…う…」
「そのままでいいわけ?膝まで滴ってるよ」
そう言って、指で、膝の愛液をすくった。


「やっ…ぁっ…」
それだけで、また、疼く。


「せ…んせ」
「何ですか?」
先生は、診療の時のように、聞いてくる。


卑っっ怯ぅ―――!!



「あう…」

私は、口をあけては、閉じ。
金魚みたいに、何度も繰り返した。



先生は、ふ〜っと、ため息をつくと、


「一瞬の恥ずかしさを取るか。そのままの状態を取るかは、苺次第じゃん」
と、言う。


「いじわる!」


「お〜。また、そんな事言うし」
そう言うと、先生は先生の指に付いている、私の愛液を舐め取る。

「…うぁ」


ドクン。と心臓がなった。


…だめだ。



「なに?」
先生は勝った、と確信したのか笑っている。



「………して」
「…して?」
「して欲しいです…」



…負けた…。




「…まぁ、今日は、それで許してあげるか」
そう言うと、先生は、急に私の両足を持つ。


「んぁっ!…んくっ…ちょ…!!」


と、いきなり先生が侵入してきた。

急なことに、裂けるような痛みが走る。



「いたっ!!…・んっ!?いたぁっ!!…うくっ!!」




それから、ゆっくりと、先生が動き出す。
「俺さ、怒ってるわけね」
「あんっくっっっ!うあっ…な…ん……で?」

「ん〜〜」


「色々…やぁんっ…・んっ……くっ…言ったから?」


だから痛くするの…?
いじわるするの?


「違うよ」


そう言うと、先生は、動きを早める。
私もソレに合わす様に、かってに腰がゆれる。


痛みが快感に変わる。
自分でも、相当おかしな身体になってきたと思う。


先生のせいなんだから。



もう、だめ…。

声がひっきりなしに出る。
急に頂上まで追い詰められて、


「やぁん!やぁっ!あっ…・あんっ………あぁっっん!!!!!」


頭が真っ白になる。
そこで、ブラックアウト。









「苺が…いつも、トモミんとこばっか行くだろ?つまり、嫉妬」











それから、数分後。
私は、やっと、意識を取り戻していた。

「ねぇ?先生」


「ん?」


「何に怒ってたの?」

「教えない」
そう言って先生は苦笑する。



「何ソレ!?も〜!ズルイ!!!」
私は、そう言うと、ベッドを抜け出す。



下腹部に激痛が走る。
「いつっ…・」
「大丈夫か?診てやろうか?」
先生は、ニヤニヤしながら聞いてくる。


「いらない。大丈夫じゃなくしたのは、どこの誰よ…」
「俺だね」
そう言うと、先生は私の背後に立っていた。



そして、私を軽々と抱きかかえると、ベッドに戻す。



「扉…結局、開けっぱなしじゃん…」
「いいだろ。たまには」
先生はそう言うと笑った。





おわり