0. それから、2週間後。 『あの子…あれから会えないな…』 三枝は、勤務中に、ボンヤリ、そんな事を考えていた。 「どうしたんだ?ぼんやりして。眠いか? 夜勤明けは辛いだろうけど、あと、2時間だからな…」 加納が、三枝の方を見て言った。 「いや、それは大丈夫です。夜勤には慣れてきました。 昨日の夜は、たいしたことも起こらなかったし…。 それより……、そ〜いえば、最近、あの子、どーしたんでしょうね?」 「あの子って…。『村岡 知野』か?」 「そうです」 「あぁ、最近、見ないな。どうしたんだ?そんな事聞くなんて…」 と、言いながら三枝は、笑みを浮かべている。 「な、何でも無いですよ?ただ…最近見ないから…ちょっと…」 「まぁ、それなりに元気にやってるだろ」 「無責任ですね」 「無責任も何も…。こっちは、何もできないんだから。 …何を言っているんだ?おかしいぞ、三枝は。最近」 と、加納は言った。 「別に、何でも無いんですよ!?」 三枝は、もう1度否定しておいた。 『加納さんは、意外と鋭いからな…』 三枝は、出てくる汗を拭きながら思った。 1. 私は、その時、図書館にいた。 もちろん、学校のある時間に…だが。 この図書館に来るのは、日課となっている。 家から、電車に乗らなければならないけど、この市で一番大きな図書館だ。 本も豊富だし、コンピュータも数台だが置いてある。 古い本を開いて、とある調べモノをしていた。 しかし、どうも、いつもみたいに文字が頭に入ってこない。 こんな状態になったのは、丁度2週間前からだ。 あの人…三枝さんと、Hしてから…。 私、おかしいよ。 私は、頭をかきむしっていた。 「まるで、ダメだ…」 私は、早々と見切りをつけると、家に帰る準備をした。 2. 時間は、丁度12時。 家には、母がいる。 しかし、まだ寝ているだろう。 『学校に行くなら、教科書も取りに行かなきゃならないし…』 私は、そう考えると、家路を急いだ。 3. 家に帰ると、私は急いで部屋に入り、教科書を鞄に詰めた。 そして、制服に着替える。 着替えている途中で、母親の篠が、部屋に入ってきた。 私は、唾をゴクリと飲んで緊張した。 「ど、どうしたの?珍しいね…。寝てなくて大丈夫?」 「そっちこそ…学校なんて、行ってど〜する気!? 学校なんて行ってる暇があったら、もっと、おじさんの相手でもしなさいよ!」 篠は、近くにあった、花瓶を私に投げた。 鈍い音がしたと思ったら、頭に当たっていて、頭から一筋の血が出ていた。 私は、手で血を拭うと、 「ごめんなさい」 と、謝った。 「前、海東商事の社長との約束…破ったんだって!? 社長から、私に連絡があったんだよ!?何で、あんたは、ちゃんとできないの!?」 というと、次は、蹴りをいれてきた。 海東商事の社長との約束。 そうか、2週間前のあの日だ…。 「ごめんなさい」 「謝れば済むと思ってるの!?あそこの社長は、他の人より、支払いが良いのよ! そんな事知ってて、やったのね!?」 「違うよ…」 「そんな嘘を平気でつくな!もう、一体、誰があんたをそこまで育てたと思ってるのよ! あんたなんて…産むんじゃなかった!!!」 篠は、そう言って、悲痛な叫び声を上げた。 そして、いつものパターン。 その台詞を言った後、泣き崩れるのだ。 私は、 「ごめんなさい…」 と言いながら、家を飛び出した。 4. 「あーぁ、これじゃあ、学校には行けないわね」 私は、頭から流れ出る血を手で触って呟いた。 「制服は着てるんだけどな…。皆がビビるわ…」 私は、少し笑った。 何がおかしいわけでもないのに…。 5. 目の前に、交番が見えた。 と、私は進路をそらした。 あの交番には、三枝さんが…いるからだ。 会いたくなかった。 自分の弱いところを見せた人には…会いづらかった。 「ちょっと!」 と、呼びとめられる。 コレほどまでに、驚いたことは無いくらい驚いた。 恐る恐る、後ろを振り返ると、やっぱり、三枝さんだった。 車に乗っていて、帰る途中か…? しかも、私服。 「どうしたんだ!?」 と、私を見て言った。 「ん?」 どうしたんだ!?って…何? 私は、少し考えてから、手を見た。 そうか、この血の事を、言っているのだろう。 「何でも無い」 私は、歩き出した。 三枝さんの車は、私の歩くスピードに合わせてついてくる。 「ちょっと、そんなに、血出てて…何でも無いわけ無いだろ!病院に行こう!な?」 と、三枝さんは、食い下がってきた。 「嫌っ。病院は、嫌なの!」 「病院行かなきゃ、治らないだろ!?」 「嫌よ。病院行くくらいなら、死んだほうがマシ!」 私は、叫んだ。 「ほらっ。とにかく、乗りな!」 そう言って、三枝さんは、車を降りて、私を抱きあげて、車に押しこんだ。 「やだっ!ちょっと!!なにすんのよ!!変態〜〜!誘拐犯〜〜〜!!」 「こらこら。誤解されるようなこと言うな!」 三枝さんは、困った様に言った。 6. 病院にはすぐ着いた。 私は、断固として、車に張り付いていたんだけど、三枝さんは、 いとも簡単に車から私をはがすと、そのまま抱き上げて、病院の中に入った。 「ばかっ!変態っ!降ろしてぇー!!」 私は、三枝さんを思いっきり叩きながら喚いた。 病院の中では、注目の的。 皆の視線を感じる。 三枝さんは、 「ダ〜メ」 と言うと、そのまま受付に向かった。 私が、頭から血を出していることもあって、すぐに、診察室に案内された。 診察室に入ると、白髪の医者が1人。 歳のいったの看護婦さんが1人いた。 三枝さんは、私を診察室の椅子に降ろす。 私はぷいと、医者と違う方向を向いた。 「出て行ってくださって結構ですよ」 看護婦さんは、三枝さんに言う。 三枝さんは、 「あぁ、ここにいます。逃げ出すかもしれないですしね…」 と言った。 しかし、看護婦さんは 「困ります…。診察の邪魔になります」 「いいですよ。居てもらっても」 医者は、三枝さんに笑ってそう言った。 それから、 「あぁ、どうしたんですか?これは?」 と、医者は私の頭を触りながら聞く。 「…」 私は、無言で居た。 「何か…ガラスのコップでしょうかね…?瓶かな?誰かに当てられた?」 医者は、優しくそう言った。 「ちょっと…ぶつけたんです。自分で」 「自分でぶつけたら。こうは、ならないですよ?とにかく、脳波に異常は無いか…検査しましょう。君…ちょっと…」 と言うと、看護婦に指示を出し始めた。 なんで、私が病院なんかに…。 私は三枝さんを横目で睨む。 私はそれから、検査室に連れて行かれた。 7. その頃、三枝は、診察室に残っていた。 「あのー、あの傷…誰かに付けられたものなんでしょうか?」 「そうですね…。たぶん…。他にも、頭や、首にも、たくさんの傷跡がありました。 ずいぶん、昔からでしょうね…」 「虐待…って事ですよね」 「断定は出来ないですが、たぶん…」 「それにしても、久しぶりですね」 医者は、三枝に向かって微笑んだ。 「昔は良くお世話になりました」 「はっはっは。立派に警官になれて…良かったじゃないですか。 警察学校の時、切った傷はもう、治ってるみたいですね」 と、医者は、三枝のおでこを見て言った。 「おかげさまで」 「どうですか?憧れの職に就いて」 「色々、大変ですね」 「あの子のことが、心配でたまらない…といったところでしょうか」 と、言うと、医者は笑う。 「ち、違いますよ」 三枝は、焦って言った。 8. 「良かったな。たいした異常は見られなくて」 三枝は、帰りの車の中で言った。 「だから、大丈夫って言ったじゃない。放っておいてよ」 私は、大げさだと思う頭の包帯を触りながら言った。 「今日は、これからのご予定は?」 三枝さんが聞いた。 「何?またしたいの?私がお断り!!」 「どうして?」 「どうしてって…そりゃ、その、三枝さんが下手だからよ!」 もちろん、嘘だ。 三枝さんは全然下手じゃない。上手い。 それに、私がたえられなくなる。 そして、自分じゃなくなるのが恐いのだ。 「嘘だ。あんなに感じてたくせに」 三枝さんは笑って言った。 「か、感じてなんて…!あれは、演技よ。演技! あんな演技にひっかかるなんて、まだまだね」 私は、鼻で笑う。 「演技?本当に?」 「当たり前でしょ?」 私は、突き放した様に言った。 9. 「じゃあ、賭けてみようか」 「はぁ!?」 「もし、君が感じたら、そうだな…1週間に2回以上は、俺とこうして会ってくれる? でも、君が感じなかったら、俺はもう、君の前には現れないよ。どう?」 「どうって…言われても…。そんな条件のめないわよ!」 「へー。自信がないの?」 「ぐうっ…!」 やけに挑戦的だ。 何か…私、バカにされてるみたいじゃないの! 「いいよね」 返事も無いのに、そう言うと、三枝さんは、車を道の端に止めた。 「な、何!?」 私が、戸惑っていると、車のシートを勢い良く倒した。 「ちょ、ちょっと!誰もそんな賭けになんて…!」 と、言いかけた瞬間、唇で塞がれる。 「やだっ…!ちょっと…!!!」 三枝さんは、すぐにスカ〜トに手を入れてきた。 三枝さんは、いとも簡単に下着だけを取ると、指をそこに侵入させてきた。 「ひゃっ…やだっ!ばかっ!!やめてよ!!」 三枝さんの指でその部分をかき回され、音が車内に響く。 「あっ…うぅんっ…」 やだっ。 嘘でしょ…? 「やっ…あっ…!」 三枝さんの背中を、ギュッとつかんで、私は、快感に必死で耐えた。 唇を噛みしめて声を出さないようにする。 しかし、その努力も空しく、唇で強引にこじあけられてしまう。 舌が口内を動き回る。 「声出せよ。感じてるんだろ?」 「やだっ…バカっ!ちがう…って…!」 その間も、三枝さんの指は休むことなく、動いている。 一度指を抜かれ、その後も、何度も執拗に回りを触ってくる。 「バカっ…あっ……やめて…!」 声が上ずる。 「バカ、バカ言うなよ」 三枝さんは、動きを止めるどころか、いっそう強くなる。 「あっ…やだっ…ひゃぁっん!もっ!やっ…あぁっ…やあぁぁっ!!」 その後、ようやく三枝さんは指を引き抜いた。 「指だけでイったよね?感じたんだろ?」 「…感じて…なんて、無いよ…」 と、全く説得力の無い声を出してしまう。 「じゃあ…」 というと、三枝さんは、狭い車内で私の腰を持った。 「なっ…なにっ…?」 背後に、しっかりと腕を回される。 「まだだよ」 そう言った三枝の言葉が、悪魔の宣告のようにすら思えた。 「何考えてんのよ…!!」 正面に回った三枝さんの手のひらは、体中を這い回る。 「あっ…あぁっ…やだっ……」 「感じてるんだろ?」 「ちがっ…!」 そう言った瞬間、三枝さんは、太腿を抱え込んできた。 そして、三枝さんは、手で強引に足を開かせた。 「うそっ…やめてっ」 三枝さんの目線はどこにあるのだかは、よく分かった。 それが、余計に恥ずかしさを呼んだ。 「感じてるんだろ?」 もう1度、そう言うと、三枝さんはそこに舌をはわした。 「違うっ。やだっ…やめて…!」 気が変になる。 やだっ。 自分で自分が分からなくなる!! 「ちゃんと、言わなきゃやめない」 三枝さんは、意地悪くそう言った。 「もう1度だけ聞くよ。感じてる?」 三枝さんは、そこに、舌をはわしながら聞いてくる。 ピチャピチャという音が耳につく。 「はっ………やっ…やめて」 「言ったら、やめても良いよ」 と言った。 「そう…かん…じてるよ……。もう…だから………!」 「良く言ったね」 と言って、三枝さんは、優しく私の頭を撫でると、深く突き上げてきた。 「えっ…ちょ…!やだっ…約束…違う!!」 「約束?したっけ?」 三枝は、酷いトボけかたをすると、 「無駄話はやめよう。折角だから、こっちに、集中しよう」 と言った。 10. 「じゃあ、今度、また会おうな。今週中にでも…」 三枝は、タバコに火をつけながら言った。 「何ソレ?」 私はとぼけてみせた。 「約束しただろ?感じたら…1週間に2回以上は、会うって…」 「そんな約束してません!」 「しただろ?」 「してない!」 「ちゃんと、金は払うよ」 「そ、それでも、三枝さんとは嫌なの!」 「俺、下手じゃ無いだろ?…どうして…」 三枝さんは、困った様に聞いてきた。 「上手いからよ」 私はそう言うと、車を降りた。 月が出てるせいで、夜でも少し明るい。 月は、満月に近いが、少し欠けていた。『大切なもの』 第2話『十六夜月』![]()
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