0. あれから、つかんだ情報。 警察の官僚のあるグル〜プと、私の父の会社は、つるんでいたのだ。 それだけだったが、重要な事実だ。 でも、決め手にかける。 やはり、一般人には限界があるのだろうか…。 1. 私は、それから、毎日の様に色々な、男のところを渡り歩いた。 援交相手…だが。 それは、家に帰りたくない気持ちからでもあり、三枝さんのことを 忘れたい気持ちもあったのは事実だ。 しかし、誰とヤっても、よくなれない。 体調も悪い。 食べても、すぐ吐いてしまう。 頭もお腹も…心も、全部痛かった。 2. そんな日々が1ヶ月ほど続いた。 家には足も踏み入れてなかった。 頭の中は、忘れ様とすればするほど、三枝さんのことでいっぱいになった。 そんなある日、コウさんから、久々の電話があった。 コウさんとは、あのあと、1週間ほど毎日会ったが、重要な鍵は握っていないと思われた。 それから、私は、いつしか、コウさんに、『興味』がなくなった。 情報を持っていないのだから、当然である。 「もしもし」 『元気?』 「うん」 『今、何してるの?』 「なにも」 『今日、会えないかな?』 「ゴメン。今日はちょっと…」 『そうか…。残念、じゃぁ、また今度』 そう言って電話は切られた。 情報のないコウさんは、私にとって、ただの『嫌いな警察』になったのだから、会いたくなかった。 3. 雨が続いたある日。 私は、久しぶりに家に帰る事にした。 というのも、そろそろ、中学の期末テストが始まるからだ。 いくらなんでも、テストくらい出ないとマズイ。 テストを受けるには、制服が必要だった。 制服は、家にしか無いのだから。 私は、家の前で、2・3度深呼吸した。 『もし、母が居たら…』 私は、手に汗が出てるのが良く分かった。 何日も、留守にしてたって、別にとがめてくるような母ではない。 むしろ、帰ったほうが、嫌がられる。 『あんたなんて、産むんじゃなかった!』 と。 私は、この世に産まれてきては、いけない子だったのだ。 別にそれを思って、泣くことはなかった。 小さい頃は、よく、1人で泣いた気がするが、そんな昔の事は忘れた。 もし…両親が離婚した時、私が父と一緒にいけば、どれだけ人生が変わっていただろう。 母は、裁判で、私を勝ち取ったのだ。 そこまでした、理由は『私に稼がせるため』だ。 母が、裁判官の前で、 「私には…この子が必要なんです」 と、嘘泣きしていたのを良く覚えている。 まぁ、父とは、よく、母に内緒で会っていた。 あの日もそうだった…。 父は、もちろん、私が援交させられてるなんて知らない。 私は、父の前だけでは、『違う私』になれたのだ。 父の存在は大きかったのだ。 4. そんな事が頭をよぎった。 それから、私は、思い切って戸を開けた。 母は、横になっていた。 背を向けてはいるが、動かないから、寝ているのだろう。 『良かった…。寝ていた』 私はそう思い、母を起こさない様に、そ〜っと、部屋に入った。 母の横を通った時、異変に気付いた。 胸のあたりから、大量の血。 そこに、刺さっているのは、どうやら、ナイフだった。 まぁ、何日かたっているのだろう。 血は、少し乾いて、茶色っぽく変色していた。 私は、一瞬、言葉を失ったが、やけに冷静だった。 普段から、男付き合いは良くないし、危ない商売にも手を出している。 人を脅して、金を巻き上げる。 人の秘密を握ってユスル。 そんな事ばかりしている母だったから、こんな事がいつか起こるだろうと予想はしていた。 しかも、私にとっては、『当たって欲しい』予想だった。 私は、警察に通報もせず、部屋に入って、制服に着替え荷物を持って、何事もなかったように中学に出かけた。 それから、また、男の家を渡り歩く。 5. 何日かして、男の家で、母の殺されたニュ〜スを見た。 『娘が行方不明で、何らかの形で関わっているのではないかと、警察は見ている』 と、ニュ〜スのアナウンサーが話しているのを聞いた。 警察は私を疑っているのか…。 やっぱり、警察は役立たずだ。 6. 三枝は、この事件を一番に聞いた。 近所の人から通報があり、知野の家まで加納と駆け付けたのだ。 それから、すぐに、捜査本部の設立。 三枝は、臨時要員として借り出された。 捜査本部・部長は、高田 充。 どうも、三枝は高田が気に食わなかった。 そのわけは、高田は、娘の犯行…と、決めつけるような姿勢だったからだ。 「知野は…そんな事する子じゃないよ…」 三枝は、そう信じていた。 しかし、少し不安ではある。 「まさか、な」 7. 三枝は三枝で、知野を忘れられない日々を送っていた。 パトロール中に、前みたいに会えれば…と、小さく期待はしていたが、 そうそう、上手く会えるものでもないようだ。 (というのも、知野はその時、意図的に、近所じゃない男の家を、渡り歩いていたのだ。) その矢先の事件だった。 知野が、全く顔を見せないのも、不安の要因だった。 8. 「でも、これじゃ、学校にも行けないなぁ」 私は、少し困っていた。 別に、私がやったわけでもないんだけど、私には『アリバイ』って、もんがない。 地位のあるおじさん方が、 『その時間、中学生の私と、Hしてましたー』 なんて、警察の前では証言してくれないだろうし。 父親の事件すら、まだ解決の糸口が見つかってないのに… 今、私が捕まるわけにはいかないのよ…。 と、携帯が鳴り出した。 ≪着信 中塚さん≫ と、表示に出ている。 「中塚さん…か」 私は、電話を取った。 「もしもし?」 『もしもし!!良かった!!電話、取ってくれないかと思ったよ!!』 中塚さんの、安堵のため息が電話口から聞こえる。 「何?もしかして、警察に私の居所聞けって言われた?」 『ちがうよ!俺は、警察と、そんな風に組んだりしないよ。君は大切な情報源だしさ!!』 「じゃあ、何?」 『進展!!あったよ。こっちの事件。村岡 峻の!!』 「えっ!?本当!!?」 『ちょっと、見せたいものもあるんだ。ちょっと、出られない?』 「どっか…誰もいない場所…ある?」 『じゃあ、俺の家は?』 「うん。でも、迎えにきて。私、1人でウロウロできないの。今」 『もちろんだよ。今ドコ?』 「えっとね」 ……… 10. という感じで、私は中塚さんの家に行った。 中塚さんの家には、1度だけ来たことがある。 色んな雑誌がごった返していて、少し汚い。 しかし、全部、記事のための本や写真という所が凄い。 仕事熱心だな、と感心してしまう。 「で!?」 私は、テ〜ブルの椅子に座るなり聞いた。 「そう焦るなよ」 「焦るよ。だって、こっちは、色々、急いでるんだから」 「じゃあ、君の見たことを、後で俺に話してよ?」 「へ?」 「母親の!」 「あぁ、いいわよ。別に。それより早く!」 「あぁ」 そう言うと、中塚さんは話し出した。 「村岡峻の会社に関与していた、警察の人間のリストが手に入ったんだ」 「え〜!!そんなの…どーやって…」 「まぁ、ちょっと、ね」 「で?」 「それがさ…この人達」 中塚さんが出したのは、12枚に渡る資料。 その中の10枚は、10人の個人デ〜タ。 その中の1枚に、私は見たことある顔を見つけた。 「これ…!!」 「へ?知ってる人…」 「う…うん」 「えっ!?本当に!!?」 「嘘言ってどーすんのよ?」 「じゃあ、もしかして…」 「もしかしなくてもよ。調査開始できるじゃない!」 「あぁ…ただ、あんまり無理はするなよ?」 「ちょっとぐらい無理しなきゃ、何も分からないわよ」 私は息込んだ。 11. 「君の母親の事件は!?」 「犯人は分からないわ…。まぁ、母の仕事関係でしょうね」 「そうか…。君が見たのはいつ?」 「丁度1ヶ月程前」 「そうか」 中塚さんは少し考えるそぶりをした。 「中塚さんは…私を犯人だとは考えないのね?」 「ん?そんな事思わないさ。話してれば分かるよ。 これでも、一応マスコミ界、長いからね。嘘とか言ってる奴はピンとくるの」 「そっか」 私は、少し笑った。 「今、どこに居るの?」 中塚さんが、少し考えてから聞いてきた。 「色んなとこ」 「じゃあさ…。急にアレなんだけど…。ここに住む気ない?」 「へっ!?」 「いや、変な意味じゃなくて…。ここだと、色んな資料あるし、 君にとっては良いんじゃない?」 「そ…そりゃそうだけど…。中塚さんが…もし、警察に見つかったらさ…」 「大丈夫だって。君は何もやってないんだから」 「でも…迷惑になる」 「う〜ん…。今、学校は?…行ってないよね。じゃあ、ここで、 資料の整理の手伝いしてくれるっていうのは? で、お礼として、ここに居てもらうっていう条件で…俺も本当に困ってるんだ。 なかなか、資料の整理まで手が回らなくてね」 というと、中塚さんは笑った。 「本当に?」 中塚さんは首を縦に振った。 「う…れしいよ。本当。でも、中塚さん…変わってるよねぇ? あんまり、関わりない子と一緒に住むなんて…しかも、警察に追われてる…」 「そう?少し変わったモノの見方できる奴のほうが、大物なんだよ」 「あはは…。そうかもねぇ」 「それに、もう、君は俺の仕事のパートナーみたいなもんだよ。 君の父親の事件だって、君が協力してくれたら、警察の悪巧みが暴ける。 そしたら、俺も昇進かな」 と、冗談っぽく言って笑った。 「へへ。ありがと」 つられて、私も笑った。 12. 「加納さん」 三枝は書類に目を通しながら、タバコを吸っている加納に声をかけた。 「何だ?」 「ちょっと、調べたいことがあるんですけど…」 「何を?」 加納は少し怪訝な顔をした。 「村岡 知野のことです」 「あぁ…」 「加納さんも、あの子が犯人じゃないって思ってますか?」 「もちろんだよ。知野ちゃんはそんな、バカなことはしない」 「じゃぁ…一緒に調べてもらえませんか?」 「お前は、捜査本部の人間だろ?」 「それとは、別に…」 「どーゆー事だ?」 「捜査本部は、あの子を犯人と決めつけるようなんですよ。 でも…俺はそんなこと無いと……信じてます!」 「そうか」 加納は、タバコを灰皿に置くと笑った。 「やっぱり、気になるか…」 加納は、三枝に言った。 「はぁ、まぁ」 「三枝なら…あの子を救えるかも…な」 「どういう意味ですか?」 「三枝は、これからも、そのままで居ろってことだよ」 「???」 「ははは…」 加納は嬉しそうに笑った。 13. 「もしもし、中塚か?」 三枝は、加納が了解してくれた後、早速、旧友の中塚に電話をした。 中塚なら…何か知っているだろう、と。 『そうだけど…なんだ?』 中塚は、少し眠そうな声だった。 「お前…村岡知野と、連絡取れないか…?」 『…それは、ちょっと無理だよ』 「そうか…」 『何で、お前が捜しているんだ?』 「俺、村岡 篠の殺人事件の捜査本部に、今、いるんだ」 『へ、へ〜…。どんな感じだ?』 「それは、ちょっと、言えないんだよ」 『村岡 知野を犯人だと?』 「まぁ、そう思ってる人も少なく無い」 『お前は?』 「俺は…まぁ、違うと思ってる」 『根拠は?』 「そんな事できる子じゃないよ。あの子は…」 『知ってるのか?』 「あぁ、ちょっとした知り合いだよ」 『そうか…』 「どうした?」 『いやいや。何かあったら、また電話してきてくれ』 「なぁ、お前、村岡 峻の事件は…?」 『調査中だよ』 「お前も、村岡 峻は犯人じゃないと…?」 『も、って何だよ』 「あぁ、知ってると思うけど、村岡 知野も、そう言ってたから」 『あの子がそう言った!?』 「そ、そうだけど…?」 『へ〜。お前、あの子に好かれてるんだなぁ』 「そんなことないよ」 『…もしかしたら…お前なら…』 「何だ?」 『なぁ、今から会えないか?』 「別に良いけど」 『じゃあ、これから、そっち行くから』 「へっ!?」 『警察署だろ?』 「そうだけど…」 『俺が行ったほうが、早そうだからな』 そう言って電話は切られた。 「な、なんだぁ?」 三枝は、受話器を見つめて首を傾げていた。 14. 「お〜!三枝!久しぶり!!」 1時間ほどしてから、堂々と、警察署に中塚が入ってきた。 かつて、こんなに、警察署に堂々と入ってきた奴は居ないだろう。 「コイツが、さっき話した中塚です」 と、三枝は、隣に居る加納に紹介した。 「あぁ、記者のね。よく名前は見かけるよ…いい記事を書く」 加納は、中塚に手を出した。 中塚は、その手を握ると、握手をした。 「どうもー」 「何だか、いい人っぽいな。お前の上司」 中塚は、三枝に、小さく言った。 「いい人だよ。俺は恵まれてる」 と、三枝は少し照れたように言った。 「どっか出れるか?」 「ここじゃ、ダメなのか?」 「ここはちょっと…」 と、言いながら、中塚は加納を見た。 「あぁ、加納さんも、協力者だから大丈夫だよ」 「この人も知野ちゃんのこと知ってるのか…?」 「そうだ」 三枝がそう言うと、 「あぁ、知野ちゃんが小さい時からよく知ってる。 もちろん、この事件に関して、知野ちゃんを疑ってはいないよ」 と、加納は優しい笑顔でそう言った。 「そうですか」 中塚は、加納の顔をじ〜っと見ると、少し安心した様に笑った。 「知野ちゃんは、今、俺の家にいるよ」 中塚は、二人を見て言った。 「えぇっ!?お前…どうして、すぐに…!」 三枝は、異様に驚いている。 「まぁ、色々あってね。警察は、知野ちゃんを犯人だと見ている。そうだろ?」 「そうだけど…俺達は違うぞ?」 「分かってる。だから来たんだ。どうにか、良い方法を考えていた時に、 お前から電話があって…」 「そうか…」 「あの子は何もやっちゃ居ないよ。でも、アリバイってもんがないんだ。 あの子の父親みたいにな…」 「父親の事件。お前が、知野に頼まれて、調べてるんだろ?」 「へ?知ってたのか?まぁ、いいだろ。そこまで知ってるなら話は早いわな」 「どうなんだ。そっちのほうは」 「あぁ、まぁ…ボチボチ」 「言ってくれよ」 「まぁ…三枝なら信用できるか…」 中塚は、三枝と加納の顔を見ると、少し落ち着いた様に言った。 「何だ?」 「あの事件な。警察がかんでる」 「…そうか」 「意外と驚かないんだな」 「なんとなくは、聞いていたから」 「そうか」 そう言うと、中塚は安心した様に笑った。 「で、進展は?」 「それが…」 「何だ?」 「知野ちゃんの知り合いに、その事件に関係していた人が居るらしいんだ」 「そうなのか!?それって…誰だ?教えてくれ!!」 そう言うと、三枝は中塚の肩をゆすった。 15. 私は、それから、2時間ほどした時、中塚さん宅で、資料調べにかかっていた。 「中塚さん…遅いなぁ」 私は、時計を見るとそう言った。 さっき、ちょっと、出てくると言ったきり帰ってこない。 「何か、変な事件に巻き込まれてなきゃいいけど」 母にあんな事があったからかもしれないが、少し不安になってくる。 そういえば、犯人は捕まっていない。 「はぁ…。このままじゃ、皆に迷惑かける…よね」 私は、自分から警察に事情を話しに行くことに、戸惑いがあった。 下手したら、そのままかえって来れない。 それは、父親みたいに犯人にされてしまったら…だ。 警察は、私を犯人だと…思ってる。 これが…私が3年間…ううん、産まれてからずっと、やってきたことに対する答え? 私なりに、一生懸命にやってきたことに対する…。 私は、そう思うと気が重くなってきた。 「あぁ…。どうしてこう、全部うまくいかないんだろ…」 と、言った時、ドアの開く音がした。 中塚さんだ! と、思い玄関に駆け寄る。 「あかえりなさい!」 私は、元気良く、家の主人を迎え入れた… つもりだったが、帰ってきたのは、中塚さんじゃなく、三枝さんだった。 「さ…三枝さん!?」 背中に汗が流れる。 心臓はバクバク言ってる。 顔は熱い。 えっと、三枝さんがここにいるってことは…… 中塚さんが… 言った!? 裏切った…? そうなの? 戸惑っている私を見ると、 「あぁ。別に逮捕しに来たわけじゃないよ」 と、三枝さんは言った。 その声を聞いて、私の心臓は、もっと早く鳴り出した。 「な、なんで…」 「中塚が、仕事で少し遅くなるって伝えてってさ」 と、言うと、三枝さんは、部屋にズカズカ入ってきた。 ちょっと…ど〜ゆ〜事よ!!? 私は三枝さんの後ろ姿を見ながら、頭がパニックになっていた。 16. 「やっぱり、会えただろ?」 三枝さんは急にそんな事を言った。 「は!?」 「前に、『もう会わない』って、お前が言ったとき、俺は『会う』って言っただろ?」 「…あぁ。もう…会いたくなかった…ほんとうに…」 「とにかく…良かった」 三枝さんは、少し笑顔になると、私を抱きしめてきた。 「ちょ、ちょっと!!」 顔がドンドン熱くなることが自分でもわかった。 きっと、顔は赤い…だろう。 「何?」 「『何?』じゃないわよ!勝手に許可も無く抱きしめないでよね!」 私は目の前にある三枝さんの胸を、両手で思いっきり引き離した。 「じゃ、いい?」 「ダメ」 「嫌だ」 そう言ってまた、抱きしめてくる。 「そんなの、聞いた意味ないじゃない!!『嫌だ』じゃないわよ!バカ!!離してよ!」 「い・や!お前は、こうしてないと、どっか行っちゃいそうだからな…」 「何言って…」 そう言いかけた時、三枝さんに口を唇で塞がれる。 「ぅんっ…!?」 「いつも、思うんだけど…。キスとか、嫌なら、唇噛んでやってでも離れるよ?」 三枝さんが、唇を離してから、意地悪く言う。 「…ぐぅっ!た、ただ…急にするからでしょ?バカ!」 私はそう言うと、三枝さんの頬めがけて、手をだした。 もちろん、平手打ちを食らわすために。 しかし… 「こらっ」 と、言われて、手を止められてしまった。 三枝さんが…悪いのに…、何で私に『こらっ』なのよ!? 三枝さんは、私の手に小さくキスをした。 「な、何!?」 そして、また、抱きしめられる。 何だか…様子が…変…? 「どうしたの?」 「…」 「何で黙ってるのよ!!離して」 「どうして…、こんな体で、全部抱え込むんだ!?」 「…へ!?」 「どうして…」 「な、何言ってるのよ!?」 「俺は…君の力になりたい。それなのに、どうして俺には話してくれないんだ!?」 「何!?」 「警察は嫌いか?」 「…嫌い」 「俺も…?」 私は、なんなく目をそむけて、 「…き、嫌いよ…?」 と、言った。 「俺の目を見て言えよ」 そう言った三枝さんの声は真剣で、つい三枝さんのほうを見てしまった。 一旦目が会うと、なかなか、反らす事ができなくなる。 金縛りにあったような感じ。 「き…」 そう言おうと思っても、たった3文字が言えない。 「ほら、言えよ」 三枝さんは、真剣な顔で言う。 言えない。 イエナイ。 嘘でも、もう… 言えない。 一体どうしてしまったんだろう。 自分じゃない。 こんなの… 「…………い、言えない」 そう言った瞬間、腕を引っ張られ、また、キスされる。 強い…キス。 私は、膝の力が全部抜けて、その場に座り込んでしまった。 「ど、どうしたんだ!?」 「あはは…ご、ゴメン……。力抜けた」 「大丈夫か?」 そう言いながら、差し出される手。 その出された手を見て安心する。 父の手に…似ていて…、少し違う安心感のある手。 「ゴメ…、ちょっと、立てないや」 私は、少し笑って言った。 その笑いは、本当に安心して…というか、まぁ、そういう笑いだったのだ。 三枝さんは、そこに、しゃがみこむと、首筋にキスをしてきた。 「な…」 「良かった…。嫌われてなくて」 「…」 私はついうつむいてしまった。 すると、顎を持たれて、またキスされる。 「んんっ…」 足のほうで何かが動いている。 それが、三枝さんの手だって、すぐ分かった。 「ちょ、ちょっと…待って…!」 「なんで?」 三枝さんはそう言いながら、悲しげな目でこっちを見てくる。 「だ、だって……その…」 「あぁ、中塚なら、あと2時間は戻らないよ」 「な、何でそんな事知ってるのよ!?」 「中塚が『気を利かして2時間は仕事しといてやるから』って言って、 ここの鍵を置いて行ったから」 と、三枝さんは楽しそうに笑って鍵を見せた。 「うっ…」 「じゃ、やめる?」 三枝さんは意地悪そうに言う。 「…やだ」 自分でも信じられない言葉がとっさに出た。 「どういう意味?」 「うぅっ……。意地悪!!」 「どうして?」 「聞かないでよ!!バカ!もう、いい!!」 私は、怒って後ろを向いた。 「ゴメンゴメン」 三枝さんは、笑ってそう言うと、後ろから抱きしめてきた。 「でも…ちょ…ちょっと!待って…」 「もう待てない」 「えっ…!?」 予告も無く胸を触られて、私は少しビックリした声をあげた。 「知野」 そう言って、手を下着の中に滑り込ませてくる 「あっ…んっ………!」 「そんな声出すなよ」 そう言いながらも、指を中に突き立ててきた。 「んっ…!!」 「…感じてるの?」 「なっ…!?ちがっ………!!」 振り向いて私は三枝さんの言葉を否定しようした。 しかし、その唇を有無を言わさず唇で封じられてしまった。 「俺は嬉しいけどな」 「あぅっ……もう!何…言って」 「俺のしてる事で、お前が感じてるんなら嬉しいに決まってるだろ…」 そう言いながらも、三枝さんの指は休むこと無く責め続けてくる。 じらすように脚の付け根を揉まれて、三枝さんの腕をぎゅっと握った。 「あっ…ぅぅんっ!」 「濡れてる」 私は嫌がるように頭を振ってしまう。 「やっ、やだっ、言わないでよっ!ばかぁ」 「何でだよ?俺に感じてる証拠だろ?だから嬉しいんだって」 そう言うと三枝さんは、笑った。 「その笑顔…ずるい」 「どうして?」 「何で…そんな笑顔…私にはできない…。だから、余計に惹かれる。でも…」 「でも?」 「ダメ!やっぱり、こんなことしてると、ダメになる。全部」 「ならないよ。無理に離れるからダメになるんだよ」 「だって…」 「正直に居たいところで、素直にいれば、楽しくなってくるし、何もかもうまく行くよ」 「嘘…」 「嘘じゃないよ」 「やめて!聞きたくない」 私は、耳を塞いだ。 その塞いだ手を三枝さんは、引き離した。 そして、優しくキスをした。 「聞いて。よく聞いて。まず、君はどうしたい?」 「………父を…助けたい」 「うん。それから?」 「それ…だけ」 私は、何か言ってしまいそうな口をつぐんだ。 「俺と居るのは、君にとって…どうなんだ?」 「……三枝さんと居ると…森に…迷い込んだみたいなの」 「森?」 「広い、広い…森。右も左も分からないの。どっちに行っても迷いそうで…」 「それは、どっちにも行かなかったら、そこで死んじゃうよ」 「わ、分かってる…けど…」 「分かって無いね。…俺とこーゆー事するのは、嫌い?」 そう言って、急に指を又入れてくる。 「ひゃっ…!!!」 「どうなの…?」 「やだっ。あぅっ……ちょっとぉ…やめて…」 「やめない。ちゃんと言って」 「何で…そんな事…言わなきゃならないのよ…」 「君の口から聞きたいんだよ」 「そんなっ…」 「ほらっ」 そう言うと、指の動きを速めてくる。 「あっ…はぁっ……やぁ……!!」 息遣いが次第に荒くなってくると、三枝さんは急に動きを止めて、指を引き抜いた。 「へっ…?」 もう…少しだったのに。 微妙な時に放り出されてビックリした。 「おわり」 「えっ!?」 「この続きがしたい…?」 「そ、そんな…の」 こんな途中で放り出されて… したくない…分けが無かった。 「したい?」 ニッコリ、残酷な笑顔でこっちを見てくる。 「うっ……」 「言えないなら、態度で示してもらっても良いよ」 「た、態度…って…」 「自分で考えなきゃ。そ〜ゆ〜のは。得意だろ?」 い…意地悪だ。 少し余裕のある発言。 もう…この人は、分かっているのだろう。 誰よりも…私よりも…先に、私の気持ちを…。 でも、三枝さんの…警察官という肩書きが、私が取ろうとする行動を邪魔する。 私は、おずおずと、手を三枝さんの頬に置いた。 三枝さんは、別に何の変化も見せてくれない。 もし、三枝さんが…三枝さんからしてくれるのなら、『された』という、受身形で、 警官とそういう関係になったことに対して、少しは気がまぎれるのだが…。 私からするとなると、別だ。 しかも、商売が絡むのではなく…。 「さ、三枝さん…?」 「ん?」 と、顔を上げた三枝さんと目が合った瞬間、私は自分でも思わぬ行動に出ていた。 三枝さんの唇に、自分の唇を押し当てていたのだ。 三枝さんは、唇を離さずに、そのまま私の頭を持って、強く抱きかかえた。 「んっ……ふぁっ…」 合間に吐息が混じる。 「もう、入れるよ」 「えっ…!?ちょっ…早い」 「もう、我慢できないよ。君からしてきてくれたことが嬉しくてね」 「へっ…?」 「もう大丈夫だろ?」 三枝さんはそう言うと、深々と、突き上げてきた。 「んっ…つぅっ……!」 「充分濡れてるから、入りやすかったね」 「なっ……!何でそんなことばっかり…!!」 「ほら、動くよ」 「ちょ、ちょっと……」 「今日は、俺がイくまでやめないからね」 「なっ……」 何で、こんな事ばっかり言うの…? 他の人だったら…嫌だけど… 三枝さんがそーゆー事言うのは…嫌じゃない…。 それどころか…そんな事言われるたび…余計に…。 あぁ、私…『好きな人』ができたんだなぁ、ってつくづく思った。 でも…決して、してはならない恋。 今の私には、恋をしている余裕なんて無いのだ。 助けを…待ってる人がいる。 17. 「どうした?」 そののち、私は、やっと、無事に資料集めの作業再開。 仏頂面の私の横顔を見て、三枝さんは、そう聞いてきた。 「どうしたも、こうしたもっ。ないわよ!ばか!」 「何で、怒ってるんだ?」 「だ、だって…な、何であんなことばっかり〜…」 「あんな事って…中出ししたこと?3回連続でヤったこと?それとも…」 「や、やめて。もう、言わないで〜〜」 しかも、真顔で…。 私は耳を塞いだ。 「何でだよ?俺は…嬉しかったからさ」 「…なにが?」 「知野からしてきてくれたこと」 「なっ…!」 「それより…これから、ど〜すんだ?」 「何で…三枝さんにそんな事言わなきゃならないのよ?」 「どうして、そう…素直じゃないかな?」 「だ〜れが、素直じゃないって!?」 「知野だよ!俺のこと…好きじゃないのか?」 三枝さんは、私の肩を持って、正面からそう聞いてきた。 私は、少し戸惑った、が、 「………す、好き…と思う。…でもね、これは、私の問題なの」 と、答えた。 「好きなら、頼れよ!!どうして、全部そう、抱え込むんだ?」 「好きだったら…何でも話さなきゃダメなの?…相手に頼らなきゃダメなの!?」 「別にそうは言ってないよ」 「言ってるわよ!!…私は、そんな形で好きな人に…誰かに頼りたいわけじゃないの…。 今まで…三枝さんが現れる前だって、一人でやってきたんだから!」 「俺が嫌なんだよ!!!」 いつもより、大きい声に私はつい、ビクっとしてしまった。 三枝さんは、それから私を抱きしめて、 「俺が…見てられ無いんだ…。君が…辛そうに…見えて」 と、言った。 「別に辛くなんて…!」 「嘘だろ?じゃあ、どうして…笑わないんだ…」 笑わない…? 私が…? 「笑えるわよ。ほら、」 私は、そう言うと、ニッコリした。 「そーゆー意味じゃなくて…心から」 「え…?」 そう、言われて、よく分からなくなった瞬間、 「ただいま〜♪っと」 と、言いながら、中塚さんが帰ってきた。 「あれ?お楽しみ中??」 と、言いながら、近寄ってくる。 お…お楽しみ…? 私は、目を前にやると、三枝さんに抱きしめられたままだと言うことに気付いた。 「いっ、いつまでひっついてんのよ!?この変態!」 私は、つい蹴りをいれてしまっていた。 「な、なんだよ!?」 「ま〜ま〜」 そう言いながら、笑う中塚さん…。 この雰囲気…。 ちょっと、楽しい…。 …かも。 私は…父のことが少しだけ…ほんの少しだけ、頭から消えていた。 そのことで、私は、本当に…親不孝者だと思った。 私は…ダメな人間だ。 最低だ。 三枝さんに…『好き』って、思われる資格も無いくらい…。 いっそ、迷った森では動かず…そのまま死んでいきたい。『大切なもの』 第5話『心の森』![]()
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