0. 「これから、ど〜したらい〜だろ…?知野ちゃんのこと…このままってわけにも…」 中塚が言った。 中塚と三枝は、二人で知野が寝た後、考えていた。 「警察に…事情をちゃんと話してもらうってのも…」 「それじゃ、知野ちゃんが捕まった時どーすんだよ!…ったく、まともに考えろよな」 「いや…十分まともだが…。言っておくけど、俺も一応警察なんだぜ?」 「でも、知野ちゃんを助けたいだろ?」 「そりゃ、そうだが…」 「なぁ、ところで、お前…あの子と、援交で知り合ったんじゃ無いだろうな」 中塚が少しからかうように言う。 「ち、違うよ!」 三枝は、そう言ったものの、 『たぶん』 と、心の中で付け足していた。 1. それから、1時間ほど話して、 「ちょっと、トイレ行くわ」 と、三枝がトイレに立つ。 三枝は、トイレから戻ってくるなり、 「なぁ、知野はどこに寝てんだ?」 と、聞いた。 「なんだ?そこの部屋だよ」 中塚は、トイレの斜め前にある部屋を指差した。 「い…いないぞ!?」 「嘘ぉ!!!?」 「靴も…ない。玄関の鍵は開いてるし…」 「まじか!?」 「紙が…」 「紙?」 「何か…紙が散ってるぞ?」 三枝に言われ、中塚は、部屋に散っている紙を手に取ると、それをみて愕然とした。 「知野ちゃん…。まさか…!」 「それって…あの、資料か?」 「そうだ…!知野ちゃん…かけるつもりだぞ!」 「シーツが少し温かいから、まだ近くにいる!」 「行こう!!」 中塚と三枝は、急いで、部屋を出た。 2. と、私はその頃、まだ、家にいた。 靴を持って、風呂場に隠れていたのだ。 「行った…か」 私は、二人が慌てて出ていったのを確認すると、風呂場から出た。 そう、私は、あれから、考えた。 ちゃんと。 全部。 私は、三枝さんが好きだし… 迷惑もかけたくない。 もちろん、加納さんや、中塚さんにもだ。 このことは、皆を巻き込んじゃったけど、始めから一人で片をつけなきゃ いけなかったのに…。 私はやはり、甘えてた、のだ。 これ以上まきこむと… その先は… 全員…ダメになる。 分かってたのに…。 「中塚さん…ありがとう。三枝さんも…」 私は、誰もいない部屋にそう言うと、夜の街に出た。 3. 満月が街を照らす中、私は公衆電話に向い、受話器を取ると深呼吸した。 「いよいよ。大詰め…か。当たって砕けろって、まさに、このことよね」 私は、決心した様に言った。 もう、戻らないかもしれない… いや、戻れないのだ。 4. 加納はその頃、やっと、勤務も終わり、中塚の家に向っていた。 知野のことを話す為だ。 「ん?」 電話ボックスの中に知ったような少女を見つける。 「知野…ちゃんか?」 駆け寄って、 「知野ちゃん!!」 と、叫ぶ。 知野は、受話器を持っていて、ビックリしたような、すこし、おびえたような目で、加納を見るなり逃げ出した。 「ちょ、ちょっと待って!!」 5. な、な、な、なんで、加納さんが? そして、なんで追い駆けてくるのよ〜〜!? 私は、必死に走っていた。 中塚さんから聞いてるか、聞いて無いか分からないけど、聞いてたら、確実に止められる。 聞いてなかったとしたら、私を母の事件の犯人だと思ってるわ。 「どーして、私は、こう、運が悪いのよぉ!?」 と、叫んでしまった。 その声は寂しく夜空に響き渡る。 追いかけっこには慣れ無い私は、アッサリと、加納さんに捕まるし…。 6. 「どうして…逃げた?」 「いや、あの、犯人扱いされてるかなぁーって」 「別に、君を犯人だ何て思って無いよ。始めからね」 「そ、そう?」 「中塚君の家に居るんじゃなかったのか!?」 あぁ、聞いたのね。 「そ、そうです…けど」 「何してるんだ?こんな時間に、こんなところで」 「あの、そう、買い物に…」 「電話ボックスにか?」 「ついで…というか」 「誰にかけた?」 「かけてないです」 そう。 電話をかけた相手が、出た途端、加納さん…だもん。 最悪だ。 「三枝が君を一人で、こんな夜中に外には出さないだろ。特にこんな状況で」 ど、どーして、そう言い切れるのよ!? 確かにそうだろうと思って、黙って出てきたけど。 「まぁ、いい。話しは、中塚君の家で聞こう」 と、言うと、加納さんっは、私を引っ張った。 『話しは署で聞こう』って、感じの台詞。 まるで、警察に捕まった気分だわ…。 いや、捕まったのか。 ホント…なさけない。 7. 「で、どうして逃げた?」 私は、中塚さん宅に強制的に戻されると、3人に事情聴取…を受けていた。 そのうち、2人が、警官なだけに、本当に受けている気がしてならなかった。 父も…こんなの…受けてるんだろうな…。 「あ、あの…ちょっと、買い物に…」 「こんな夜中に。そ〜っと買い物行く奴が居るか!!?」 三枝さんのするどい、ツッコミ。 「知野ちゃん、資料出して」 中塚さんが、突然言った。 「はい」 私は、この場は一応素直に従うことにした。 「やっぱりね。知野ちゃん、こいつにかけようとしてたんだろ?電話」 そして、中塚さんは、1枚の紙を私に見せた。 「そ、そうよ…?」 「会ってたら…どうなるか分かってるんだろ!?」 「わ、分かってるわよ!でも…」 「でも?」 「もう、迷惑かかけれないし…これは、私の問題っ…なの」 私は、キュっと唇をかんだ。 「俺達は、誰一人、迷惑だ何て思って無いよ!さっきも…言っただろ!?」 三枝さんが私の肩を掴んで言った。 そんなこと言わないでよ。 三枝さんは、正義感が強いから… 優しいから、そんな事、戸惑いも無く言えるのよ。 その優しさが… 余計ツライ。 「う、うるさいよ!?もー…放っておいて!!!」 「わ、私はね!!!始めから、あんたたちを仲間だと思ったことなんて無いわ! もちろん、中塚さんもね。中塚さんは良く情報をくれた。利用するだけしたの!!」 「三枝さんは、良くひっかかってくれたわ。Hするだけで、 味方になって貰えたんだからね。まぁ、何の役にも立たなかったけど。 どこにでも、いる、バカな奴だった。だって、口先で色々言うだけで、信じるんだもん」 「加納さん…。小さい頃のあたしを知ってるからって…今は違うの。 そんなんで、知ってるような顔しないで!!今は…昔の私じゃない。 性格なんて、いくらでも、変わるわよ!」 「何が、協力よ!?私は、そんなのして欲しいなんて一言も言ってない! もう…目の前に現れないで!!かえって足手まといよ!」 言った。 スッキリ…なわけない。 そんな、わけないよ…。 8. 「ち、知野ちゃん?」 中塚さんが困った様に一言発した。 なによ? まだ、なにか…? 「あのな…知野」 三枝さんが、頭を掻きながら言う。 「???」 「お前、そんなに、泣きながら言われても、説得力無いぞ?」 「へっ!?」 私は、手をパっと顔にもっていった。 手は、少し温かい水…に触れた。 『た…確かに…』 勝手に、涙が出て…止まらない。 「とにかく!お前は、ここに居ろ!分かったな?」 「わ…わからないわよ!どうして、ここに…」 「黙ってここに居ろ!!って、ここは、俺の家でもないが…。 別に俺の家仁来ても構わない」 「…なんで、三枝さんの家なんかにっ!」 「別に、俺の家でも構わんぞ?妻は居るし…」 加納さんが言う。 「それも、いーですね…」 「ま、皆で交代で見張れば、どこに居ても大丈夫だろ」 「そうだな」 と、3人で勝手に話しが進んでいる。 「ちょ、ちょっと!勝手に、話しを進めないでよ!!」 私は、バン!!と、テ〜ブルをたたいた。 「あのね〜。私は!あなた達なんかに、協力してほしくないの!分かってるの!?」 私がそう言うと、3人が一斉にこっちを見た。 う…。 何て…嫌な雰囲気。 「な、何よ?」 「ちょっと、買い物でも行くかな…な?中塚君」 突然、加納さんが、中塚さんを見てそう言った。 『何なんだ!?』 買い物って…。 こんな時間には、もうコンビニくらいしか…。 しかも、買うものなんてないわよ? 「そうですね。じゃ」 そう言って、加納さんと中塚さんは、二人して出ていってしまった。 何? なんで…二人で出て行くのよ!? 三枝さんも連れて行ってよ!! そして、私の話は、カナリ…無視されてたような…。 9. 三枝さんと、二人っきり。 嫌だ。 折角…一人で頑張ろうって、決心ついたのに。 三枝さんと居ると、揺らぐ。 気持ちが…全部。 「知野」 三枝さんが口を開いた。 それだけで、少し恐い。 「な、な、何?」 「さっき、言っただろ?」 「へ?…何を?」 「『頼ってくれ』って」 「嫌」 私はうつむいた。 「だから〜。あのな、知野…」 三枝さんが何か言いかける前に、私は耳を塞いだ。 「嫌なの!いや、いや!もう、聞きたくない」 「知野!!」 三枝さんは、そう叫んだかと思うと、痛いくらいに抱きしめてきた。 「ちょ、ちょっと…」 「俺って、そんなに、頼りないか?」 「へ?」 「頼りないか?」 「そ、そうじゃないけど…。さっきも、言ったけど…私は、人に頼りたくないの。 特に…その、…『好きな人』…には」 三枝さんが、私の『好きな人』になった、事実は動かせない。 それは、本当。 「でも、俺は…お前が一人で無理してるのを見てるだけなんて、我慢できない」 「そんなの…。そんな事…言われても…どうしていいか、分からないよ」 10. あぁ、 また、頭の中がゴチャゴチャになる。 「じゃあ、これだけは…約束してくれ」 「何?」 「絶対、一人でアイツには会うな」 「それは…」 「できない?」 「…だ、だって!…こ、ここまでくるのに…3年かかったの。無駄にしたくない」 「それなら、余計に。一人で行くな」 「でも…」 「お前が一人で行ったところで、何の解決にもならないだろ!?」 「そ、そ…んなの、誰かと組んでも変わらないわよ!」 「変わるよ」 「かわらない!」 「お前が変わろうとしないだけだろ!?」 「違う!もう、放っておいて!」 そう言った瞬間、背中が痛む。 「!?」 三枝さんの顔と、天井が見えた。 いきなり、唇を押し当てられる。 「ん〜〜!?」 「ちょっと!何で急に、こんな事すんの!?………んっ…!」 また、キス。 口内に、三枝さんの舌が侵入してくる。 三枝さんは、なんだかんだ言って、私の許可のもとしてたのであって…。 …二人の間に、一種の同意があった。 今までは。 でも…今は違う…。 「さ、三枝さん!!やめてよっ…。何で…!?」 「知野は、こ〜ゆ〜事してる時のほうが、素直だから」 「なっ、何言ってるのよ!?おかしいんじゃない?」 「そうかもな」 三枝さんの口の端が少しあがった。 「は?」 「知野と居ると、おかしくなる。本当に…。自分がどんなだったか、思い出せなくなるんだよ」 三枝さんは、痛いくらいこっちを見て言った。 もう…目がそらせない。 あぁ、私の負けだ。 三枝さんの目と声…全部が、私の決心なんてすぐ壊してしまう。 気付くと、三枝さんの手はしっかり、太股を這っていた。 「…やだっ。ちょっと!」 「嫌じゃないだろ?」 「っ…」 三枝さんが下着の上からそこに手を触れた瞬間、クチュっと、嫌な音がした。 室内は静かなせいか、やけに音が響く。 「気持ち良いか?」 「…誰がっ!…ん!」 グっと、指が私の中に押し入る。 ヌチャヌチャ…。 という粘着質な音。 嫌じゃない…。 こんな風にされるのは、嫌なのに…。 嫌じゃない。 三枝さんだから。 『気持ち良い』けど…、つい反抗した声を出してしまう。 三枝さんは、そんなこと分かってるかのように、笑った。 「ああっ…ふぁっ……ぅうんっ…やぁっ」 顔は熱い。 私は今、どれだけ赤い顔をしているだろう。 声は止まらない…。 「気持ち良いんだろ?」 三枝さんは、こ〜ゆ〜時…普段見せない顔で、意地悪く笑う。 「ちがっ…。だって………」 「…やだぁっ」 反抗する言葉も、丸みを帯びてくる。 「嫌なのか?」 「…だ、だって…」 「の割りには、随分良い声出してるよな」 「なっ…なにっ……言って…」 私の声は、ベルトをはずす音でかき消された。 入り口に押し当てられているのが良く分かった。 「あっ…やっ!だっ、ダメ…っ、やめてっ!」 無意識に、拒んでしまう。 しかし、三枝さんは、私の中に押し入ってきた。 「…っつぅ!…んあっ………」 「さっきヤった割に、良く締まってる。気持ち良いよ?」 「なっ……ふっ……どーして、そんな事…ばっかりぃ…」 そう言うと、三枝さんは、急に動き始めた。 快感の波が私を襲う。 たぶん、そう表現するのが的確なのでは無いだろうか…。 「あっ…はぁっ…あん……、やぁぁぁっ!」 「今まで、何人とヤった?」 「…へっ…?な…なに?」 「今まで何人とヤったんだ?」 「んっ!!そ…そんなの……きいて……ど〜する…のよ?」 「知野の抱えてきたこと、全部…知りたいんだよ」 動きが速くなる。 それにつれて、私も絶頂を迎えた。 「な…っ…やぁっ…ふぁあっ!いやぁぁぁあんっ!!」 「まだ足りないかな…?」 やっと、終わった…と思った時、三枝さんはそう言った。 「へ?や、……やだ…ちょっと…み、見ないでよ!」 三枝さんが視界から消える。 その瞬間、また、足を強引に開かれる。 ドコを見てるかは、分かりたく無いほど分かった。 「あ…」 指が侵入してくる感触。 嫌な感覚。 中を、かきまぜてくる。 「……やっ!」 「出しちゃったからね。中で」 つい、さっき、快感を迎えたばかりなので、体は敏感に反応してしまう。 「あんっ……ああっ………も…うっ」 しかし、三枝さんは指を抜いた。 その瞬間、誰のものともつかない液体が溢れ出す。 「やっぱり、結構残ってるね」 「へっ?…」 「続きしたそうな顔だね?」 「うっ…」 だって、なんだか凄く中途半端な状態で…。 「質問に答えてくれたらね」 「何…の?」 「今まで何人とヤった?」 「ま、ま、またソレ!?」 「知りたいからね。知野のこと。お前、前に、『私のこと全然知りもしないで…』みたいな事言ったろう?確かに…と思って」 「だ、だからって、何でそんな事…なの?普通、そんな事、女の子に聞かないわよ!」 「俺が聞きたいの」 「だ…だって」 「いいから、答えて。答えてくれたら、イかせてあげるから」 「で、でも…」 「知野が判断しな」 静かな空気が流れる。 私はうつむいて考えた。 「…3…」 それから、私は、思い口を開いた。 「3人?」 「ダースくらい…かな…」 「36人…」 「そ、そんな具体的な数値は…わ、わからないよ!」 「そうか…よく、言った」 というと、ギュっと、抱きしめて指をソコ入れてくる。 私は、無意識に三枝さんに抱きついていた。 10. 「俺、もっと、早く…知野に会いたかった」 それから、30分ほどして、私と三枝さんは部屋のほぼ中央の椅子に座っていた。 「へ?」 「もっと、早く…」 三枝さんは、悔しそうに唇をかんだ。 うっすら、血がにじんでいる。 私は、自然と、足が三枝さんのほうに向っていた。 そして、三枝さんを抱きしめると、 「ありがとう」 と、言った。 それは、たぶん、はじめて三枝さんに向けた、私の一番素直な気持ちだった。『大切なもの』 第6話『満月』![]()
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