『手塚治虫―ロマン大宇宙』
(大下英治著/講談社文庫刊/本体990円+税)
手塚治虫伝です。面白くて一気に読んでしまいました。
何故面白いのだろう? それは迫力だと思います。
手塚先生の仕事力と筆者の描写力です。
生前手塚先生と一緒に働いた人達、アシスタントや同業者、「手塚番」と言われる出版社の担当者達などなどからの綿密な取材により、手塚先生とのやりとりや会話をリアルに書き起こし、その臨場感たるや、あんた見たんかいと突っ込みをいれたくなるほど。
なにせ手塚先生、働きっぱなしなんですもの。
手塚先生に翻弄される手塚番の人々に思わず笑っちゃいました。売れっ子の手塚先生は何社も掛け持ちにしてマンガを描いているわけです。手塚番にしてみれば併行して仕事をされると当然締め切りに間に合わないものも出てくるわけで・・・・・・。そんなとき手塚番は先生をホテルや旅館に缶詰にしたり、一緒に遠方(博多など)に逃げたり、授賞式後すぐ働いてもらえるように同じホテルに部屋をとったり・・・・・・とあの手この手を使って自分の受け持ちの作品にだけ集中してもらうわけです。
最後に印象的なエピソードをひとつ。
大晦日にやっと作品があがり担当に手渡す。今年もお疲れ様でしたと、ビールで乾杯。ふいに会話が途切れ「このあとも、仕事があるんだよ」とぽつりつぶやく。目から一筋の涙が――。
家族との時間すらほとんど持てなかった売れっ子の悲しさ・・・・・・。
手塚治虫自身や彼と関わった人達の目から多面的にその生涯が描かれています。
手塚治虫の天才ぶりや魅力的な人柄、そして何よりもそのエネルギッシュな仕事ぶりから元気がもらえる一冊です。
「ぼくは、アイデアはバーゲンセールが出来るほどあふれているんです」手塚治虫