Mr.研修医!

第四話

 二か月後療治は退院した。帰り支度をして、病院をでようとしたその時、あたりが急にざわつきだした。

 何か事故があったのだ。大勢の医師や看護婦が、療治の横を走り抜けていた。

「なにかあったのか?」

 そう感じた療治は近くにいた看護婦に事情を聞いた。

「じつは幼稚園の送迎バスが事故にあい、子供が何十人と運ばれるんです。」

 看護婦はそう言って走り去っていった。療治は複雑なきもちになったが帰ることにした。

 帰りだして玄関付近についた療治はあるものをみた、大勢の医者と看護婦が幼い命を救っていたのだ。

「もう大丈夫よ。しっかり。    先生、脈が弱ってます!」

 看護婦は幼児の前ではやさしい笑顔をみせ、それ以外は必死な顔付きで処置していた。
 
 療治はその光景にただ立ち尽くしていた。

 その時、療治のふくらはぎあたりに何かがぶつかった。いや、ぶつかったというより抱き付かれたようだった。

 療治がふっと下を見ると泣き声が聞こえ、ちいさな女の子が泣き付いていたいた。

「う゛ぇーん、え゛ーん!いだいよ〜。おがあざーん!」

 女の子は何かにすがっていたかったに違いない。だから療治に抱き付いた。療治はしゃがみ、女の子の頭を軽くぽんっと叩いた。

「、、、、え、、えっと、、、大丈夫かい?どこが痛むんだい?ほら、お兄さんが見てあげるから。ね?」
 
 療治は女の子に笑顔を向けて言った。しかし、女の子はどこかを見せようとせず、ひたすら泣き続けた。

「怖かったんだね?痛かったんだね?でも、もう大丈夫だから、お兄さんに怪我したところ見せてくれないかな?」
 
 療治は女の子を軽く抱いた。

「あ、、あのね、こことね、ここと、ここが痛いの。」

 女の子は泣きながら、傷口を指差した。療治はすぐさま傷口をみた

「、、、これか。(かるい擦り傷だな、骨にも異常はないしよかった。)じゃあ、手当てするからおいで。」

 療治はそう言って女の子の手をひいて、軽傷の子供たちを治療している看護婦の所にいった

「あの、自分も医者です。お手伝いします。医療器具を借りてもいいですか?」

 療治は看護婦に聞いた。

「おねがいします。」

 看護婦即答した。療治は傷口を消毒し、薬をぬり、ガーゼをして包帯をまいた。

「はい、終わり!よく我慢したね。えらいよ〜」

 療治は笑顔で女の子の頭をなで、そして、療治は他の子の手当てもし始めた。

 そんなとき、ある噂が流れた。重傷の子がかなり多くて、医師が足りないというものだ。

 その噂をきいた看護婦の一人は慌てて療治をみた

「あの、お医者さまなんでしょ?申しわけありませんが、手術のほうを手伝っていただけませんか?」

 しかし、療治はためらった。看護婦はどうしたんだろう?っという表情をした。

 その時だったさっきまでしがみついていた女の子が、急に走り出した。

 女の子が向かった先は、大勢の医者と看護婦、そしてそれより多い人数の幼児が血を流し担架で運ばれていた。

 どうやら救出困難で遅れて運ばれた子供たちのようだった。

 女の子は急に叫んだ。

「おねーちゃん!大丈夫?」

 運ばれてきたなかに、女の子の双子の姉らしき子が運ばれてきたのだ。
 
 療治はその子を見た。

「こ、これは、内蔵破裂、、、。出血も多い。、、、無理だ、、、」

 療治は軽くつぶやいた。その時、さっきの女の子が泣き付いて言った。

「おにいさん。おねぇーちゃんを助けて!お願い!」

 女の子は泣きながら必死に叫んだ。近くにいた看護婦も、

「先生!お願いします!」

 しかし、療治は下をむいて黙っていた。

「先生!早くお願いします!先生?」

 看護婦たちは療治の態度が不思議だった。

「、、、すみませんが自分には手術はできま、、、」

「やりなさい!」

 療治がしゃべっているとき、誰かが割り込むように言った。療治が声のぬしのほうをみると、そこには療子が立っていた。

 そして療治の元へ歩いてきた。

「あなたはいつも逃げている!手術からも、、、そしてあたしからも、、、」

 療子は最初強い口調だったが段々と弱々しくなった。

「ぉ、俺は逃げてなんかいない!」

 療治は療子の目を見ずに答えた。いや、見ることができなかった。

 こんな情けない自分では、療子に顔向けできないと、無意識に感じたんだろう。

「逃げているじゃない!あなた、私にあったとき何て言ったか覚えてる?[すまない]そういったのよ!これこそ逃げてる証拠じゃない!」

 療子は強気に言った。療治は療子の言うことに、ただ黙るしかなかった。

 その時、療治の足下では、女の子が泣きながら叫んでいた。

「おにいさーん。おねえちゃんを助けてよー。」

 女の子の顔は真っ赤になっていた。

「わたしが手術してあげるわ。」

 療子が女の子にそう言って、双子の姉の方を担架で運んだ。

 療治は一人残された。悔しさと自分のふがいなさを感じながら、、、、

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