Mr.研修医!

第五話

 療治は手術室のまえに行っていた。手術を手伝おうというわけではなく、ただ体が無意識に動いたのだ。

「俺は、なにやってるんだ、、、幼い命を救うこともできない、いや救おうと動くことすらできない。

 目の前では女の子が助けを求めて苦しんでいるのに、、、」

 療治が目をとじてぼやいていた時、療治に足音が聞こえた。近付いてくる。だんだん足音は大きくなり、療治の側で止まった。

「、、、あの子はいま闘っているんだ。生と死の間で、、、。医者はその闘いのサポートにすぎないんだ。

 お前はあの子の病気だけみてないか?それでは意味がないんだ。あの子を助けたいっていう気持ちが大切なんだ!

 あの子を助けたくないのか?」

 療治の耳元で誰かがささやいた。

「俺は、、、助けたい。あの子を助けたい!病気と闘っているのは俺じゃなく患者なんだ。俺は患者の手助けをしたい。」

 療治の頭のなかで、一筋の光が見えた。療治はその瞬間目を覚まし辺りを見回ったが誰もいなかった。

「いったいさっきのは、、、夢かな?とにかく、あの子を助けるぞ。」

 療治はそう心の中で叫び、手術着に着替えて準備をして手術室に入った。

 まわりの看護婦や医者は、ふっとこっちをみたがすぐに手術を再開した。

 そのなかで執刀医をしていた療子だけはかなり驚いていた。

「療治?!」

 思わずしゃべってしまった。まわりの医者や看護婦も何ごとかと手を止めた。

「療子!俺に助手をやらせてくれ!」

 療治はそういって療子に近付いた。しばらく考えていたが、療子はある決心をした。

「、、、いいわ。高原君、悪いけどこの人と代わってくれる?」

 そういわれて、いままで助手をしていた榊原という医者はしぶしぶどき、そしてその位置に療治はついた。

「やることわかってるわね?」

 療子は療治の目を見ていた。

「ああわかってる。それより早くはじめよう。電気メス!」

 療治はそう言って隣にいた看護婦に手をだした。 看護婦は急なことに慌てたが、急いで器具を渡した。

 療子はその光景を見終えてから手術を再開した。

 2時間が過ぎた。普通同じような作業を続けたら集中力が切れてしまうものだが、彼らにはそんなことはなかった。

「クーパー!」

 さっと手を差し出す療子。

「はい。」

 そういって道具を渡す看護婦。手術室にはそんな寂しい会話と、ピッ、、、ピッ、、、ピッ、、、という心電図の音が響いている。



 4時間が過ぎた。致命傷になる傷が多く、女の子の体力がもつか心配されたが峠は過ぎたようだった。

「なんとかなったな。」

 療治は軽く溜め息をつき、療子をチラッと見た。しかし療子の表情は険しかった。

「手術はまだ終わってないわ。峠を越えたからって安心しないで!こういうときに事故は起きるものよ。」

 療子は怒った。それを聞いた療治は反論できなかった。以前手術をした時もそうだったからだ。そして療治は黙って手術を続けた。

 だが結局療子の心配ははずれ、手術はうまくいった。

 一息つこうと手術室から出た療治達を待っていたのは、双子の女の子とその両親だった。

 療治達が出てきたのを見た途端かけよってきたのだ。

「先生!娘は?どうなんですか??」

 母親が療子に泣き付きながら言った。療治は疲れているのを隠して笑顔でいった。

「手術は成功です。ただ、傷はかなりの重傷であとはあの子の体力を信じるしかないですね。」

 療治がそう言うと、がくっと母親は肩を落とした。そしてすかさず夫が支えてあげ、療治にいった。

「、、、ありがとうございました。」

 父親はそう言って深く頭を下げた。それを見た療治も軽く頭を下げ、その場を去った。

 手術が終わった頃には他の子供たちの治療は終わっていて、病院は静けさがただよっていた。そんな中、療子が話し出した

「ねぇ?いまから休憩室でコーヒー飲まない?場所はここをまっすぐ行って、左の階段を上ったところにあるから、先に行ってて!」

 療治が返事をする前に療子は走って行ってしまい、療治は言われたままに休憩しつにいき、

 あったかいコーヒーを飲む準備をすることにした。しばらくして、療子が休憩室に入ってきた。

「どこいってたんだ?ほら、コーヒー入ったよ。お前確かブラックだったろ?」

 療治は療子にコーヒーを手渡し隣に座った。そして療子はコーヒーを一口飲んで、かばんからカルテを取り出した。

 恐らくこれを取りにいったのだろう。

「これは今日の事故の負傷者のリストよ。乗員は運転手一名と幼稚園の先生二名を含め43名。

 うち軽傷者18名、重傷者15名、遅れてきた重傷者6名、、、、死者4名。」

 療子は最後の言葉を消え入りそうに弱く言った。療治はしばらく考え込んだ。あの時もっと早く手術を手伝っていれば、、、。

 あの時もっと早く対処ができていれば、、、そんな後悔だけが二人には残ったのだった、、、

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