50.Q 輪廻からの解脱という思想は者尊以前からあったのですか。また輪廻説から何を学んだらよいですか?
A 宮本啓一氏の「仏教誕生」の説によると「輪廻説は紀元前1500年以前からインド亜大陸に住んでいた先住農耕民族が、伝えたものがもとになっている。が、きちんとした輪廻説の骨格をなすのは、アーリア人が侵入してきてからつくられた」という。
輪廻説とは、生きとして生ける者は、死んでは何かに生まれ変わり、また死んでは何かに生まれ変わるというサイクルを延々と繰り返すという考え方である。それはみずからなしえた行いの報いは自ら受け、現在の境涯は過去世の行いの報いであり、未来世の境涯は、今生の行いの善し悪しによって決定されるという。よく耳にする自業自得とか因果応報のことである。宮本氏によると「輪廻説は、まごうかたな易差別思想であるが、生きとして生けるものそれぞれ自らの責任の所在を白日のもとにさらしたという点で、世界の思想上ならぶもののない徹底した自己責任倫理、つまり、神にしろ世間にしろ、ともあれ他者による信賞必罰に動機づけられた他律的なものではなく、あくまでもみずからのうちで完結する自立的な責任倫理をもたらしたといえる」。(同仏誕)
この倫理説の自己責任倫理や自立的精神が、後の仏教の理論や修行方法として受けるつがれていくのであろうか。
釈尊が誕生する当時(紀元前600年頃)、この「輪廻の苦」からいかに脱するということをテーマに、バラモン教の思想家や、ウパニシャドウの哲人や、旧来の宗教の枠に入らない自由な宗教家(沙門)たちが続々と出現して、瞑想したり、さまざまな理論を戦わせていたという。このような土壌の中から、「輪廻の苦」から脱する方法を求めて釈尊の物語が始まるのである。