61.Q 釈尊が苦行の途中で、悪魔と戦ったという教典はあるんですか?
A 原始教典のなかでも最古のものといわれる、スッタニパータ(経集とよぶ。紀元前3〜2世紀頃成立)に出てくる。その一部を紹介する。(数字が文頭にあるのは原文)
425ネーランジャラー河に向かって、その辺で努めに努め励んだこのわたしに、束縛からの安穏を得るために瞑想しているこのわたしに、
426ナムチ(魔)は、憐れみの言葉を口にしながら、近づいて来た。「おまえは痩せていて、顔色が悪く、死が近い。427おまえの死ぬ分が千だとすれば、おまえの生きる分は千に一である。お前。生きよ。生きたほうがいい。生きていれば、お前はもろもろの福徳をなすであろう。428またお前がヴェーダ聖典を学習してから、家にもどって精化に供物を献げることによって、多くの福徳が生まれる。お前は苦行に努め励んで、どうするのか。
これに対して釈尊は、福徳があるというなら、そうした利益を求めるものに、語ればよいではないかと反撃する。そして、敵(ナムチ)を八の軍隊とみなし、お前の第一軍はもろもろの欲望、第二は不快、第三は飢餓、第四は渇望、第五は沈鬱と睡眠、第六は恐怖、第七は疑惑、第八は偽善と驕慢、利得と名声と尊敬と邪悪に得られた栄誉、自己を賞揚して他者を軽蔑することである。と、悪魔の本性を見抜き、次の言葉にあるように、ナムチに絶対に降伏してはならないという釈尊の意思を示すのである。
440このわたしは、ムンジャ草(悪魔払いの呪力が身につく)を腰にしっかり着けよう。この世では命は厭わしい。敗北して生きのびるくらいなら、わたしは戦場で死んだほうがよい。
446〔悪魔払いは言った〕「わたしは七年間、世尊を一足ごとに追跡した。しかし正しい想念をそなえている等覚者には到達することができなかった」
ここにナムチは敗北宣言して、釈尊から去るのである。『原文は「ブッダの教え」宮坂宥勝訳より』