Masquerade
踊る蒼い風[1]
聖王女軍の補給部隊は川沿いのノイスの町にいた。軍の本隊があるダノンの町に到着するまでは川を越えなくてはならない。本隊は補給が整わない事には進軍できないのだ。補給部隊は急いでいた。
「もうすぐだね、ケルビム様」
「そうだな」
部隊の先頭を馬に乗っている男とロングスピアを持った少女が進んでいた。男の名前はケルビム。聖王女軍の騎士団長である。少女の名前はカナ。空を写したような蒼い髪、瞳が印象的である。
「ケルビム様、渡河の準備が整いました」
伝達がケルビムに伝える。
「そうか、カナ、ちょっと休んで来なさい」
「え、でも」
「船の数が足りないのですから、結構往復しなくてはいけない。あなたはいても役に立たないから」
「どーせボクはただの兵士ですよぅ」
「護衛兵としては有能なんですが」
「ぶぅー。じゃあ最後の船が出るときは知らせてね」
「わかりましたから。どうせ3日くらいかかるのです」
「戦争するのもたいへんだね」
そう言ってすたすたとカナは歩いていった。
昼間からカナはノイスの町の酒場にいた。
「わかってたけど、3日も暇になっちゃった。確かにボクにできる事はあんまりないし、この辺は安全だし、ケルビム様がいるからたいていの事は大丈夫だと思うけど。ううー」
この調子でずっと愚痴っているのである。
「それにしてもはやってないね、この店」
「昼間っからこんなところに来るあんたがいかんのだよ。確かに飯も売っているが酒場なんだから。それに最近はこの辺にも盗賊団が出るしねぇ」
カナががたっと立ち上がる。
「盗賊団!?部隊が・・・危なくはないか。盗賊団にやられるような人たちじゃないし。盗賊団も襲ったりはしないでしょ」
座る。
「どんな盗賊団なわけ?」
「首領が女らしいって事くらいしかしらんなぁ。よく団員たちは飲みに来るが」
「何で退治しないの?」
「衛兵は頼りにならんし、王女様も戦争で忙しいから当てにはならんし。せっかく軍隊がいるのに何もしてくれん」
「あははー」
カナは乾いた笑いをあげる。当然の事であるがカナはその軍隊の一員である。
「一応ミア姉に伝えとく」
「まあ頼りにしてるよ」
「おっちゃん、目が全然ボクを信用してない・・・」
その時酒場にどたどたと数人の男が上がりこんできた。
「お〜い親父、酒だ酒、酒をよこせ」
「早くしろ、ぶぁか」
「早くしねぇといてまうぞ、こらぁ」
品の悪い連中である。勝手にテーブルをふたつ占拠してしまった。
「おっちゃん、こいつら?」
「まあそうだな。こいつらのせいで赤字なんだよ」
「おい、カウンターでごちゃごちゃ言ってないで早くしろ」
「つまみも忘れるなよ」
「よく見たらそこのちまいのは女か、ほれこっち来て付き合え」
「ボクちまくないもん!」
「あぁん?」
6人に睨みつけられ思わずカナは引いてしまう。そこに店主が話し掛けた。
「嬢ちゃん店の中で暴れんでくれよ」
「おっちゃんまでボクを子ども扱いするー」
自覚がないからケルビムにも役に立たないといわれるのである。
(でもまあここで問題を起こすわけにはいかないし)
「おっちゃん、品物ちょうだい。運ぶから」
「ん」
「はやくしろ〜」
「はいただいまぁ」
カナはウェイトレスをやっているつもりらしい。軽いとはいえ鉄鎧を着ていてはぜんぜん他人には分からないが。
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