| 『青春デンデケデケデケ』芦原すなお(河出文庫) |
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名作ってのはいつ読んでも名作なわけで、本書は芦原すなおが書いた芦原すなおの時代の青春ものなわけだけれども今の若いのが読んでもやっぱり良いものは良いのである。芦原すなおの青春時代なんて両親の世代にあたるわけだから私なんかは全然知らないわけだけれども良いものは良いし、時代は移り変わったとしても人の心なんてものはさほど変わらんもので、青春はいつまでも青春なわけで、私にとっての青春時代はもしかしてちょっと過ぎたのかもしれないけれども、今読んでみてとてもシンパシィーを感じる部分もあるわけなのだ。 今はそこまでじゃないと思うのだけれども、海外のロックってのはやはり入ってきた当時は少年たちの胸を打ったのだろうし、のめり込む気持ちも何となくわかるしそれはそれで羨ましいけれども、きっと誰しも青春時代にのめり込む何かってのはあるのだろうから、本書に出てくるちっくんや富士夫や白井たちがしゃにむに無我夢中でロックをやっていくのにはきっと読んだ人誰しもが多少はシンパシィーを抱く部分もあると思う。 しかし、その上で、解説でも言われている通り、ここまで無我夢中に何かをやるという経験なんていうものは稀少なものなわけで、ちょっと羨ましく思ったりしながら読んでしまうものなのだと思う。青春時代なんてきっと時が経つにつれ美化されてしまうもんだと思うのだけれど、それはきっとこういうものを読んでより助長されていくんだろうなあ、と思ったりもする。本書を読んで思い返すとそういえば自分の高校時代はああだったこうだった、と楽しい思い出ばかりが思い出されるかもしれない。実は本書の体裁もずっと後になってからの懐古譚という形式をとっていたりして、芦原すなおはそのへんもちょっと意識的に書いている節があるような気がする。 でも、きっとそれは美化なんじゃなくてホントに純粋で楽しかった日々だったんじゃないかなあと少し思ったりもするのだ。本書のちっくんたちは純情でまっすぐで女の子とかそういうことも多少は気になりつつもやはりやりたいのは音楽でロックで、女の子とデートしても「しんどてかなわん」から「ここ数年はいらん」のだ。そして最後にちっくんは他の皆がやりたいことやらなければいけないことを見つけていく中で特に何になりたいかも定まらないまま不安な気持ちを抱えていく。というのもこれまた青春らしくて良いではないか。もちろん、皆が皆こんな青春ばかり送れるわけもなくて、作者の芦原すなおは照明係として見ていただけだと語っていると解説にもあったのだけれど、照明係には照明係の青春があったわけでそれはちっくんに送ることができないものなのであってそれはそれでとても良いものだったんじゃないだろうかと思うのだ。 ということで、本書を譲って下さった青春真っ最中(かどうか知らんけど)のスピカさんには感謝感謝感謝。
(2003年2月13日更新)
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