ベニー松山

『小説ウィザードリィ 隣り合わせの灰と青春』ベニー松山(集英社スーパーファンタジー文庫)

 狂王トレボー王が君臨する城塞都市。そこには地下迷宮にいる大魔道師ワードナを倒し、近衛隊に取り立てられようとする冒険者が後をたたない。モンスターとの戦闘に破れ、仲間の魔法使いシルバーを「消滅」させてしまったスカルダは、今よりも上の強さを求め、戦士から侍に転職した。新しくパーティに加わったのは呪文を全てマスターしている悪の戒律をもつ魔法使いバルカン。大ヒットRPG『ウィザードリィ』伝説のノベライズ。

 『ウィザードリィ』に関してはもう説明は不要だろう。「ダンジョンRPG」という一ジャンルを確立させたコンピュータロールプレイングゲームの元祖であり、黎明期の傑作として名高い一本である。――と言うと何やら知っていそうだけれど、実は私は『ウィザードリィ』をやったことがなかったりする。

 ベニー松山は最近作の『司星者カイン』は読んでいたのだけど、正直なところ、これが結構つらかった。うん。まあ、世界の設定とかかなり緻密にやっているがわかるのだけれども、なんだか知らんが読みづらかった。で、本書もあまり期待していなかったわけなんだけれども。

 前々から、本書『隣り合わせの灰と青春』は一応探していたのだが、上記の理由から探索熱がかなり冷めていたところ、月餅さんが本書は面白いよ、と言っていたので本格的に探してみようかな、と。しかし、何を勘違いしたか、てっきりログアウト冒険文庫だとばかり思っていて、集英社スーパーファンタジー文庫は探しておらず。先日、ふとしたことで発見。もう読み始めたらぐいぐいと引き込まれる感じで。読了。面白くて面白くて。本書を読み終えて、満足された方は是非、続編『風よ、龍に届いているか』(宝島社)も読んでみて頂きたい。そして、もう一作、バンパイアロードが出てくる短編「不死王」も是非。格好ええッス。貸して下さった月餅さんには、感謝感謝。

 ちょっと文章的には単調な部分もあるけれども、引っかかるほどではない。それよりも、魅力的なキャラクターと二転三転するストーリー展開。また、何よりも『ウィザードリィ』というゲームの魅力を知り尽くしている作者、ベニー松山である。その設定を活かすコツは心得ている。

 実際、『ウィザードリィ』やった人はもっと面白いだろう。あの設定をこういう風に解釈したのか、とか。呪文だとかモンスターだとか。転職の話とか。でも、やったことがない人でも十分に楽しめます、これ。ゲームの方もやってみたくなるけれども。ああ、でも。ひとまずゲームやったことある人もない人もきっとこう思うに違いない。

 「侍」万歳。

(2002年8月1日更新)
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『小説ウィザードリィII 風よ、龍に届いているか』ベニー松山(宝島社)

 ダンジョンRPG小説。

 建国以来数千年の歴史をもつリルガミン王国の中心地であり不可侵の聖都として知られる城塞都市リルガミン市。あらゆる外敵を退ける「ニルダの杖」の魔法城壁によって護られてきたこの都市は、百年前の魔神ダパルプスの反乱を除いては、いつの時代も平和と安全を保障されてきた。しかし、一年ほど前から、王国を襲い始めた天変地異は着実にリルガミンを滅亡へと導いていた。原因追及のため、賢者たちが欲したのは、いかなる真理をも映し出す神話時代の遺産、伝説の神秘の宝珠。そしてそれはリルガミンにほど近い岩山の内部に掘り抜かれた迷宮の最上層、山頂の火山付近に棲む巨竜ル'ケブレスに護られているというのである。
 かくして、魔窟の探索は始まり、多数の冒険者が名乗りを上げた――。

 評判高い「小説ウィザードリィ」の2冊目である。

 『ウィザードリィ』の設定を活かしつつ、『ウィザードリィ』を実際やったことがない読者でも十分楽しめる。設定の解釈は『ウィザードリィ』にハマった人にはたまらないものなのではないだろうか。

 宿屋や訓練所、そして王宮などの都市の様子、おどろおどろしい迷宮内部の描写、モンスターの不気味さ、存在感。そして、個性的で魅力的な登場人物。次から次へと発生するイベントに読者はついつい引き込まれていくに違いない。

 前回の『隣り合わせの灰と青春』では「侍、むっちゃ格好いいッス」だったのだけれど、本書を読むと、「やっぱりニンジャはいいよねえ」に変わる。きっと変わる。いやあ、本当に格好よいのだ、ニンジャ。強いしね。男の子はやっぱ強さへの志向ってのがあるね。男の子だけかどうかはわからないけど。

 もし『ウィザードリィ』をやったことがあるならば文句なしにお薦め。って、やったことがない私がオススメするのは筋違いだけれども、まあやったことがない人がオススメできるくらいの作品である、と思って頂ければ。

 前作『隣り合わせの灰と青春』を読んでいなくてもさして問題はないと思うが、読んでおいた方が楽しめることだけは確かだ。繋がりはあるのだけれども、どう繋がっているか、はご自分で確かめて頂きたい。そういえばこの繋がり方はこれはこれで、ゲームのシステムにあるのか、はたまた解釈としてこういうものを提示したか、をしたらしい。読めば納得。なるほど。

 『Wizardryアンソロジー』に収録された短編「不死王」を読むと、本書『風よ、龍に届いているか』のサイドストーリーがかなりよくわかる。手に入る方は是非。というか、図書館で借りてでも。それにしてもしかし。

 生まれ変わったらやっぱり「ニンジャ」。

(2002年8月1日更新)

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