Karel Capek
| 『山椒魚戦争 地球人ライブラリー』カレル・チャペック/小林恭二 大森望・訳(小学館) |
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赤道直下のとある島で、高い知能を有する山椒魚が発見された。人間の言葉を解し、様々な作業をこなせるようになった山椒魚たちは、瞬く間に人類の労働力として不可欠な存在となる。しかし、各国が競って自国の労働力・戦力としようとするなかで、山椒魚たちは連携をとりつつ、やがて人類をも脅かす存在となる……。 「ロボット」という単語を生み出したことで有名なカレル・チャペックのこれまた有名なSFの古典である本書。のこれはダイジェスト版である。 どうやら私は、あまり良い単語が思いつかないのだが、荒唐無稽な架空未来史みたいなものが好きらしい。小林恭二の『ゼウスガーデン衰亡史』(ハルキ文庫)は一都市の小さなテーマパークが巨大化していき国家規模にまでなってしまう、という何ともムチャクチャなものであったが、そんな『ゼウスガーデン衰亡史』が好きだったりするところに顕著である。 で。本書は山椒魚が知能を得たら、という妙な設定である。まあ、ロボットの代わりに何か動物で労働力を、と思ったのだろうが、何故山椒魚なのかは寡聞にして知らない。 本書はナチスドイツの台頭がチェコを脅かす時期に書かれたものであるため、当時の事件を揶揄していたり、皮肉っていたりするらしい。例えば、ヒトラーを模した登場人物が出てくるらしい。また、人類の文明に対しての文明批評も行なわれているらしい。結局第二次世界大戦を見ずに、ドイツのチェコ進駐を見ずに、死んでしまったチャペックが、本書の最終章で「作者の自問自答」という形で終えているのは、チャペックの先見性か、はたまた皮肉か、と言われているらしい。「らしい」というのも、まあ実際チャペックがどのような趣旨で本書を書いたのかは知らないが、そんな事考えずに読んでも十分面白いのである、本書は。古さは感じられない。十分面白いのであるが、最終章で、中々意外な結末が待っていると思われる。この落ちは人それぞれの好みがあると思うが、ひとまず騙されたと思って読んでみては如何だろうか。 小学館地球ライブラリー版の『山椒魚戦争』はダイジェスト版なので、全部読みたい、という方はハヤカワ文庫か創元推理文庫、もしくは岩波文庫で読んでみた方がよいです。ただ、小学館版がとても読みやすいのは確か。
(2002年8月1日更新)
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