クラフト・エヴィング商會
| 『テーブルの上のファーブル』クラフト・エヴィング商會(筑摩書房) |
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昼の月明かりで作られた、何とも不思議で何とも懐かしい密造酒。 本屋で何気なく本を見る。 何かおもしろそうな本はないかなと平積みの棚をザーッと見ると、ある一点で目を止める。ん、アレは何だろと気になって。手にとってみて。内容がどのようなものかはわからないのだけれど、手元に置いておきたくなるような装丁。ジャケ買いをしそうになる本。私にとってその一つがクラフト・エヴィング商會が装丁をしている本だ。 何とも不思議で何処でも見たことがなくてでも何処となく懐かしいものを創り出すクラフト・エヴィング商會。彼らの本にはいつも〈ムーンシャイナー/月下密造通信〉というリーフレットが挟み込まれている。毎回彼らの本を買う度に、月明かりの下でひっそりと作られたようなそのリーフレットが何とも楽しみだったりした。その楽しみの元にあるのは、小さい頃に買った雑誌の付録についてきた〈おまけ〉を心待ちにするようなわくわく感であって、読者とクラフト・エヴィング商會のみが共有できる〈秘密〉であるというどきどき感だ。 本書はそのリーフレット〈月下密造通信〉を本にまとめようとして、じゃあ他にもいろいろくっつけて出してしまおう、とごちゃごちゃーとイロイロなものがくっついたものである。ごちゃごちゃーとしているため、本書には前後の脈絡があんまりないし目次もないし何と言ってもメインディッシュがない。 まあでもそれも当たり前の話。元々〈月下密造通信〉というおまけをまとめた本なのだからメインディッシュなんてあるはずがない。そう、おまけだけで成り立っている本なのだからごちゃごちゃなのも当たり前の話。 クラフト・エヴィング商會の集大成とも言えるし、カタログとも言えるし、クラフト・エヴィング商會が今まで出してきた全ての本のおまけとも言える本書。クラフト・エヴィング商會初心者の方に本書を薦めるのは不親切かもしれない。だって、おまけだけでメインがないんだから。 でも。クラフト・エヴィング商會が醸し出す何とも不思議な感じに浸れる。それだけは違いないはずだ。誰か一人くらいは本書からクラフト・エヴィング商會へ入ってみても良いかもしれない。そう、あなた一人くらいは――。
(2004年6月2日更新)
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