藤原帰一
| 『デモクラシーの帝国 −アメリカ・戦争・現代世界−』藤原帰一(岩波新書) |
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「帝国」という言葉を最近よく耳にする。「帝国」が一体どのような概念なのかは知らないものの、「いまのアメリカは帝国だ」って言われると、うん確かになんか今のアメリカって帝国っぽいよねと頷ける。頷けるのだけれど、実際アメリカの「帝国化」ってのはどういうことなのかというのはよくわからなくて、うーんどういうことなのかなあと常々――正確に言えば、ごくごくたまに――疑問に思っていた。 本書の著者である藤原帰一は、かなり珍しいヒトだ。東大の教授であるにもかかわらず、最初に出した本は講談社学術新書からの『戦争を記憶する』であるし、その後も出している本は、本書のような一般新書だとかロッキンオンという音楽雑誌の編集長である渋谷陽一によるインタビュー『「正しい戦争」は本当にあるのか』だとかで、単独でいわゆるハードカバーの「お堅い学術書」は出していない。本書でも、小難しい専門用語を使わずに一般人にもわかる平易な言葉を使い、現代アメリカを取り巻く状況を説明してくれている。 本書では「帝国」というキーワードを用いながら、各国に権力が分かれていた世界から、アメリカへと権力が一極集中する世界へと変わったことによって、いったい何がどう変わり何がどう変わらなかったのか、という点が語られる。 9・11事件からアフガン戦争、イラク戦争と、ブッシュ大統領になってからのアメリカってなんかすげえ勢いでイロイロやっちゃっているなあと日々のニュースを見ていてぼんやりとは思っていたのだけど、本書で藤原帰一はそれらのさまざまな事件を一歩下がって捉えなおしてくれる。それまでの歴史を押さえながら、国際政治史の中での現代のアメリカ及び国際政治の位置を把握させてくれるのだ。WWII、ベトナム戦争、冷戦、そして9・11事件――それぞれの節目を経て、アメリカは如何にして「帝国」となりしか。アメリカがその極端な普遍主義と極端な単独主義へと走っていってしまった理由とその背景。そしてその間、アメリカが国際政治の中で果たしていった国際秩序の維持。それらを国際政治の一連の流れの中で掴む。 最後に藤原は、この「アメリカが帝国となってしまった世界」から「アメリカを含む世界」へと転換していくために、国際主義と国際協力の世界へとアメリカを引き戻すための不断の努力が必要である、として締めくくる。 結論だけを見るとそれは当然過ぎて、だからこそその提案は無力だ、と言いたくなるかもしれない。しかしその当たり前の結論を導き出せるヒトは少ない。アメリカを中心となっている国際政治を捉えなおさせてくれる、バランスの取れた1冊であると思う。そして、アメリカを国際主義・国際協力の社会へ引き戻すためには誰が一体何をどうすればいいのか、という疑問を再度持たせてくれる1冊。
(2004年9月23日更新)
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