William Hope Hodgson

 『夜の声』W・H・ホジスン/井辻朱美・訳(創元推理文庫)

 うんうんそうそう、これだよこれ。これこそホラーってヤツでしょっていうか怖ぇーよ。

 と、全然ホラー読まないので偉そうなことは言えないものの、私の中でのホラーってのはこういうヤツなんだよなと思う。あんまりうまくは言えないものの、【ホラー】っていうのは物語に恐怖を混ぜただけでは多分足りなくて、異界への憧憬だとか畏怖だとか未知への恐怖だとか怯えだとかそういういろんなものを混ぜた上で、それから精製すると恐怖ってのが出てきて、その精製の過程で恐怖が醸し出されてくる物語、をホラーと呼んでいるんじゃなかろかなと思う。いやまあ異論反論はあろうが、ひとまずわたし的にはそうなのだ。

 そんな中で、本書『夜の声』は海洋を舞台としたホラーを集めているわけで、多分畏怖の対象の代表格ともいえる【海】をモチーフにするホラーは安易に思いつくとも言えるけど、逆に大勢のヒトが思いつく故に、描写は非常に難しいとも言える。
 が、ホジスンはその畏怖の対象としての大海原と、そこに顕現してくる怪奇、そして怪異に遭遇するヒトビト、を何ともリアルに描き出しているわけで、何ともスタンダードなホラー(褒め言葉です)をモノにしていて、ご本人にとっては良いことなんだろうけど、読んでるこちらとしては怖いばかりなのでたまったもんじゃなかったりするのである。

 というわけで、怖がりなヒトとしてはホラーってのは怖いからイヤなわけで、なんでイヤなのに読んでいるのかっていうと、たまにはホラーも読んでみてああやっぱりホラーは怖いなあと再確認したくなるからで、それこそ多分未知のものへの憧れに他ならない――わけはなく多分怖いもの見たさなんだと思うんだけど。

 そんなこんなでホラー読みたければ一押し。オススメです。てわけで、オススメくだすった甘粕さんには感謝感謝っていうか怖かったっちゅうねん。

(2004年2月7日更新)

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