岩井克人
| 『会社はこれからどうなるのか』岩井克人(平凡社) |
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不況だリストラだ構造改革だっ――なんて言葉が飛び交っている昨今、従来の終身雇用制だとか年功賃金制だとかいう日本型経営を改善しないといかんあんなもんもう通用せんやっぱ構造がいかんリストラせなあかんクビきれクビー、と叫ぶ人々はたくさんいるものの(そんなにたくさんはいないか)、ほんじゃいったい会社はこれからどうなっちゃうの?と思って本を読んでみると、これからの時代はグローバルだからオープン・アーキテクト化の傾向からコア・コンピタンスを大事にしながらもデ・ファクト・スタンダードなわけで、コーポレートガバナンスを意識しながら構造改革しないといけないんだよね――などと君ちょっと日本語不自由でしょと言いたくなるような、横文字ばかりで何がなんだかわかんないことを言っているようなわけのわかんない作者のわけのわかんないビジネス書が氾濫しちゃっていて余計に混乱してしまったりする。 ああもう、もう少しわかりやすく会社はこれからどうなるのか説明してくれる本はないかなあ、と思っていたら見つけたのが本書。タイトルもずばり『会社はこれからどうなるのか』。もうタイトルからしてわかりやすいね。会社はこれからどうなるのかが書いてある本なんだろうなあってサルでもわかるものね。 本書の著者は東京大学経済学部学部長――なんて肩書きを聞くと、学者センセイの本は難しくてちょっと……と敬遠してしまいがちだが、確かに岩井克人の主著『貨幣論』はその類の本にしては読みやすかったけど正直ちょっと難しい(「ちょっと」?)感じもするような1冊だったけれど、本書はインタビューを本に起こしたものなので、平易な話し口調で基礎の基礎から話してくれているのでそういう問題はダイジョウブ。 本書の特徴は「会社の仕組み」から日本型経営とアメリカ型経営を解きほぐして、これからの社会に対応しうる会社ってのがどんなものなのかを論理的に構築していってくれるところ。論理的に、非常に明解な回答を導き出しているのだ。ちょっとした謎解きの興奮が味わえる。謎解きを楽しみながら会社の仕組みがわかってしまうのだ。読み終わった時にはなるほどなるほど、会社はこのように成り立っているから今後の会社はこういうものになるのね、とすんなりと理解できてしまう。これで1冊1600円だなんて、まあお得。 そして、そもそも株主と会社との関係とは――なんていうもう基礎の基礎からラーメン屋と八百屋のおやじを例に簡単明瞭に説明してくれているのにもかかわらず、さすが経済学のセンセイだけあって、現代企業社会における重要な考え方、用語はしっかりと詰め込んじゃってあるである。しかも、本当にかなり詰め込んであるにもかかわらず、詰め込んだ感はもうまったく一切ない。するするっと読めて、会社の仕組みと今後の会社の在り方がわかっちゃう。これであなたも通ぶって、居酒屋で「これからの時代はやっぱデ・ファクト・スタンダードで、コーポレートガバナンスが重要なんだよね」なんてことが言えちゃうわけだ。「ああ何言ってんだかよくわかんないけどこんなに物事をよく知っているなんてカッコいい」とか何とか、意中のヒトもメロメロになっちゃうわけだ。あ、ということはあんまオススメしない方がいいのか、この本。それにしても、会社の仕組みがよくわかる上に、異性からモテモテだなんて、何て素晴らしい本なんだ。 ここのところ読んだ本の中でもホント誰にでもススメられる、非常にオススメな1冊。
(2003年10日22日更新)
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