押井守

『Avalon 灰色の貴婦人』押井守(MF文庫J)

 押井守の小説でした。

 と、書き始めてみたものの、押井守フリークでも何でもないので、押井守作品について語るほどの者でもないって言うか、なんだか押井守好きな人は怖いというイメージがあるんですがありませんか皆さんは。いや偏見だとは思うんだけど。きっと偏見。偏見だと思う思いたい。偏見であればいいな。

 本書『Avalon 灰色の貴婦人』は2000年に公開された映画『Avalon』に先行して発売された小説版であり、時系列的には映画版の後に属する作品。私としては映画をみてから読むことをオススメするのだけれども、映画公開に先立って出た作品なのだから先に読むべきなのかも。でもやっぱり、映画版の映像は素晴らしいのであのイメージで読んだ方が楽しい気がするっていうか私は楽しかったので、映画→小説をオススメ。

 ただし。

 映画版『Avalon』はオススメかと言われると、正直なところオススメできるほど面白くはなかったりする。いわゆる「個人的には楽しめたが人にオススメはできない作品」の一つなのだ、これが。
 ストーリーは正直ありきたりだし、出てくるゲーム「Avalon」のシステムが素晴らしいってこともなく、それならばキャラクターが立っているかと言われれば、主人公アッシュは確かに格好良いのだけれどもキャラが立っているというほどでもないし、じゃあ何が良かったんだと聞かれれば、映像が格好良かったのだと答える。
 そもそも『Avalon』を見ようと思ったのは、 ポスター やらテレビでやらちらほらと見た映像やらを見て、おおこりゃなんか格好良さそうだ見たい見たいと思ったからであってそもそも映像ありきで映画を見たのだけれどもでもまあ見たいからといって映画に関してものすごく無精なので映画館に行ったりレンタルで借りたりするわけでもなくたまごさんがビデオに録画したと言うので貸してもらったのだった。その節はありがとうございました。>たまごさん
 というわけで、映画版を見たわけなのだけれども、やっぱり映像が格好良かった。「やっぱり」と言うか思った以上に格好良かった。ずっとゲーム「Avalon」の中の映像だけだった方が満足できそうなくらい良かった。キャラクター視点の映像とか、ロビーのスクリーンに映し出される戦場なかをもっと見たかった。ポーランド軍の協力を得て撮ったと言う戦車やヘリはその重量感を感じることができたし、やっぱり何が良かったって廃墟が良かった。
 最近は廃墟ブーム(何それ)で、玉石混交様々な廃墟関連の本が出ているけれども、中々しっくりくる廃墟がない中、映画版『Avalon』の廃墟はなかなか格好良いのだ。それの一因として、あのセピアのようでセピアではない特殊な色調から来るのかもしれない。普通にカラーで撮った後に色を落としていったそうで、すごく独特な色調なのだけれども、それがしっくりと来る。色が落としてあるのはストーリー上もう一つの効果があるわけなのだけれども、ここではあまり関係ないって言うか、映像的には悪くなかったけれども、ストーリーに関してはさほどでもなかったので、そういう話は他の機会に譲るとして。

 まあ、そんなこんなで映像が良かったわけで、それでは小説版も読んでみるかなと思って文庫化したこの機会に読んでみたのだ。
 ゲーム「Avalon」の設定は至極シンプルなため、映画版でも結構すんなりと飲み込めたのだけれども、小説版ではより詳細に書かれているためわかりやすい。と言うか、映画版を見た時は全然知らなかったものの、「Wizadry」を知った後で「Avalon」を見ると思いっきりWizだったため驚いた。しかしまあ、オマージュやら何やらは良いと思うのだけれども、まあ本当によくWizの単語が出てくるんだ、これがまた。

 で、その、ゲーム「Avalon」ってのはどんなゲームなんじゃいなと言うと、近未来に出来た非合法のネットワーク体感ゲームなのである。システムはWizに近い。キャラクターは「戦士」「司祭」「僧侶」「盗賊」から一つを選ぶことができ、パーティーを組んでミッションを攻略する、と言う単純なゲーム。ミッションは、20世紀後半の武器を使って、20世紀後半の戦闘ヘリだとか戦車だとかを倒す戦闘ゲーム。

 押井守の小説って観念的な部分と長台詞な部分が特徴的だと思うのだけれども、本書ではどちらかと言うと、というかそのどちらでもなくて、地の文での銃器に対する説明が特徴的だった。銃器の薀蓄がぐぁーと出てくるのだけれども、全然銃器のことを知らない私でもけっこう楽しめたので、そういうのが好きな人にはたまらないかもしれない。ぶっちゃけ、本書のメインは仮想現実のネットワークゲームがどうこう、現実と虚構がどうこう、ではなくて、銃器についての薀蓄、ってのがメインだと思う。

 読んでもらえばわかるのだけれども、時系列は映画版の後だし、外伝的な要素もあるのだけれども、主人公別だし、単発作品として読むことも可能にもかかわらず、実はストーリー自体に絞って言えばノベライズと言ってもさほど間違いじゃない作品だったりするので、ひとまず映画版を見てから映画版が気に入った人は読むと良いと思う作品でした。いや、私は好きなんだけど。

 読み終わってからぼちぼちネットで感想とか調べてみたのだけれど、『パトレイバー劇場版2』の荒川さんが竹中直人さんだったのにびっくり。そう言われて思い出してみれば思いっきり竹中直人さんの声でしたね、あの人。なんか新鮮な驚きでした。
 と言うことで、結論としては『機動警察パトレイバー TOKYO WAR (前・後編)』(富士見ファンタジア文庫)は良いノベライズなので、『機動警察パトレイバー The Movie2』を見た人は買って読みましょう、と。『獣たちの夜』(角川ホラー文庫)は、安保闘争ヴァンパイアものなので、後藤隊長が好きな人にはオススメです。後藤隊長出てこないけど。文脈繋がっていませんが、読めばわかります。

(2003年3月23日更新)

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