Richrd Matheson
| 『ある日どこかで』リチャード・マシスン/尾之上浩司・訳(創元推理文庫) |
|
今でも思い出すとどきどきする。 体調の良し悪しと読書に対するコンディションは別物である、ということを実は大学に入って初めて気付いた。ベストコンディションで読んだ本というのは、読んでいる時はものすごく楽しい。これほど面白い本がこれまでにあっただろうか、というくらい楽しくなれる。ここ一週間ほど卒論のために小説を読んでいなかったため、かなりのストレスがたまってしまい、久しぶりに小説を読むために選んだ作品が本書『ある日どこかで』であったことは僥倖と言ってもいいかもしれない。本書はまさしく今日読むべき本だったのだ。 時間SFと恋愛小説というのはものすごく相性がいいようで、今までにも何作か読んできたし、これからも積極的に読んでいきたいジャンルの一つだ。梶尾慎治の「美亜に贈る真珠」、『クロノス・ジョウンターの伝説』や、ロバート・A・ハインライン『夏への扉』。他にも、小林泰三「酔歩する男」や、先に挙げた作品とはちょっと趣きは違うものの、高畑京一郎の『タイム・リープ』なんかもその一つに入れて良いだろう。今ぱっと思いつく大好きな作品だけでこれだけあるし、どれもこれも傑作であるのは保証するので、もし目についたら読んでみてもらいたい作品ばかりだ。 その中でも、本書は極上のラヴ・ストーリーなのだ。 タイムトラベルものの恋愛小説というのは、読んでいる途中で哀しいラストが待っているのだろうな、という予感がひしひしとするし、主人公たちが恋愛を楽しんでいるのを読んでいくのは嬉しいような、しかしその反面、先を考えると読み進めるのがつらいものがある。でもやはり、そのページを捲る手を止めることはできないし、いやそれ以上に、二人の恋の行方を見届けたいばかりにページを捲る手は早まるばかりである――という言い方をすると少々嘘が混じってしまうかもしれない。というのも、この物語を読んでいる途中から、私は主人公リチャードの純粋な感情に自分の気持ちを合わせながら読んでしまったからである。きっと私は本書を読んでいる間、リチャードと同じく、エリーズに恋をしていたのだろう。 実はここに書く感想は、大体読んだその日の内に、その感動が薄れないうちに書くようにしているのだけれども、今回は、授業中に読み終えてしまって、すぐにルーズリーフとペンを取り出して書き殴ってしまった。それほどまでに今回の感動は大きい。パソコンでそれを清書する内に、書いた感想がかなり恥ずかしいもので全面的に手直ししたくなってしまったものの、せっかくなので読んだ時の感想をそのまま置いておくことにする。 もし今誰かに、今までに読んだ恋愛小説の中で一位は何か、と聞かれたらリチャード・マシスンの『ある日どこかで』である、と即答するだろう。 恋愛小説好きには是非是非読んで頂きたい一冊。 最後に瀬名秀明の解説から抜粋。 ――きっとあなたもこの物語を生涯大切にしたくなるだろう。 まさしく。
(2002年8月1日更新)
|