垣芝折多著/松山巖編


『偽書百撰』垣芝折多著/松山巖編(文春文庫)

 垣芝折多による書評集。本書「偽書百撰」は、明治・大正・昭和に書かれた100冊の名著――失礼。100冊の迷著を、押入れの奥から引っ張り出してきて書かれた書評集なのだ。
 1冊目に取り上げられているのは「掃除のすゝめ」。作者は拭座愉吉。…フク…ザ…ユキチ? 書評の中に「掃除のすゝめ」の引用が少し載っていたので、そこからもう一度引用させてもらうことにしよう。

 > 「近来人は書に書かれたことのみ真実とし、
 > 雑智に追れ自らの身心清掃するを忘却せり。
 > かかる事態に於て成すべきは焚書のみ」


 かかる事態に於て成すべきは焚書のみ!

 何とも魅力的な本の書評から始まった本書において垣芝折多は、苦沙弥センセイの奥さんの視点から見た「吾輩は妻である」、あの貫一・お宮の恋物語の続編「新続続金色夜又」、40枚の短編回文ポルノ「肉世園」等々、多種多様なケッサクを読み漁り、最初から最後まで駄洒落と詭弁とで茶化しながら書評していく。

 タイトル「偽書百選」からもわかる通り、本書で取り上げられた迷著たちは全て偽書だ。それにしてもよくまあ次から次へと近代の名著をこんなパロディに仕立て上げることができるなあ――と腹を抱えつつ感心しながら読んでいたら、終尾を飾る101冊目の書評に取り上げられたのは「偽書百撰」。うーむ。これは一体どういうことなんヂャ。

 ううむううむと頭を抱えながらも読み返してみれば、再度、垣芝折多の博覧強記ぶりとその文体模写に恐れ入ってしまった。いやはや参った。恐れ入った。これこそ希代の名著――いや、希代の迷著。名著にせよ迷著にせよ、どちらにせよ奇書であることに違いはない。近代の名著100冊をパロディにした上に、それを読ませたくなるような書評に仕立て上げた垣芝折多に大きな大きな拍手を――いや、こういう本に拍手は不要か。笑いながら、くすくすと笑いながら独り静かに本を閉じることにしよう。こんな本を世間に教えるのはもったいない。そうだ、読み終えたら隠してしまえば、世間にも知られず私独りで楽しむことができるではないか。

 焚書。魅力的だ。

(2004年05月09日更新)

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